僕が起業を決意するまで

僕がイノーバを設立してから、もうすぐ5年が経過しようとしている。当初はたった1人で始めたイノーバだが、今は社員34人、登録ライター1,600人超の規模にまで成長した。

昔からの知人や友人に会うと、「いつから起業を考えていたのか?」という質問をよく受ける。そこで今回は、僕が起業を決意したいきさつを書いてみたい。

1 子ども時代~大学卒業まで

僕が子ども時代を過ごしたのは、福島県郡山市。四方を山に囲まれた、のどかな田舎で育った。実家は「ゆうき商店」という小さな店舗を営んでいた。小さいころから親が働く姿を見てきたから、商売は身近な存在だった。そんなわけで、当時から、「自分も将来なにか商売をやりたいな」という思いはあった。

高校卒業まで地元福島で過ごした後、僕は東京の大学へと進学した。当時から僕は、家族のために早く一人前にならなければならない、人より速く走らなければならないという思いが強かった。普通に企業に勤めれば、生涯賃金は3億円程度。自分はもっと上を目指したいと思っていた。ただ、何か具体的な案があるわけではなく、とりあえず大学卒業後は一般企業への就職を目指すことにした。

2 富士通入社~MBA留学

大学卒業後、新卒で入社したのは、富士通。この頃の僕の夢は、起業ではなく、海外駐在だった。イメージしていたのは、日本企業の一員としてグローバルに活躍する自分だった。ところが、海外駐在の現実を知るにつれ、この夢はだんだんと萎んでいった。

それでも海外への憧憬はあったので、社内で募集していたMBA留学に手をあげることにした。そして無事に社内選考に通り、ビジネススクールへ出願することになった。MBAの出願の際には、MBAを通して何を学び、将来何をしたいのか、エッセイを書いて志望校に提出する必要がある。5年後、10年後に、自分は何をやりたいのか。頭をひねって色々考えた末、僕は、「中小企業を対象とした新しいコンサルティングサービスを展開したい」というようなことを書いた。面白いことに、僕が今やっているビジネスもまさにこれに該当する。ただ、このときはまだ、起業を具体的にイメージしていたわけではなかった。

3 楽天、そしてネクスパスへ

MBA留学後、富士通に戻ったものの、自分が何をやりたいのか、明確な未来図を描くことはできずにいた。中小企業診断士や会計士の勉強をしてみたりしたが、どうもピンとこなかった。悶々とした日々を過ごすうち、とにかく何か新しいものにチャレンジしたいという気持ちが強くなり、富士通から楽天へと転職した。

楽天では、物流事業の新規立ち上げを担当した。「0からビジネスを立ち上げる」というこのときの経験が、後のイノーバ起業の際、色々と役に立った。だがこの時点でも、起業のビジョンを具体的に持っていたわけではなかった。

楽天の次に転職したのは、ネクスパス(現在の社名:株式会社トーチライト)。この会社は三菱商事とミクシィの合弁会社で、SNS関連のマーケティングビジネスを手掛けていた。従業員は僕を含めてわずか4人。必然的に、ホームページの運営からアメリカのベンチャー企業との提携交渉まで、僕が一手に引き受けることになった。

僕が起業を決意したのは、このネクスパス在籍時だ。SNSを使ったマーケティング手法を勉強するために、米国のIT業界で何が起きているのか、ネットで徹底的に情報収集をするようになった。TechCrunchVentureBeatといったIT系のニュースサイトを読み漁る毎日だった。そこから見えてきたのは、米国のIT業界で躍動するベンチャー企業の姿だった。特に僕が注目したのは、コンテンツ作成によるインバウンド方式のマーケティングビジネスだった。これは当時まだ日本には浸透しておらず、いけるのではと思った。少ない資金で起業する「リーンスタートアップ」というコンセプトを知ったのも、このときだ。「もしかしたら自分にもできるかもしれない。」「挑戦してみたい。」そんな思いが日に日に強くなっていった。

そんなときに起きたのが、僕の故郷・福島を襲った東日本大震災だった。ニュースで次から次へと流れる凄惨な画像を眺めながら、悔いないように生きたいという強い思いが沸いてくるのを感じた。失敗したっていいじゃないか、またどこかに就職すればいいだけだ。そして僕はネクスパスを退社し、イノーバ設立に踏み切った。

4 イノーバ設立後

2011年6月28日。イノーバを設立し、僕は新たな一歩を踏み出した。

イノーバは決して当初から順風満帆だったわけではない。コンテンツ作成ビジネスといっても、最初のころはライターも自分ひとり。誰が読んでいるかも分からないブログ記事を、ただ黙々と更新する日々が続いた。

この頃、実はコンテンツ作成以外にも、いくつかのビジネスにトライした。しかしどれもうまくいかなかった。例えば、スタジアムで、360度のパノラマカメラを取り付けて、ネット上でライブやコンサート会場の雰囲気を再現するというビジネス。自分では結構いけるのではないかと思ったが、残念ながらうまくいかなかった。

Web上でマーケティングを統括できるシステムを開発し新サービスを開始したのは、2012年12月のことだった。うまくいくという確証はなかったが、運よく時代の波に乗ることができ、事業は順調に拡大していった。そして現在に至っているわけである。

5 起業を考える人へのアドバイス

自分の経験から、起業を考える人に対して僕ができるアドバイスがあるとしたら、以下の3つだ。

ひとつ目は、常にアンテナを張りめぐらせ、最新の情報を追いかけること。そして時代のニーズをつかむこと。ビジネスチャンスは、ニーズがあるところに転がっている。

ふたつ目は、「失敗したっていい」というチャレンジ精神。ニーズをうまくキャッチできたとしても、それがビジネスとして成功するかどうかは、やってみないと分からない。現に、僕も色々な失敗をしている。失敗を恐れていては、何も始まらないのだ。

そして最後に重要なのは、最悪のシナリオまで予め考えておくこと。僕の場合、起業前に転職活動をしてみて、自分の市場価値を確認した。これにより、失敗した場合には事業をたたんで就職することが可能と判断し、起業に踏み切ることができた。ビジネスは始めるときよりも撤退するときの方が難しい。万が一の場合のバックアップを確保しておく慎重さも必要だ。

以上、僕が起業を決意したいきさつを書いてみた。今後起業を考えている人の参考になれば、幸いである。

One clap, two clap, three clap, forty?

By clapping more or less, you can signal to us which stories really stand out.