Ripple(リップル)社のビジネスモデルについて — XRPについての考察

※この記事は2017年1月6日に公開されたものです

はじめに断っておくと、私はリップルのプロダクト自体は素晴らしいものだと思っています。しかし、それとXRPの価値については全く別物で、リップルのプロダクトとしての出来またはリップル社の価値とXRPの価格には全く相関性がないため、XRPには投資価値が一切ないと考えています。

Ripple(リップル)についての説明

リップルを一言で表すと「異なる通貨をシームレスに交換できるシステム」です。例えば、うまくいけば手元にあるJPYをほんの数秒でUSDに交換できます。PHP(フィリピンペソ)をMONA(モナーコイン)に一瞬で両替することも不可能ではありません。

モノを交換(両替)するには取引相手が必要です。この相手を瞬時に見つけてくれるのがリップルのシステムなのです。では、この交換はどうやって実現するのでしょうか。ここで必要となってくるのがXRPです。

ビットコインと円の交換を考える

ビットコインを円に交換するにはビットコインを買ってくれる人を見つける必要があります。逆に円をビットコインに交換するにはビットコインを売ってくれる人を見つけなければなりません。ここで登場するのが板情報です。

今すぐに通貨を交換(両替)したい人は、この板に並んでいる注文を利用してBTC→JPYやJPY→BTCという交換を実現します。板に注文を出している人のことをマーケットメイカーと呼びます。この注文はいつ約定するか分かりませんが、その代わり売買を繰り返すことにより売りと買いの売買差益(スプレッド)を享受することができます。

さて、リップルに話を戻しましょう。リップルではリップル上で発行された通貨(IOU)とXRPのペアを板情報として主に利用します。例えばXRP/JPY、XRP/USD、XRP/BTCなどです。それぞれの板に十分なマーケットメイカーが存在すると仮定し、JPYをBTCへ交換したい場合を考えてみましょう。リップルではこれを瞬時に実現できます。交換元通貨にJPYを指定、交換先通貨にBTCを指定して支払先アドレスを自分のアドレスにし送金を実行するだけです。ではこのとき、リップル内では何が起こっているのでしょうか。

答えは単純です。XRP/JPYの板を利用してJPYでXRPを買い、直後にXRP/BTCの板でXRPを売りBTCを入手しているのです。これをリップルのシステムが一瞬で処理してくれます。ここで重要になるのは、十分な売り板もしくは買い板がなければ交換は成立しないということです。XRP/JPYの売り板が合計で1000XRPしかない状態で1500XRPを買うことは不可能です。つまり、リップルの価値交換システムが正常に稼働するには板を置くマーケットメイカーの存在が不可欠ということになります。

ゲートウェイとは

財布の中にある1万円札はリップル上では利用できません。この1万円をリップル上で使うにはゲートウェイを使う必要があります。ゲートウェイに1万円を渡すとリップル上で1万JPYとして利用できるIOUを発行してくれます。IOUはいつでもお金に交換可能です。あなたはこのゲートウェイを信用することでリップルでの価値交換に参加できるのです。

マーケットメイカーについて

リップルを価値交換システムとして利用するにはマーケットメイカーの存在が不可欠なわけですが、現状では大金(例えば1億円)を交換するほどの板は存在しません。よって国際送金にはまだまだ利用できません。XRPを信仰する方からよく聞く発言として「マーケットメイカーが将来現れるからリップルは成長する」というものがあります。果たしてそうでしょうか。

リップル上でマーケットメイクを行うためには2つのリスクが存在します。XRPの下落リスクとゲートウェイの破綻リスクです。マーケットメイクを行うためには常にXRPとIOUを保有する必要があります。そのため、XRP下落リスクが生じます。またゲートウェイが破綻した場合、IOUは無価値となるのでこれもリスクです。この2つのリスクを許容した上で、実需の見込まれないリップル上でマーケットメイクをしなければなりません。

すでに実需要が見込まれるビットコインを利用して海外送金を行う場合、BTC/JPYなどは流動性も高く板もたくさんあるのですが、新興国、例えばフィリピンの現地通貨フィリピンペソとビットコインの通貨ペアBTC/PHPなどは流動性が少なくマーケットメイカーも多くは存在しません。これでは多額の日本円をペソに交換することは不可能です。一番利用者の多い仮想通貨であるビットコインですらこの状態であるのに、さらに知名度の低いリップルでマーケットメイクを行う人が果たして現れるのでしょうか。

XRPとは

上記で述べたように、XRPは通貨間の価値交換のための媒体となるリップル上の通貨です。リップル上で送金を行うには少額のXRPが必要で、送金実行後そのXRPはburn(消滅)されます。使われる度にburnされるため、希少性が増し価値が向上するというのがリップル社の言い分です。実際はburnされる量はごくごく僅かであるため、希少性が生まれるほどの影響はありません。

さてXRPについてですが、一般的なクリプトカレンシーとは全く異なる存在です。例えばビットコインはハッシュレートを提供した者に新規のビットコインが割り当てられますが、XRPはそうではありません。最初にリップルのシステムが稼働したとき1000億XRPが発行され、そのすべてをリップル社が保有した状態でスタートしています。つまり100%プレマインの仮想通貨(みたいなもの)なのです。

さらに、リップルのコンセンサスの仕組みはリップル社の存在無くしては成立しないため、XRPは実質的にリップル社の中央集権通貨と行っても過言ではありません。全くDecentralizedなものではないのです。CryptoCurrencyではありません。

