ピザ2枚ルールは手札8枚を揃えるゲーム

Atsushi Takayama
7 min readJan 14, 2019

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https://paulitaylor.com/2015/04/24/lessons-from-a-year-spent-working-on-a-two-pizza-team/

スタートアップはいかに課題解決と仮説検証のレイテンシーを最小化するかというゲームです。

スループット最大化を狙ってはいけません。どれだけ忙しくても最も本質的な課題解決や仮説検証ができなければ無意味です。

(実はスタートアップ以外にも当てはまると思っています)

ピザ2枚ルールとは

ピザ2枚ルールとはAmazonのジェフ・ベゾスが提唱したルールで、1つのチームはピザ2枚を囲める人数以下にしなければならないというものです。

直感的にもなんとなく理解できます。10人の飲み会だと会話が2個できちゃいます。せいぜい8人ぐらいだったら一つの会話が成立します。10人の会議だともう自分の意見は言わなくてもいいかって思っちゃいます。

ヒトの脳にハードコードされたマジックナンバーなのだと思います。

同じように「ダンバー数」というのがありますね。band: 30〜50, cultural lineage group: 100〜200, tribe: 500〜2500 だそうです。ダンバーさんはピザ2枚には気づいていなかったのでしょうか。

スタートアップの場合

スタートアップがVCに出資受けて焦って人を増やしちゃう話はよくありますが、仮説検証が重要なフェーズであれば8人という数字は意識したほうがいいと思います。

今エンジニアリングが重要なフェーズなのか、セールスが重要なフェーズなのか、サポートが重要なフェーズなのか、マーケティングが重要なフェーズなのか、データ分析が重要なフェーズなのか、これを読み誤って人を増やしちゃうとプロダクトマーケットフィットが一気に遅れます。

チームの相性とか心理的安全性も重要事項です。

https://www.slideshare.net/takaumada/startup-paradox-thinking

採用するのが怖くなりました?ええ、採用とは怖いものなのです。

大企業の場合

一方大企業にとっては、社内から集めるだけですぐにピザ2枚チームを作ることができます。大企業がスタートアップに比べて圧倒的にスピードが出せる点の一つです。大企業の他の強みはこちら

なので大企業は末端のチーム構成は仮説に合わせて柔軟に組み替えたほうが良いと思います。もちろんチーム組み換えの結束度リセットの頻度とのトレードオフですが。

もしセールスの課題を解決したいのであれば、セールスとエンジニアの混在チームを作りましょう。セールスチームの要望をエンジニアチームに伝えてやってもらうなどは最悪です。

人はより頻繁に話をしている相手じゃないと一緒に課題解決してくれません。そういう動物なのです。だからデイリースタンドアップや定例ミーティングは大事なのです。頻繁に顔を合わせるからこそ、必要なときに声をかけに行けるようになるのです。

人数を増やしたくなったとき

人を増やしたいと思っても、まずは絶対に8という数字の死守を考えましょう。

エンジニアが足りないなら、スコープを絞りましょう。8人オーバーするより絶対マシです。または開発環境の効率化を最重要課題にしましょう。開発環境効率化の業務委託を入れるのも手です。

サポートが大変なら、サポートを減らすことを最重要課題にしましょう。外部ツールを入れるだけでだいぶ効率化するかもしれません。またはチームで捌ききれない問い合わせを外に投げることを考えましょう。

どうしても増やすなら、10人までは増やして11人になったらチーム分割するのが良いと思います。(10人まで増やして良いと言うと増えちゃうので、増やしたら毎日チームで腕立て伏せ100回やってください)

チーム分割

チーム分割には2つのパターンがあるかと思います。

一つは専門職チームを切り出すパターンで、もう一つはPDCAチームを横に増やすパターンです。

専門職チームを作るのであれば、PDCAチームが専門職チームに頻繁に頼らなくてもPDCAが回せる状態に持っていくのが理想です。PDCAチームを複数作る場合、お互いが干渉しなくてもお互いのPDCAを回せるようにしていかないと、3チーム以上になったときにとてもつらくなります。

  • 自分でやったら30分
  • 同じチームの人に頼んだら1日
  • 隣のチームに頼んだら1週間
  • 遠くのチームに頼んだら1ヶ月
  • 他社に頼んだら3ヶ月

この現象は「取引コスト理論」というので説明できるそうです。

いかに課題解決と仮説検証のレイテンシーを最小化するかというゲームだと考えると、他のチームにお願いしている時間など無いのです。

もちろん最初から理想の状態にするのは不可能ですから、チーム境界をきちんと引くという課題を解決するためのピザ2枚チームを、リーダー同士で作るべきです。

組織的ピザ2枚チーム

ピザ2枚チームのリーダー同士は同じくピザ2枚チームを作るべきです。なぜなら、課題は境界にこそあるからです。境界を引くと境界の課題が見えてくるようになります。それを解決するのがリーダー同士のピザ2枚チームです。

そういう連鎖でトップまでピザ2枚チームで構成するのが良いと思います。

CEO直下のピザ2枚チームは会社が見通せる最長期の課題解決をするチームで、末端はイテレーション単位の課題を解決するチームです。

(だから末端のチームは頻繁に変えたほうが良いのです)

100倍の生産性(?)

「優秀なプログラマーと平凡なプログラマーは生産性に100倍の差がある」という話があります。

ピザ1枚チームを強く意識すると、10人を8人にするインセンティブが10倍ぐらいで、12人を8人にするインセンティブが100倍ぐらいあるように感じます。(あくまで直感でしかありませんが)

そう考えると、チームの人数をピザ2枚に抑えられる実力を持ったメンバーを集めれば、チームの価値が100倍になるのです。

エンジニアであればチームで扱う複数の言語に精通しているとか、新しいことをしたいときに自分で勉強してすぐ習得しちゃう人とか、チームの生産性向上のためのテストとか設計とかを呼吸するようにやっちゃう人とか、チーム内のこぼれタスクを片付ける仕組みを作っちゃう人とか。

エンジニアでないメンバーがエンジニアリングやエンジニアリング的考え方を覚えるのも同様に価値が高いです。

まとめ

ピザ2枚チームを意識して生産性の高い組織を作りましょう。

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Atsushi Takayama

NewsPicksで2020年からCTOを、2022年からはFellowをしています。その前はピクシブでCTOをしていました。Courseraでイリノイ大学の大学院をやっています。