政策実現プラットフォーム #LobiLobi についてのご説明
去る8/10、政策実現プラットフォームLobiLobiというWEBサービスを提供開始しました。
第1弾は東京都・武蔵野市にて「保育園おむつ持ち帰り問題」をテーマにしたキャンペーンを実施しています。
このキャンペーンには、おむつ園内処理を望む武蔵野市民を中心に、これまでに70通以上の要望メッセージが寄せられました。
SNSなどでこのサービスを知って驚かれた政治家の方、行政職員の方もいらっしゃるかと思います。
どんな人間が、どんな想いでLobiLobiを運営しており、今後どうしていくつもりなのか。それを知って頂く為にこの記事を書きました。
1万字近い長文ですがよければご覧ください。
遅ればせながら、私の名前は廣田達宣と申します。現在は妻と2人で目黒区に住んでいます。
大学卒業まで
1988年、私は政府系金融機関に務めていた父と、専業主婦の母の間に生まれました。
学校は慶應の内部進学の出身です。素晴らしい家族と友人に囲まれ、のびのびと育ってきました。
経済学部に進学後は、世界107カ国と国内24大学(当時)に支部があるアイセックというNPOでの活動に没頭しました。
海外インターン生交換事業の運営を通し、グローバルに活躍できる人材の輩出や国際交流の促進を理念としています。
OB/OGには小泉純一郎元首相、坂井学代議士、木俣佳丈代議士、高橋はるみ北海道知事などがいらっしゃるそうです。
当時は長期休暇のたびに海外に飛び、国際会議で各国のメンバーと交渉したり、現地企業への営業活動などに明け暮れていました。
IT起業家として社会人生活をスタート
その後、大学卒業とほぼ同時に、株式会社マナボというスタートアップ企業を共同創業して取締役に就任し、5年ほど働いて来ました。
同社は総額6億円以上の資金を集め、全国の中高生に対し「スマホ家庭教師manabo」というサービスを提供しています。
同社では「学ぶ仕組みを創り幸せを促進する」を理念に、特に遠隔地における教育格差の是正に取り組んできました。
そしてベネッセやZ会などとの提携を経て、最終的には駿台予備校グループに会社を売却するに至っています。
5年間で数え切れない程の挫折と失敗を重ねてきました。けれどそういった修羅場の数々が、自分を大きく成長させてくれたように思います。
また外部の投資家から出資を受けて運営してきたこともあり、一旦良い形で区切りをつけることができてひと安心しました。
方向転換のきっかけは「日本死ね」
そんな私が転身したきっかけは、2016年春に話題になった「保育園落ちた日本死ね!!」というブログ記事でした。
調べてみると、待機児童はもちろん、保育・子育て領域には様々な課題が山積していることがわかりました。
このとき私は、バリキャリな妻にプロポーズしようか迷っているタイミング。
仕事と子育てを人生の二大重要事項として掲げ、なんとかしてどちらも両立させたい。私達はそんな想いを共有しています。
このまま結婚して子供が出来ても、私達の人生はとても大変なものになる。あの記事を読んでそう直感しました。
この状況を打破したい。(未来の)自分たち自身の課題を解決する子育て支援の事業をやりたい。
そう思い、共同創業してからずっと心血注いできた会社を退職。そして結婚しました。
とはいえ子育て支援・保育の領域は全くの未経験です。
そこで「1年間だけ勉強させて下さい」とフローレンスという保育のNPOに転職しました。
フローレンスでの1年間
フローレンスでは幅広く様々な業務に取り組ませて頂きました。
なかでも大きかったのは、文京区の成澤区長や、同子育て支援課の皆さんと取り組んだ「こども宅食」です。
現在、日本の子どもの7人に1人、ひとり親家庭では2人に1人が貧困状態(母子世帯なら年収173万円未満の水準)にあります。
こうした子どもたちは様々な機会が制限されてしまいます。それによる社会的な損失は42兆円にも上るという試算も。
官民6団体が共同運営するこども宅食は、食品支援を切り口にしたセーフティネット構築を目指し始まりました。
私はふるさと納税を使った寄付集めを責任者として担当。返礼品は一切なしで、半年で8,000万円以上のご寄付を頂きました。
まだ始まって1年足らずですが、数値に裏打ちされた確かな成果が少しずつ出てきている事が明らかになっています。
政治・行政・民間がうまく連携すると、どれほど意義深い事が出来るのか。それを体感した原体験でもありました。
そして2018年3月、当初の約束通り1年間でフローレンスを退職。
そしてマナボ時代の元同僚のエンジニアをパートナーに、新しい会社を立ち上げるに至ります。
ここで、LobiLobiの着想に至った経緯をご紹介させてください。
着想のきっかけは1つのFacebook投稿
LobiLobiのヒントになったのは、フローレンス時代の元上司である駒崎による、1件のFacebook投稿でした。
ご存知の方も多いかと思いますが、フローレンスは保育・児童福祉の分野における政策提言・ロビイングで多くの実績があります。
