海外新卒採用2020 in インド(私大編)

Puneの最終日、時間が余って散歩していたら盛大なお祭りの期間で沢山の人がいた

2020年度の新卒採用(エンジニア)は一度世界に目を向けてみよう、世界の才能をちゃんと見て、聞いて、知って、我々はこれからどんな人材を採用し、どんな会社にしていくべきかを考えよう。そんな想いを胸に、ここからの半年間、10ヵ国を超える世界各地の採用イベント、および独自の選考会を行っていく運びとなりました。

もちろん、いきなり世界中でエンジニアを採用するっていったって、どうやってやればいいんだい?僕も全くわからない中でしたが、一昨年よりこちらのフォースバレーさんのお力をお借りしながら、グローバルの新卒採用を行っております。いままでは弊社に親和性が高そうだということで、香港のみで海外採用を行っておりましたが、今年(2020年度卒業生)は限界までお力をお借りして、世界中で採用活動を行っている最中です。

今回アテンドしてくれたフォースバレーの竹内さんと浜田さんと弊社メンバー

さて、フォースバレーさんのお力をお借りしてグローバル新卒採用を行う場合、僕の聞いている範囲では以下の方式があるようです。

  1. 大学などとのネットワークを駆使して、会社単独の選考会を開催する
  2. 複数の企業が参加する採用イベントに参加する

今回は1番の形式で、我々のJDを大学経由で学生まで情報を届け、応募を募る。応募書類(CV)を我々が審査して、合格者を現地で面接、選考するというスタイルです。

なお、今回のインド私大向けのJDは「AIエンジニア」で、どちらかといえばR&D、研究職に近いポジションでの採用だったので、ハードルはやや高め。単に機械学習、深層学習などを使った実験やインターンをしたことがあるだけでは足りず、数学的なアプローチの経験や、基礎能力(例えばKNNCNNRNNなどのメカニズムや、長所短所などを説明できるかどうか、など)、学会などで論文を発表したことがあれば尚良し、というレベル感で臨みました。

結果としては以下の通り

  • 応募数 700
  • 書類合格 20
  • 内定数 0

ということで、結果内定者はなしということで結果だけ見れば残念ですが、当然のことながらそのプロセスの中で非常に有益なものも多くあり、その知見をここに残していきたいと思います。


Mumbaiはインドで最も都会な街のひとつ

今回行った場所はMumbaiPune、この地で面接した学生20人が在籍している学校は以下の大学でした(学士、修士含む)

正直先日の選考会までどこも聞いたことがない大学でした。とはいえ有名なIIT(インド工科大学)でも世界ランキングでは100位外だったりするので、インド国内の工学系大学で世界的に名前が轟いている大学の方が少ないと考えた方が良いかもしれません。上の4校もインドの中ではかなりレベルの高い学校とのことです。確かに実際、大変地頭の良い学生が何人も選考会にはいらっしゃいました。

今回の選考会で質問した内容は以下のようなもの

  1. 自己紹介
  2. 研究、もしくはインターンにおいて機械学習系のプロジェクトの内容、および担当した領域について
  3. 2番に使用した技術のメカニズムの説明
  4. 2番、3番に関連してソフトマックス関数シグモイド関数について、数学的なアプローチでの説明、及び微分計算
  5. ビッグデータを扱う際に注意すべき簡単な演算テスト(紙にプログラムコードを記述)、例えば大量の数値情報を受け取った際の平均値計算
  6. 力試し的にCNNを用いたプログラミングテスト(紙)

今回の選考会に参加してくれたほぼ全ての学生に言えることですが、とにかく自己表現は上手、もうひとつ言えば、作ったものの大枠の仕組みの説明や、概要の説明、抽象的なレイヤーでの説明がとにかく上手い。逆に、3番以降のような解像度の高い、特に基礎的なコードを書く、というような低レイヤーの課題を与えると、ありありと学生の本質が表現されてきました。すごく上手な営業さんから素晴らしい営業を受けているような感覚からスタートするので、この印象のまま内定を出してしまわないように、しっかりと目の前で細かい部分のコーディングテストを行うべき、ということが心の底から大切だと思えるようになりました。特にインドでは、というだけで、日本だろうと他の国だろうとやるべきだと思います。

4番以降のテストは非常に難しいように見えるかもしれませんが、公式を覚えていない学生には関数のグラフからアプローチして貰ったり、場合によっては公式自体をその場で記述してあげて、次の課題(微分など)に行って貰ったりしていました。また、正解を導いて欲しいのではなくて、自分自身にとって未知の課題を出された時に、どのようなアプローチで正解へ辿り着こうとするのか?その思考経路や、思考の粘り強さを見たい、ということと、時折こちらからヒントを提供し、そのヒントをどのように受け取るのか、その反応を見たい、というものでした。特に、正解が欲しいのではなく思考プロセスを評価していく、という説明は学生にもした上で課題にトライしていただきました。

