こんにちは、この記事は、pyspaアドベントカレンダー2018の 20日目の記事です。今年も年に1回しかかかないブログを更新する日がやってきてしまいました。
今年は柄にもなくお金の話をしようと思います。
想定読者
- 源泉徴収されるサラリーマンである
- 自社株(RSU等)をもらっている
- 副業(執筆による印税など)による雑所得を得ている
- そんな人がふるさと納税の上限をちゃんと計算したい
TL;DR 最初にまとめ
- 素人がちょっと調べた情報なので、正確には税務署や税理士に聞いて
- RSUは給与収入扱いなので、確定申告して税金を払う必要がある
- RSU含めた場合のふるさと納税の上限金額は、ふるさとチョイスの「控除金額シミュレーション→詳細シミュレーション→確定申告Aの方」の計算結果でだいたい正確に計算できる
- ふるさと納税の計算に使う「給与収入」は、1〜12月の給与明細の総支給額の合計に、RSUがあるならその金額を足したもの
- ふるさと納税の計算に使う「社会保険料等」は、今年の1〜12月の給与明細の「健康保険料」「厚生年金保険料」「雇用保険料」を全て合計したもの
- その他各種所得控除の金額は、扶養控除や生命保険控除など年末調整のときみたいに、対象となるものを計算しておく
- 以上のを↑のシミュレーションに入れると、自己負担額2000円に収まる上限がだいたい正確にでる
- 副業は普通、本業収入と比較して金額が少ないので雑に給与収入に足してそんなずれないと思われるが、ざっくり副業収入の3%程上限があがるくらいの効果(20万円の雑所得なら6000円ちょっとぐらい)
- ただし、所得税率が変わりうるラインにいる人は、ふるさと納税の第2の限度額に気をつけないと、自己負担額2000円に収まらない可能性も
ある日、自社株をもらってしまったら
僕はいわゆる外資系の企業に勤めていますが、通常の給料やボーナス以外に、自社株を報酬として定期的にもらっています。いわゆるRSUというやつです。
RSUとはRestricted Stock Unit(譲渡制限付株式)の略で、一定の条件を満たすと自社株が報酬としてもらえるというものです。
RSU以外にも厳密にはいろいろ種類がありますが、ようは外資系企業(単に外資系に多いというだけで、日本企業でもあります)は、自社株をボーナスとして社員に渡すことがあるということです。株価があがればそのまま株の価値があがりますので、社員は会社の価値を高めようと頑張るという寸法です。
RSUは給与所得なので税金がかかる
👱「わーいやったー!タダで株をもらったぞー!」
そうは行きません、RSUは株の現物支給ではありますが、「給料」扱いになります。
実際に株の権利が手元に来ることを、Vestといいますが、Vestされた日の株価と為替(仲値/TTM)に応じて、その価値が日本円で換算できますので、その金額のボーナスを貰ったのと等しい扱いになります。現物支給にもかかわらずです。RSUをもらった(Vestされた)場合、例えすぐに売らなかったとしても、「税金」は納めなければなりません。
今年度の確定申告でRSU分の給与収入を申告
普通サラリーマンは源泉徴収されています。毎月の給与明細には、その月の所得税や住民税が記載されています。住民税は去年の収入をもとに計算され、それが6月からの1年間で12分割されて毎月徴収されます(これを特別徴収という)。
住民税は去年の収入を元に計算されているため、RSUをもらったとしても、今年の住民税はすでに確定済みであり変わりません。しかし所得税は今年1年の収入を仮定して源泉徴収しています。通常ボーナスや残業代なので上振れ下振れしたときは、年末調整の結果、多めに持ってかれたり、お金が還付されたりします。しかしRSUはそもそも源泉徴収されていないため、確定申告して報告しないといけません。そう、今年毎月のお給料以外でいくら収入があったかは、別途報告しないと脱税になってしまうのです。
確定申告というと、年収2000万以上の人がするものとか、医療費控除で還付を受けたい場合とかにやるイメージばかりがありましたが、源泉徴収されない収入が発生してしまうと、そんなんことばかりじゃないんですね。
「黙っとけばばれないんじゃないの?」という声をちらほら聞きます(脱税になっちゃうから駄目ですよ)。ばれるらしいです。同じ会社の同僚が過去または現在RSUを申告していたら、「この会社の他の社員はRSUもらってるから、他の人ももらってるんじゃないの?」と調査されるからです。
そういえば副業はどうなる?
