【交渉術③】相手の本音を引き出すために

Shuhei Matsubara
9 min readJun 3, 2016

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交渉、もしくは営業においては、相手の課題をしっかりと理解し解決することが必要です。

しかし表面的に相手が口にするニーズはあくまで顕在化しているニーズであり、もちろんその顕在化しているニーズを解決することは絶対的に必要なわけですが、顕在化しているニーズを解決するだけでは相手の満足度は並レベルです。

「顕在化ニーズの解決+α」こそ付加価値であり、自分という人間の存在価値になるかと思います。

顕在化しているニーズを解決するだけの「解決営業」であれば誰でもできるし、別に一人の特定の営業マンに頼む必要はありません。

相手の気づいていない「潜在ニーズ」を満たしてこそ付加価値を提供できるわけで、「付加価値」のない提案は、仮に競合が出現すると「金額勝負」になってしまいます。

だからこそ、潜在ニーズを相手から聞き出す必要がある。

潜在ニーズは往々にして「動機」にある場合が多いです。

表面的に相手が口にしている「課題」は本質的な「動機」や「問題」への一つの解決策であり、改めて本質的な「動機」を見直すことで相手の気づいていないニーズにつながる可能性があります。

例えばWEBサイトのリニューアルを依頼された場合

A「うちのホテルのHPのリニューアルを考えているので、提案して欲しい」

B「かしこまりました、どのようなサイトにしましょうか?」

A「うーん今っぽいのがいいな。とにかく提案して欲しい!まずは見せて欲しい」

B「かしこまりました、一旦持ち帰らせていただきご提案させていただきますね」

よくあるパターンだと思います。

これこそ解決営業よくある事例です。このあと営業さんは幾つかのデザイン案を持って再訪問することになるのでしょう。この営業に付加価値はありません。強いて言うなら、提案があまりにも素晴らしい、もしくは相手が何となくイメージしていたものに寄せた提案になっていればお客さんは喜んでくれるかもしれません。

一方動機に着目した提案が以下になります。

A「うちのホテルのHPのリニューアルを考えているので、提案して欲しい」

B「ご相談いただきありがとうございます。リニューアルですか、今回はどうされました?」

A「他のホテルと比較して、古臭いなぁと思って」

B「そうですか、Webに力を入れていかれるんですね!なにかきっかけがありましたか?」

A「いや、先週の会議で宿泊客の増加策を迫られてね、、、」

B「そこで出たのがWebサイトの改善案というわけですか。ところで数ある策の中でなぜWebサイトなのでしょうか?料金プランの改変等いろいろありそうなものですが。」

A「宿泊客の年齢層がどんどん上がってしまっていて、、、若い人へのアプローチができていないんだよね。「ここが課題」と社内で持ちきりなんです。」

B「ということは、若年層だけが課題ということでしょうか?他の層は堅調ですか?」

A「一応堅調かと思います。あ、あとは外人の旅行客もいずれは見据えていきたいですよね」

B「ということは、若者の取り込みも見据えつつ、外国人旅行客の取り込みも狙っていきたということですよね?」

A「そうですね」

B「であれば、洗練されたWebサイトは確かに必要ですね!ところで、PCのサイトのリニューアルで若年層はしっかり十分に取り込めますかね?」

A「、、、やっぱり若者はスマホ見るよね」

B「ですよね。仮にスマホのご提案を合わせてさせて頂けるとしたらいかがですか?」

A「金額次第ですけど嬉しいですよね」

B「弊社では、PCだけでなくスマホUI改善でも大きく実績を出してきております。スマホも組み合わせた提案であればより大きな効果が出そうですので、さらにメリットの出るご提案ができるのではないかと思います。」

A「嬉しいです、お願いいたします。」

A「ありがとうございます。であれば、こういったご提案をさせていただきたいです。一つ目が、”若者”をターゲットにしたWebサイトのご提案。二つ目がPCのご提案にスマホ改善を加えた提案、そして三つ目がPC、スマホに加えて、将来を見据えた英語版ページの作成を加えたご提案です。いかがでしょうか」

B「ありがたいです。ぜひお願いします。」

上記が「動機」に焦点を当てた提案につなげる聞き出しと、具体的な提案につなげるためのプロセスです。

「なぜ」を繰り返すことの重要性に関しては、いろいろなところで語られています。「なぜ」の先に本質があるからです。

上記の例でも「なぜ」の先に、「動機」が見られます。

しかし一方で、人間は「なぜ」が3〜5回続くと苛立ちます。

だからこそ、会話の中で自然に「なぜ」を問います。今回の上記のパターンでは「なぜ」の結果、動機として「客層を広げて、宿泊客増加を狙いたい」という本質がありました。かつ、客層としては若年層と外国人旅行客がターゲットとなります。

