アメリカで多額の調達をしているコマース系スタートアップ18社を調べてみた

Shuhei Matsubara
9 min readNov 16, 2017

--

PitchBookの『The 18 most valuable VC-backed ecommerce startups in the US』という記事を参考に、アメリカで多額の調達をしているコマース系スタートアップ18社を調べてみました。

初めての試みとして、スライドにまとめてみたので、是非ご覧になってください。

調べてみて見えてきたこと

多額の調達をおこなっているアメリカのコマース系スタートアップを見ていくと、大きく分けて3つの特徴が見えてきました。

①ECは不安という懸念を解消
②強烈なブランディング
③パーソナライズ

この3点が「当たり前のように備わっている」会社が多くのユーザーを惹きつけているように思います。オフラインでの購買とオンラインでの購買の違いは「実物を手にとって確認できない」、「無機質な体験」という点かと思いますが、あの手この手を使って、「オフラインでの購買以上の感動を」「より便利に」と付加価値をつけてユーザーに提供しているサービスがやはり強い。

信頼できる場所で、そこでしか味わえない購買体験を。その体験を提供するための「ユーザー認知の獲得」は絶対条件。

という点が大きなテーマになってくるのではないかと思います。

①ECは不安という懸念を解消

ECで買い物をするのは不安です。特に最初の障壁がやはり高い。そうした中で、私が挙げた18社は「当たり前のように」無料トライを提供している。試着が当たり前なのです。また、これも有名な話ではありますが、WARBY PARKERはその無料トライまでもマーケティングに落とし込む。試着した姿の画像にハッシュタグをつけてSNS投稿することで、スタイリストからのアドバイスとコメントを貰うことができるという仕組みを提供しています。
中古自動車マーケットプレイスのVroomも「試乗」を無料で提供します。当然送料は無料で、車を自宅まで運んでくれる上に、7日間の試乗が可能。これにより、信頼性と安心感を担保します。
高級ドレスをレンタルするRent The Runway社は、ファッション×オンラインで必ず課題になる「サイズ感」を、実際に着用した人たちのレビューと、画像、その人達の体型の詳細を掲載していくことで、安心感を担保していく仕組み。

上記のような戦略で不安を解消しつつ、既存の体験以上の体験を提供しているのです。これが秘訣の一つ目。

②強烈なブランディング

最近日本でも流行の兆しが見えてきたD2C(Direct To Consumer)モデルを含む、コマース系スタートアップの課題は「いかに顧客の認知を得るか」という点。卸等の中間業者を廃し、また、「既に見込み客が多くいる」小売店やデパートに出品しないため、顧客の認知を得るまでのハードルが高い。スタートアップが多額の広告をばらまく戦略をとれるかというと、それも難しい。だからこそ、自分たちでブランディングをしていかなければならないし、認知を獲得していかなければならないのです。一方で、インターネットの力に上手くレバレッジを掛けた時に生まれる拡散力はオンラインコマースサービスが仕掛けるべき大きな戦略でもあります。

上記18社は等しく、自分たちの伝えたいメッセージを強く持っている。顧客の心に響くストーリーと、それを伝染させる手段をもっているというのが見解です。

アメリカで一斉を風靡するウールスニーカーのAllBirdsは「世界一は着心地のいい靴」として人気を博します。

The honest companyは女優のJESSICA ALBAが創業者。自身の子育ての経験から、「子供にとって安心といえるベービー用品がない!」というメッセージングで事業を展開します。Ipsy創業者のMichelle Phanは895万人のチャンネル登録者を抱えるYouTuber。韓国のMEMEBOXはコスメ製品一つ一つの使い方を、インフルエンサーが動画で解説します。

「ユーザー認知の獲得」が大きな鍵となる中で、強烈なブランディングと、それを伝える手段を持つ会社が、やはり大きく成長している。これもコマーススタートアップが考えるべきポイントでしょう。

