シリーズAに到達するスタートアップの特徴

Shuhei Matsubara
7 min readSep 26, 2017

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コロプラネクストではシード期及びシリーズA期の会社に出資させていただくことが多く、かつ、特にシード期の会社の場合、その会社にとって初めての投資家になるケースが多い。そのため、いかに次のラウンドに進んでもらうか、いかにいい形でスタートを切ってもらうか、が我々のテーマ。

その中で、出資させていただいているスタートアップがここ最近、次々と次ラウンドでの調達を決めてきていらっしゃるため、このタイミングで、「シリーズAに順調に進むスタートアップの特徴」を列挙してみたいと思います。

そもそも調達ラウンドの区分けとしては下記の図のような「なんとなくの認識」があるように思います。

マーケットが魅力的、チームが魅力的という大前提のもとで、投資家は、「このお金は何に対するベット(投資)なのか」を考える。

シード期であれば、スタートアップが描く仮説とその解決策への期待値に投資したいと思えるかどうか、を検討するし、シリーズAラウンドでは、「どうやら正しそうだ」と見えてきた仮説と解決策がより世界に普及する可能性に投資をする。シリーズB以降はその事業、その会社のスケール性への期待値が投資判断のもととなる。

逆説的に言えば、シード調達のタイミングでは確固たる仮説を、シリーズA調達のタイミングでは仮説へのある程度の実証を、シリーズB移行のタイミングではスケールへの根拠を持っておく必要があると言えるし、そこに至らない段階での調達活動は思った通りに行かないケースが多い。次のラウンドで求められるであろう内容を、直近調達する資金にて達成できるかどうか、この辺が調達額を決める一つの指針にもなるし、かつ、計画の引き方にもつながってくる。

その中で、特にシリーズAに進むために必要なポイント、すなわち仮設に対して数字がついてくるような状態を作れるスタートアップにはやはり特徴があるように感じる。

①顧客に対して本質的に差し込む価値(及びその仮説)が何か
②その価値を顧客が享受する上で、その会社の介在価値が何か

上記の2点がはっきりしているかどうか、そこに大きな違いがあるように感じるのである。①に関して、「ターゲットとなる人々は”本質的に”◯◯を求めている。」という前提に対し、「であれば、◯◯といった価値を差し込むことで、よりメリットを感じてもらえる」という仮説がたっていることが重要だし、②に関しては、「その刺しこむ価値を、自社が提供する意味がある」という介在価値についての仮説及び設計があることが重要であるのだ。

この2点を明確にしつつ、仮説を実証していく必要があるのだが、この実証フェーズにおいても、いくつか共通点が抽出できる。

①柔軟かつ早い
②組織の揉め事が最低限

この2点はある種共通する部分でもあるのだが、言い換えれば組織がシンプルであるということもできる。

①に関していえば、やはり圧倒的に仮説検証を回すサイクルが早い。各所でよく言われていることではあるが、これは本当に感じる部分である。1周間前に立てた仮説に対して、ある程度の検証が終わり次の仮説に入っているスタートアップと、そうでない会社、そこにはやはり違いが出てくるし、その積み重ねの差は大きい。柔軟であるということも大事で、一つの仮説及び信念に縛られすぎないということも重要であるように感じる。早く伸びているスタートアップは(時に危うさを感じるほどに)驚くほどに身軽である。

そして②に関して。身軽に「早く」動くためには、できるだけ意思疎通がシンプルな方がいい。シリーズAに行くまでのフェーズで図体がでかすぎる組織はやはりスピード感にもたつきが出る。語弊があるかもしれないが、やはりシード期においては、無駄なものを削ぎ落とした姿で仮説検証を回す必要があるし、進むべき道を、シンプルな形で意思決定できる組織であるべきだ。仮説を検証し、その正しさを数字により証明できる状態に持っていくというのが最大の目標であると定義する場合、組織に悩む時間はやはりもったいない。

①、②は共通する部分も大きい。身軽かつ柔軟、そして早さを持つ、ここにも0→1フェーズのポイントがあるように思うのである。

まとめるならば、

・提供する価値の本質について仮説が明確
・価値を提供するにあたり、介在価値が明確
・とにかく仮説を検証するペースが早い
・シリーズAフェーズに到達するために必要最低限の組織サイズ

あたりがポイントのように思えるのである。
そしてとにかく提供する価値及びプロダクトを顧客に見せているという点もここに加えられるかもしれない。プロダクトを見せて、使ってもらって、改善点をあぶり出す。とにかくコメントをもらって、改善していく。その仮説検証も、コアなターゲットとなる人に的を絞って行っていく。コアなターゲット以外の意見は時にその会社を大きく(無駄に)引っ張りうるし、ターゲットから外れる人たちからは再現性を得にくい。

(これは前職での経験でもあるが、ターゲットから外れる人たちが「たまたま」使ってくれるケースに舞い上がると、振り回される。そこに合理的な再現性はないし、とにかく効率が悪い。一括管理及びフォーマットが適用できない分、維持コストも高くつく。顧客層を広げるのは、ターゲットを取りきってからで十分。)

この繰り返しで魅力的な仮説を濃く検証していくことが立ち上げ期における重要なポイントであるし、得てして、早い成長を遂げているスタートアップに共通しているポイントなのである。

事業のスケール、会社のスケールを追うフェーズでは、重要なコンセプトが変わってくる可能性もある。また、「調達をするために」事業を伸ばしていくのもむしろ本質からずれているようにも感じる。しかし一方で、資金の絶え間ない投入とスピード感が必要な事業の場合、次の調達ラウンドに進むことが一つの重要な通過点になる可能性もある。

次のシードのコンセプト段階から次のフェーズに進むにあたって、近くで見てきた出資先から抽出できるポイントを列挙してみたのが今回の試みである。今回は定性的なポイントを抜き出してみたが、定量評価の試みも今後はしていきたいところでございます。

以上!

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Shuhei Matsubara

新卒ではキーエンスで中部地区の自動車メーカー攻略に従事し、その後、コロプラネクスト社でVC業務を経験。2018年6月にA1A株式会社を創業いたしました。