数学嫌いだった少女はなぜ、工学部の教授になれたのか?〜学習効率を圧倒的に上げる6つの方法〜

Courseraというオンライン教育サービスをご存知だろうか?アメリカをはじめとする世界中の大学と提携し、その授業内容を無償で公開している画期的なサービスだ。僕も現在、機械学習などいくつかコースを受講しているが、その内容の質の高さに感動している。

その中で見つけたコースで非常に面白いものがあったので、紹介したい。カリフォルニア大学サンディエゴ校のコースで、タイトルは「Learning How to Learn(訳:学び方を学ぶ)」。人間の脳の動きを科学的に分析し、どうしたら最も効率よく学び、その内容を定着させられるかを同大学の教授が分かりやすく解説してくれる。今日はその中から、学習効率を上げるための6つの方法を紹介したい。

■1.脳の集中モードと拡散モードを意識的に使い分けよう

人間の脳には集中モードと拡散モードの2種類の働きがある。この講座では、ピンボールを使ってそれぞれの動きを、解説している。

(参考画像:https://www.coursera.org/learn/learning-how-to-learn/lecture/75EsZ/introduction-to-the-focused-and-diffuse-modes)

集中モードの時は、ピンボールが跳ね返る障害物同士が詰まっている状態だ。この詰まっている状態の時は、いつもの自分の思考方法でモノを考えている。上の画像だと、赤線の部分で思考していて緑のエリアには障害物が多く、辿りつけない。例えば集中して、何かをインプットしたり理解しようとしている時はこの集中モード。脳内の狭いエリアを使って思考してる状態だ。

一方、拡散モードはこの障害物同士が、離れている状態。すると思考は脳内の広い範囲を巡ることになる。新しい思考方法やアイディアを生み出したい時は、今まで使っていないような広いエリアを使って脳全体で考える必要がある。それが可能になるのが、この拡散モードなのだ。ぼーっとしている時や気分転換(ランニングなど)をしている時に、ふとアイディアがひらめいたような経験はまさにこの拡散モードだ。

面白いことに、人間の脳は必ずこのどちらかのモードに切り替わるようになっているという。つまり、これを意識して使い分けるということは、脳を効率よく使えるということになる。例えば、画家のサルバドール・ダリやエジソンはこの脳の使い分けを意識していたらしい。集中して作業をした後、ぼーっとしながらイスに座り、鍵やボールなどを手に持つ。するとだんだん眠くなってきて、手に持っていたモノが床に落ちる。その音ではっと目覚めた時に、新しいアイディアが浮かぶのだという。そして、拡散モードからまた集中モードへ戻っていく。

僕の経験上でも、文章を書いていて進まなくなってしまう時は、だいたいが書きながら考えている時だ。この状態だと、集中モードと拡散モードがうまく使い分けられていない。書くときは、編集などいっさいせずに書き進める。編集したり、アイディアを出したいときは、書かずに拡散モードに入る。このように切り替えることで、それぞれの作業を効率よくこなすことができる。編集せずに書き進めるためのアプリなどもあるので、これらのツールを使うのも良いだろう。

(関連記事:ライター必須アプリ?強制的にモチベーションをアップする「Write or Die」http://penya.jp/trend-05/)

何か新しいものや少し自分にとっては難しいものを学ぶ時には、この2つのモードを行ったり来たりすることで、徐々に理解し、習得していく。集中する時間と同じくらい、ぼーっとする時間も大事なのだ。

■2.「なんとなくやりたくない」ことは時間を区切る

誰でも一度は、やらなくてはいけないことを何となく先延ばしにしてしまった経験があるのではないだろうか。「なんとなくやりたくないな」と思っている時、脳内の「痛み」に関連したエリアが活発になっている。私たちの脳は本能的に、そのようなネガティブな刺激を避けようとするので、何か別のことに注意を向けようとする。このようなメカニズムで、先延ばしが発生してしまう。

この先延ばしに対する効果的な対策が、とにかく時間を区切ってしまうこと。これに有効なツールが「ポモドーロタイマー」だ。IT関係に従事している人は、知っている人も多いかもしれない。

(参考画像:https://www.coursera.org/learn/learning-how-to-learn/lecture/Dci3o/a-procrastination-preview)

やりたくないな、と思っていることに取りかかる時は、とにかく、25分間だけ集中する。その間は何からも妨害されない状態を作ろう。そしてその後は、休憩や自分へのご褒美などを用意する。苦手な作業や気が進まない作業も「25分間だけやってみよう」と考えたら、取りかかりやすいのではないだろうか?

■3.数学は反復練習で克服しよう

何か抽象的なものを理解しなくてはいけないとき、脳に必要なのは反復練習だ。代表的なものは、数学。数学が分かりにくい理由の1つは、概念が抽象的であるからだ。実際に目に見える物体であればその概念はつかみやすい。また目に見えないものでも、愛や希望や情熱などは自分の感情と結びついているため、それがどんなものか実感できる。

しかし数学はどうだろうか。+、×、÷、√などは非常に抽象的で、説明されてもピンときにくい。実感として概念を理解しづらいため、もともと脳に定着しにくい。そこで必要なのが、反復練習だ。サッカーやバレエなどと同じで、数学や科学など抽象的なものを理解するには、反復の練習が必要。脳を鍛えると言ってもいいかもしれない。同じ思考パターンを繰り返す内に、徐々に理解ができるようになる。だから数学などは少しずつでも、毎日繰り返し練習することが必要なのだ。

(参考画像:https://www.coursera.org/learn/learning-how-to-learn/lecture/3YLAF/practice-makes-permanent)

