【スタートアップ×M&A】買い手の視点

Shuhei Matsubara
Aug 23, 2017 · 8 min read

「会社を売却した人」の話はインターネット上で目にする機会があるけれど、なかなか「会社を買収する側」の話は表に出てきません。スタートアップエコシステムの発展には様々なノウハウがオープン化されるべきで、集合知こそが全体を押し上げるという考え方からすると、「会社を買収する側」のロジック、また、そこに至るまでの過程は非常に貴重であるように思います。

そんな中、2017年8月22日に”スタートアップの為のM&A戦略セミナー vol.4~Buy Sideの視点、アドバイザーの役割~”というイベントに参加し、M&Aの全工程とそれぞれの思惑、またロジックを学ぶ機会があったので、本ブログに要点を抜き出して記載してみようと思います。

パネラー、モデレーターを務めていらっしゃったのは以下の方々

(パネラー)

株式会社じげん CFO(最高財務責任者) 兼 経営戦略部部長
寺田 修輔 氏(CFA協会認定証券アナリスト)

King & Wood Mallesons法律事務所 パートナー
佐藤 有紀 氏(弁護士(日本・ニューヨーク州))

デロイトトーマツファイナンシャルアドバイザリー合同会社
コーポレートファイナンシャルアドバイザリー部門
シニアヴァイスプレジデント
熊谷元裕 氏(公認会計士)

(ファシリテーター)
有限監査法人トーマツ兼トーマツベンチャーサポート株式会社
粂田将伸 氏(証券アナリスト、CFP®)

また、イベント概要は下記のとおり。
http://www.acceleration.tokyo.jp/detail.php?keyno=239


買収検討時に一番見ているポイント

結論有りきで話をしてしまうような形にはなりますが、買収先を探すにあたって最も注視しているポイントは、非常にシンプルで、

その会社の(再現性ある)資産はなにか

というポイントであるとのこと。

当然スタートアップがスタートアップたる所以は「尖っているところも凹んでいるところもある」という点であり、であるならば、その会社の何を資産と考えるかが重要となります。それは囲っているユーザーの属性や数なのかもしれません、はたまたブランドの可能性もあります、技術かもしれません。

性悪説に則って、「めちゃくちゃネガティブに見たとしても」その会社に残る資産、言い換えるならば構造的に築かれた価値が何なのか、このポイントに注視していらっしゃるとのことでした。その資産が買い手の足りないところを補いうる、もしくは、その資産を買い手のリソースを活かすことでよりよいものにできると考えた時、そこに「シナジーがある」とみなされるわけです。

(例えばその会社は社長及び経営陣がぬけたとしても回っていく組織なのか否かなどは重要な視点であり、ある種、人が資産の会社はその永続性に疑問符がつくわけですね。)

そのため、殊、M&Aに関しては「純資産がいくらである」とか「赤字企業か黒字企業か」といった財務面の特性は、検討をすすめる上での一要素に過ぎず、むしろ、その会社が持っている資産をいかに活かして利益を上げていけるかが重要であるということでした。当然、買収金額もこの前提により決まってきます。「シナジーを織り込んで引いた事業計画」に一定のマルチプルをかけた額が一つの指針になるということなのです。


さて上記の「資産」を検討していくプロセスはどのようなものなのでしょうか

M&Aの検討プロセス

M&Aの検討プロセスは、「事前計画/検討」、「ソーシング」、「交渉」 の3フェーズに大別されます。

事前計画/検討
・自社リソースの棚卸し
・不足しているリソースと事業のスコープを確認
・外部から獲得すべきリソースを検討
・アプローチ方法を検討
・ターゲットの選定(ロング/ショートリスト)
・(場合により外部とアドバイザリー契約)