サラリーマンといえど、本業以外から収入をもらっている人も多いと思います。僕も微々たるものですが執筆による印税収入というものがあります。このような収入は、確定申告をする場合は「雑所得」として申告します。例えば印税収入の他にもアフィリエイトによる収入などもそうですね。執筆印税などは出版社の方で源泉徴収されているため、よく「20万円以下なら申告してなくていいんだよね?」と思っている人も多いかもしれませんが、今回はRSUのために確定申告をすることになるので、こちらも必須です。
雑所得とは、他の9種類の所得のいずれにも当たらない所得をいい、公的年金等、非営業用貸金の利子、著述家や作家以外の人が受ける原稿料や印税、講演料や放送謝金などが該当します。
なお、本業とは別にこのような副業を事業化して事業所得としているような人は、このあたりには十分詳しいでしょうし、今回の対象読者ではないのでここではふれません。
さて確定申告をどうするかについてはここでは触れません。はじめは怖かったけど、一度やってしまえば簡単です。e-Taxが間違いなく楽なので、今のうちにできることとして、e-Taxに必用な、マイナンバーカードを取得しておきましょう。
今年のふるさと納税の計算はどうなる?
そうかー、年が明けたら確定申告しないといけないんだな・・・あれ?
こういうときって、ふるさと納税できる上限金額はどうなるの?
ふるさと納税のサイトを見ると、いくらまでなら負担2000円でふるさと納税ができるのかの早見表や金額をシミュレーションできるフォームがあります。
まずは早見表を見てみると・・・金額荒っ!参考にならない。
ちゃんとシミュレーションのフォームに入力して計算してみるか。というわけで、計算用のフォームを見てみると、「源泉徴収票のあの数字を入れろ」「この数字を入れろ」と書いてありますが、今年の分の源泉徴収票は年明けにならないともらえないし、去年の源泉徴収票は今年と違いすぎてあてになりません。そもそも今回気になっているRSU分は源泉徴収票には含まれていないので、、入れるべき正確な数字がいまいちわかりません。
確定申告者用の計算フォームがあるから、RSUは給与所得だし、単純に今年の年収にRSUでもらった分を上乗せして、ふるさと納税のサイトの計算表みればいいのかな?しかし、いくつかのふるさと納税のサイトで計算してみると、サイトによって表示される上限金額が結構ずれて、どの上限が正しいのかわからない!
ふるさと納税の上限を厳密計算したい
そもそもふるさと納税の仕組みとは、「寄付金控除」にあります。寄付金を払うと、その分税金が控除される仕組みは昔から有りましたが、最近ふるさと納税が話題になってるのは、住民税の寄付金控除分が増えたからです。
どういう計算がされるのか、所得税は国税庁の、住民税は任意の(住んでる)市区町村などのサイトを見てみましょう。
所得税の寄付金控除とは
次のいずれか低い金額-2千円=寄附金控除額
イ その年に支出した特定寄附金の額の合計額
ロ その年の総所得金額等の40%相当額
住民税の寄付金控除とは
基本控除額
特別区民税・都民税のどちらも控除対象となる場合、
{(対象となる寄附金の合計額)と(総所得金額等×30%)のいずれか低い金額-2千円}×10%特例控除額
都道府県・市区町村への寄附金(ふるさと納税)については、下記の特例控除額が加算されます。
特例控除額=(特例控除の対象となる寄附金の合計額-2千円)×特例控除適用率(都民税2分の5、特別区民税3分の5)
・特例控除適用率=90%-{寄附者に適用される所得税の限界税率・復興特別所得税額(0%または5.105%~45.945%)}
・調整控除適用後の住民税所得割額の20%が特例控除額の上限となります。
まとめると、例えば5万円の寄付金(ふるさと納税)をすると以下の図の内訳で、所得税と住民税がそれぞれ控除になるようです。なおワンストップ特例制度を使った場合は金額が同じでもこの比率が異なります。今回はあくまで確定申告する人の場合に限定。
ふるさと納税の内訳の各控除の上限
当然いくらでも控除されるわけではなく、寄付金控除にはそれぞれ上限金額があります。先程のリンクを見てみると、
- 所得税:「その年の総所得金額等の40%相当額」
- 住民税基本分:「総所得金額等×30%」
- 住民税特例分:「調整控除適用後の住民税所得割額の20%」
総所得(つまりはざっくりその年の年収)の40%とか30%もの金額を寄付なんてしないので、1. と 2. の上限に達することは普通はなさそうです。となると 3. の特例分の控除上限が、ふるさと納税できる金額にキャップをかけていると言えそうです。
「調整控除適用後の住民税所得割額の20%」これが何なのか調べてみたところ、住民税所得割額とは、ふるさと納税をしなかった場合に来年払う住民税の額のことで、そこから寄付金控除以外の控除である調整控除を引いたものとのこと。調整控除は年間2500円と大変小さいものなので、ほぼ無視できる。
【↑補足訂正 2019.12.21】調整控除は実際には人によって変化するもので、最小が2500円ってだけで、実際には扶養控除などの合計額で増加するようです。なので人によってはここが1万円ぐらい変わるかも。https://www.city.nerima.tokyo.jp/kurashi/zei/jyuminzei/zeigakukojo/choseikojo.html
ふるさと納税の上限を確定させるのに必要な数字は?
