やりたいやつが、やれの話。

SHUJI TANAKA
7 min readSep 18, 2014

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前述の「目立ったもん勝ち」の社風に付随する考え方なのだが
オンデーズには原則「辞令」というものがない。

なのでオンデーズの取締役や部長達は
同時に「人事権」という、なんだか得体の知れない
世間一般の企業では、時に大変強大な威力を発揮する
権利も誰も持ち合わせていない。

じゃあどうやって
店長や、管理職を決めているか?というと
基本的にすべて「仕組み」で決められて行く。

簡単に言えば

「やりたいやつがやる」

という精神に則って
決められている。

じゃあ、「やりたいやつ」が複数いた場合はどうするのか?

その時は「やりたいやつ」が皆で集まって

「なんで、その仕事をやりたいのか?(想い)」
「自分はどうやって結果を出すつもりなのか?(計画)」
「自分は今まで何をしてきたのか?(実績)」

という風に自分の考え、計画、実績を皆にプレゼンし
そのプレゼンを全員聞いた後で
立候補社同士に管理職、社長も加えてみんなで
投票して、一番得票数の多かった人が
その仕事に就く権利を得られるのである。

オンデーズは、現在この決め方で
店長やスーパーバイザー、エリアマネージャー
果ては海外の立ち上げ責任者まで
主要な役職のほとんど全てを決めている。

なんでこういう方式をとっているかというと
理由は色々あるのだけど、一番大きいのは

技術や知識、経験は与えてあげられるし、教えてあげられるが
「やる気」は誰にも与えられない。
「やる気」というのは人から与えられるものじゃなくて
自分の内側から絞り出されて出てくるもんだ。

という考え方が
オンデーズの人に対する理念の根底にあるからである。

経営者や企業は皆、当然、失敗したくないので
色んな役職や責任者を決定する際に、なんとなくベテランで技術や知識の高い人間なんかに、任せることがよくある。

実績や経験なんかを考慮して「出来そうな人」に任せるのである。

しかし仕事で成果を出すために必要なのは「出来そうか?」ではなくて「やりたいか?」なのである。

好きこそものの上手なれではないが、その仕事に対して強い情熱があれば、最初は苦労するかもしれないが、得てして大概の事は出来てしまうものである。

逆に出来るだけの技術や知識、経験を持っていても、やる気がなければ、ほとしばる情熱がなければ、周りの人は動かないし、自分も最後まで追求しないので、出来るのに出来ない結果に終る事が多々ある。

特にオンデーズのような店舗業では、仕事は1人では完結できず、周囲のスタッフや関係者など、沢山の人を巻き込んでいかなければいけないので、この「情熱・やる気」という力は目に見えないがとても大きな要素なのである。

他にもこの方式には大きな利点がいくつもある。
その中でのいくつかを挙げると

まず一つ目は「直属の上司が嫌なやつだとしても、自分の出世には何も関係がない」

世の多くの人が、会社を退職する際の退職理由に「職場の人間関係」がある。殆どの会社は、上司が自分の給与の査定であったり、昇格降格に関してして、大きな権限をもっているケースが多く

運良く、人格者の良い上司に恵まれればよいが、自分のことしか考えず、部下を踏み台にしか思わないような、嫌なヤツにあたった日には最悪である。

みんなが半沢直樹なら良いが、現実はそうもいかない。

嫌な上司にあたっても、その上司に気に入られないと、自分の出世に響くとなれば、嫌でも我慢しなければならない場面も多々出てくる。

上司がゴルフ好きだから、ゴルフを練習して休日も付き合って、精一杯おべっかを使ってご機嫌をとるとか、良く聞くが、そんなの最悪である。超くだらない。

世の社長達は「うちの会社にはそんな派閥は無い」と言うが、働く側からすると社長には見えてないだけで、実は結構あったりする。

オンデーズでも昔はそうだった。良かれと思って持たせた人事権が、知らぬ間に本人達も意図しない間に、無言の権力構造を産み出し、大勢のスタッフ達は、各取締役や部長達の顔色を見ながら、気を使って仕事をすることが多かった。