過去には小規模認可保育所や、医療的ケア児の為の保育サービスなどの制度を新しく作ってきました。
このFacebook投稿も、子ども達の健康の為に、6月の都議会にて受動喫煙防止条例を通すのに協力しようという取り組みの一環です。
地元の有権者からの応援の声は、政治家の皆さんにとって心強い後押しになりますよね。これはそれを知る駒崎がよく使う戦術でもあります。
実はこの投稿には、いいね約500件、シェア約50件がついており、かなりの人数に見られています。
しかしコメント欄をみると「やりましたよ!」と書いているのはたったの1人。
駒崎のFacebookを普段から見ている保育園パパ・ママ数十人にアポを取り聞いてみた所、こんな声が聞こえて来ました。
※「面倒な事」として具体的には、個人献金の依頼、集会への参加のお誘い、選挙前の投票のお願いなどがあがりました
政治家の方との接点がない一般市民の感覚はこんなもの。けれどそれは、市民・政治家の方々の双方にとってもったいない事だと感じました。
一方、オンライン署名サイトで展開された受動喫煙防止のキャンペーンを同じ駒崎が拡散した時には、1万人以上もの署名を集めています。
1:12,513。この差は、先述のような、一般市民が政治家に連絡を取ることに対して感じるハードルがもたらしているものです。
ならばそんな障壁を感じさせない、使いやすいサイトを作ればこの差を埋められるのではないか。
子育て支援分野は政策を変えないと民間だけではどうしようもない事も多い。(未来の)自分たち夫婦の課題を解決する意味でもピッタリじゃないか。
その後、50〜60人ほどの政治家及び秘書の方々(国会議員〜市区町村議まで、また自民党〜無所属リベラル寄りまで)にヒアリングを実施。
そしてLobiLobiを開発し、リリースに至りました。
LobiLobiの背景には、以下のような問題意識があります。
問題意識1. 政治産業のIT化の遅れ
私が政治家の皆さんへのヒアリングをしていて、とても驚いたことがあります。
それは多くの方が地元の有権者に対して定期的に、活動報告のチラシを郵送やポスティングで送っているという事。
年あたりの印刷費や送付コストの合計は、市議では2桁万円、特別区や都議では3桁万円、国会議員では4桁万円の規模になります。
高齢者の方ならいざ知らず、私たち20〜30代の若者は紙のチラシなんてほとんど読まないのに、です。
広告・マーケティングの世界では、インターネット以前と以後でパラダイムシフトが起きました。
効果測定、ターゲティング、双方向性、リアルタイム性…これらはIT技術を活用する事による大きな利点です。
広告・マーケティング業界ではITにより費用対効果が大幅改善。2017年にはネットがTVを抜いて首位に躍り出ました。
しかしおよそ6兆円と言われる政治産業において、IT化されているのは精々1%未満でしょう。
それもHP作ったり、SNSで細々と発信したり、というくらい。
いまだにチラシと、ポスターと、街宣車と、握手と、飲み会と…というのが有権者とのコミュニケーションの定番です。
誤解を恐れずに強い表現を使えば「壮大な税金の無駄遣い」と言って良いのではないでしょうか。
問題意識2. 若い世代の政治力の弱さ
GDP約500兆円の我が国では、高齢者の医療費・介護費に年間およそ80兆円を注ぎ込み、毎年その額は拡大しています。
そして2人の親から1.5人弱の子供しか生まれず、税金・社会保険料を納める現役世代は減って行くばかり。
こんなの、遅かれ早かれ破綻するに決まってます。そうなれば、道端で弱者が野垂れ死ぬ、戦後の日本に後戻りです。
それを防ぐにはまず、フィンランドやフランスのように子育てと仕事を両立できる環境を作ること。
それにより出生率を高めて2人の親から2人の子供が生まれるようにして、50〜100年かけて寸胴型の人口ピラミッドを作らねばならない。
けれどそんな中、20〜30代の国政選挙の投票率は3〜4割ほど。地方選挙では2〜3割です。
やるべきことは皆わかってる。だけどそれを実現するために必要な、若い世代の政治的な力がない。
高齢者の6〜7割が投票に行くのだから、医療や介護のコストだってそりゃ削れないでしょう、と思います。
規制緩和だって同じです。ライドシェアや民泊などのシェアリングエコノミーがわかりやすい例でしょう。
新産業を支持する若い世代の政治参画意識が低い。そして業界としての集票力が弱いため、旧産業とのパワーゲームで負けてしまっている。
そうやって国としての競争力を失い、日本は世界経済から取り残されていく。
この状況を変えないと、この国の未来はない。周囲に「俺は海外に逃げる」と公言する友人もいるけれど、僕は諦めたくないんです。
問題意識3. 政策実現と選挙対策が遠い
政治家の皆さんへのヒアリングをしていた時に、もう一つ驚いたことがありました。
それは「政策実現のためのデスクワークをしていると “地元に顔を出せ” と怒られる」という、ある議員さんの話です。
地元の状況を把握するのも議員さんの大切な仕事でしょう。けれどこの話を同世代の友人たちにすると、みんな呆れ返ります。