③パーソナライズ

そして3点目が今や欠かせないものとなってきた「パーソナライズ」というポイント。いかに「あなただけに、あなたにピッタリあった商品を提供」するかというのは、今やコマース周りだけでなく、等しく全てのサービス領域に求められるようになってきました。

StitchFixに関しては、先日の上場報道もあり、多くのブログ、記事が上がってきていたのが記憶にあたらしいところです。

Recruit Strategic Partnersの蓮沼貴裕さんが書かれた上記のブログにも、StitchFixのパーソナライズへのこだわりが多く記載されています。

上記18社におけるもう一つの面白いポイントが、「パーソナライズのために、事前にユーザーに多くの質問を投げかけている」という共通点を持つことです。やってみると結構面倒くさい。だが一方で、こうした「面倒くさい」点が許容されているということは、逆説的に、「ユーザーは面倒くさい質問にも答えるから、その分パーソナライズされた良い提案をしてほしい」と感じているということでしょう。良い提案をしてくれるのであれば、多少の面倒臭さは飲み込むよ、ということ。

またMEMEBOXは別の方法で顧客の情報を集め、それを提案及び商品開発に活かします。MEMEBOXは元々多くのトラクションを集めるコスメECサイト。ユーザーが日々自分たちのプラットフォーム上で購買活動をする中で、たくさんの情報が蓄積されます。その情報を活かして、「次の流行り」を先取りし、自社の商品開発につなげていく。その中で面白いポイントは、「商品開発のスピードを大幅に早くしている」という点。通常コスメメーカーが商品開発にかける期間は12〜18ヶ月程度。一方でMEMEBOXは2〜6ヶ月程度で商品を世に出します。早いのです。トレンドをいち早く掴んで、他のメーカーに先駆けて商品を提供する。「プロダクトアウトからマーケットインへ」をファッション領域で体現しつつ、そのサイクルをどんどん早めていっているのです。私個人の感覚として、「ユーザーのニーズにマッチしたデータドリブンの開発」は当たり前になってきており、その中で重要になってくるのは、「どこよりも早く開発できる会社」なのではないかと感じております。

また、AdoreMeは女性向けランジェリーの会社。この会社も強く「パーソナライズ」を打ち出します。ECページ上には「My Showroom」という、「あなたの好みに合わせたあなた専用のページ」が、他の一般ページに先駆けて表示されます。これもユーザー目線で、嬉しい施策の一つ。そしてもう一つが、「45分間のコンサルティング」。ユーザーが事前予約をして店舗に訪問すると、専属のスタイリストが45分間かけて、その人にあった下着を提供するための計測とヒアリングを行います。もちろん事前予約の意味は、他の人の目を気にしなくてもいい環境を提供するため。一対一での相談を行うことができる。そして後日、その人にあったランジェリーが送られてくるという仕組み。店舗をパーソナライズのためだけに活用するという仕組みも非常に素敵。ユーザー目線で新しい体験です。

信頼できる場所で、そこでしか味わえない購買体験を。その体験を提供するための「ユーザー認知の獲得」は絶対条件。

が改めて大きなポイントと言えるでしょう。
ここに紹介できていないだけで、スライド上には各社の興味深いポイントをそれぞれ記載しておきました。やはり大きくユーザーを惹きつけているサービスは、オフラインに負けない強みをしっかりと保持しているのが印象的です。

昨日Poshmarkが$87Mを調達したというリリースが出ていました。Alexaと連携し、「好みを声で伝える」機能を提供していくということ。

興味深いリリースがどんどん出てきます。コマース系のサービスにも引き続き注目していきたいところです。

以上!!

*************************************
起業、資金調達をお考えの方は、下記フォームをご入力ください。
https://goo.gl/forms/cGVpzNUjoaXyoiHa2

Twitterアカウント: https://twitter.com/matsushi0706
フォローお待ちしております。
**************************************

--

--

Shuhei Matsubara

新卒ではキーエンスで中部地区の自動車メーカー攻略に従事し、その後、コロプラネクスト社でVC業務を経験。2018年6月にA1A株式会社を創業いたしました。