Tour de Tohoku 2016

Shuichi Shibukawa
24 min readSep 26, 2016

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1.これまでのTdTと今年の目標

今年で4年目となったツール・ド・東北(TdT)ですが、4年連続で参戦してきました。

■1年目(2013/10):南三陸まで160km

■2年目(2014/9):気仙沼フォンド登場、216kmにヘロヘロになる

■3年目(2015/9):気仙沼フォンド2回目、大幅に記録アップ

という次第で、毎年完走しているのですが、1年目=ロードバイク始めて半年後にいきなり160km(結婚フラグを立てて臨んだ手前、完走がマストでしたが、Garminもなくウェアも適当だったため、相当きつかった)/2年目=ウェアやGarminなど装備は充実し,天候にも恵まれ最高の216km やりきった感あった /3年目=ホイールを大幅に軽量化(-600g)し、登坂は楽になったが前半の飛ばしすぎ&コンディション調整の失敗でタイムが伸び悩み、最後の北上川沿いでは強風と雨に苦しんだ厳しい211km と、毎年いろいろな課題がありました。今年はコースも昨年同様で慣れていますし、今年から加入したRCC(Rapha Cycling Club: http://www.rapha.cc/jp/ja/rcc-application)のライドにたくさん参加して、苦手な登坂もトレーニングを重ねてきたので、心に余裕を持ちながら参加しようと決めていました。(妻も100kmに出ますし…)

2.当日の装備(ウェア)など

今年のTdTは雨の予報が出ていて、気温も20度前後。もし曇りだったとしても気温は上がらず、走行中は風もあるため体感気温はマイナス7〜8度であろう、かつ最善でもパラパラ雨は確実と考えたため、防寒・雨対策を念頭に準備を進めました。今回重視したのはとにかく「体幹を冷やさないこと」でした。一般的に体温は頭・肩・指先・足先から抜けていくと言われていますが、悪天候の中211kmを走る今回のライドでは、体幹を暖めることを最優先にウェアを選択しました。体幹が冷えてしまうと、内臓器官も同様に冷えていくので(特に胃腸)エネルギー変換効率が落ちていきます。ただでさえ211kmでは、後半は固形物の消化が厳しくなっていく(第8エイド辺りから)ので、パワージェル等に頼ることになるのですが、体幹が冷えてエネルギー変換効率が落ちると、補給食をとってもエネルギーにならず、身体が温まらず筋肉の働きも落ちるため、スピードも出なくなり、末端の筋肉組織も温まらないという悪循環に陥ってしまいます。いわゆるハンガーノックですが、雨天長距離では、これに加えて低体温症に近い症状が出ることもあります。

それ故、体幹まわりについては「濡らさない」「冷やさない」をテーマに保温性を最優先してMerino系のウェアを選択しました。なおわたくしRapha教徒のため、Raphaばかりでステマですみません…(Raphaのウェア、品質はとても良いです。クソ高いですが…)

ということで、身体から近いところからMerino Base Layer,Merino Socks, Race Jersey, RCC Pro team Bib Shorts, RCC Giletという組み合わせで、手袋はsugoiのロングフィンガー、頭はキャップで保温&ひさしで雨の顔への侵入を防ぐ作戦に。気仙沼からの後半でMerino Arm Warmer を投入し、Helium Jacketは結局最後までバックポケットから出さずに終わりました。

↑だいたいこんな出で立ちでした。

ウェア①ベースレイヤー:メッシュ地のRCC Pro Team Base Layer(半袖)と、Merino Base Layer(半袖)を1枚ずつ持参。Pro Teamは晴れた時用で、今回は保温性を重視してMerino Base Layerを選択。

Merino素材のベースレイヤーは水分の発散が良いので、体幹部分はドライなままでした。これは今回のMVPその3くらい。

ウェア②靴下:Merino Socks

保温性を重視してMerino Socksを選んだはずが、その前にずぶ濡れ…靴下だけで臨んだのは大失敗。雨天用のシューズカバーを持ってくるべきだった。反省して、TdTでもちらほら付けている人がいたVeloTOZEを買いました。

ウェア②ジャージ:RCC Race Jersey

ウェア③ビブショーツ:RCC Pro Team Bib Shorts

ジャージとビブショーツはRCCの定番。もはや制服。Pro Team仕様なのでメリノではなくポリエステル製ですが、素早く汗(水分)を排出する能力は高く、不快感はありませんでした。

