教育のオープンソース化に思う

宗像淳 (Innova CEO)
6 min readSep 21, 2016

今、世界的に教育がオープンソース化されている。「オープンソース化」というと難しく聞こえるかもしれないが、要はインターネットさえあれば、無料で誰でも質の高い学びが得られますよ、ということ。

このような、教育を公開する動きが活発になったのはここ数年の話。しかしこの短い期間で、ユーザー数は急激に増えている。一方で、日本の教育はどうだろうか。世界ではこれほど大きな変化が起きているのに、日本の教育はずっと変わっていない。このような状態で、世界を舞台に戦える人材が輩出できるのだろうか。

■なぜ日本の教育は変わるべきなのか?

日本の教育が変わらなくてはいけない理由は、「受験」に焦点を当てているからだ。日本の教育は長年「いい大学に行くための勉強」「社会人になるための勉強」を続けてきた。かつての大企業に入れば一生安泰、と言われていた時代では、それでも問題はなかっただろう。

しかし、そのような時代はもう終わってしまった。インターネットの出現によって、世界が動くスピードは一昔前とは比べものにならないほど加速している。これから求められるのは、時代の変化に対応できる人材。にもかかわらず、前の時代から変わらない教育を続けていたら、日本の競争力は落ちる一方だ。

受験に最適化された教育から、生涯学習につながる教育へ。このシフトが、今の日本に求められている。生涯学習につながる教育とは、「学ぶ楽しさ」を感じられる教育のこと。受験だけに焦点を当てていると、大学生や社会人になった時に勉強する意味を見つけられなくなってしまう。もし、学ぶことの楽しさを自分で見つけられたら、大学生や社会人になった後も、学習意欲を保てるのではないだろうか。

これは実際に僕自身が、大学受験の経験から気付いたことだ。僕の地元には、大学受験に特化した予備校などがなく、僕はひたすら受験のノウハウ本を元に自習を続けていた。学校に頼らず自分で勉強する習慣。学ぶことの面白さ。これらを学生の内に経験したことによって、社会人になってからも学習意欲を高く持つことができたし、それは今の僕の強みにもなっている。

■アメリカの学校に学ぶ、教育コンテンツの活用法

では、日本の教育が変わるためにはどうすればよいのだろうか?僕は、オープンソース化された教育の活用が1つの解決策になると思っている。

アメリカではすでに、オープンソース化された教育の導入が活発に行われている。例えば、生徒は事前にインターネット上の動画で授業の内容を学び、練習問題を実際の授業で解く。分からなければ、その場で教師に質問し、教師が動画をもとに解説する。

講義を家で聞いて、練習問題を授業で解く。従来の授業形態と反対になっているため、この手法は「反転授業」と呼ばれている。

(参考画像:https://www.flipclass2go.com/cms/)

この学習方法によって、聞くだけの一方通行だった授業は、相互のコミュニケーションが生まれる授業へと変わっていった。この手法は、今やアメリカの大学だけでなく、中学や高校でも急速に広がりを見せているという。このように、オープンソース化された教育を活用することで、日本の教育も大きく改善できる可能性がある。

では、実際にアメリカの授業でも導入されている教育コンテンツで、特に有名な2つのサイトを紹介しよう。

1つは、Khan Academy(カーン・アカデミー)。

https://ja.khanacademy.org/

創立者のサルマン・カーンが、遠くに住むいとこに数学を教えるために、You tubeに動画をアップしたのが設立のきっかけだという。その時に、動画で授業を教えることのメリット(理解している部分は飛ばして、分からない部分だけ繰り返し見られるなど)に気が付き、サービスとして提供されるようになった。このサイトでは初等教育から大学レベルの講義を提供していて、今では世界中で数百万人のユーザーを抱えている。

もう1つ、代表的なサイトはCoursera(コーセラ)。

https://www.coursera.org/

このサイトは世界中の大学と提携し、大学教授から専門的な講義を受けられることが特徴だ。実際に僕も受講しているが、無料なのに内容が素晴らしいので、すっかり夢中になってしまった。受講した中でも特におすすめのコースを紹介しよう。

1.Learning how to learn

いかに効果的に学ぶか、ということを、脳科学の研究をもとに教えてくれる講義。

「外国語習得にはコツがある」「やり方次第で文系でも数学が得意になれる」など、あまり知られていなかった効果的な学習方法を学べる。

2.Programing for everybody

これは、ITを学びたいと思っている文系の方全般に。アメリカの大学では、文系の学生もプラグラミングを学ぶのは当たり前。ぜひ、チャレンジして欲しい。

3.Machine Learning

今話題のAIや機械学習をちゃんと理解したい人に。ちょっと難しめなので、数学の得意な理系の友達に教えてもらうのもおすすめ。

■今の時代に求められる教育とは?

これからは従来のような、いい大学を目指すためだけの勉強をさせるべきではない。学ぶことの楽しさや、生涯学習としての勉強方法を子供たちに教えていくのが、今の大人の役割ではないだろうか。世界レベルの教育は、その内容もさることながら、教師の教え方も非常にユニーク。ぜひ、日本の教育現場でもオープンソース化された教育を活用して欲しい。

<参考サイト>

http://net.keizaikai.co.jp/archives/4006

https://www.ted.com/talks/salman_khan_let_s_use_video_to_reinvent_education?language=ja

http://www.juce.jp/LINK/journal/1303/02_01.html

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宗像淳 (Innova CEO)

(株)イノーバ代表。米国ウォートン校MBA、マーケティング専攻。楽天・トーチライトで、Eコマースやソーシャルメディアの新規事業の立上げ。現在、ソーシャルやWEBサイトで集客をするコンテンツ制作のビジネスを展開しています。ライターさん、絶賛募集中。詳細はこちらから http://t.co/CjAYENyOhH