僕、28歳「お金を稼ぎたいです、何でもやります、お仕事ください」

Shin Takeuchi
6 min readJan 7, 2016

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8年も会社をやっていると社員も増えて、新規事業を社員に頭から任せていくなんてことも出来るようになりました。僕自身、こういうことが出来るようになるなんて、凄いなぁと思うわけです。誰かに事業の決裁権を任せるというのは、きっと失敗も沢山するだろうと思いながらも信じて、ある程度のロスも含んで任せるわけなので、会社に体力が無ければこういうことは出来ないので、そういうところに会社の成長を感じるのです。

さて、こうなると新規事業のアイデアを良く聞くことになりますが、「爆発的で大きな利益を出します」という話を聞くことはほとんどありません。今世の中に無いもの、あったら良いもの、理念、考え方、そういうものを沢山聞くことにはなりますが、事業計画を見ると、ガクっとなることや、突っ込みどころ満載なパターンが多くて非常に面白いです。

話は少し変わりますが、企画系を主業務に持っている社員から、時々ビジネスやサービスに対しての相談を受けることがあります。そういう場合は夕飯を一緒に食べながら、そもそもの考え方を一度リセットできるように、ゆっくりと時間を掛けて話すようにしています。

シンプルに考えると至極当たり前の話ですが、事業を任せるというのは大前提「お金を儲けてください」という話になります。二宮金次郎さんの言葉を借りると「道徳なき経済は悪であり 経済なき道徳は寝言である」わけなので、悪いことしてお金を儲けちゃいけないが、お金が儲からないと寝言なのです。

最悪、ちょっと悪いな、と思うことでもお金が儲かるなと思うことがあるなら、全部書き出してみれば?というアプローチなのですが、正直なところ、お金を儲けることを創造するのは凄く難しいことで、世界中の頭脳達がそこを一生懸命考えているので、普通に考えてポンポン出てくる訳は無いはずなのです。それだけでも大変なのに、正しく、新しい価値を!という崇高な理念を掲げると、なんだか宝くじを当てるような難しい話になっちゃうんじゃないかと思ったりするわけです。

例えば「悪徳金融」は道徳なき経済になるかもしれませんが、法に則って正しく金貸しをすれば、それは立派なビジネスだと思います。お金が儲かる方法を見つけてから、正しい方向にシフトするのは比較的考えやすいことだと思います。そして正しく、お金を儲けながら、世の中のニーズに合わせ、変化させていければ、唯一無二の存在にもなり得ると思うのです。

お金が無くなったら、事業はそこで終わりです。変化することも、トライすることも出来なくなります。以前、リビングデッドにならないように、みたいなことを書いたことがあるのですが、その事業をすることだけに全ての時間を投じて、暮らして行くお金を引いたらほとんどお金が残らない状態になると新しいトライが出来なくなって、これもまた事業が成長できない詰みの状態になってしまいます。僕の持っているしきい値としては、早い段階で自分一人が何もしなくても、誰かを雇って回せるくらいの利益を生み出せる構造があれば、次のトライ、次の投資が出来るイメージがあります。このくらいの利益水準を最低限目指して、あとはどれだけ大きなビジネスをやりたいか、それが可能なマーケットかどうかをちゃんと見ておくことが何よりも大切だと思っています。

さて、またちょっと昔話になりますが、僕は起業前に約1年間くらいフリーランスの時期がありました。その時、当時の知り合いに「お金を稼ぎたいです、何でもやります、お仕事ください」と言い続けた時期がありました。直感的ではありましたが、お金のために仕事をすることが、きっとお金を稼ぐための近道だと思ったのです。

それも当時、音楽活動をやっていたりして、どうにも「やりたいこと」で稼げなかった経験があり、やりたいことを全部やめて一度お金を稼ぐことに全て集中してみようと思ってフリーランスになったので、非常にシンプルな思考回路でした。

友人知人はとても協力的で(これはとても感謝しています)、金額はともかく色々なお仕事のお話をいただきました。しかし、面白いものでほとんどの仕事が「ホームページを作って欲しい」という内容だったのです。

当時、僕に何が出来たかと言えば、音楽を作ったりギター弾いたりという音楽的なわずかなスキルと、同時にSEとしてやっていた経験上の技術力の二つが大きなものだったように思います。エンジニアの方であれば理解できると思いますが、SEという職業では、ホームページのデザインは出来るわけも無いし、HTMLのコーディングもやや畑違い。飲食店のキッチン側とサービス側くらい似て非なる力が要求されるものなのですが、僕にやってくる仕事はその非なるものばかりでした。

ただ、僕もなかなかの負けず嫌いでしたので、やってやろうじゃないの!と徹夜を重ね、慣れないFireworksで良さげなサイトからデザインを真似ながら、お客様の要求に拙い技術でアレンジし、IE6に苦しめられながら必死でHTML/CSS/JavaScriptをコーディングして、必死で納品したものでした。最初の案件は本当に苦しい日々でしたが、2つめ、3つめともなると、デザインのパターンや、HTML/CSSのコーディングの本質まで目が行くようになり、世の中に存在するホームページに対して「もっと、こうすればいいのに」みたいな感覚を得るようになっていました。

実は、そのコーディングをこう書いた方が生産性、可読性、編集容易性が上がるよね?そのあとPHPとかでプログラムコードを埋め込むこと考えたらこのリスト要素に変なclass付けない方が良くない?とか、そんなことを考えながら自分のスタイルを作って、納品した結果、とても好評で、その後、Webサイト高速化みたいな流れもあり、ここで培った技術や考え方を注入して作った会社が、今、僕が経営している株式会社レイハウオリという会社だったりします。

この実体験は僕の中では最初の話に繋がっていて、「やりたいことをやるのではなく、儲かることをやった」、「儲かることだから、やり続けられた」「やり続ける中に独自性やアレンジを加えて差別化できた」という、事業を作るってこういうことだよね、という種が全部入ってるのです。

文字通り、腹が減っては戦は出来ぬ。ご飯が無いとビジネスで戦い続けることは出来ません。食べて行かねばなりません。現代の日本の経済活動上では、お金があれば食べることは出来るでしょう。ならば、まずはお金を稼ぎ、食べ続けていけることを何とでも成し遂げ、そして独自性とかブランドとか、調理法や調味料を変えていけば良いじゃない、と思ったりします。生命に対する危機感が薄い平和な世の中であるからこそ、衣食住を持ち続けることの大切さや難しさを理解して、お金を儲けることの大切さを、事業を立ち上げる前に心にピン止めしておくと良いかもしれません。

あとは、強い心と強い体があれば。大きなコトを成し遂げるには、心技体の全てが要求されるというのは、どんな領域でも、どんなコトでも同じなのでしょうね。

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