斜陽産業でも売上を大きく伸ばすIT活用術 | ゆかしメディア

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「うちの会社、この先伸びるとは思えないな。新たなお客さんがいるとは思えないし、今のお客さんだって、いつまでいてくれるか……」 経営者の悩みは尽きない。 「斜陽産業」と言われる産業がある。 
長い歴史がある、と言うと聞こえはよいが技術も市場も完全に成熟し、その後の大きな伸びは期待できない、これから先に求められるのは、減り続けるシェアをなんとか守ること、そんな産業だ。 斜陽産業でも、シェアを守るどころか拡大する方法がある。衰退産業はその歴史も長い分、営業方法なども固まりきっているところがあるが、新たな手法を持ち込むことで、改善が見込めるのだ。
永井俊輔氏は、大手ベンチャーキャピタルに勤めたのちに家業の広告看板の会社を継ぎ、縮小するばかりの衰退産業に新たな手法を取り入れ、そのシェアを大きく拡大した。 拡大しただけではない。営業、販売に関する工程を効率化し、利益率も大幅に改善したのだ。 その具体的な手法について、永井氏本人に寄稿してもらった。
「“斜陽産業”とは何か、具体的な定義やデータはないものの、傾向として、休廃業や解散の件数はしばらく高水準が続いており、事業承継型のM&Aの件数も増加傾向が続いているような産業のことを指すでしょう。 緩やかに縮小しているとはいえ、当面のあいだは“斜陽産業”自体が無くなることはないでしょう。しかしながら、体力のない中小零細企業は長期的な需要減の傾向に耐えかねて、休廃業や解散を選択したり、大手資本の傘下入りしたりするケースは非常に増えています。 一方で、斜陽産業といわれる分野の中小零細企業でも、業績が好調な企業はあります。そのような会社が行っているのは、独立路線による会社経営です。 独立路線を歩む「勝ち組経営者」の特徴ははっきりしています。ITをうまく活用し、科学的に分析・アクションを行っているケースが非常に多いのです。 IT活用と一口に言っても、社内向けと外部向けの2種類が存在します。社内向けは、勤怠管理システムやスケジュール管理システム、経理システムなどで、昔から比較的広く浸透しています。 外部向けには、SFA(Sales Force Automation:ITを有効活用して営業プロセスの革新を図る手法) / CRM(Customer Relationship Management:特定の顧客との関係を継続的に築き上げ、その結果として売上や利益、さらには企業価値を向上させるというマネジメント手法)と呼ばれるような営業支援 / 顧客管理システムなどがありますが、中小企業ではあまり整備されていないところも多いものです。 中小企業は良くも悪くも営業の成否が営業マンに依る部分が大きく、成功要因やノウハウの共有があまり行われていません。 「データ管理」といっても、顧客情報や購入記録をエクセルに打ち込んでいる程度に過ぎないことも多く、同じようなデータを何人もの営業マンが作成していたりと、極めて非効率なこともあります。 これでは、道具が変わっただけでやっていることは昔の商家が紙でつけていた「得意先台帳」と何ら変わりません。むしろきちんと一元化されていたのなら、昔のほうがよかったくらいです。 斜陽産業と言われる業界は、歴史も長く、営業スタイルやそのプロセスもかなり決まってしまっていると、関わっている当人たちも思っているところがあります。 残念ながら優秀な人材も集まりにくい。昨今の人手不足の現状では、優秀な人材ほど伸びしろの大きい業界に行ってしまうからです。 経営者が「アイデアを出せ」と言っても、そう出てくるものでもない、というのが現状でしょう。 ここで、独立路線を歩む「勝ち組経営者」の状況を見てみましょう。 ITを活用してSFA / CRMを取り入れることで、これまで営業マンの能力頼みだった営業プロセスや暗黙知を「見える化」し、顧客管理等の業務フローを一元管理して効率化しています。 そうすることで、人員の数は限られていても高いパフォーマンスが可能となるのです。 最新のツールで徹底的に無駄を省くだけで、現状は大幅に改善するのです。 徹底的な効率化は、新しいことにチャレンジするタイプの経営者はすでに行っていることです。残念ながらこれだけでは斜陽、売上の低下を遅らせることにしかなりません。 最近ではこれよりもさらに深く、売上を伸ばす方法を取り入れる会社が増えてきました。顧客管理よりもさらに前の、顧客獲得のプロセスをITシステム化したMarketing Automation(以下MA)が、「勝ち組経営者」の間で注目を浴びる存在となっています。 
SFA / CRMは既存の顧客をターゲットとしていましたが、MAは見込客をターゲットとしたマーケティング活動において重宝されるITシステムのことです。 これまで、見込客を獲得するためにどんなことをしていたでしょうか? 無作為のテレアポ、飛び込み営業、マス媒体を通じたコマーシャルなど、様々な手法が用いられたことでしょう。非効率だったり、最終的な成約率が低かったり、効果測定が曖昧だったりと、なかなか課題は尽きないものでした。 MAは、ITシステムを活用することで効果測定が容易に把握できる、その結果として成約率が格段に上がる効果を期待できるものです。 MAの具体例を挙げます。見込客の個人情報(メールアドレス)があれば、MAを使うことで、あなたが配信したメールマガジンを見込客がいつ見たかを、リアルタイムで把握することが可能となりました。 ITの発達は驚くほどで、見込客がメールを見たかだけでなく、いつ何を見たかといった詳細な解析ができるようになるのです。 それにより何ができるでしょうか。まさに見込客がメールマガジンを読んで『この商品が欲しい』『このサービスが便利かも』そう思った瞬間に『この商品の会社ですが』『こんなサービス、提供します』という電話がかかってくるわけです。