そしてここでも重要なのが、最初に出て来た集中モードと拡散モードの切り替えだ。集中して練習をした後は、意識的にリラックスをして拡散モードに切り替えると、脳に定着しやすくなる。僕も現在、Couseraで機械学習の勉強を進めているが、数学と同じで抽象的な部分はなかなかピンと来なかったり、理解するのが難しいところも出て来る。そんな時に少し振り返って繰り返すことで、自分の中に定着させられるので、この方法は非常に納得できるのだ。

さらに、この教授自身も、とてもユニークなバックグラウンドを持っている。驚いたことに、彼女はもともと数学が苦手だった。しかし、軍隊や通訳などさまざまな職を経験したのちに26歳から数学を学び始め、今では機械工学の教授になっている。彼女いわく、数学にはこの反復が大事ということが分かってから、徐々に理解が進むようになったのだという。

■4.睡眠時間は必ず確保する

高校時代に先生から「四当五落」という言葉を言われたことがある。ちょうど受験の頃だった。4時間寝るやつは志望校に受かる、5時間寝るやつは落ちる、という意味だ。ところがこれは、脳科学的には間違っていることが判明している。

なぜ、睡眠を取ることが大事なのだろうか。実は私たちの脳は起きて活動している間に、毒素やストレス物質を生み出している。そして睡眠時には脳が縮小し、脳細胞の間に空間が生まれるのだ。この空間を通って、ストレス物質や毒素などが排出されていく。

(参考画像:https://www.coursera.org/learn/learning-how-to-learn/lecture/AsWfx/the-importance-of-sleep-in-learning)

もう一つ、睡眠によってもたらされるメリットがある。睡眠は有害物質を取り除いてくれるだけでなく、重要でない部分の記憶を消し、覚えたい部分を強化してくれるのだ。多忙な時などは、睡眠を時間の無駄とつい考えてしまうかもしれないが、実際には脳の働きや思考をクリアにしてくれる非常に大切な時間だということを、認識しておこう。

■5.「再読」よりも「思い出す」力を重視しよう

勉強した内容や、読んだ本の内容を自分の中に定着させるためには、繰り返し読むことが大事だと思いがちだ。しかしある研究によると、再読よりも「内容を思い出す」方が良い方法だということが判明した。

本であれば、読み終えた内容で自分が覚えているものは何か、を振り返ってみる。勉強なら、その後に復習の為のドリルやクイズをやってみるのが、もっとも効果的だ。僕が実際にやっているのは、本を読んだ後にその内容を周りに伝えること。どこが面白かったのかを周りに話すことで、もう一度その本について思い出し、より理解を深めることが出来る。

(参考画像:http://www.objectfanatics.com/ekutan.html)

このグラフは「忘却曲線」と呼ばれるもので、人間の脳は20分後に内容の42%、1日後には74%の内容を忘れてしまうらしい。人間の記憶には短期記憶と長期記憶があり、短期記憶には基本的に4つの情報しか保存することができない。覚えた内容を長期記憶に移す為に必要なのが、何度も長期記憶にアクセスすることだ。長期記憶に保存しようと試みる、このプロセスがいわゆる復習である。僕の経験上、もっとも最適な復習のサイクルは24時間後、2週間後、1ヶ月後だ。このサイクルで復習に取り組むと、かなり定着率は上がるだろう。

■6.脳内に情報のチャンク(塊)を作ろう

私たちが何か知らないことを学ぶ時に、新しい情報や概念はバラバラになったジグソーパズルのようになっている。それをまとめて、一つの塊を作ることがチャンキングだ。

(参考画像:https://www.coursera.org/learn/learning-how-to-learn/lecture/LurUJ/what-is-a-chunk)

例えば、ピアノを弾いたことがない人が初めてピアノを弾く時、この音符の時は鍵盤のドを押す・・・というように、細かい動き1つ1つを考えながら弾いていく。しかし、ピアノが弾ける人は一連の動きが脳内で塊になっているので、細かい動作を考える必要がない。基礎的なことを繰り返すことによって、一連の動きや情報が塊になり、その塊自体にラベルが付けられる。このチャンキングによって、長期記憶の中に情報が整理された状態で保存され、引き出しが増えるので思い出しやすくなる。 タコが足を伸ばすように、1つの入り口から関連した情報を引き出してくることができるのだ。

(参考画像:https://www.coursera.org/learn/learning-how-to-learn/lecture/LurUJ/what-is-a-chunk)

これを本や勉強に応用するには、まず先に全体像を把握すること。例えば本なら、いきなり読むのではなく、まず目次を読んでみる。次に小さい見出しを読んで、全体像を把握してから内容を読む。すると、あらかじめ全体像が頭の中に入っているので、入ってきた情報を塊にしやすくなる。これを意識して取り組んでみると、より効率よく学習ができるだろう。

■効果的な方法論を知ることは、目標達成への近道

僕は、勉強においても仕事においても「方法論」は非常に重要だと思っている。例えば受験。効果的な方法論を知っているか知らないかだけで、結果は大きく異なる。脳科学的に裏付けされているだけあって、ここに出て来る方法はどれも非常に説得力があった。これほど素晴らし内容の授業が、オンラインで誰でも無料で受けられるのだ。やらない理由がない。授業は英語だが、スピードを遅くしたり、字幕も出すこともできるので、一度受けてみて欲しい。正しい学び方を知ることで、自分の可能性をもっと広げることもできるはずだ。

(参考:https://www.coursera.org/learn/learning-how-to-learn/home/welcome)

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