だからこそ、単なる「今っぽい」HPの提案をするのではなく、「若年層を流入させるための」提案ができるのです。

もちろん深堀はもっと続けたほうがいいです。

「なぜ客層を広げたいのか」
「Web流入以外に若年層を取り込む手段はないのか」

等々、聞き出していけばいくほど本質に迫ることができるし、「本質」「動機」に基づく提案ができるようになります。

しかし、この「なんで」は実は考えているよりも聞くのが難しい。

なぜか、解決への糸口が見えた瞬間に提案に飛びついてしまいがちだからです。

ここで一旦我慢し、自分で相手の考えの筋道を理解できるまで情報取りを行なう。これこそが本質への近道なのです。

おそらく本質を経て出した提案をすれば

①単価アップ
②競合排除
③お客さんの満足度向上

の三点が見込めるでしょう。

「今っぽくて」「金額の安い」提案よりも、「相手が本当に成し遂げたいことを実現する」「潜在ニーズに基づいた」提案のほうが好まれます。

もちろん、金額を競合よりも安く提示する必要がある場合もあります。

しかし、それも本質にたどり着き、安くすることこそが相手の満足度を上げる最善の策と考えられる場合のみです。

「安くして欲しい」⇒「なんで」に対して、さも合理的な理由があれば、それは対応するべき判断になるのです。

結局のところ、相手のニーズをくみ取り、本質に迫った提案をすることが最も重要なのです。

さて、上記の会話例には実は二つほど大きなコツを含ませておりました。

①相手に「言わせる」テクニック

②松竹梅提案

がその二つです。

”①相手に言わせる”に関しては、

B「であれば、洗練されたWebサイトは確かに必要ですね!ところで、PCのサイトのリニューアルで若年層はしっかり十分に取り込めますかね?」

A「、、、やっぱり若者はスマホ見るよね」

B「ですよね。仮にスマホのご提案を合わせてさせて頂けるとしたらいかがですか?」

こちらの考える「付加価値」を相手の口から発言させています。

基本的に人間は、「自分が発した言葉には嘘がつけない」ものです。

だからこそ、こちらが提案したい内容を相手に言わせる。

自分で提案してはダメなのです。なぜか。こちらから提案した時点で、相手からすれば「他人事」だから。
自分の言葉で、もしくは自分自身で「気づく」からこそ、その付加価値が「自分事」になり、自分が成し遂げねばならないことと思えるのです。

だからこそ、提案したいことは「相手に言わせる」。相手に言わせてこその交渉力であり、営業力なのです。

おそらく上記のように発言させれば、相手は「スマホの改善」なしにプランを決めることがしにくくなるかと思います。

②松竹梅提案

A「ありがとうございます。であれば、こういったご提案をさせていただきたいです。一つ目が、”若者”をターゲットにしたWebサイトのご提案。二つ目がPCのご提案にスマホ改善を加えた提案、そして三つ目がPC、スマホに加えて、将来を見据えた英語版ページの作成を加えたご提案です。いかがでしょうか」

提案として、三つの選択肢を挙げています。

一つ目が「値段も安いけど、提案も質素なもの」、二つ目が「値段が真ん中、提案も真ん中」、そして三つ目が「値段も高いが、提案も豪華」の三種類です。

人間とは不思議なもので、真ん中を選んでしまうのです。松竹梅でいうところの竹。すなわち、提案の際には三つのうちの真ん中に自分の本当に提案したい内容を入れ込むのです。

コツ①で「スマホの改善が必要」と思い込んでしまった相手は、”竹”の選択肢を選ばざるをえません。

選んでもらいたいものを、しっかりと選択してもらう。これが松竹梅提案のメリットですが、実はもう一つ大きなメリットがあります。

それが、「仮に”竹”が諸所の理由によりダメになったとしても、”松”、”梅”を選んでもらうことができる」という点です。

”竹”の一本足打法提案だと、仮にこの選択肢を選べなくなった時に、相手は他社を模索するしかなくなります。しかし、”竹”よりもいい選択肢と、悪い選択肢を残しておくことで、逃げ道を作っておくことができるのです。これが、松竹梅提案のメリット②です。

話が脱線しつつありますが、相手の本質をもとに「動機」に基づく提案をすることが大事。もっというと、動機を「相手に気づかせる」ことこそが大事なのです。「なんで」を繰り返し、相手に気づかせる、いや、相手を誘導する術こそ、交渉におけるポイントになるのです。

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Shuhei Matsubara

新卒ではキーエンスで中部地区の自動車メーカー攻略に従事し、その後、コロプラネクスト社でVC業務を経験。2018年6月にA1A株式会社を創業いたしました。