ソーシング
・紹介/自ら探す
・金融機関、M&A業者、取引先、社内人脈からソーシング
・ノンネームベースの情報を取得/検証
・秘密保持契約の締結
・初期情報取得

交渉
・マーケット規模、成長性、ポジショニング、チーム、技術の検証
・事業計画の実現性、実行力の確認
・シナジーの検討
・バリュエーション決定
・法務、会計、ビジネスDD

(※参考:イベント時に使用されたTVS社作成のスライド)

このプロセスの中で、当然交渉が長引くフェーズ、揉めうるフェーズ、意見が食い違うフェーズは何段階かあるわけですが、買い手側と売り手側の1番のズレは「将来性」の考え方とのことでした。

買い手側からすると、スタートアップの事業計画は「盛りすぎ」に見えることがある。一方スタートアップ側からすると、ここに「騙す」意思はなく、真剣に事業計画に描いた成長曲線を信じている。ようはビジョンが事業計画に落とし込まれた結果であるがゆえに、そのビジョンが買い手側と売り手側で共有できない限りは「ズレ」が「ズレ」で有り続けてしまうというわけです。このギャップを埋められるか否かが実は非常に重要であり、買い手側をビジョンの虜にできるかどうかが重要であるということでした。売り手側がビジョンをしっかりと伝え、そのビジョンに買い手側が共感した時、両者がタッグを組む事ができる。あとは買い手側の決定フローに乗っかることのできる状態をいかに築くことができるかという勝負になってくるわけです。

あとはそうなったときに大事になってくるのが、”会社の見える化”なわけです。事業計画、狙っているマーケットの将来像、(本来描いていた)IPOまでの道筋等の事業の未来はもちろん、これまで巻いてきた契約書周り、知財の状況、商標に関するあれこれ、こういった会社の状況を表す情報をいち早く開示するべきなのです。そのためにも創業当初より、必要な契約書周りは妥協することなく当然のことながら揃えておくべきだし、権利化すべきところは権利化していく必要があるとのことでした。

会社の資産を明確にし、将来へのビジョンで魅了する、そして客観的に会社を見てもらうための情報を用意する。

このステップがIPOを目指すにせよ、M&AでのExitを考えるにせよ非常に大事になってくるポイントなのです。


Q&A

当日上がったQ&Aをいくつか。

Q:M&Aにおける弁護士の選び方は?

A:上記の一連の流れを行っていくにあたり、実務上での強いサポーターを構築するべきで、特に弁護士等に関しては「M&Aに携わったことがある」方に積極的に依頼をしていくべき。当然これまでの付き合いがある弁護士との関係性もあることながら、その方にM&Aの経験があまりないようだと厳しい部分がある。その場合、「M&Aに強い弁護士さんを紹介してもらえませんか」とお願いすることは何ら失礼なことではない。あとは相性。相性の合う範囲で、DealBrakeしない程度にハードな弁護士さんを選ぶのがポイント。

Q:最終局面でもつれてしまった事例は?

A:いろいろある。例えば労務的な面で、タイムカード通り残業代を支払っていない場合、その分をバリュエーションに織り込んだ結果うまくいかなくなってしまったり、創業者が(今はいない)株主から過去株を買い取っていたが、その契約書がなく権利関係が曖昧になってしまっており破断、、、等々。

Q売り手側から買い手側へのシナジー提案が難しい

これは情報格差があるわけでしょうがない部分がある。統合後の事業計画は買い手側が作っていくべきもの。だからこそ売り手側は「見える化」に徹してほしい。


本内容はあくまでM&A全般に適用されうるものを抜き出して見ました。当たり前なのですが、「あなたの会社の資産はなんですか?」の質問に対する解こそ最重要なのであり、この部分が外から見たときの「価値」になりうるものであるということを再認識するべきだと改めて感じた次第です。

以上!

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Shuhei Matsubara

Written by

新卒ではキーエンスで中部地区の自動車メーカー攻略に従事し、その後、コロプラネクスト社でVC業務を経験。2018年6月にA1A株式会社を創業いたしました。

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