ウェア④アウター:RCC Gilet(防水)+予備でバックポケットにMavic Helium Jacket(簡易防水+防風)

今回のMVPその2がこの防水Gilet。まったく体幹は濡れること無く、またかなり地厚な素材なので、保温性も抜群。高い買い物だったけど、買って良かった。Helium Jacketはむしろ防風、防寒用に持って行ったのですが、そこまで寒い局面に至らなかったので結局使わず。

ウェア⑤アームウォーマー:Merino Arm Warmer

地味にこのアームウォーマーが今回のMVPその1でした。後半から着用しましたが、雨は小雨なら弾くので、風に晒され続けて腕から抜ける体温をだいぶ抑えることが出来ました。通常のアームウォーマーではできない、ウール製だからできる芸当。

ウェア⑥グローブ:Rapha GT Glove(指ぬき)とSugoi formula fx full Glove(指先まで)を持参し、雨天が決定的になった時点でSugoi の指先まで有りグローブを選択

今回のライドでは指ぬきグローブの人も多かったのですが、敢えてフルフィンガーを選択しました。指先の感覚がなくなってしまうことは、下り坂が多いTdT211kmにおいて、繊細なブレーキングができなくなりますので、特に雨天では安全性が大きく損なわれることになります。それだけは経験上避けたかった。

ウェア⑦キャップ:RCC Club Cap

キャップは被らない人も多いですが、晴れの日は熱射病避けになりますし、雨の日はひさしが顔に当たる雨粒をだいぶ減らしてくれるのと、頭から体温が抜けるのを防いでくれます。

⑧その他、バックポケットに入れた補給食など

PowerGel(カフェイン入り)×8袋 (自分で消費する用×5,分けてあげる用×3)PowerGelは早め早めに食べるのがオススメです。あまりおいしくないし、満腹感もないけど、エネルギーは確実に回復します。

芍薬甘草湯顆粒×2(脚が攣ったとき用。)これは攣るかな?という時に飲むと、すぐ効き目があるのでオススメ。

iPhone7、モバイルバッテリー、ハンカチ、財布+身分証明書、ツール類、交換チューブ×2 (サランラップに包んでおく)iPhoneやモバイルバッテリーは防水用にZiplockに入れる(このイージージッパーが便利)

また、TdT211kmも4年目になると、もうだいたいコースが頭に入っているのですが、GarminにGPXの地図を入れておくと、坂の勾配がどれくらいで、かつ「いつ終わるか」が分かるので、精神的にだいぶ楽になります。ただ、今回はそこかしこで内陸の新設道路にコースが変更されていたので、その部分(だいたい内陸の新しい住宅街に登っていくので、坂になる)はGPX地図になく、表示されなかったのですが。わたしは510Jを愛用していますが、今回11時間近いライドで、電池の残りは40%くらいでした。

3.TdTに向けた走り込み

TdTは毎年の最大のイベントのため、そこに焦点を合わせて年末のRapha Festive500から走り込みをしていました。

昨年はなんだかんだで1月から4月までサボっていたので、今年はそこもサボらずに、やる気を出すために1月からRCCに加入。RCCのライドにも参加しつつ、2月からZebra往復(+城山湖)をレギュラーコースとして、5月のグランフォンド軽井沢(GFK)とアルプスあづみ野センチュリーライド(AACR)をターゲットにライドを重ねました。

2月〜4月の総走行距離は1229km、獲得標高は14522m。毎週1度はできれば乗ることを目標にしていたので、まあこんなものかと。そのおかげか、5月のGFK,AACRとも去年を大幅に上回るタイムで完走できました。

ただ、GFKで特に出た課題としては、登りが遅いこと。苦手意識の克服のために、6月に伊豆のサイクルスポーツセンターで登りを徹底的に強化するというテーマで開催されたRCCのTraining Campに参加しました。

ここで講師の宮澤崇史さん、福田昌弘さんから、登りに必要な身体の使い方(特に体幹)を教わったのがとても役立ちました。いままでダンシングはあまり使わずシッティングで登っていたのですが、これ以降、積極的にダンシングを使うようになりました。

