【書評】7/23発売予定の書籍「〈インターネット〉の次に来るもの―未来を決める12の法則」を原著で読みましたが、名著です。

タイトルのInevitableという単語には、「避けられない、免れない」という意味だ。著者は、Kevin Kelly。WIREDという雑誌の編集長も務めたことがある人物だ。本書には、今後20年で私たちが遭遇するであろうテクノロジーが纏められている。日本語訳もこれから出版されるらしい(注)ので、ベンチャー企業やIT業界にいる人には是非読んでもらいたい。多くの面白いテーマが凝縮されているのだが、今回はその中でも注目のトピックを紹介しよう。

注:NHK出版から2016/7/23予定で出版されるようです。タイトルは、「〈インターネット〉の次に来るもの―未来を決める12の法則」翻訳は、朝日の服部桂さん。以前、MITのメディアラボにもいらっしゃった方で、楽しみですね。https://www.amazon.co.jp//dp/4140817046/

■AI研究を加速させた、3つの技術革新

本書の中でも、個人的にもっとも興味を引いたのが、AI研究だ。

「長い冬の期間を経て、AI研究は今、新しい春を迎えたのだ。」

Kevin Kellyはある講演で、AI研究についてこのように表現している。この言葉通り、AIの研究自体は30年ほど前からされているが、ここ数年で爆発的に研究が進んだ。AIの研究が急速に進んだ背景には、主に3つの要因がある。

(参考画像:http://live.sxsw.com/detail/videos/sxsw-live/video/4807927121001/kevin-kelly-%7C-12-inevitable-tech-forces-that-will-shape-our-future-%7C-sxsw-interactive-2016?autoStart=true&q=interactive)

まず、ニューラルネットワークの開発だ。ニューラルネットワークとは、人間の脳の仕組みを模倣したモデル。人間の脳と同じ働き、同じアルゴリズムでコンピューターが情報処理をできるようになったのだ。このニューラルネットワークを多層にしたものが、ディープラーニング。以前は、このニューラルネットワークを多層にすると、学習が進まなくなるという弱点があった。しかし近年の研究によってこの弱点を克服し、更に、画像データを与えられただけで、その特徴を学習できるようになった。つまり、画像データを元に、より精度の高い予測・分類が可能になったのだ。

(参考画像:http://a16z.com/2016/06/10/ai-deep-learning-machines/

上記の図のように、ディープラーニングによって、出力データ(右側の結果)ではブルーとオレンジを正確に分類することが出来るようになった。ニューラルネットワークの詳しい動きについては、下記の動画で分かりやすく説明されているので、参考にして欲しい。(注2)(http://a16z.com/2016/06/10/ai-deep-learning-machines/

(注2)このデモがあまりに面白いので、刺激を受けて、CourseraのMachine Learningの授業を取り始めました。Programingの課題があるので、ちと大変なのですが頑張って最後まで勉強します。ちなみに、この授業、Machine Learning業界でも有名なAndrew Ngにより行われています。しかも無料。世界最高の叡智から学べるなんて、良い時代になったものです。https://www.coursera.org/learn/machine-learning

次に、GPUの開発だ。GPUとはコンピューターなどの画像処理を担当する、半導体チップのこと。以前は、AIを作動させるのには、ものすごく大きなコンピューターの力が必要だった。それが、GPUの誕生により、以前よりパワフルで効率的に稼働させることが可能になった。また、GPUが大量に生産されるようになり、その価格が劇的に下がった為、以前よりも大量の計算を安価にできるようになったのだ。

最後が、ビッグデータ。AIがニューラルネットワークの仕組みを使って、正しく最適な回答に辿り着くには、膨大な量のデータが必要だ。このビッグデータが以前よりも簡単に手に入るようになった。

以上、3つの技術が組み合わさって、AIの研究を急速に早めたのだ。

■AIと共存する、私たちの未来とは?

