なぜ優秀なエンジニアを低待遇で採用してはいけないか

Tetsuya Morimoto
6 min readMar 11, 2017

この記事は技術そのものやエンジニア採用のことがよく分からない経営者へ向けて書いています。エンジニアが読めば当たり前のことが書いてあります。また優秀なエンジニアならこう考えるのではないかというところは、私見によるものなので本当にそうかどうかは分かりません。

募集要項を書く

募集要項で最も重要なのは待遇に関するところだと私は思います。具体的に言えば、だいたいの年収です。もちろん業務内容や組織の雰囲気なども重要ですが、業務内容や組織の雰囲気が良ければ年収が低くても働こうと思ってくれるのではないかと考えるのは経営者の奢りであって、そんなエンジニアはほとんどいません。優秀なエンジニアにとってはそのどちらも満たす求人が他にたくさんあるために候補にすらなりません。

逆に業務内容に魅力がなくても年収さえ高ければ良いという優秀なエンジニアも一定数いるはずです。待遇を具体的に書くことはそういった層に響くのではないかと私は思います。

募集要項には具体的な待遇を応相談としている求人をよく見かけます。なぜ応相談としか書けないのかの理由もこの後で考察します。

まずは募集要項で最も大事なことはこれだと覚えておいてください。

具体的な待遇について提示すること

優秀なエンジニアを採用したい

優秀なエンジニアが応募にきたら高い待遇を提示しましょう。稀に若くて優秀なエンジニアを市場の平均的な待遇で採用できるときがあります。そんな幸運を待ち構えている経営者も稀にいます。しかし、はっきり言って時間の無駄です。そんなエンジニアを待ち構えているうちにビジネスは競合に遅れをとって打ち負かされてしまうでしょう。

スタートアップ企業や小さい企業で絶対にやってはいけないことが普通のエンジニアを採用することです。経営者向けに分かりやすく説明すると、年収500万円のエンジニア2人と年収1000万円のエンジニア1人なら、後者の方が遥かに高い生産性を業務に活かしてビジネスに貢献してくれると私は思います。

一般論として優秀なエンジニアの生産性は普通のエンジニアの10倍と言われています。仮に年収1000万円で優秀なエンジニアを採用できるのだとしたら少なくとも普通のエンジニア2人以上の貢献をもたらす見込みがあることが一般論からは言えます。

優秀なエンジニアを採用できない

待遇を応相談としながら、エンジニアの応募はちょくちょく来ます。採用もちょくちょく出来ています。しかし、なぜか自社では優秀なエンジニアを採用できていないと感じることがあれば、そんなときに行うことは1つしかありません。

社内の優秀なエンジニアの待遇をあげること

中国の戦国七雄の時代、燕という国が亡国寸前から再建した「まず隗より始めよ」という有名な逸話があります。これにより名将楽毅などを採用できたとあります。この逸話は凡人である郭隗という家臣を優遇することにより、郭隗より優秀な人が自分ならもっと高待遇で迎えられるだろうと集まってきて、優秀な人材を採用できたという教訓として現代まで故事として残っています。

普通のエンジニアを厚遇しなさいとまで私は言及しませんが、少なくとも社内のエンジニアの待遇と採用するエンジニアの待遇には密接な関係があります。

その理由は、仮に社内のエンジニアの技術力が高く市場評価より低待遇で働いているとしたら、採用するエンジニアの技術力と待遇の基準が社内のエンジニア基準になってしまうからです。そのため、優秀なエンジニアを市場評価よりも低待遇で採用することになり、競合他社と比べてエンジニア採用で不利な条件をもったまま競争することになります。これでは優秀なエンジニアを採用することはできないでしょう。

優秀なエンジニアを低待遇で採用することができた

これは決してその企業にとって幸運なことではありません。その次の採用から前節で書いたことが起こり始めるからです。

社内は現状維持でこれから採用するエンジニアを高待遇にする

これは最もやってはいけないことです。組織が歪になってしまいます。優秀なエンジニアが低待遇で優秀ではないエンジニアが高待遇という、組織として真っ当ではない体制を形成してしまうリスクがあるからです。最悪の場合、その企業の評価制度を崩壊させてしまいます。

社内の優秀なエンジニアの離反を招き、競合他社へ転職してしまう場合もあるでしょう。そうすると、低待遇で優秀な人が高待遇で優秀ではない人に入れ替わってしまうという状況が起きます。

あとからこの状況を是正するのはとても難しいです。優秀なエンジニアの待遇を上げるか、優秀ではないエンジニアの待遇を下げるかのどちらかしかありません。つまり社内の評価制度に大きな変更をもたらすことになります。

一般論として待遇を下げることはその社員のモチベーションを下げることに寄与するのでやりにくいことだと思います。それでは優秀なエンジニアの待遇をあげれば解決かというわけではなく、その後にやってくるのは優秀ではないエンジニアを高待遇のまま、どうしたらいいかという人事の悩みの種になります。

なぜ募集要項に具体的な待遇を提示できないのか

社内の優秀なエンジニアの待遇が市場評価よりも低待遇であるため、適切な市場評価の待遇を提示すると社内から不満や懸念の温床になってしまうのを警戒しているのではないでしょうか。

もしそうではないのであれば、具体的な待遇を提示した方が優秀なエンジニアを採用できる確率が高くなると私は思います。

仮にもしそうだとしたら、繰り返しになりますが、経営者がまずやることは

社内の優秀なエンジニアの待遇をあげること

です。そして、その次は募集要項に

具体的な待遇について提示すること

を行います。

まとめ

ここまで優秀なエンジニアの採用確率をあげるコツを書きましたが、残念ながらそれでも優秀なエンジニアを採用することは難しいです。私もエンジニアの端くれですが、自分が経験のある分野であればまだしも、自分が専門外の分野のエンジニアの優劣ははっきり言って全く分かりません。最も確実なのはしばらく一緒に働いてみて判断することです。

そういう意味で一定期間の試用期間を設け、実際に働いてもらって採用可否を判断するような制度が、現状では最も採用リスクを下げる手段だと私は考えています。

少なくとも経営者は、自分はたくさんの人をみてきたからエンジニアの優劣も判断できるという驕りを捨てた方が良いです。またなぜか分かりませんが、私の経験則では駄目なマネージャーほどそういうことを言う傾向にある気がします。世界に同じ人はどこにもいません。

そして、社内にいるエンジニアをもっと信頼してほしいと思う次第です。

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