7月の箱根の登坂ライドも良い練習になりました。朝っぱらから箱根の旧街道を上るのはきつかったですが…

その後はすこし時間が空きましたが、富士山スカイライン登坂を含めた富士山1周ライドと、翌週のシマノグランツーリング八ヶ岳。それぞれ獲得標高2000m越えの2連戦は登坂のよい復習になりました。

8月は妻の実家への帰省なども含めてなかなか走る時間が取れませんでしたが、妻の実家周辺での走り込みをしつつ、実は初めての都民の森遠征。

そして、TdTの事前総仕上げとして臨んだツール・ド・妻有。獲得標高2727m、思った以上に登りと下りしかない厳しいコース設定でしたが、ここも終わってみれば十分登れたので、少なくともTdTは完走できる自信は付きました。

身体のトレーニングはもちろん、事前のバイクの整備も非常に重要です。今年は主催者側からはショップ整備の証明書は「出来れば提出」になっていましたが、妻のバイク共々、いつも整備をお願いしているPositivoに点検に出しました。結果、私の方はBB30のセラミックベアリングがダメになっていて、ゴリゴリして滑らかに回転しない状態になっていました。これでよくあれだけ登坂したものだ…NTN製品のメタルベアリングに交換して、変速も完璧に調整してもらい、これでTdTの準備完了です。

4.当日のペース配分など

TdTの211kmコースは下記のように、11箇所のエイドが設置されており、概ね25kmに1カ所のペースでエイドがあるため、非常に走りやすい設定になっています。コースの性格を簡単に記すと、下記のような感じでしょうか。

  • 石巻専修大学(Start)
  • エイド#1 女川:女川駅前

<ここまでウォームアップ区間>

  • エイド#2 雄勝:おがつ店こ屋街前

<本格的なアップダウン開始>

  • エイド#3 神割崎[往路]:神割崎

<最初の難所のトンネルへの登り+ダウンヒル、北上川沿いを抜けた後のアップダウン>

  • エイド#4 歌津:伊里前福幸商店街【特設】

<南三陸〜本吉の急坂の連続で、じわじわと脚が削られる区間>

  • エイド#5 階上:階上小学校 (11:30 ※1)
  • エイド#6 気仙沼:気仙沼プラザホテル前
  • エイド#7 大谷海岸:道の駅大谷海岸(13:20 ※2)

<気仙沼市街に入るので、あまりスピードは出さず、注意深く進みながらエネルギーを回復する区間>

  • エイド#8 蔵内:蔵内漁港(14:00 ※2)
  • エイド#9 南三陸:南三陸ホテル観洋(14:50 ※2)

<徐々に脚が売り切れて上り坂が辛いことを自覚しながら、フカヒレスープのためにがんばる区間>

  • エイド#10 神割崎[復路]:神割崎 (15:30 ※2)

<TdT最強の激坂2連発を気合いで乗り切る区間。乗り切った後の最後の長いダラダラ坂が厳しい>

  • エイド#11 北上:にっこりサンパーク前(16:15 ※2)

<北上川沿いを高速TTする区間。向かい風かそうでないかで辛さが全然違う>

  • 石巻専修大学(Goal)

211kmのコースは、まず女川(#1エイド)までの身体を暖めるアップ区間、雄勝(#2エイド)までの最初のアップダウン区間があります。特に注意すべきなのは雄勝までのアップダウン区間で、下り坂でブラインドかつ曲率が変わるヘアピンカーブが数カ所存在します。ガードレールはないので、オーバースピードで突っ込むと崖下に…また対向車もけっこう来るので、注意深く進む必要があります。

当日は第2エイドまでの中間付近のトンネルを通過したところでRCCのブリエーレさんに遭遇。彼は170kmコースの先頭だったのでめちゃ速い。彼に便乗する形でここから一気にペースを上げました。

雄勝エイドでPowerGelを1袋目を消費。軽めのギアでクランクをクルクル回してペースを上げると、自然に身体が温まってくるので、相乗効果でスピードも上がっていきます。北上川沿いの平地区間も40km/h近くで巡航しつつ、神割崎に向けてアップダウンをこなしていきます。この、TdT最初の本格的アップダウン区間で昨年はもうへばり気味でしたが今年はモリモリ登れていたので、体力ついたなと確信。また、路面がウエットだと、ドライよりも路面状況に対して異常な集中力を発揮するようになるので、結果的にものすごく速いペースで神割崎(#3エイド)へ。ここのエイドではおにぎりを貰えますので、しっかり2つ頂きました。