結局まとめると何が必要かというと、ふるさと納税できる金額を確定させるには、まず以下が必要になります。
- ふるさと納税しなかった場合の来年の住民税の金額(住民税所得割額)
この金額が決まれば、税率やら含めて他の数字も全て決まります。結局住民税計算しろってこと。
さてここから、本当はどうやって所得税を計算して、住民税を計算して・・・という説明に入りたいのですが、ここまでですでに相当長文になってきたので、そこは図を使って紹介することでお茶を濁したいと思います。
実際のふるさと納税と税金の計算例
外資系サラリーマンAさんの例
というわけで、頑張って全部計算してみました。以下は架空の外資系サラリーマンの例です。
本業収入
- 1月〜12月の給料(ボーナス含む)の合計:750万円
- RSUの合計:520万円
副業収入
- 執筆による印税収入:40万円
- 執筆にかかった経費:10万円
控除
- 社会保険料:100万
- 小規模企業共済等掛金(iDeCoなど):27万6000円
- 生命保険:10万
この人はすでにふるさと納税に、5万円使っていました。果たしてあといくら行けるでしょうか?上記を元に、今年あとどれだけふるさと納税できるかを計算してみたいと思います。
計算の流れ(図を説明してるだけ興味がある人以外読む必要なし)
- 給与収入は、1〜12月の給与明細の総支給額の合計に、RSUの金額を足したもの
- 給与収入の金額に応じて給与所得控除額を調べて引いて給与所得を出す
- 雑所得があれば、かかった経費(参考資料とか色々)を引いた額を出す
- 上記を合算したものが所得金額、これ以降所得税と住民税は個別計算
- 次は控除の計算、所得控除は年末調整のときに出す紙みたいによしなに計算する
- 控除の中では社会保険料控除額が一番でかい数字だが、これは今年の1〜12月の給与明細の「健康保険料」「厚生年金保険料」「雇用保険料」を全て合計したもの
- 所得税の寄付金控除はこの時点で控除されるが、住民税はこの時点ではまだ控除されない、住民税では税額控除といって住民税が決まったあとに引かれる
- 所得金額 − 所得控除が、所得税と住民税のそれぞれの課税所得金額
- この課税所得金額で税率が決まる
- 所得税は仮に33%の税率にのってても、33%かかるのは900万を超えた部分だけ、本来は5%10%20%23%33%をそれぞれのレンジでかけてそれを足し込む、それを簡単に計算するのが早見表の税率−税率ごとの控除額の計算(実際には復興特別所得税が計算後の所得税2.1%追加される、よって税率の ×1.021した税率と一致)
- 住民税は原則一律10%、この10%の結果が税額控除前所得割額で、この金額の概ね20%がふるさと納税特例分の上限値
- ようやく住民税の寄付金控除(基本・特例)が計算できる
Aさんはいくらふるさと納税できる?
図の下の「今年のふるさと納税」の枠のなかの、一番下の方にある「あといくらいける?」のところを見てみましょう。ここには、住民税の特例分上限から逆算した数字を元に、あといくらまでならふるさと納税に追加しても、特例分の上限をオーバーしないかが表示されています。
あと27万6000円程度ふるさと納税できると読めます。現在5万すでにやっているので、合計32万6000円ですね。
やったー!じゃあギリギリまでふるさと納税しちゃうぞー!とりあえず合計32万円ほどふるさと納税してみました。ところが計算してみると・・・おや?