あなたが見込み客だったらどう思うでしょうか。 『なんていいタイミング! 買っちゃおう!』と思わないでしょうか。実際に、電話に応じてもらえる確率、アポイントに繋がる確率、最終的な成約に至る確率は、何もしないでテレアポを行う時よりも大幅に向上します。ITの力で、そのようなことが可能になったのです。 このように効果的な営業ができれば、斜陽産業でも大いに効果があります。まだまだ掘り起こしていない部分がどんどん掘り起こせるからです。 斜陽産業と呼ばれるところは、見方を変えると誰もが知っている、使ったことのある商品やサービスであることが大半です。きめの細かい、顧客のニーズに寄り添った営業ができれば、商品自体の知名度は高いので、充分に売り伸ばせる見込みがあります。 筆者自身、新卒で入社した某投資会社から、父親が創業した株式会社クレストという、主に小売業を顧客とする屋外看板、店内装飾、ショーウインドウディスプレイなどを設計、施工する企業(当業界はサイン&ディスプレイ業と言われる)に転職した経歴を持っています。 2009年末に転職した当時は、完全に斜陽産業で事業に画期的な成長戦略は存在しないという状況でしたが、以降、直近の2015年迄で売上高は約10億円から約30億円にまで増加しました。 僭越ながら、今回はその事例を紹介させていただきます。 転職から1年間は現状の業務理解に費やし、2012年からCRMを全社的に導入しました。それにより、これまで可視化されていなかった営業のすべての工程が見える化し、これまで個別にエクセル管理だった案件状況が網羅的に、しかもモバイル端末でも見ることができるようになったのです。 新規営業から受注までのプロセスを体系化し、管理職がリアルタイムで営業担当者にアドバイスをしたり、失注の兆候がある場合は別のベテラン営業担当者をすかさずフォローにつけるなどすることが可能になったのです。 2014年からはMAをCRMツールにアドオンする形で導入、過去2年間でCRM上に蓄積された顧客のメールアドレス情報や購買履歴などの情報に対して的確にメールを配信し、前述の顧客1人ひとりが自社のWEBサイトや製品ページにアクセスする状況が営業側にアラートで送付される仕組みを構築しました。 営業担当者は自社の製品ページを見ている顧客に優先的に提案をし、その顧客が見ている動画の製品のサンプルを担当チームが自動的に送付するなど、顧客のニーズにマッチした提案を行うことが可能となりました。MA導入前後における受注率は3倍に跳ね上がったのです。

屋外看板の斜陽産業ぶりはすさまじいものがあります。看板に関してもIT化、デジタルサイネージ化が進んでいます。企業は初回の投資でコストはかけるものの、一度デジタルサイネージを導入してしまえばデータの入れ替えのみでコンテンツの差し替えが完了するため、看板の広告変更の需要は減少しているのが現状です。 また、通信販売の台頭により物販を中心とする小売業の1店舗あたりの売上は日々減少しています。小売業事業者もマーケティング費、販売促進費をこれまでのように店舗の装飾ではなく、ECページの強化やWEB広告に投資する流れにシフトしたりと、サイン&ディスプレイ業界の市場規模は年々減少しつつあるところです。 市場から撤退する企業も多数見受けられる中で、筆者の経営するクレストの飛躍的な成長の要因はすべてITの力です。 衰退産業と言われても、それらが本当にゼロになることはほとんどありません。ITを活用して、縮小していてもそのなかでシェアを伸ばし続けていけば、同業他社が撤退していくのでこれから先も充分に戦えるのです。 斜陽産業の中小零細企業であっても、勝ち組経営者は確かに存在します。彼らは、社内向けはもちろん、外部向けのIT活用についても積極的で、単なる管理ツールではなく新進のITシステムをうまく活用しつつ、科学的に自社の経営を分析し、各アクションを具現化させているケースがとても多いです。 そういった「勝ち組経営者」が存在する会社の営業部門は、IT化によって、営業プロセスや暗黙知の「見える化」が実現し、効率的な業務フローが構築され、結果的に人材不足の問題も解消が進んでいることが多いものです。

筆者の周りでも、“斜陽産業”に属した中小零細企業では業績不振、人材不足の問題が日々深刻化している、といった声が聞こえるようになって久しいですが、経営者は、人材不足を嘆いていても意味がありません。栄枯盛衰の波に呑まれるのをただ待つのではなく、営業のIT化を推し進め、窮境を勝ち抜くことが求められるでしょう。 うまくやるための方法は、まだまだたくさん残っているのですから」

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永井俊輔(ながい・しゅんすけ) 1986年、群馬県生まれ。早稲田大学を卒業後、大手ベンチャーキャピタルのジャフコに入社。M&Aやバイアウトに携わった後、サイン&ディスプレイ業界大手のクレストへ。 SFA/CRMやMAなどのIT技術を導入して4年間で売り上げを2倍に拡大させ、2016年に代表取締役に就任。クレストを業界ナンバーワン企業にすることを目指す一方で、成熟産業にIT技術を組み合わせて新たな価値を生み出し、生涯に100の企業を立ち上 げることを目標としている。

2016年2月に、MAの導入・運用支援・コンサルティングを行うグリードナーチャリングを創業。

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