日本とアメリカの働き方の違い、7選

SR
9 min readOct 26, 2016

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最近、日本から留学している方から日本とアメリカの仕事ぶりの違いについて聞かれた。確かに日本とアメリカの職場環境はよく比較されるわりに勘違いされていることも多い。せっかくなのでアメリカで働いてみて感じた日本とアメリカの働き方の似ているところ、違うところを書いてみようと思う。

注: 当然ながら日本でもアメリカでも働いている職場・地域によっても働き方はぜんぜん違う。私は日本では外資系コンサルティングファームで働いていた。アメリカではシリコンバレーにて日系テックベンチャー(10人以下)で働いた後、日本とは無関係のバイオベンチャー(数百人規模)で働いている。そんなわけで比較対象が「東京の外資」と「シリコンバレーのベンチャー」という極めて偏ったものになってしまうが、そこはご勘弁あれ。

アメリカでも日本でも調整は大事

社会人1年目(@日本)だった頃、アンケート調査の文言を決めるのに上司に見せて、そのまた上司に見せて、クライアントに見せて、巡り巡って最初の文言に戻るさまを見て、その調整っぷりに衝撃を受けた。そういう結論になるなら最初から私のドラフトを全員に見せて一回のミーティングで決めてよ、と思ったものだ。

が、日本でもアメリカでも大事な物事ほど会議が始まる前に決まっているというのは真実である。経営会議ともなれば、何週間も前から関係部署を周り、1対1で話し、小規模のミーティングで話し、納得いってなさそうな人には電話でフォローアップをし、そして大事なメンバーの合議をとった上で会議に臨む。このお作法は日本でもアメリカでもあまり変わらないように感じる。

もちろんメンバーが5,6人しかいなかったちっちゃなベンチャーのときはみんなで狭い空間を共有し、すべての経営判断はその場でみんなで話して決めていた。これが効かなくなるのは肌感覚でいうと10人を超えるあたりからな気がする。Two Pizza Rule(チームで2枚以上のピザをオーダーしないと足りなくなるようならチームが大きすぎて効率が下がるサインなのでチームを小さくしたほうが良いというルール)は的をついている。

アメリカでも日本でも言い方は大事

よく日本人は本音と建前を使い分け、はっきり意見を言わないのに対し、アメリカ人ははっきり自分の意見を言う、と言われる。確かにアメリカ人のほうがストレートに物事を伝えてくるが、かと言って言い方が丁寧じゃなくてもいい、ということではぜんぜんない。少なくともアメリカのホワイトカラーの職場では、みんな恐ろしく表現に気を使っているし、特定の領域においてはめちゃめちゃ本音と建前を使い分けている。アメリカ人が日本人の空気的には「ノー」と言っているのをつかみとるのが難しいのと同じように、アメリカ人の「ノー」だって英語圏的空気を読み取れないと理解するのは難しい。

例えばアメリカ人のLet’s have lunch some time(今度ランチでもしようよ)は日程を指定されない限りただのリップサービスだし、It's a nice ideaと褒められてもGreat jobと言われても、本当にそう思っているのかは多少疑ってかかったほうがいい。(しかも彼らはおおげさに感情を込めて言うので思わず信じそうになってしまうが、ぐっとこらえなければいけない。)また、アメリカでは返事が「ノー」に傾きつつあると返事が来なくなる。(日本よりもその傾向が顕著だと思う。)音信不通=ノー、というわけだ。はっきり言ってよ!と時々思ってしまう。

そんなわけでアメリカでも本音をズバズバ言ってはいけないし、ノーとはっきり言えない場面も多い。

日本でもアメリカでも言い方のかっこよさに騙されてはいけない

どれだけ話がうまいかと、どれだけ仕事ができるかは、最後の最後、比例しない。そして、アメリカでも日本でも最後は仕事ができる人(=物事を前に進められる人、結果が出せる人)が重宝される。なぜそれをわざわざ書くかと言うと、アメリカ人のほうが平均して日本人よりもしゃべりがうまく、それに騙されて(?)仕事ができない人を採用したり、解雇できないでいたりする日本人を何人か見てきたからだ。アメリカで採用も解雇も経験してしみじみと思うのは、良い採用が会社にもたらすベネフィットは、うまくいかなかった人を解雇して数ヶ月かけて別の人を採用するコストを、圧倒的絶対的に上回るということだ。口達者なアメリカ人だからこそ、日本よりも一層シビアに仕事を見定め、英語が下手でも相手に引け目を感じることなく厳しくフィードバックをし、それでも改善が見られない場合は明確な行動(ポジションを下げる、解雇するなど)をとるべきだ、と日本から来る事業責任者の皆さんには心からアドバイスしたい。

アメリカのほうが上司の意思決定に従う

さて、これから先はアメリカと日本の違うところについて。まず、アメリカのほうがボスの言うことには絶対従う、という傾向が強い。また、会社で正式に決定されたことは全員がサボタージュすることなく決定に従って行動する。日本では、上司がAと思っていても部下がBと思えば陰でBをやっていたり、部下が心から納得しないとちゃんと動かないことがある印象があるが、アメリカではその頻度が際立って少ない。

