世界の大人たちのファッションルール

Style&Co. Tokyo
8 min readOct 17, 2015

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” ファッションにはルールがある。決して、たかがルールだと馬鹿にしてはいけない。ルールを知らなければ、ルールを超えることはできないし、ましてや自分らしい魅力的なファッションを身にまとうことなんて到底できやしない。ただ恥をかくだけだ。”

長年、パリで暮らしていた経験から醸し出されるフレンチテイストの上品なデザインセンス。洋服だけにとどまらず、衣・食・住を含むライフスタイルをファッションととらえ、多方面で活躍するファッションデザイナー・矢島タケシさん。世界を知る矢島さんに成熟した大人がまとうべきファッションについて、訊いた。

ビジネスシーンにおけるグローバルルールを教えてください

日本では黒のスーツを着る方は多いですが、欧米ではありえません。黒はそもそもフォーマルなもの。たまに日本にある欧米ブランドで黒のスーツを売っているところもありますが、あくまで日本仕様です。欧米では黒いスーツ自体つくっていませんから。やはりネイビーもしくはチャコールグレーを着るべきでしょう。また、シャツにおいても、濃い色はいただけません。基本は白系。清潔感のあるものが望ましいですね。ただ、世界的にはカジュアル化が進んでいますから、グローバルルールを踏まえながら、いかに個性を出すかが求められてもいます。

日本ではスーツがユニフォーム化しているようにも感じます

スーツを着てさえいればいい、という意識なのでしょう。しかしサイズが大きすぎたり、ポケットにものが詰まって妙に膨らんでいたり、パンツのセンターラインがぼやけてしまっていたり。そんなファッションの人を重要なビジネスパートナーに選ぶでしょうか。フランスの銀行の窓口には、ラコステのポロシャツにジャケット、下はジーンズにスニーカーといったファッションの人たちがいます。カジュアルですが、決して不快ではありません。清潔感もあり、銀行のスタッフとして信頼に足る印象を与えています。ファッションは相手への印象を第一に考えなければなりません。いわばコミュニケーションツールなのです。

ファッションは自分の武器にもなりえるということですね。

たとえば、弁護士なら信用の印象のあるダークスーツがいいでしょう。それがグローバルではNGとされる黒だったらどうか。ルールを司るべき人がルールを守っていなければ、仕事も任せられませんよね。ダークスーツにきれいな花柄のネクタイなんかしたら、信頼を与えつつ個性も印象づけられて素敵だと思います。男性でいえば、「スーツ」「シャツ」「ネクタイ」の3要素で、2つは同じ系統の色を選び、1つは違う系統の色を選ぶと格好よく見えるという「2:1の法則」というものがあります。たとえばジャケットとシャツが落ち着いた同系色ならネクタイは華やかな色味を選ぶとか。シャツとネクタイを同系色の柄物にしてみるとか。手持ちのアイテムが少なくても、工夫すれば、いつも新鮮で強い印象を与えることもできます。医師や弁護士、経営者といったエグゼクティブであればあるほど、自分がどう見られているか、相手にどんな印象を与えたいかに細心の注意を払うべきです。

自分らしいファッションを考える上で、注意すべきところは何でしょうか?

日本は着物文化の影響からか、柄物に柄物を合わせてしまう人が多いように感じます。またシャツやスーツをオーダーでつくる方に多いのですが、いたるところにネームを入れたり、ネクタイピンをしたり、ボタンダウンシャツにダブルカフスとか、とかくてんこ盛りにしがちなのです。たとえファッションに気を使っていても、過剰さはむしろ相手を不快にさせてしまうこともあります。おしゃれはプラスばかりではありませんからね。

アクセサリーも要注意。最近、男性でも指輪をする人が増えていますが、ピンキーリングを左手にしていたら、すぐ外してください。幸せは左の小指から入り、右の小指から抜けていくもの。だから右手の小指に指輪をして、幸せが逃げないようにしなければなりません。左手の小指にしていたら、逃げるどころか幸せが入っても来ませんよ。

そして靴への注意もお忘れなく。あるフランス人に「日本人が近づいてくるとすぐわかるんだよ」と言われ、恥ずかしい思いをしたことがあります。日本人は男女問わず大き目の靴を履く傾向にあります。ブカブカだから「パカパカ、ズルズル」と歩く度に嫌な音が出てしまうのですね。靴の着脱機会が多い文化の影響もあるとは思いますが、できればジャストサイズを。大き目なら紐ぐつでしっかりと履くことをお勧めします。

矢島さんにお願いしたら、どんなスタイリングを行っていただけますか

たとえば、学生時代、スポーツをやっていて太ももやヒップが筋肉質で、パンツスタイルが似合わないなんて悩みがあったとします。きっとその方は、ウエストサイズでパンツを買っているのでしょう。私なら、少しゆとりのあるウエストサイズでもいいので、太ももやヒップが美しく見えるパンツを探します。そしてウエストサイズを直せばいいわけです。欧米では試着を何度も何度もして、自分の体型に合うよう直して買うのが当たり前。日本では既製品はそのまま買う人が多いですが、そんなことはないのですよ。

スタイリングする際は、まずその方の希望をじっくりと聞きます。そしてクローゼットの中を見せてもらい、生活スタイルも伺います。さらに、パートナーの方にもお話を伺い、その人の人となりを細かくチェックし、情報収集することを心がけています。その方を魅力的にスタイリングする上で、どこにヒントが隠れているかわかりませんからね。

最後に、メッセージをお願いします

服は大切ですが、より美しく見せるにはきれいな体が必要です。まず、自分の体型はどうか、爪はきれいか、鼻毛は出てないか、そんな身だしなみに意識を注ぐことから考えてほしいと思います。服で体型を隠したがる人は多いですが、隠すのではなく、むしろ見せることで人は美しくなる努力をするもの。自己管理ができる人は、仕事に限らずどんなシーンでも信頼されますよね。そんなライフスタイルづくりから、私たちはお手伝いしたいと思っています。

そして流行に敏感であってほしいです。流行を追いすぎることで個性を失っては本末転倒ですが、今という時代を知らなければ新たなものも生み出せません。これはファッションに限った話ではないですね。流行に浸りすぎず、横目で見るくらいの感覚が適度でしょう。自分を魅力的に表現できれば、気持ちもあがります。一緒にファッションをもっともっと楽しみましょう。

矢島 タケシ / Takeshi Yajima

Style&Co. Style Editor / Fashion Designer

1975年VANジャケット退社後、単身フランスに渡り、パリ在住13年。ソニア・リキエルやシャンタル・トマスがデビューした『FRANCEELLE』のニットページを、日本人として初めて飾る。パリでデザイン活動の後、1993年に帰国。翌94年秋冬東京コレクションにて、メンズブランド『apres seize takeshi yajima』で日本デビュー。以後、ファッションはもちろん、トーク番組からバラエティ番組まで幅広いテレビ番組にも出演。タレントとしても活躍中。

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