調達額と資金使途

Shuhei Matsubara
4 min readJul 3, 2017

一般的に、大きな額を調達することは注目を浴びることでもあるし、素晴らしいことだと思います。自分自身資金調達の経験がないからこそ、スタートアップが「未来への期待」と「これまでの実績」をベースに何千万円も何億円も調達している姿はかっこよく映りますし、ただただすごいと感じるのみ。また、調達後のチームは勢いとやる気に満ち溢れ、一つの区切りのタイミングにもなる。投資家側の立場で「スタートアップの調達」に携わらせていただくと、本当にいい瞬間に立ち会わせていただいたと、いつも感激する。

平均して月に25~30社程度のスタートアップにお話を聞いていると、資本政策として、「シードラウンドのお金はビジネスアイディアの仮説検証のためにつかうもの」、「仮説検証後の『ここに〇〇円使えば、〇〇円の利益やKPIの伸びが見込まれる』という確信をもって望むのがシリーズA」、というのが大まかなイメージのように感じる。500 Startups Japanの澤山さんの調査を見ても、大方ずれはないでしょう。

僕がお会いするのは

①シード期の起業家(アイディアベース)
②シード期の起業家(プロダクトあり)
③プレシリーズAを考える起業家(仮説検証途中)
④シリーズAラウンドの調達を考える起業家(仮説検証済み)
⑤プレシリーズBを考える起業家(シリーズA後の伸びに時間がかかっている)

というフェーズの起業家さんがメイン。そこで感じたことが、

「資金使途が明確な会社は伸びている」

ということ。

言い換えれば、「ここにお金を突っ込むと会社が伸びるんだ」という仮説が深く検証されており、「現状からこれだけ伸ばすためにはこれだけのお金が必要だ」と確信を持っていらっしゃるスタートアップはやはり調達後のスピード感が早い。(し、調達もスムーズに行えている。)

一方で、調達後の高揚感とともに、一旦余裕を持ってしまうスタートアップはやはり事業計画とずれが生じるケースが散見される。
客観的に見ているからこそ感じるのは、「お金が入ってきたからこそ得られる余裕」が、何かスタートアップを停滞させてしまうのではないかという仮説である。それこそ調達時期までプロダクトづくりや仮説検証、ユーザー集めに奔走してきた段階では、いわば「リソースを集中投下できている状態」だったのが、調達を終えた段階で一気に視野が広がってしまうのだ。「視線が上がる」のではなく「視野が広がる」という点がミソである。視野が広がった結果、リソースが分散され、それまでに立ててきた仮説を今一度見直すような期間に入る。そうなると、事業計画や資金使途が少しずつずれてくる。そんな姿を見かけることもしばしばである。

だからこそ、調達は、「ここに〇〇円投資すれば〇〇のリターンが出る」という強い仮説を持った状態で受けるべきだし、その粒度が荒い段階で「運転資金」という名の調達を行うべきではないように感じるのです。

あくまでこれは理想論かもしれません。当然生き抜くための調達も必要でしょう。その通りだと思います。その場合も、「あと何か月、〇〇に〇〇円投資すれば〇〇になる」という仮説を持っておくことが重要だと思います。

「調達額」ありきの調達ではなく、資金使途ありきの調達。

何を得るために大事な株式の〇〇%を放出して、成長のための資金を〇〇円調達するのか、ここがはっきりしているスタートアップこそ、やることが明確かつリソースを集中させることができるので、「その仮説があっていれば」成長スペードが上がります。これがスタートアップ経営者から毎月たくさんのお話を聞く中で見えてきた法則です。

裏返せば、シード期の調達を終えたスタートアップは「シリーズAラウンドの調達までに」仮説検証をしっかりと行うべきだし、シリーズAラウンドを終えたスタートアップは、定めたリソース配分先に徹底して注力していくべきでしょう。

最近そんな話をよくスタートアップとするので、一旦文章にまとめてみました。

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Shuhei Matsubara

新卒ではキーエンスで中部地区の自動車メーカー攻略に従事し、その後、コロプラネクスト社でVC業務を経験。2018年6月にA1A株式会社を創業いたしました。