Shojinmeatが目指すもの -豊かなお肉と未来を育てるプロジェクト(2)
本記事は、「Shojinmeatが目指すもの -豊かなお肉と未来を育てるプロジェクト(1)」の続編です。
なぜShojinmeat?
おそらくお気づきの方も多いでしょうが、“Shojinmeat”の名は、「精進料理」から来ています。
では、「精進料理」とは何でしょうか。「お坊さんが食べる、肉抜きの料理」でしょうか?
門外漢ながらも、私個人としてはそういう意味ではないと考えています。
私が思う所では、「仏教の教えを体現し、食べる度にその教えについて考えさせてくれる料理」という、精神的な側面を持っている料理だと考えています。
つまり、「殺生を戒め、世に感謝する」などの精神が主にあり、「肉を使わない」などの手順は副次的なものだと考えています。
例えば、京都の妙心寺退蔵院の方は、精進料理には「食材に感謝し、敬意を払う」という禅の教えがあると言います。
京都のとある料亭の総料理長の方は、「手間を頂く料理で、野菜しか使わないのは二次的なこと」と言いいます。
雑誌のインタビュー記事でこの言葉を見たのですが、私なりの「精進料理」の理解はそこまで間違っていなかったんだと、勇気付けられました。
精進料理の本当のメッセージは、「食材に対して命を分けてもらったことに感謝し、料理を届けるために一生懸命がんばってくれた世の方々に感謝すべし」、というメッセージを持っているのではないでしょうか。これは日本人が慣れ親しんでいる、「いただきます」と「ご馳走さま」そのものです。
※「馳走」:客人をもてなすために走り回る(頑張る)こと
ちなみに精進料理は日本に限らず、中国・台湾・東南アジア諸国と、東アジア圏に共通する文化です。
台湾に旅行したことがある方は、「素食」と書かれたレストランや屋台を見かけたかもしれません。
それが台湾版精進料理です。
ベトナムでも、「đồ chay」と呼ばれる精進料理が広く食されています。
インドでは仏教の「兄弟」ともいえるヒンドゥー教が広く信仰されていますが、インド版の「精進料理」を食べる菜食主義者は、5億人いるとも言われています。
このように、精進料理のメッセージは修行僧という特殊な人達だけのものではなく、実は普通の人の日々の生活の一部となっている、とても普遍的なものではないでしょうか。
現在の食糧生産体制と精進料理の教え
さて、ここからが一番重要な部分です。
よくニュースや雑誌などで、世界の食糧事情について、いろいろときな臭い話が聞かれます。
具体的には「森林破壊」、「投機による価格操作」、「魚の乱獲」、「食品の大量廃棄」などです。
2013年にWFP(国際連合世界食糧計画)が、「このままでは食糧危機になるので、昆虫食を検討しよう」と発表した時は、この現実が改めて注目されました。
精進料理のメッセージに照らし合わせると、今の世界の現実は、どうなのでしょうか。
今回は特に、畜産業と食肉生産に注目しようと思います。
ここでまず、そもそも生きものを殺すこと自体について色々意見がある人も多いと思います。
家畜動物が、日々どんな扱いを受けているかについも同様です。
これらに関しては、動物愛護に熱心な方々が既に様々な活動をしているので、本記事では省略致します。
そもそも牛や豚を育てるには、大量の水と餌が必要です。
人間がトウモロコシを食べるのと、トウモロコシ飼料で育てた牛を人間が食べるのでは、約40倍の農業資源が必要だとも言われています。
水に至っては、牛肉1kgの生産に15000リットルの水が必要だと言われています。
そしてこの大量の資源は、現状では焼き畑農業、森林伐採、環境破壊によって賄われています。
これは、かなりの規模で行われている「殺生」とも言えます。
すでに問題だらけですが、とにかくこうして生産された食肉は世界的な流通網に乗ります。実はここでもうひと悶着起きます。
巨大な人口を抱える中国が豊かになるに従い、肉の消費量が大幅に増えています。
そのため、中国では国内生産では肉を賄いきれなくなり、大量輸入を始めています。
そのため、日本が肉を「買い負ける」という事態が起きています。
この辺の動向は、NHKスペシャルでも放送されています。
すでに中国14億によって争奪戦が起きる中、今後さらにインド10億とアフリカ15億が続きます。
これを支えるには、さらに大量の資源が必要になり、各国がその確保に奔走することになります。
つまり、食肉生産の問題は、食糧、穀物、水などの農業資源を巡る、「食糧安全保障」という課題に直結しているのです。
ことに水と食糧は戦略資源であり、その供給に不安が生じると何が起きるか、「石油」という戦略資源を巡って起きた様々な出来事が、それを証明しています。
動物愛護家のあいだでは、保健所での捨て猫の殺処分について、毒カプセル一個分の「78円の命」が話題になりました。
しかしひとたび戦争になると、人間の命が弾一発分27円です。
「いただきます!」・・・・・???
目の前に昼食の牛丼があるとします。
「いただきます!」と言いますが、一体何を「いただいて」いるのでしょうか。
「ごちそうさま」と言いますが、一体どんな「馳走」がされたのでしょうか。
牛丼を作るための2000リットルの水と大量の飼料は、どうやって調達しているのでしょうか。
水と食糧という戦略資源の確保を巡り、世界で何が行われているのでしょうか。
本来は美しいはずの「いただきます」と「ごちそうさま」も、何かしらじらしく感じられてしまいます。
しかしその裏返しで、現在の食糧供給体制を改め、環境破壊と食料安全保障という現実の課題を解決することは、実は日本人の生活の一部になっている、「 食材に対して命を分けてもらったことに感謝し( 殺生を戒め)、料理を届けるために一生懸命がんばってくれた世の方々に感謝すべし( 世に感謝する)」という普遍的なメッセージにもつながっています。
そしてこれを世界に発信するため、”Shojinmeat”と名付けました。
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Shojinmeatが目指すもの -豊かなお肉と未来を育てるプロジェクト(3・終)
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