XRPの需要と供給について

一般的な暗号通貨の場合、供給となるは新規に発行されるコインです。ビットコインの場合、現在は約10分に一度12.5BTCが新規に発行されるのでそれが供給となります。供給以上に需要が存在した場合、価格は上昇します。

リップルの場合、供給に当てはまるのは何でしょうか。それはリップル社が、保有するXRPを放出することに該当します。放出、つまり市場での売却(=利益確定)です。リップル社がXRPを放出すれば供給が上回り価格は下がる、供給を絞ると価格は上昇するでしょう。XRPの価格はリップル社のさじ加減次第ということなのです。これがリップルのシステムとしての出来とXRPに相関性がない所以です。

また、市場には愚かな参加者が多数存在するため、リップル社が「○○銀行と提携」というIRを出すだけでXRPに多くの買い手が現れます。リップル社はこのタイミングで放出(売却)すれば大きな利益を上げることができます。株式市場で例えると、ある企業が大型IRを出す前に自社の株を買いIR発表後に売り抜けるようなものです。当然そのようなことは許されていませんし、それが仮想通貨だからといって許されることでもないでしょう。法律の規制がないだけなのです。

リップル社のビジネスモデル

大きく分けて2つあると考えられます。

  • 銀行へリップルのシステムを導入してもらう際の技術提供料およびコンサル料(もちろん、プライベートレジャーとして利用)
  • XRPの売却

割合としては二つ目の売却益の方が大きいと思われます。現在リップル社が保有しているXRPは発行済の約63%、630億XRPです。(https://ripple.com/xrp-portal/)

つまり、約370億XRPをリップル社は関係者へ売却、もしくは市場で売却したということになります。仮にこれまでのXRP価格を控えめに$0.01として、

370億 * 0.01 = 3.7億ドル

もの売上があることになります。

もちろん、市場で売却する以外にも例えばビジネスパートナーとなる第三者(銀行など)にXRPを分け与えているという予想を立てることもできます。しかし、価格をリップル社に支配されている以上、受け取った側に保有し続けるメリットはありません。大型IR発表直後に売却するのが合理的でしょう。いずれにせよ、リップル社の手元を離れたXRPは市場で売却される運命にあります。

XRPの時価総額とリップル社の株式時価総額

一般的な仮想通貨はそれ自体を企業のようなものと捉えることができます。通貨を株式と捉えれば、企業価値である時価総額は “発行済みコイン × 価格” で表されます。コインの開発を行う開発者はマイニングなどにより多くのコインを保有しているので、コインの価値を上げるためコードに貢献するインセンティブが働きます。株式で言い換えると、創業者が自身の保有する自社株の価値を上げるために日々働くことと同じです。

ここでリップル社とXRPについて考えてみましょう。リップル社は株式会社です。株主にはリップル社の他にも様々なVCが名を連ねています。”発行済株式 × 株式の価格” がリップル社の時価総額です。もちろん非公開企業なので、リップルの時価総額は資金調達時に決まります。そしてXRP、XRPにも価格がついているので時価総額が計算できます。”発行済XRP × 価格” です。2つの時価総額が出てきました。果たしてこれらは何なのでしょうか。どちらが本当のリップルの価値なのでしょうか。

個人的な考えを述べると、XRPをリップル社の価値と連動する通貨だと勘違いしているトレーダーが多く存在するため、価格がついてしまっている。価格がついてしまうと時価総額が計算できてしまう。これが実態だと思います。

また、一つだけ確かに言えることがあります。それはこの2つの時価総額には上下関係があるということです。「リップル社の株式としての時価総額 >>> XRPの時価総額」です。

根拠を述べます。リップル社は保有するXRPを好きなタイミングで好きなだけ売却できます。売却した利益はリップル社のバランスシートに計上され、その分リップル社の会社としての評価額は上昇します。同時にXRPは売られることになるため、時価総額は下がります。その逆、つまりXRPを企業として捉えた場合、それがリップル社の株式を売却するなどということはできません。一方が片方の価値を一方的に毀損できる。これが上下関係の理由です。

パブリックレジャーとプライベートレジャー

よく議論になる話題として、銀行は本当にパブリックレジャーを使うのかという話があります。もし仮に銀行群だけで完全に閉じたプライベートレジャーとしてRippleを使うようなことになれば、現在のXRPは無価値になります。ILPを使いパブリックレジャーと接続されるからXRPは無価値にならないという反論もありますが、仮にそうなったとしてもXRPには大した価値はありません。リップル社次第で価格はいくらでもコントロールできるからです。

では仮に、リップル社が保有するすべてのXRPを売却した後の世界を考えてみましょう。おそらくその頃にはリップル社は多額の利益をあげているはずで、上場できている可能性も大いにあります。上場した際は、その利益の源泉がXRPの売却益であることが判明するはずです。そのときに初めて、XRPホルダーは自身の愚かさに気づくのではないでしょうか。

結論

価値交換システムとしてのリップルは非常に良くできているのですが、それとXRPの価値とは全く関係がないことについて述べました。

それではリップル社に投資するにはどうすればいいのでしょうか。それはリップル社の株式を購入するのがベストな選択肢です。現在は非公開企業であるため株を購入することはできませんが、上場を目指しているはずなので、見事上公開企業となった際に株を買うと良いでしょう。XRPを購入してもリップル社の利益となるだけなので注意してください。