今のオンデーズはどうなのかというと、国内外で1000人単位の人が働いているのだから、そりゃあ人間的な好き嫌いや、性格の合う合わないは、まず当然ある。というか、1000人全員が公私ともに仲の良い組織なんて、それはそれで気持ちが悪い。

ただ、この「全て立候補で決める」という制度に変え、人事権というのを無くした、今のオンデーズでは、直属の上司の意見が自分の出世に大きく関与する事は、もうシステム上ないので、接待ゴルフとか、上司に付き合って嫌々飲みに行くなんて話は全く聞かなくなった。

上司とウマが合わなければ、休みの日にまで、嫌々一緒に遊ぶ必要など一切無いのである。別に上司に気に入られようが、嫌われようが
自分で手を挙げて立候補しなければ、一切出世のタイミングは回ってこない。

店長や管理職になりたければ、会社のweb掲示板をよくチェックして
公募がかかれば、手を挙げて立候補して、全力でプレゼンし、勝ち取れば良い。

その結果、自分の元上司が部下になるという下克上も割と頻繁に起きたりもする。

オンデーズで出世するのに必要なのは、飲み会での宴会芸でも、ゴルフのスコアでもなく、シンプルに「仕事の結果と、仕事にかける情熱を周囲にキチンと認めさせること」だけである。まあこうやって書くと当たり前の話なんだけど。

この立候補制を取り入れてから、離職率がまた更に下がった。職場の人間関係の構築に「自分の保身の為に上司に気を使う」という無駄な要素が大幅に減ったからだと思う。

もう一つ、立候補制にした利点がある。それは「人の持つ色んな面を見れる」ということ。

これはどういうことかと言うと、一般的には、社長や管理職が、役職者なり、プロジェクトリーダーなりを決める際に、周囲からの評価を参考にしながら、自分達なりの判断基準で、適任者を見つけて行くことになる。

しかし、社長だろうが所詮は人の子。当然、万能ではないのである。

そして、社員も皆、当然、人間なのだから、社長に見せる顔、同僚に見せる顔、部下に見せる顔、気になる異性の社員に見せる顔、嫌いなヤツに見せる顔、元気の良い時の顔、テンション下がってる時の顔

それはまるで怪人20面相のように沢山の表情があるのである。

社長や管理職が人事をやるとどうしても自分達が見えている

「その人が自分に見せている顔」を中心に考えてしまって
判断が一面的になってしまいがちである。

というか、その人が部下や同僚にどんな顔してるかなんて、当人同士にしか正確になんて解らないのである。

これを投票方式に変え、いろんな立場の人が決定に加わってくると
その人の色んな面が見えてくる。

上司に人気はないけど、部下から異常に慕われてたりとか、その逆もまた然り。

そういう「人間には色んな顔があるよね」ということを前提においてその上で、やる気のある人達が集まって、そこに関わる人達が皆で各々「誰に任せたいか」を考えて投票して、一番多く皆の信任を得た者が、その仕事を任せられるという形が、今の所、オンデーズという組織にとって1番最適な形であると考えている。

当然、社長と一般社員では、会社に対する責任や、背負ってるリスクも違うし、全体の業績にたいしてコミットしているものの大きさが、まるで違うのでので、同じ1票にはしていない。

その時々によって社長は10票、役員は5票、店長は1票など、偏り過ぎないように配慮しながら、悪平等にならないように「1票の重さ」を変えて調整している。

話が長くなってきたのでまとめると

企業の人事に一番大切なのは、給料や待遇、責任などの待遇は、できるだけ不公平に。ただし、そこに挑戦する「機会」は常に皆に均等に。

そして「結果、何故そうなったのか?」というプロセスを、誰の目で見ても納得できるように、明らかにしておくことだと思う。

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SHUJI TANAKA

僕がオンデーズを経営しながら考えてること。