彼らにとっては「地元との付き合いとかどうでも良いから、とにかく良い政策を実現してくれ」というのが本音なんです。
今の日本の政治環境では、政策実現の為の努力と、選挙対策の為の努力の距離が遠すぎる。
これは民主主義のあるべき姿と離れてしまっているのではないでしょうか。
武蔵野市で提供しているLobiLobi(β版)の仕組み
ここで改めてLobiLobiについてご紹介させてください。現状のβ版は以下の3ステップで運営されています。
1. 発起人が実現させたい政策のキャンペーンを立ち上げ
今回は武蔵野市で子育て支援政策の提言活動を行う中井いずみさんと知り合い、彼女を発起人に「おむつ持ち帰り問題」を扱う事になりました。
※彼女は発起人という立場でLobiLobiを利用しているいちユーザーであり、LobiLobiの運営にはタッチしていません
そして発起人の主張をキャンペーンページにまとめ、8/10付でリリース。
今回、リリース直後は発起人のママ友LINEグループを中心に声かけをしてもらいました。
また途中で元上司の駒崎からの拡散協力もあり、発起人と直接のつながりがない多くの方々にも見てもらいました。
2. 賛同する市民が地元の政治家に要望メッセージを送る
発起人の立ち上げたキャンペーンを見た有権者は、地元の政治家の方々に簡単にメッセージを送ることが出来ます。
結果、現在までに70通以上もの要望メッセージが寄せられています。
以下に、公開許諾がとれた有権者の方からのメッセージを例として抜粋します。
簡潔なものもあれば、このように自らの体験を踏まえて熱の入った意見をくださる方もいて、興味深いです。
これらのメッセージの送付先は、松下市長と、保育関連の内容を担当する文教委員会に所属する6名の市議の中から1名。
送付先の市議は文教委員会の6名の中からランダムに1名が割り振られる形式としています。
これを見て驚かれた方もいるかもしれません。けれど、20〜30代の有権者は基本的に政治に興味がないんです。
そんな中で「送付先を誰にしますか?」と選ばせると「誰を選んで良いかわからないや」と離脱してしまう。それを防ぎたかったのです。
しかし複数の方々からご意見を頂き、一旦ランダムに割り振られた送付先を希望者は後から変更できるよう、8/23付で改修しました。
またお預かりしたメッセージは、LobiLobiから松下市長+6名の文教委員会のメンバーの皆さんにお届けしています。
先週アポが取れた方には対面でお渡し。それ以外の方にはこの記事のリンクを添えてメールで送付しました。
またメッセージを寄せてくれた有権者に対しては、送付先の政治家へのお届け完了後、その旨をメールで通知しています。
この時、LobiLobiが仲介する事で有権者の方のメールアドレスが政治家の方に伝わらないのもポイントです。
実はリリース前には保育園ママを中心に20人ほど、実際のページを試しに触ってみて頂きました。
その際に共通して出てきたのが「メールアドレス(及び住所の番地から先)を政治家の方(及び発起人)に知られたくない」という声。
彼女たちは普段、政治家の方々との接点がほとんどない一般市民。子供が生まれるまで選挙に行ったことのない方もいました。
先述の通り、残念ながら彼女たちの多くは政治家に対して「接点を持つと面倒な事に巻き込まれるかもしれない」という認識を持っています。
けれどLobiLobiが間に入って連絡先を非公開にすることで、彼女たちが声を上げるハードルを下げることができる。
これまで政治家との接点が一切なかった「普通の保育園ママさん」の声を政治家の方々に届けるツールにできるはずです。
3. 実現に向け取り組んで頂く
今回、メッセージを寄せて下さった方の多くは課題の当事者である保育園ママさん達。その生の声は政策検討の上で大いに参考になるはずです。
市長さんと市議会の皆さんには、市の行政サイドと連携しながら政策実現に取り組んで頂ければ幸いです。
なお、発起人からは様々な形で市長・市議会に対する働きかけをしている模様です。
4. 政治家と発起人が進捗を有権者に対し報告
有権者への事前ヒアリングでは「自分が要望した内容についてのその後の進捗が気になる」という方が大多数でした。
そこで政治家の方からの返信メッセージをLobiLobiがお預かりして「お返事が来ましたよ」という形でそれぞれの有権者に代理配信。
自分が出した要望への返信という形ならば、一方的に配られて受け取ったチラシよりもずっと心に響くものです。
またその後も同じようにLobiLobiが中継する形で、有権者⇔政治家間で継続的にやりとりをすることが出来ます。
これはあくまで政治活動の報告です。ですが良い政策を実現した政治家の方が、結果的に次も当選する仕組みを作れたらと思っています。
なお発起人からも、メッセージを寄せてくれた有権者に対する進捗報告が行われます。多面的な情報提供が行われる事で、有権者は政治家の方々の実績を多角的に捉える事が出来ます。
LobiLobiはどうやって売上をたてるの?