そして日本では会議の意思決定そのものがあいまいだったり、上司の意図が読めなかったりするが、アメリカでは上になればなるほど、みんなちゃんと意思決定をしている。もちろんその意思決定の質が低かったり、新しい情報が出てきて短期間で覆ることはあるが、「上がなにを考えているのかよくわからん」ということはない。

意思決定が行われるまでは、みんな上下関係を気にせず徹底的に議論する。上司の意見にまっこうから挑戦することもあるし、他部署と徹底的に戦うこともある。が、いったん結論がでると、みんながぱっと切り替えてその通りに動く。

アメリカでは直属のボスに圧倒的人事権がある。ゆえに採用はかなりコネに左右される

アメリカではその部署で新しく人を採用する場合、その人のレポーティングラインにあたる直属の上司が最終的な採用判断をする。(日本もベンチャーはそういう仕組みかもしれない。)もちろん面接は複数人でするしみんなで話し合うが最後は直属のボスが自分の作りたいチームを作る権限を与えられる。これは事業責任者に限らず、経理部のマネージャーとかそういうレベルでも裁量権を持っているイメージがある。自分で責任をとって採用する場合、一緒に働いてやりやすかった人は圧倒的な安心感があるので、まずそういう人は優先される。更に自分が信頼する人がこの人は良いと言って紹介してきた人や自分が出た学校の後輩だとやはりどこか安心感があるので、これまた採用されやすい。結果としてアメリカの採用は中途でコネがある人が圧倒的に有利になる。

大学での正式なリクルーティングプロセスを除けばグーグルでもアマゾンでも知り合いづてに人探しが行われるので、アメリカで就活する人にはとにかく人に会って紹介をお願いすること、と強く勧めている。

アメリカでの出世コースは専門性を高めること。日本はもう少し総合力重視

このアメリカの採用スタイルはキャリアパスにも影響してくる。直属の部下を好きに雇っていい場合、短期間で成果を出したいと思うので、即戦力のある人材=他社ですでに似たようなことをやったことがある人材を採用したくなる。特にベンチャーの場合は文字通り、その経験を買ってこないと社内にノウハウがないので殊更、採用する分野のプロを探す。

そうすると採用される側は同じ分野で経験を積めば積むほど社会での評価(給与、転職できるポスト)が高まるので、他人に負けない専門性を磨くようになる。そして数年おきに会社を転職してはだんだんとキャリアの階段を登っていく。(もちろん終身雇用の大企業はアメリカにもあり、そういうところではいろいろな部署を回ってキャリアを積む。)

日本ではもう少し業界や職種間の移動について寛容な気がしていて、個人的には日本の仕組みのほうが気に入っている。そのほうが就活する側にとっても会社にとっても刺激になって良いと思うんだけどどうなんだろう。

アメリカ人は給料に比例して働く

アメリカでは、役職ごとの役割と責任がわりとはっきり定義されていて、みんな自分の役割の分だけ過不足なく働く。(この役割が明文化されているのは、単一民族の日本と違って、あらゆるカルチャーの人が一緒に働くので、明文化しないと収拾がつかないからだと思う。)アメリカの会社で働き始めて「It's above my pay grade」(私の給料レベルじゃ決められないことだ)という言い方を聞くようになったが、最初はかなり違和感があった。給料や会社の中の役職がどうであろうと、当然会社のためにできる努力をすべてすべきなんじゃないか。自分の部署の仕事かどうか、自分の役割に定義されているかどうかは関係ないんじゃないか、と思ったりした。

が、ことあるごとに上司に「これは別の部署にやらせればいいことだから」とか、「あなたはそんな重役レベルの給料をもらってないんだから、そんな心配をしなくていい」と諭され、なるほど、これはこれで合理的なんだな、と思うようになった。経営責任というのはどんなレベルであれ多大な精神的負担を伴う。それは、ストックか、高い給料かで報いてくれないとやってられない、というのは合理的であり、逆に経営者側は、精神論で従業員を追い込んで過度に働かせてはいけない、というのは、自分が経営者になる日があったら絶対に絶対に守りたいとは思う。

そして、この「過不足なく」というのがポイントで、みんな自分の役割と責任分についてはきっちり、時には情熱を持って、仕上げてくる。それができない人は、やがて組織から淘汰されていく(昇進が遅れるだけでなく、ときには解雇される)。ある意味軍隊のように、上から下まで役割分担と責任の範疇が明文化され、意思決定が守られ実行されていくと、それはそれで効率の良い組織ができあがる。これがアメリカの社員が早く帰れる一因になっているとも思う。(ちなみに給料に責任/仕事量が比例する分、昇進するほど仕事は増える印象がある。)

この辺も、ごく小さなベンチャーだったり、Zapposのように従業員が心からお客さんのためになりたいと思って自律的に動くような会社の場合は、事情が変わってくる。実際、アメリカで小さなチームでベンチャーやってたときは低い給料でみんな驚くほど経営者マインドを持って働いてくれた。が、これがどれだけスケールするのかはよくわからない。

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以上、アメリカと日本の働き方の違いをだらだらと書いてみた。ほかにも山ほどある気がするけど、一部でも、アメリカで働くことに興味のある皆さんのお役に立てれば。質問・異論・反論、大歓迎です!

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