ただ、あまりエイドで休みすぎるとものすごい勢いで身体が冷えていくので、早々にまた軽めのギアでクルクル回して身体を暖めます。この次の歌津(#4エイド)までの区間も相変わらずブリエーレさんと一緒に飛ばしていきますが、歌津エイドで彼と別れてから、かなりスピードが落ちてしまいました。実は歌津エイドは170km専門だと思い込んでしまい、このエイドをスキップしてしまったのです。この歌津エイド〜階上小学校(#5エイド)までの区間が今回一番辛かった。お腹も空いてきたし、ダラダラ坂が続くし、陸前戸倉から国道45号線に入ると交通量が増えてくるし…とスピードが上がらない状況が続きました。

階上小学校にようやくたどり着き、気仙沼名物のクリームサンドと苺シャーベットをいただくのですが、あまりにお腹が空いていたので、クリームパンと苺シャーベットはおかわり。加えてPowerGelを2袋目消費。ここで20分ほど休んで後続の塚本さん、石丸さんと合流して、そこからは3人で進むことに。

気仙沼区間は信号も多くスピードも速くないので、淡々と進んで、お昼ご飯の大谷海岸(#6エイド)に到着。ここでホタテ炊き込みご飯、磯のりのみそ汁の昼食を頂きます。211kmは170kmや100kmと異なり、お昼ご飯が少なめです。211kmだとあまり食べ過ぎてもその後消化できないので、しょうがない。ここでPowerGel3袋目を消費。

大谷海岸〜蔵内漁港(#7エイド)までは本吉付近のアップダウンが続く区間。昨年はここの区間からエネルギー切れの症状が出始め、とにかくえらく長く感じたのですが、3人で走っているとそれほどでもないな〜と思いつつ、雨も止んできたので、100kmコースに参戦していた妻に追い付くことを決意し、そこから単独で速度を上げて、神割崎で待っている(という話だった)妻と合流することにしました。

それでもTdTに来たらフカヒレスープは飲まなければ!ということで南三陸ホテル観洋(#8エイド)に短く立ち寄り。ここでPowerGel4袋目。ここから神割崎、そして北上川沿いのにっこりサンパーク(#9エイド)までが最も厳しい激坂2本とダラ坂1本を含む、最難関区間なので、ちょうどここで予備の1袋を残して、自分の分のPowerGelを使い切る形です。しかも南三陸を過ぎるとちょっとずつ雨が…

そして陸前戸倉の新設道路を登り始めたとき、なにかシュッシュッという音がしたと思っていたら、なんと前輪がスローパンク。すぐ路肩に停めてタイヤをチェックしたのですが、何かが刺さった形跡はなく、ホイール&タイヤ購入からずっと使ってきたMavicのチューブが劣化してバルブ付近から空気が漏れたようです。幸いにしてすぐにサポートカーが通りがかり、5分でタイヤ修理完了。まじ感謝。

その後は例の激坂をクリアして北上川区間。どうも駆動系がジャリジャリ言うので、BB30死んだか…と軽く絶望しつつ(チェーンに砂が入り込んだようでした)にっこりサンパークに到着。ここで妻はとっくの先にゴール付近にいることが判明。すっ飛ばしてきたのにさすがに間に合わなかったか。ちょうどエイドに居た電通自転車部の面々とトレインを組むことにして、北上川沿いの最終30km区間は25km/h平均で流してゴールしました。

タイムは8時間8分22秒。昨年が8時間8分10秒。悪天候にもかかわらずほぼ昨年並みのタイムで、しかも最後の30kmは流したので、そこも飛ばせば記録更新していたことは確実でした。

やはり今年に入ってからの走り込みは物を言ったというか、練習はウソをつかないという真理が明快に示されたなと思います。あと、最後まで身体がへたれなかったのはウェアの選択が正しかったこと、あとは計画的な補給食の摂食が効果的だったと思いました。

そして何よりも今回はブリエーレさんや塚本さん、石丸さん、電通自転車部の皆さんなど、一緒に仲間と走っている時間が長かったのが気持ちの上でだいぶ楽にさせてくれました。昨年はほぼ7割を一人で走っていたので、孤独な戦いでしたが、今年はかなり楽しかった。やはり仲間は大事ですね!

また来年も出たいと思います&それに向けてまたトレーニングするぞ〜

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