今、知っておくべきAIの可能性【後編】 宗像淳×三上悟(イノーバCTO)

司会:前回では主にAIの歴史と機械学習について、お話を頂きました。今回は、その内容を踏まえて、実際にAIによって私たちの生活にどのようなインパクトを与えるのかをお伺いしたいと思います。

■人間とAIが共存する未来とは?

三上:僕一つ、ディスカッションしたいテーマがあって。「AIによってなくなる仕事・なくしたくない仕事」ってなんだと思いますか?

宗像:面白いテーマだね。

三上:僕が思ったのは、不適切なコンテンツのモデレーション。SNSとかに自由に画像がアップロードできるようになりましたが、それが不適切じゃないかというパトロールは人間がやってるんですよね。だから、AIにデータを読み込ませて、不適切かどうかを自動で分類できるようになれば、それは人間がやる必要がなくなると思います。

宗像:確かにそうだよね。あと多分、人件費の安さで戦っているところはなくなる可能性が高いかな、と思ってる。例えば、工場で部品をひたすら取り付けたりとかね。だから今後人間に求められる仕事は、AIができないような、クリエイティブさが必要なものにシフトしていくんじゃないかな。

司会:そのような分野で、今注目されている技術って何かあるんでしょうか。

三上:Amazonのピッキングチャレンジですかね。ピッキングって簡単そうに見えて、ロボットがやるのって非常に難しいんですよ。Amazonも巨大な物流倉庫の中から商品を選んで、取り出すという作業をいかに効率よく遂行するか、という課題を抱えていて。それをコンテストにしたのが、アマゾンピッキングチャレンジです。このような倉庫ロボットの開発も、急激に進んでいます。

(参考画像:http://www.amazon-logistikblog.de/innovationen/pickingchallenge/)

宗像:僕も前の会社で物流を担当していた時、巨大冷凍倉庫でのピッキングを見たことがあるけど、それも人間がやる必要がなくなるね。

三上:実はAmazonは、既に配送センターへロボットを導入しています。しかもそれが、大きなコスト削減に繋がっているらしいので、今後他社でも導入するところは増えていくと思います。

(参考記事:http://japan.cnet.com/news/commentary/35057380/)

宗像:AIの普及要因って、AI単体だけでなく、ロボットとか色々組み合わせで活用出来るところにあるんだと思う。それが波及効果を生んでるんじゃないかな。

三上:音声入力などもそうですよね。所謂、マルチモーダルって呼ばれる学習方法です。最近の事例だと、写真を見てそこに何が写っているかっていうのがもう分かるようになってきたので、今はそこからキャプションを生成することができる。例えば「子供の絵で、風船を持っていて・・・」というのを文章で出すことができるんです。

宗像:あと、音声入力はネットの利用者層を広げる可能性になると思う。うちの両親はネット使わないから、未だに「テレビ安いの欲しいんだけど探してくれない?」って普通に電話かかって来るんですよ(笑)。でも、音声検索とかだったら自分で探せるんじゃないかな。

三上:確かに、それはあるかもしれないですね。

司会:では、仕事以外の分野ではどうでしょうか。AIによって、大きく変わるだろうと思われるものは何がありますか?

宗像:教育かな。子供の教育も活用できる部分は沢山あると思うけど、主に大人向けの教育というか。社会人になってからも勉強を続けてる人って本当に少ないんだよね。多分、普段の生活だけで疲れちゃったりとかもあると思うんだけど。AIの研究が進めば、もっと効率よく勉強ができる気がする。例えば、本当に人間が学ばなくてはいけない部分だけ勉強する、とか。

三上:それは実現できそうですね。

宗像:人間が、何を効率良くインプットできるかというのは、今後絶対重要になると思う。ディープラーニングは人間の脳を真似て開発されて、インプットした情報によってアウトプットも変わるということが証明された。だから、人間の脳も同じだってことだよね。どんな人と付き合って、どんな本を読んでっていうインプットによって、自分のアウトプットが全然変わるということ。

三上:今の話の良い例が、Microsoftが開発したチャットボットのTayだと思います。TayはTwitter上で話かけると、返答してくれるAIとして2016年の3月にリリースされました。しかし、Tayに向かって差別的・暴力的な発言をしたユーザーが多かったので、Tayもそのような発言をするようになり、サービスは中止になってしまいました。宗像さんが言ったようにインプットによって、アウトプットが大きく変わってしまうんです。

司会:一般的にMicrosoftのTayは失敗だった、という見方が多いようですが。

三上:完全に失敗だったという訳ではないと思います。暴力的な発言をするようになってしまいましたが、それもTayがユーザーの発言を学習できているってことなんですよね。それが分かっただけでも功績だと思います。

宗像:あとは、緊急時の意思決定の精緻化とかもAIで実現できそうな気がする。防災マニュアル等を読みこませて、災害が起きた時の状況判断や指示をAIがしてくれるっていう。非常事態が起きた時に、人間はどうしても精神的に取り乱したり追いつめられたりして、必ずしも正しい判断が下せるとは限らないじゃないですか。そういう人間の弱点というか、弱い部分をこれからはAIが強化や支援してくれる存在になっていくんじゃないかな。

三上:そうですね。能力強化ツールとしての可能性は非常に高いと思います。同じような例だと、記憶力。人間の記憶力って絶対限界があるので、そこをAIにカバーしてもらうというのも、将来的には可能だと思います。

宗像:人間とコンピューターって今まで壁があったと思う。それが、音声や画像だけで言葉や映像を認識できるようになって、その壁を取り払ったのがAI。だから、仕事を奪われるんじゃないかって心配するよりも、能力を強化してくれる存在として捉えるべきなんじゃないかな。AIを使って、どう仕事を作り出すかを考えた方がいい。

■空前のAIブームを前に、私たちがやるべきこととは?

司会:では、最後に一つお伺いします。これから機械学習やAIなどは、更に普及していくと考えられていますが、私たちがすべきこととは何でしょうか?

宗像:とにかくまず、勉強すること。今、学習のコンテンツって本当に多いんですよ。機械学習でも、オンライン講座や動画や本とか、勉強するには事欠かない。だから、これからAI関連でビジネスやりたいと思っている学生とか起業を目指している人でも、今から勉強すれば充分チャンスはあるんですよ。情報も溢れているし、絶対にやったほうがいいと僕は思ってる。

三上:もうAIの技術自体は確立されているんですよね。だから、もうやったもん勝ちっていう話は僕も聞きました。ただ、ディープラーニングになると膨大な計算量とコストが必要なので、実はできる会社ってそんなに多くないんです。でも、学習済みのデータを活用するなら、ある程度勉強すればできると思います。だから、特に企業の経営層の人たちは予算を取ってやるべきだと思いますね。そうしないと、世界のスピードに取り残されていってしまう。

宗像:僕もそれにすごい危機感を感じてて、特に官僚の人たちとか、国のトップに近い人たちこそ、きちんと学ぶ必要があると思う。あとは個人レベルで、いかに情報収集をして、勉強を続けていくかっていうところがポイントだろうね。

司会:なるほど。今が過渡期だからこそ、企業としても、個人としても勉強が必要ということですね。宗像さん、三上さん、本日はありがとうございました。

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