正直なところ、4番と5番程度の問題は機械学習をやっている学生であれば、思考プロセス以前にポンポンとそれっぽい解答を出してくれるかな?とも思っていたのですが、今回の選考会でどちらもさらさら解答してくれた学生はいませんでした(この期待値はインドの数学、工学のレベルの高さを過信していたかもしれません、自分自身のバイアスだったと思います)。それはそれとして、面白かったのはヒントを出した時の反応で、大きく3パターンに分かれました。

  • ああ、なるほど、確かにね、そうだよね、という反応で受け入れるが追加の質問は無し、そして直後にまた引っかかって手が止まる
  • うんうん、知ってる知ってる、わかってたよ。という反応で、すぐに受け入れない(別の方式で解を求めようとしている?)
  • そっかぁ。。えっと、その場合、こうなるってこと?と実験的に受け入れながらインタラクティブにゴールへ近づこうとする

我々としては最後の「インタラクティブにゴールへ近づく」反応を最も歓迎していました。実際のチームで課題解決をする場合、このスタンスでいてくれることが、結果的に最も生産性が高い仕事に仕方だと考えているからです。恐らく弊社だけではなく、多くのチームで歓迎されるはずです。

Puneの街の一場面、古本屋には「ASP.NET」とか「Fortran」などのプログラミング、ソフトウェア関係の書籍が山積みになって売っていた。この一幕でインドの工学の強さを納得できる

今回は「基礎力」+「共同課題解決力」+「文化適応力」の3軸で選考を行った結果、それぞれの2軸を満たす学生は何人もいたのですが、3軸全てを満たした学生と会うことができず、残念ながら内定無しという結果になりました。全てを持つ才能が少ないことは理解しているものの、専門性が高いポジションにおいて基礎力が乏しすぎるのは、チーム全体の力を押し下げる要因になる可能性もありますし、共同での課題解決ができないと、結果チームで能力の最大化を図ることも難しくなります。最後の「文化」の部分は「会社」の文化もそうですが、弊社は日本人が大勢である組織であるが故に、そもそもの日本の文化、日本人の考え方にフィットできるか、それらを許容できるかどうかはとても大切です。短期間での退職は双方にデメリットが大きいため、弊社では新卒、中途問わず、採用面接時にとても大切にしている部分でもあります。

少々脱線しますが、カルチャーの点においては、昨今のマンガ、アニメの影響は凄まじいものがあります。マンガやアニメが好きな学生は、アニメを字幕で見ているので、随分綺麗な日本の発音と意味の理解があったり、「日本は夢の国だ!」と熱くアピールしてくれます。実際、そういう彼らは「日本に行きたい、住んでみたい」という強い欲求を持っているので、採用する側としては本当に有難いことだと思っています。グローバルで新卒採用をする度に、つくづく日本のマンガ、アニメカルチャーに助けられていることを実感します。

MumbaiからPuneへの移動は朝5時発で3時間の車移動、そして9時から11人面接。結構大変

インドで新卒採用する際、ひとつ知っておかなければならない点は、学生は内定を承諾するか、辞退するか選択しなければならないという点。日本のように沢山の内定を持ったまま就職活動を続けることは基本的にできないため、就職活動が解禁されると(各大学ごとに解禁日は異なる模様)、どんどんマーケットから学生がいなくなっていく、ということ。

今回は我々、後発で参加したこともあって(グローバル採用プロジェクトの起案、承認が最近だった)、そこは少し残念なポイントのひとつでしたが、今年もう一度インド採用に赴くので、そちらでしっかりリベンジできればいいな、と思っています。


PuneからMumbaiへ帰る飛行機の窓から見えるPuneの街並み。約700万人の都市、横浜+川崎以上

ちなみに、日本のIT企業ではよく「インド人エンジニアは離職率も高い」という声も聞きます(僕だけかもしれませんが)。実際にいくつかの企業では確かに高そうな情報を伺ったこともありますが、古くからインド人エンジニアを研究職などで採用されている日系大手メーカーさんなどでは、ほとんど離職していないとのこと。

これが何による変動要因なのか?はっきりとした答えはまだ分かりませんが、日系企業がインド人エンジニアを採用した後には定着までのアプローリで会社ができることは相当にありそうだな、ということだけは伺い知ることが出来ます。やりがいしかありません。


Puneでの最後の晩餐(フォースバレーの浜田さん/右と竹内さん/左)、1人680ルピー

蛇足:日本に帰ってきて水道水に気を使わなくて良い生活がなんとストレスの無い生活かということと、豚とか牛が普通に食べられること、なんならカレー以外のもので美味しく安全なものが多いということに感動しています。良い食は人を幸せにしてくれますね。