上の図は先程のものに、ふるさと納税(寄付金控除)のみを5万→32万円にしてみた図です。よくみてみましょう。上限金額以内に収めてるはずなのに、なぜか一番下にある自己負担金額が2000円どころか、24,000円近くになっています。
なぜ?寄付金を更新した際の、フロー図全体を見てみてください。何が大きく変わってしまったかわかりますか?
理由は単純です。所得税率の部分を見てみましょう。なんと課税所得金額が、税率が変わる境界付近にあったため、寄付金控除自身によって、税率変更の境界を下回ってしまい、1つ下の税率に落ちてしまっています。
自己負担分は何が増えた分なんだ?というと、住民税の特例分の上限にはひっかかってないけれど、所得税の税率が下がったために所得税からの還付分が減ってしまい、当てにしていた還付が受けられず、結果実質自己負担分が2000円を大幅に上回ってしまったのです。この現象、ふるさと納税の第2限度額などと呼ばれているみたいで、税率が変わる境界にいる人には恐れられている?ようです。ちなみにこれ影響うける(税率が変わってしまう)のは所得税部分だけで、住民税特例分にも一見この所得税率が計算式に使われていますが、実際には所得税側の計算で決まった税率ではなく、住民税側の課税所得を元に特別控除率を計算するので、住民税側は影響を受けません。(ややこしい)
もうちょっと説明すると、例えばふるさと納税をしない場合910万円の課税所得があったとします。ふるさと納税が5万円だけのときは、この5万円は税率33%分の控除(還付)が受けられました。しかしふるさと納税が32万円になった場合、上10万円分は33%の税率分還付されますが、900万円を下回った分の残りの22万分については、23%の税率が適用されるため、想定よりも還付が得られません。結果、住民税の控除上限特例分は超えてないのもかかわらず、所得税の還付が減った結果、自己負担分は2000円では済まなくなってしまっています。
第2の限度額はどうすればいい?
まずこの限度額の罠に掛かる人は、税率が変わる前後にいる人かつ、寄付金額で税率が変わってしまうような人なので、これに該当する人は結構少ないはずです。
また残念ながらこの範囲にハマってしまった人はどうすればいいかですが、個人的にはそんなに気にしなくていいじゃんと思ってます。自己負担分絶対出したくないという場合には気をつけるべきですが、実際これが損なのか得なのかは考え方しだいです。
- 自己負担分:2,000円→24,000円
- ふるさと納税金額:5万円→32万円
2万2000円の追加で、27万円ふるさと納税を追加しています。現在はその金額の3割〜5割程度の価値の返礼品が届くことを考えると、考えようによってはそれでもまだ得をしていると言えます。
このふるさと納税の第2限度額も考慮しつつ、各種計算してくれるツールとして、以下のサイトを発見しました。気になる方はこちらを試してみるのも良さそうです。
なお、今回は確定申告をしなければいけないので仕方がないですが、ワンストップ特例でふるさと納税を行った場合、所得税ではなく、全額住民税からのみ控除されます。なので計算上税率が変わることがなく、この罠には陥りません。
結局上限計算どうすればいいか?
長くなりましたが、結局どう計算すればいいのか?RSUもらってる人や雑所得がある人は、以下の情報を集めて、ふるさとチョイスの限度額計算シミュレーションの「詳細シミュレーション→確定申告Aの方」で各種情報を入力しましょう。生命保険の計算が正確に行えない(生命保険分の住民税控除が同じ金額で扱われてしまう)ように見えますが、それ以外は概ね正確にいけます。第2の限度額も気になる人は上に貼ったふるさと納税の限度額,各種控除の減税効果確認ツールに入力しましょう。
- 1〜12月の給与明細を集める
- 「給与収入」は、1〜12月の給与明細の総支給額の合計に、RSUの金額を足したもの
- 「社会保険料等」は、今年の1〜12月の給与明細の「健康保険料」「厚生年金保険料」「雇用保険料」を全て合計したもの
- 「雑所得」は「使った経費」だけ引いて残りを、雑所得の入力欄があればそこに、なければ給与収入に足す
- 計算された上限金額を確認する(第2の限度額には別途注意)
おわりに
ふるさと納税難しすぎ!