ジョン・バッテルが戻ってきた — Mediumで新媒体「NewCo Shift」開始

あのジョン・バッテル(John Battelle)が、テクノロジー&メディア業界の論客としての活動を再開する気になったようだ。

バッテルは、1990年代はじめに編集者としてWIREDの創刊に立ち会い、その後は自らIndustry Standardを立ち上げてネットバブル期のシリコンバレーの模様を伝え、さらに2000年代なかばには当時隆興してきたブログメディアをサポートするFederated Mediaという広告会社をつくり、いずれも業界関係者(この場合の業界は、メディア、マーケティング、そして取材対象となったテクノロジーの各分野などか?)の間で大きな注目を集めていた人物。そんなバッテルが、このMediumのプラットフォームを使って「NewCo Shift」という新しい媒体を立ち上げているのをさきほど発見した。

NewCo Shiftというサイト名の下には、「ビジネスおよび社会で起こりつつある産業革命以降もっとも大きな地殻変動の様子を伝える」(”Covering the biggest shift in business and society since the industrial revolution.”)という何とも威勢のいいキャッチフレーズが付されている(キャッチフレーズでなければリード?媒体の性格を説明するものだから、なんと呼ぶのが正しいのか?)。また、創刊の辞代わりに書かれたと覚しき「The Tech Story Is Over — We Won. Now What?」と題する記事のなかには、「20数年前にWIREDが創刊された頃には(デジタル)テクノロジーが社会に与える影響を世の中にきちんと伝えなければという使命感に燃えていたものだった」「その後テクロノジーは世界のほぼすべての事象に影響を及ぼすようになった」「テクロノジーが世の中の主流に受け入れられたのではなく、いまやテクノロジーこそが主流(をつくりだしている)」といったことが記されている・・・ただ、そのあたりの部分までは読んでいて正直退屈だった。

話が俄然面白くなるのは、その後、未来のことにバッテルが言及し始めるあたりから。

バッテルはここで「資本主義の再発明(reinvention of capitalism)」というキーワードを持ち出している。

過去約30年間にわたって、たしかにテクノロジーは世の中のさまざま事象に影響を及ぼし、その影響でいろんな変化が起こってきた。だが、社会に好ましい変化をもたらすにはテクノロジーだけでは不十分であることも同時に明らかになった。そして、社会を良い方向に変えていくには、その「オペレーティング・システム(OS)」として機能しているビジネス(企業のあり方)もなんとかしなくてはならない。デジタル・テクノロジーの勃興期に夢のなかで語られていたような素晴らしいビジョンを実現しようと思えば、テクノロジーの引き起こした革命から学んだことをしっかりと整理・把握し、それを応用して新しい種類のビジネス文化を打ち立てなくてはならない、などとバッテルは宣言している(このあたりはほぼ意訳/念のため以下に当該部分を引用しておく)。

At Wired, we believed that technology would build that world for us. But I’ve come to a longer view of positive change, and I now believe technology alone won’t get us there. Tech is a fundamental force in our society, but business, as Douglas Rushkoff puts it, is our core operating system. If we are going to pay off the fantastic visions of our early tech dreams, we’ve got to consolidate what we’ve learned from the tech revolution and apply it to building a new kind of business culture.

たとえば、いろんな国の諜報当局によるデータ収集とか、サイバー戦争(国家間もあれば国家対企業感もあろう)とか、あるいは潜在的な監視カメラの遍在(スマートフォンを含む)とか、ここ何年かは「こんなはずでは・・・」と感じることが増えている。ずっと昔にスティーブ・ジョブズが言っていた「個人のempowerment」とかはどこかに消し飛んでしまい、代わりにテクノロジーのつくり方や使い方を知っている一部の存在(国家や法人など?)の立場が以前にも増して大きくなっているようにも感じられる。「個人で情報発信」などと騒がれた時代もあったが、気がついてみれば「グーグルの独り勝ちじゃないか」といった思いが浮かぶこともしばしば。

あるいは、このままいけばいずれ大半の仕事がAI&ロボットに取って代われると予言する人も少なくないが、そうなった時に大多数の人がどう暮らすことになるか、あるいはどう食べていけばいいかといった課題について説得力のある具体的なアイデアを示した例はあまり目にしない。

フランス革命やアラブの春といった例を持ち出すまでもなく、人が蜂起するのはたいていが「食べていかれなくなった時」とほぼ相場は決まっている。富の創出に用いられる生産手段を持てるごく一部の人間と、そうでない人間との差は、テクノロジーの複雑化とともに、これからさらに大きくなっていくだろう・・・。

そうしたことで、あえて言葉にするなら「明るい未来」といった思いを捨てられない年配者(厳しい時代がデフォルト設定で育ったミレニアルズではない)としては、憂鬱な気持ちになることも少なくが、バッテルの記事を読んで勇気づけられるのは、すでに「社会のOS」であるビジネスの分野で以前なら考えられなかったような変化が進行しているという指摘。バッテルはそんな変化の実例として、自動車メーカーのGMと消費財大手のユニリーバのふたつを挙げている。

GMはエンジニア出身のしかも女性のCEOが誕生し、さらにそのトップの旗振りで運輸交通分野のあり方を変革すべく、ベンチャー企業に15億ドルも投資している、というのが例として挙げられた理由。ベンチャー企業とはライド・シェアのリフト(Lyft)ならびに自動運転技術開発のクルーズ・コンロトールのことだろう。ユニリーバが何で選ばれたかについては門外漢の私にはよくわからない。

また、両社のような巨大企業に変革を促すことになった要因として、ユーバー(Uber)やリフト(いずれもライド・シェアリング)、それにオネスト・カンパニー(The Honest Company。ジェシカ・アルバが共同創業者の、化粧品・トイレタリー用品ブランド)、ダラー・シェイブ(Dollar Shave。オンライン専業のひげそり用品メーカー)の名前も挙げられている。

バッテルはこのNewCo Shiftという媒体で、そうした新たな流れを創り出すような企業の動きをカバーしていくつもりでいるのだろう。今後の展開がとても楽しみな媒体と感じられる。

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