では、AIが私たちにどのような未来をもたらすのだろうか?例えば、仕事。Kevin Kellyはこの点において、あまり悲観的ではない。なぜなら、人間とAIでは得意な作業が全く異なるからだ。単純作業やデータベースから情報を探す作業では、人間がやっている限り、小さな見落としやミスが、どうしても発生してしまう。しかし、AIであればそういった作業をミスなく完璧にこなすことができる。一方で、今の時点でAIは教えられた内容以上のことはできない。つまり、これから人間の仕事は、より複雑かつ創造性を必要とするようなものへシフトしていくだろう。

よって、これから私たちが考えなくてはいけない問題は「どうAIを使い、どうやって共存していくか?」だ。例えば、工場の製造ラインでは人間に変わってAIが搭載されたロボットが作業をする。今までは、周りを認識出来ない為に並んで働くことは不可能だった。しかし、これからは人間や障害物を認識し、回避できるようなるため人間とAIが組み込まれたロボットが並んで働くことも可能になる。これも、AIと人間の共存例の一つだ。

Kevin Kellyが主張するように、これから間違いなくAIは私たちの生活にものすごいスピードで浸透するだろう。その技術は、産業革命と同等のインパクトをもたらすと言われている。このような社会を創造すると、私たちの心には多かれ少なかれ「恐怖心」が出てきてしまう。しかし、大事なことは、この革新的な技術改革に目を背けず、向き合っていくことだ。

今、AIのプラットフォームを巡って競争が起きている。その戦いに参戦しているのは、Google、Apple、IBM、Facebookなどアメリカ企業ばかりだ。僕は日本も、人材や資金を使って国を挙げてAI事業に注力すべきだと思う。それ程、このAIの技術革新は大きな影響を私たちにもたらすからだ。また個人レベルでは、AIを大きなビジネスチャンスだと考え、自分のビジネスに、AIをどう活かしていくかを考えなくてはいけない。

■私たちの飽くなき探究心がもたらすもの

もう1つ、注目のテーマはQuestioning(探求)。「分からないものを知りたい」というのは、人間の根源的な欲求の一つだ。少し前までは、知らないことや分からないことがあれば、図書館などに行って、本から調べることが当たり前だった。しかし、今では検索エンジンのおかげで、早く、しかもかなり安価に知識を手に入れることができるようになった。ある記事※によると、Googleは年間約2兆件以上の検索を取り扱っているという。同社はそれ以上の正確な数字を明らかにしていないため、これ以上の件数が検索されている可能性もあるのだ。

問題なのは、この人間の探究心には終わりがないということ。分からなかったことを、検索エンジンで探し、答えを見つける。そのうちに、また分からないことが出てきて、検索し・・・ということを繰り返し、満足することがない。その結果、著者のKevin Kellyによると、2年で2倍のペースで知識の急拡大が広がっているという。つまり、私たちが手にする情報量も、急激に増加してきているということだ。

それに伴って、僕は今後、個人での価値観のギャップが加速していくことを懸念している。なぜなら、人によって情報媒体、情報収集の手段、メディアに対する姿勢が全く異なるからだ。かつては新聞・テレビが主なメディアであり、多くの人がそこから情報を得ていた。しかし今では、情報収集するためのツールは溢れている。その中で何を使うかは完全に個人の選択に委ねられているのだ。

テレビを見る人、見ない人。SNSを使う人と、そうでない人。日常的に新聞を読む人、読まない人。自分から積極的に情報を取りに行く人と、メディアに対して受け身な人。更に、情報量が膨大な為、人は自分の好きな情報しか集めなくなる。そうすると個人の価値観はますます先鋭化するだろう。私たちが持つ「未知のものを知りたい」という純粋な欲求は、今や「価値観の先鋭化」という懸念と表裏一体になっていることを、自覚しなくてはいけない。

■新しい時代の波に乗ろう!

個人的に、今のテクノロジー分野の動きや空気感は、かつてのインターネットが出始めの頃に非常に似ていると思っている。変化が次々に起きていて、本当にワクワクする。

またアメリカのVCによると、「産業革命の頃の1880年代の頃の雰囲気と同じ」だという。1880年代と言えば、南北戦争があり、自動車が普及し始め社会が大きく変わろうとしていた頃である。その位の変化が今、起きようとしている可能性が高い。

僕の懸念点は、日本はこの新しい波にキャッチアップできるのだろうか、ということ。もう一度、日本全体でゼロから産業を作り出す覚悟がなければ、あっという間に世界から遅れをとってしまうだろう。技術が進化するスピードは、僕たちが思っている以上に、早いのだ。

<参考記事・文献>

The Inevitable: Understanding the 12 Technological Forces That Will Shape Our Future

https://www.amazon.com/Inevitable-Understanding-Technological-Forces-Future/dp/0525428089

http://searchengineland.com/google-now-handles-2-999-trillion-searches-per-year-250247

http://live.sxsw.com/detail/videos/sxsw-live/video/4807927121001/kevin-kelly-%7C-12-inevitable-tech-forces-that-will-shape-our-future-%7C-sxsw-interactive-2016?autoStart=true&q=interactive

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