ファッション業界から見るレガシーな業界のディスラプト

人は「負の解消」のためにお金を支払う。「負を解消」してくれる、すなわちそのサービスがないと不便であるからこそ、それを解決してくれるものに対して対価を支払うのである。一方でその「負」がスマホの普及、通信の高速化、社会環境の変化、人々にとっての「当たり前」の変化によって、「負」とは言えないものになっていたり、もしくはその「負」が解決可能になっている領域が多々生じてきているように感じる。
それは身近なところで大きくビジネスチャンスになっており、D2C( Direct To Consumer)といわれるビジネスモデルが「中抜き」を排して生産者と消費者を直接つなぐことで提供価格を下げたり、定額制の音楽配信サービスが、音楽ショップやCDの生産工程を省くことでより利便性を高めた状態で消費者にコンテンツを提供している。
当たり前に存在していた「負を解消してくれる」存在が、技術の発展により必要なくなり、その革新によって消費者に利便性とコストメリットを提供しているのである。
VCという立場から、既存のサプライチェーンの在り方、商習慣に切り込んでいくスタートアップを応援しているが、ファッション業界のディスラプトされていく様を紐解いていくことで、他領域での似たようなチャンスを探っていきたい。
なお本ブログは『誰がアパレルを殺すのか』をベースにしている。
ファッション業界の課題と仕組み

ファッション業界の課題はシンプルに下記の3点である。
1)ファッションへの出費額の減少
2)ファストファッションの流行による安価な製品の流通
3)流行サイクルの短期化
■ファッション業界の大きな流れ
もともと市場が伸びていた際のアパレル企業の発想は「目に留まれば買ってもらえる。とにかくたくさんの売り場においてもらう。」ことが最優先。そのため、「売れ残ったらすべて引き取るからいったんとにかく仕入れてほしい」という考えのもと、「消化仕入れ」という商慣習が根付く。当然百貨店やスーパーにとってはリスクがないため消化仕入れの制度は悪いことなし。「市場が伸びている」状況下で、「とにかく消費者の目に触れさせる」ために作られた制度は今なおアパレル業界に強く根を張っている。またこの時、消費者にとっての「当たり前」は「百貨店やスーパーに行かないと服が手に入らない」というものであり、市場の伸びが観測されるタイミングではメリットの大きい制度だった。また、川中に位置するアパレル企業はOEM、商社経由で、川上たる縫製業者に大量の商品を製造してもらった。大量生産が最終的にコストメリットにつながり競争力となるからである。この状況がアパレルサプライチェーンの「当たり前」だったのである。
しかし、ファストファッションの台頭、市場環境の変化によってこの「当たり前」が機能しなくなってくる。ファストファッションは「安く」「多種の」衣服を提供するが、これによりファッション業界には大きな流れとして「衣服の価格の低下」と「流行サイクルの短期間化」が生じるのである。
上記の通り、アパレル企業は「大量に仕入れてコストメリットを出す」という前提で商売を行っていた。これは「大量に作ることで在庫を大量に抱える」ことと「流行の変化に追いつきにくい」ことの裏返しでもあり、日本のアパレル企業衰退の流れをつくってしまった元凶でもある。その結果、「価格を下げようとすると在庫が積み上がり」、「流行に追いつこうとすると価格が高くなる」という状況に追いやられてしまったということである。
これが何を意味するか。消費者の環境の変化はスタートアップの視点で見れば大きなチャンスなのである。
一方でファッション業界にもスタートアップが隆盛してくるわけだが、下図のように、まずプロセスを大きく削減していった。当然川上から川下までにかかわる存在が多ければ多いほど生産者とユーザーの距離は遠くなるし、価格には多くの手数料が乗っかることになる。

しかしよくよく考えてみると、「前時代に当たり前になっていた商慣習」が今の時代もそのままの形で残らなければならない理由はない。インターネット、SNS、IOT、物流網の発展、、、多くの要因によって「当たり前」は崩せる可能性をはらんでいるのである。他業界ではあたりまえのように生産者と消費者が直接つながっている。ファッション業界では「生産者と消費者が直接つながれない」という負を解消するために「工場→商社/OEM/メーカー→アパレル企業→店舗→消費者」というサプライチェーンが形成されていたが、そのサプライチェーンが存在する必要性を失っている場合、やはりそこに大きなビジネスチャンスが眠っている。また、直近のアパレル業界を見ると、新しいトレンドが数多く存在する。それは「消費者は新品の既製品をお店で買う」という常識を大きく変えるような存在である。ゾゾタウンを筆頭とするファッションオンラインマーケットプレイスはもちろんのこと、フリマサービスを筆頭とする二次流通市場の隆盛や、ファッションレンタルサービス、ファッションカスタマイズEC、さらには生産者と消費者が直接つながるマッチングサービスまで、当たり前に疑問を呈することで消費者に愛されるサービスが多数出てきているのである。
それは「本当にステークホルダーが抱えている”負”は何か」、また、「消費者が求めるものの本質は何か」を考えた末に出てくる解決策であり、そういった既存のプレイヤーが「当たり前」と考えている隙間にこそチャンスがあるように感じるのである。
疑うべきは、「本当にその価格構造は適正なのか」、「当たり前に感じている”負”は本当に当たり前のものなのか」、という点であり、まだまだそういった領域は他業界にも存在するように感じる。
人間は基本的にやっぱり怠け者。新しいことを始めるよりも、既存の習慣を維持することのほうがやっぱり楽。だからこそ、当初はそういった「当たり前を崩す」サービスは受け入れられにくい部分もある。古い慣習が残っているのにはそれなりの理由もある。一方でそれが本質的に価値あることで、「新しいものを受け入れてでも得たいメリットを享受できる」ものであれば、人は変化を受け入れる。
そのためにも「当たり前」を疑い、「負」を別の手段で解決できる可能性を模索し続けることでディスラプトと商売のチャンスが見えてくるのである。
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