メルカリ、リクルート、エウレカから学ぶ「世界でウケるサービスを作るために必要な前提と組織作り」

Shuhei Matsubara
8 min readNov 5, 2016

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”グローバルで急成長中のマーケットに挑む、日本発ベンチャーの戦略とは”というイベントに参加してきました。

グローバルに挑戦している日本のベンチャーはたくさんあれど、本当に誰もが成功したと言えるモデルはまだまだ少ないのが現状。そんな中で、日本初の企業として、着実に存在感を出している3社の経営陣の本音を聞いてきました。

登壇されていたのは

株式会社リクルートマーケティング・パートナーズ 代表取締役社長山口文洋さん

株式会社メルカリ 取締役 小泉文明さん

株式会社エウレカ 代表取締役CEO 石橋準也さん

という面々。もちろんグローバル展開に関わる大前提的なお話がメインだったわけですが、そもそも「マスを取るために必要なことは?」という視点でも非常に学びの多いパネルディスカッションでした。

大枠として大事にすべき点は下記の三点です。

①展開先を決める際に考慮すべき点は市場特性、規模、ディスラプト対象の有無

②自分たちの考えている「常識」を疑うこと

③現地の視点に立てる組織を作ること

すなわち、まずは「受け入れられる土壌がそもそもあるのか」を前提として考え、その後に、「その土壌で受け入れられる体制をどうやって作っていくかを考える」ことが大事だということ。

これって、当然グローバルに展開していく際にも重要視しなければならない視点だと思いますが、一方で、「マスに受け入れられるサービスを作る」という意味では、事業の作り方、始め方にも通じて来る部分なのではないかなって思います。

①展開先を決める際に考慮すべき点は市場特性、規模、ディスラプト対象の有無

すなわち、前提として「市場があるところを攻める」、「ディスラプト対象を明確にして、置き換えを狙っていく」という考えを持たなければならないということです。

そもそも啓蒙が必要なサービスには時間がかかります。もちろん啓蒙を自社で全て行い切った会社は強い。当然先行者メリットを得られます。しかし、グローバル展開を目指す企業は当然贅沢なリソースも、潤沢な資金も人材も持っていません。だからこそ一番大事にするべきは、いかに効率的に市場を獲得するか。

とした時に、「競合がいない」市場ではダメなんです。なぜなら需要がその時点で無いから。市場があって、ディスラプトする対象がある、そしてディスラプト対象を置き換えられる明確な強みがある。この視点が大事なんだと思います。

リクルート社はスタディサプリを現在6カ国300万人に展開していますが、主な展開先はアジア。なぜか。それは「受験制度」が整っており、大学進学者が多く、かつ、民間教育産業が盛んだから。そして何より市場規模たる人口が非常に多いから。そのロジック故にアメリカへの進出には積極的ではありません。なぜか。受験教育の文化がないし、そもそも州によって教育が全然違うし、各州に対してローカライズが必要だから。そういった合理的な判断に基づいて、アジアへの進出を進めています。

また、メルカリ社は「決済と物流が整っている国」であり、「いい中古品がありそう」な国でないとそもそもサービスが成り立たないと考え、人口の多いアジアではなく、先進国への進出を進めました。優先順位としては、アメリカ⇒イギリス。なぜイギリスか。それはイギリスのEC化率が高いから。ディスラプト対象が明確だから。

そしてエウレカ社は、「デジタルコンテンツに課金する市場が成熟しているか」、「Facebook浸透率が高いかどうか」を判断軸に、台湾で勝負をしています。

「市場があり」、かつ、「自社の強みを最大限に発揮できる」、そんな土壌で勝負をしているのです。

②自分たちの考えている「常識」を疑うこと

この点に関しては、三者の話を聞いていて本当に「はっ」とさせられた点になるのですが、「自分たちの考える常識」は「あくまで自分たちの周囲の関係性の中での常識」でしかないということは肝に銘じておかなければなりません。

シリコンバレーの常識がアメリカの常識ではないし、東京23区の常識が日本の常識でもない、はたまた、IT界隈で働く人たちの常識がいわゆる「大衆」たる日本人の常識でもない。

B2B、B2Cのどちらにおいても、いわゆるターゲットであり「マス」がどういう常識の中で生活しているのかという視点は最重要視しなければなりません。一般消費者向けのサービスなのであれば、いわゆる一般消費者がどんな生活をしているのか、何に購買意欲を感じ、どんなことに関心を持ち、どういうものを好むのか、その視点を絶対に忘れてはいけません。「身近な価値観を持つ人」に好まれる視点よりも、「マス」に好まれる視点の方がよっぽど大事なのです。

③現地の視点に立てる組織を作ること

そして3点目が、ローカライズされた、いや、現地の視点に立ちやすい組織を作ることが大事ということです。これは②とも通ずるところなのかもしれません。

メルカリ社は30%程度のメンバーが「バイリンガル」であるとのこと。ここでいうバイリンガルは、TOEICの点数が高い人のことを指しているわけではありません。語学が喋れることは大前提ですが、「その国で働いたことがある」もしくは「その国で生活したことがある」人間をバイリンガルと定義しています。

「現地の視点に立てる」、「現地の常識を知っている」という人間が「グローバル展開」には絶対に必要という前提に立つと、あくまで必要な人材は「バイリンガル」であると。

メルカリ社がアメリカで大きな成果を出しているのも、もともとシリコンバレー起業経験のある石塚氏が現地で舵取りを行っているからという要因が大きいとのことでした。

当然その前提に立つと、メルカリ社の採用には「バイリンガル採用目標」がある。面白いですよね。会社として必要な人材が明確で、そこにコミットするための目標が採用担当にしっかりとおりている。組織として目指す方向性が非常に明確であると。

また、同時にグローバルで勝つための組織作りに大事なこととして三者共通しておっしゃっていたのは「評価基準を明確にすること」でした。

日本流の「定性的なしがらみの中での評価」ではなく、「明確に測れるもの」で評価を決めることが大事であると。

それもすなわち「現地の視点に立つ」ことが大事だから。とはいえ、日本流がすべて悪というわけではありません。むしろ、現地視点に立って、その上で最適化された手段を用いるにあたって、日本流がベストな選択肢であればそれを十分に使うべきなんだと思います。現にリクルート社のお祭り文化や評価基準はアジアでもしっかり「はまって」いるとのことでした。

現地の視点、すなわちターゲットとする対象のマスの視点に立つことが、最重要なのであり、そのためにできることをするべきだと。

だからこそ大事なのが

①展開先を決める際に考慮すべき点は市場特性、規模、ディスラプト対象の有無

②自分たちの考えている「常識」を疑うこと

③現地の視点に立てる組織を作ること

の3点と言えるのです。

受け入れられる土壌がそもそもあるのか」を前提として考え、その後に、「その土壌で受け入れられる体制をどうやって作っていくか」を考える

この視点が大事と言えるのだと思います。

グローバル展開を行うにせよ、新事業の立ち上げを行うにせよ、自社のサービスを振り返るにせよ、「そもそも自分たちのサービスが受け入れられるのか」、はたまた、「そのサービスを提供できる事業体になっているのか」は改めて考えてみなければならないかもしれません。

そんな気づきを得られたイベントでした。

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Shuhei Matsubara

新卒ではキーエンスで中部地区の自動車メーカー攻略に従事し、その後、コロプラネクスト社でVC業務を経験。2018年6月にA1A株式会社を創業いたしました。