IT関係者必読!最新インターネットトレンドレポート
インターネットトレンドレポートをご存知だろうか。
証券アナリストで「インターネットの女王」とも言われる、メアリー・ミーカー。彼女が毎年発表しているレポートでは、今インターネットの世界でどんなイノベーションが起きているか、何がトレンドなのかを詳しいデータと共に分析している。
先日、このレポートの2016年度版が発表された。その中でも、特に面白かったトピックを幾つか取り上げたい。
■世界でインターネットを使っているのは何億人?
・世界中でインターネット人口は30億人。浸透率は42%。
・インターネット人口の成長スピードは緩やかになっている。
・国によって、インターネットの普及スピードに差異が出てきている。
■世界のGDP、大きな割合を占めるのは?
・1985年には世界のGDP成長の63%は北米、ヨーロッパ、日本で構成されていた。2015年では、世界のGDPの63%を生み出しているのは中国と日本を除くアジア。北米プラスヨーロッパプラス日本は29%。
このデータから分かることは、世界の経済の中心がアジアに移ろうとしている、ということだ。これは、かつてなかった大きな変化である。私たちは発想を変える必要があるだろう。
今までは、先進国で新しいサービスが生まれ、新しい技術が生まれ、それを途上国が作る。
この流れは、今や崩れつつある。
既に、途上国から世界に通用するような、グローバルブランドが出始めているし、今後ますます出てくるだろう。また、欧米と日本の市場成長は止まっているが、市場規模は依然として大きいまま。なので、途上国から生まれたイノベーションが、先進国に持ち込まれる傾向は増えるだろう。特にインターネット業界では、中国やインドにも優秀な人が多く、このような流れは起きやすい。
そして、そのようなアジア地域に近いのが、日本の強みである。欧米企業がアジア進出をする時に、拠点をまず日本に置いて、そこからアジアの国々に進出するというビジネスモデルがいいのではないかと思う。
■世界のGDP成長スピードと景気悪化への対策
・世界のGDPの伸び率は緩やかになっている。
・また各国の負債が増え続けているので、景気悪化への対策が必要である。
・成長率の減速、各国の負債増加、高齢化社会によって、リスクが高まっている。
・対策として「効率を良くする、イノベーションを起こす、雇用創出、価格を下げる」 などが挙げられている。
今までは、先進国の成長率が減速しても、途上国や中国が成長しつづけていた。しかし今回のレポートで、それらの国々の成長率も、鈍化していることが分かった。そして、私たちは今後景気が悪化した時に、どんなビジネスができるのか、ということを考える必要がある。
■少子高齢化する世界で、求められるビジネスとは?
・人口増加のペースが減速している。出生率が落ち、寿命が伸びている為、世界的に緩やかな少子高齢化傾向にある。
この世界的な少子高齢化傾向は、今後ビジネスにどのように影響するだろうか。
社会的に高齢化が進むと、もちろん消費者のニーズも変わる。「モノをたくさん買いたい」というニーズから、文化や芸術、宗教など心の満足感や、生きていることの豊かさを実感できるような商品・サービスの需要が高まるだろう。例えば、旅行などがこれに該当する。
いずれにせよ、「世界全体が緩やかな少子高齢化に向かっている」ということは、念頭に置いておくべきだ。それと共に商品やサービスのあり方も変わってくる。日本独自のもので、世界に輸出出来るような商品もあるかもしれない。
■これから注目するべき世代とは?
・このレポートでは初めてミレニアル世代(1980年〜1996年に生まれた世代)を取り上げた。
・この世代の特徴として、インターネットと共に育ち、グローバルかつ寛容的な価値観を持つ点などが挙げられる。
今年のレポートはいつもの年に比べて、ユーザーの話が多いのが特徴だ。中でもミレニアル世代は大きく取り上げられていて、この世代は価値観も、デジタルデバイスの使い方も、今までの世代とは大きく異なる。彼らは約10年後に、消費の中心となる。Eコマースも彼らによって大きく変わるだろう。欧米企業は既に、その10年後に向けた準備を始めている。
■アメリカの広告媒体における最新トレンド
・インターネット広告は相変わらず伸びいて、中でもモバイル広告が急成長している。
・紙の広告費が減って、更にインターネット広告にシフトしている。この傾向は今後も続くだろう。
このグラフからも分かるように、紙媒体はあまり見られていないにも関わらず、広告費支出が高い。ますます、インターネット広告、特にモバイル広告にシフトするだろう。また、インターネット広告の世界で大きな問題と言われているのが、モバイルの画面が小さいので、広告が出しづらい点だ。
これによって企業側が広告を出すのを躊躇ってしまうと、収入源である広告費が入らなくなってしまう。この問題に対する模索は続いている。また今、世界ではアドブロッキングソフトウェアなどの利用者が増えている※。いかに、ユーザー体験を阻害せずに広告を入れられるか。これが今後のインターネット広告における、大きなテーマになるだろう。
※アドブロッキングソフトウェア利用者数の推移
■未来の小売業とは?
