【本】諦める力 勝てないのは努力が足りないからじゃない(為末 大)

為末さんのブログは前から見ていて、変わった観点で物事を考える方だなと思っていた。興味があったので本を読んでみたが、案の定凄く面白い内容だった。

自身のアスリートとしての経験から、どう夢と向き合うか、どう自分と向き合うかに関する為末さんの考えが書かれている。

タイトルから「諦めること」に関する内容であることは分かるが、その実は少し文字面から受ける印象とは違う内容だと感じた。

むしろ、個人的には「戦略論」に近いイメージを受けた。

  • 自分が心から望むものは具体的に何なのか?どう定義されるものなのか?
  • 今やっていることはその中でどんな位置づけのものなのか?数ある手段の中で、それに取り組むことの意味は何なのか?
  • それ以外のアプローチで、自分が苦痛を感じずに自然に努力できるものはないか?競争相手に対して有利になるあり方はどんなものなのか?

などなど、目標に対しての正しいスタンスに関して書かれたものだと感じた。

アスリートの世界に限らず、「努力すればいつかきっと報われる」「とにかく余計なことは考えずにこれに打ち込めば救われる」と盲目的に信じるように方向づける空気感は、どの分野でもあると思う。

そうではなく、正しい方向に、正しい努力をすれば、余計な苦痛を受け入れる必要は無い、だからこそ正しい努力の方向を見極めることこそ大事なんだということだと理解した。

この本の中で繰り返し「アスリートが引退を決めるのがどれだけ大変か」ということが触れられていて、正しく問題に向き合おうとすると世の中の強い抵抗に遭うことが書かれている。

これを読んで、最終的には責任を取らない「頑張れ」という声援は、ある意味で凄く残酷なものなんだなと強く感じた。

この本を読んでいて、昔のことを思い出した。

僕は中学生の頃に野球をやっていて、本当に多くの時間を費やして練習をした。が、いっこうに上手くなる感覚がつかめず、事実、何の成果も上げられなかった。本当に野球をすることが苦痛だった。部長という立場から来る責任感だけで何とか続けていたように思う。本当に、全然楽しくなかった。

卒業が近づいたタイミングで、野球部の監督と話していた時に、ふと「お前は頑張ったけど野球には向いていないと思う」と言われた。

その時はかなりショックだった。これまでの努力を否定された気がして、ぽっかり穴が開いたような感覚だった。

でも少し時間がたってから、何かから解放されたような感覚になり、すごく楽になった覚えがある。今思うと、多分当時の僕は正しい方向に努力出来ておらず、それをこの監督が諭してくれたんだと思う。おかげで高校ではスポーツを変え、思いっきりバスケに打ち込むことが出来、野球時代には味わったことがない成長実感だったり達成感を経験することが出来た。

スポーツに全力で打ち込みたいという願望を前提とした時に、この「野球→バスケ」という転換を、「逃げ」と捉えるか、「方向修正」と捉えるかは分かれると思う。

著者がこの本の中で言っているのは、後者のスタンスで捉えればもっと正しい方向に自分の力を使えるということ。

一般的に言われない内容であるだけに、非常に価値ある考え方だと思った。

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