ヒマラヤから砂漠へ

トークショーと題した催しではあったけど、会場には自分を入れてわずか2名だった。そもそも10人もはいれないような小さな小さなイベントスペースだったので、たくさんの人が入場できないのはもとからであったが、彼女の話はもっともっと多くの人にとって聞くべき価値がある、とても素晴らしい内容だった。彼女の名前は小松由香さん。現在の職業としてはフォトジャーナリスト。その前身は女性登山家だった方だ。

小松さんは、2006年に日本人女性として初めてヒマラヤの世界第二の高峰、そして世界一登頂が困難な山、K2の登頂に成功する。その後、自然に生きる人々の暮らしに惹かれて東西アジアの遊牧民を訪ねて生活をともにし、そして中東に至り、近年はシリア難民の取材を続けている。今年の7月にはまた内線のやまないシリアに取材にいくという。

と、現在までの彼女の経歴を簡単に文字にすれば以上のとおりだが、直接本人の口から話されるその内容はあまりにも鮮烈でとても感動してしまった。彼女の生きてきた道は一般の人にはなかなか体験できないことばかり。ヒマラヤから砂漠にいたる彼女の人生で常に向き合っているのは「生きるとは」、というあまりにも直接的で生々しいテーマである。人間を拒み24時間死が隣り合わせにある極限の暗黒世界だったり、濃密で人間くさく現代文明からは忘れられがちな伝統的な暮らしをする遊牧民だったりするが、いつも彼女がこだわっているのは、生きるという意味、人間と自然の関係、そのつながり、人間の幸せとは、平和とは、というあまりにも根源的なテーマゆえに、誰も正面きって扱えないものばかりなのだ。

ジャーナリストていろいろなジャンルがあるんだろうけど、どのジャンルにも共通なのは根源的なテーマを正面から見つめたいという強烈な動機があること。そしてそういうことをどうしてもやりたいと心から思う人しかできない仕事なんだということが今日わかったような気がした。彼女の歩いている道はあえて困難なことばかりに向かっているような気がしてしまうが、逆にいうと僕らの多くは困難なことからいかに逃げるかということばかり考えている気がする。集団的自衛権なんてその典型だと思う。。そんなことを彼女のトークから感じた。

彼女は7月にまたシリア難民の取材に行くという。世界最悪の人道危機とも言われる彼地だが、彼女は今度も「生きるとは」ということを逃げてばかりの僕たちにあらためて教えてくれることだろう。どうかお気をつけて。

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