まず、実証実験的にご提供している現行のβ版は、有権者・政治家の双方が完全に無料で使える形でご提供しています。
※リリース後に頂いたご意見を踏まえ方針を変更しました
将来的には、政治家の方々、および政策提言をしたい民間の企業や団体向けに、より便利に使える有料プランをご提供する予定です。
選挙対策のマーケティングに使われているお金を私たちが試算したところ、数百億円〜1,000億円近くにのぼります。
また政策提言・ロビイングの市場は米国だけでおよそ1兆円、GDP比から試算するに日本でも2,000〜3,000億円にのぼるでしょう。
この巨大な、そしてIT化のほとんど進んでいないマーケットに革新を起こしたい。僕たちはそう思っています。
法的な位置づけ
LobiLobiのリリース前には、顧問弁護士さんに手伝ってもらい、関連する法令や過去の判例などをチェック済みです。
政治活動における利用に関しては、他の媒体と同じように使って頂ければ法的な問題は一切ありません。
実際、某自治体の議会事務局に非公式にヒアリングした際にも、法的な問題はまったく指摘されませんでした。
なんなら「チラシ印刷・ポスティング代と同じ位置付けなので事務費として政務活動費に計上可能です」と言われたくらいです。
政治的中立性の担保
現在も、そしてこれからも未来永劫ずっと、LobiLobiは特定の政治家・政党に有利になるように便宜を図ることは絶対にしません。
私個人やメンバーの政治的な信条と、LobiLobiの運用は完全に切り離して考えます。
開発にあたりヒアリングしたロビイスト20〜30人の多くが、政策実現のための政治的中立性の重要性を唱えていました。
難しい事ですが、ビジョンを実現する上で絶対に守らなければならない事だと思います。
またそもそも、私自身もテーマ毎に支持政党が違うんです。以下は一例です。
- 安保・外交は自民党以外に任せるのは正直いって不安。米中のパワーバランスが反転しようとしている現状、自主防衛に軸足を移すべき。
- 福祉は公明党/旧民主党/共産党の動きに共感する事が多い。生まれや環境の格差による機会の不平等は公的資金を投入し是正すべき。特に子育て世代への支援を徹底し、子供を産み育てやすい社会を作るべき。
- 経済政策は維新の会や旧みんなの党の考えに近い。規制緩和を推進してイノベーションを促進し、財政の立て直しに力を入れるべき。公的資金のビジネスセクターへの投入には基本的に反対。
特定の政党の支持者ではないけれど、自分が良いと信じる政策を実現して欲しい。そんな人たちの為のサービスがLobiLobiなんです。
今後の改善計画
LobiLobiではこれから、どのような形のサービスにして成長させていくべきかを検証しに行きます。
その過程では、そもそものサービスの形を抜本的に変更する可能性だってあるでしょう。
今のサービスの形にこだわるつもりはありません。以下の3つさえ満たせれば、どんな形でも良いと思っています。
- 私自身が自分事に捉えられるような深刻な課題を解決する
- 私たちがやらなければ他に誰もやらないであろう事をやる
- 本当に大きな事を成す
今後も試行錯誤を繰り返していきます。
最後に
画面の前のあなたへ。ここまで非常に長い文章にお付き合い頂き、本当にありがとうございました。
若輩者にも関わらず、偉そうに大それた話をぶち上げてしまい、恐縮です。
疑問に思われた点や、ツッコミを入れたくなった点もたくさんあったかと思います。
政治家・行政職員・政策提言経験者などの皆さんから是非とも色々とご意見いただけると嬉しいです。
お気軽に info@lobilobi.jp までご連絡くださいませ。