スタートアップは営業などするべきではないという仮説

Shuhei Matsubara
6 min readMay 31, 2017

最近BtoBスタートアップから、よく営業面に関するご相談もいただきますし、営業組織を作っていくようなお話もしばしば耳にします。
が、私個人としては、スタートアップが重い固定費となりうる営業組織を持つことには反対です。

「でもリクルートは強い営業組織を持っているからこそ今の地位を築けている」

その通りだと思います。では、強い営業組織を持つ会社に共通する特徴は何が挙げられるでしょう。答えは単純で、「たくさんの営業マンを抱えている」というただそれだけだと思います。

顧客の開拓における方程式は

「接触数×成約率」

という非常に単純なものです。

とした時に、顧客開拓において重視すべき変数は接触数と成約率のどちらか。答えは明確で、接触数を重視するべきです。

私が前職の時に気づいた皮肉にも近い感覚に、
「営業マンによって大して成約率に差などでない」
というものがあります。確かに凄腕の営業マンは普通の営業マンより成約率が高いのでしょう。しかしその率はおそらく5%程度の違いに集約されてしまうように感じます。結局は数です。

優秀な営業マン(成約率50%)を5人囲うAという組織と、普通の営業マン(成約率30%)を50人抱えるBという組織があって、同様に1人あたり20件のアポイントに行ったとしたら

①組織A:5人×20件×0.5=50件
②組織B:50人×20件×0.3=300件

大きな違いが出てしまいます。仮に組織Bが怠惰な組織で、営業マン一人当たり10件しかアポイントに行かなかったとしても、

③組織B:50人×10件×0.3=150件

とこれまた大きな違いが出てしまいます。
もちろん組織Aは優秀な営業マンが揃っているので、単価高く案件を成約させることができるかもしれません。しかし、①と③を比較するとして、3倍以上の成約単価を取れるかといえば、なかなか難しいように感じます。

すなわち営業はある一定ラインまで
「質より量」
なのです。

むしろ、適切なターゲティングを行い、量を維持したまま効率をあげることこそが「質より量」のフェーズを超えた先に目指すべき姿でしょう。

とした時に、営業もWebマーケティングの世界と似ていて、「量」を確保しないことには成約数は増え得ないのです。

そのため、営業も顧客接触チャネルの一つでしかないわけで、そこに投資対効果を考えずに固定費たる営業マンを投入することが、正しいとは思えない部分があります。

では、どう「量」を確保するか。

上記のように、大事なのは「接触量」です。一旦は「質」を外において考えるべきなのです。とした時に考えるべきは、いかに効率的に「量」を確保するか。そこで、

別の商品を売っている営業マンに自分たちの商材も売ってもらう

という選択肢を考えてみます。

あまり馴染みがないであろう営業マンの心理について一旦考えてみます。基本はWebの世界と同じです。お客さんとは接触頻度を高くしていたい。Webの世界で「継続率」を見るように、営業マンも「継続接触」を大事に考えます。なぜか。接点の頻度こそが、顧客との関係性構築において非常に重要だからです。

営業は恋愛に似ている、なんてこともよく言われる話で、恋愛において好きな異性になんとか頻繁に連絡を取ろうとする感覚とも非常に似ています。だから営業マンは”売るものがなくても”(恋愛の場合は”用がなくても”)接触頻度を保とうとする。

しかし恋愛に例えてみればわかるように、用もない接触は、受ける側からすると面倒臭いことこの上ない。だからこそ恋愛ではなんとかネタ作りをしようとするし、営業マンもそれは同じです。すなわち、「接触を取るための理由が欲しい」というのが営業マンの心理なのです。

この心理をうまいこと活用する。自分の商材のターゲット顧客層に頻繁に接触している営業マンに、「接触するための理由づけ」として、代理店ちっくに営業してもらえばいいのです。
もちろん他社の人間は、その商材のプロではありません。成約まで持って行ってくれるかどうかでいえば、きわどい部分もある。しかしその時は、自社の人間が「確度の高いアポイント」として営業に行けばいい。

すなわち、接触数をあげる手段として、ターゲット顧客に出入りする営業マンを囲う企業とWin-Winの関係を築くことが「量」を確保する一つの手段になり売るのでは?と思うのです。

(恥ずかしながら、営業マン時代の私は重要なキーマンに接触するために、面白い漫画を紹介したり、面白いアプリを紹介したり、、、会ってもらう口実を日々探しておりました。)

その関係性を築くような「営業」こそ、スタートアップの営業マンがなすべき「効率をあげる」営業と言えるでしょう。

「量」を確保する大企業と勝負して、勝てるわけがないと思うのです。

以上、スタートアップは営業などするべきではない、という一見逆説的な意見を、肌感覚を大事にして書いてみました。
売る商材がなさそうな業界、製品レベルに差がなく人間関係営業が重要な業界がターゲットになりうるでしょう。ルート営業をやっていそうな会社こそ、「紹介するもの」にありつきたいと考えている、スタートアップにとって”美味しい会社”たりうる存在かと思います。

※なお追記ですが、「売る側」も、顧客ニーズがあるのかどうかもわからない商材は売りたくないですし、スタートアップの商材を紹介することは、売り手にとってリスクにもなり得ます。当然そこに壁はあるので、最優先は「プロダクトマーケッフィト」と「安定供給可能な体制」の確立であることを忘れてはいけません。

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Shuhei Matsubara

新卒ではキーエンスで中部地区の自動車メーカー攻略に従事し、その後、コロプラネクスト社でVC業務を経験。2018年6月にA1A株式会社を創業いたしました。