・アマゾンは小売業だが、今は自社ブランド製品を作り始めている。(メーカー化)
・膨大な顧客データを元に、新しいプロダクトを作るビジネスモデルが、小売業の新しい形になるかもしれない
・今までネットで売りにくいと言われていた商品(洋服・インテリアなど)も、個人に向けたサービスや嗜好にもっと焦点を当てれば、ビジネスチャンスはある。
・stitch fixでは個人に向けのスタイリングサービスを提供し、今急成長している。
■これから自動車産業はどうなるのか?
・自動車産業でのイノベーションが加速している
・UberやLyftの出現によって、自動車に対する概念が変わってきている
自動車業界は今後5年から10年で大きく変化するだろうと、予想されている。
僕が面白いな、と思っているのは、WalmartがUberやLyftと提携している動きだ。
今まで物流は、設備産業で、全国に物流網を張り巡らせなくてはいけなかった。よって物流産業に参入できる会社は、限られていたが、このような新しい形態の会社が配達してくれるようになれば、物流業界も大きく変わるだろう。
そこで注目すべきは、途上国。今まで、途上国では物流網が整っていなかった為にECが普及しなかったという背景がある。今後、それらの地域での配達が可能になれば、途上国でECが急激に発達する可能性もある。
またUberとLyftの台頭により、自動車産業には物凄い危機感を感じているだろう。今までは個人・企業に自動車を売れば成立していたビジネスモデルが、これからは通用しなくなる。自動車産業は急激なイノベーションの加速に伴って、新しいビジネスモデルを模索しなくてはいけない。
■ITの新しい波「データプラットフォーム」
・今後はあらゆる企業で、「大量のデータを蓄積し、分析する」という作業が必要になる
・ビッグデータをどう分析し、活用していくかが今後の大きな課題→データプラットフォームという新しいカテゴリーの出現
今まではデータを集めて分析できるのは、ごく一部の業界の一部の企業に限られていた。今後は、この作業を自社で行うのが当たり前になるだろう。そうなると、新しいニーズが出現する。「大量のデータを蓄積し、意味のある形に分析し、ITスキルを問わず誰でも使えるようにしたい」というものだ。既に、このニーズに対応するべく、いくつかの会社がビジネスを始めている。
ここで注目したいのが、今まで大企業しか使えなかったものが、中小企業でもできるようになった、という点。中小企業こそ、この競争優位性を活かすべきだろう。自社の製品を売りたいならば、データを元にきちんと分析し、その利点をお客さんに分かりやすい形で伝える事が企業の義務である。「便利ですよ」というだけのセールストークではなく、この製品によって、何が改善できるのか。どんな利益をもたらしてくれるのか。それを伝えなくてはいけない。その為にも、ビッグデータは絶対に活用するべきだ。
尚、ビッグデータについては、過去でブログにも取り上げているので、こちらも参考にして欲しい。(参考記事:ビッグデータをコンテンツマーケティングに最大限活かすには?
(https://innova-jp.com/big-data-for-content-marketing/)
■これを読めば、インターネットの未来が分かる
この記事で紹介したのは、レポートのほんの一部に過ぎない。ここに書かれている情報は、非常に有益で役立つものばかりだ。これを読むことによって、経営に直結する判断やアイディアが生まれる可能性さえあると、僕は思う。今後10年、20年先を見据えた経営をするのであれば、必読だ。インターネットの女王が教えてくれた、ビジネスのヒントがここには詰まっている。是非、活用してみてはいかがだろうか?
<参考記事:Internet Trends Report 2016 http://www.kpcb.com/blog/tag/Internet%20Trends>