「カノン進行は禁断の果実」の嘘


以前、お笑い芸人のマキタスポーツさんがテレビ番組で話していた話ですね。

これにはずっと違和感があったので、ここで書いておきたいと思います。

まずマキタスポーツさんが話していた概要です。

・カノン進行を使った曲には名曲が多い。
・例)愛は勝つ(KAN),それが大事(大事MANブラザーズバンド),TOMORROW(岡本真夜) ,思い出がいっぱい(H2O),大阪で生まれた女(BORO)
・人はカノン進行の曲を聞くと、うっとりしやすい
・このコード進行を使ったミュージシャンには一発屋が多い
・カノン進行にはドーピング的な効果があり、ヒット曲には確実になるが、それ移行の発明ができなくなる
・カノンを作った作曲家、カノン自身も一発屋

以上が、「絶対に売れる悪魔の作曲法」として紹介されていたお話です。

でも、この話、半分正しくて半分間違っています。

その間違っている半分の部分がとても大切なのですよね。


まずちょっとカノン進行自体の説明をしますね。

音楽をやっていない方にはコード進行と言われてもピンとこないとは思いますが、コード進行とはいわゆる「伴奏」であり、その伴奏のさらに下地になっている部分です。

コード(和音)一つ一つを組合わせて成り立ったものが、コード進行となるわけです。

そのコード進行、組み合わせで無限に作り出せるものなのですが、人が心地良いと感じる進行はある程度限られてくるのですね。

特に有名曲のサビで使われるコード進行に関しては、指を折って数えられる程度のパターンしかないと言ってもいいと思います。

そのうちの一つのコード進行がカノン進行なのです。

カノン進行というのは、日本人がとても好きなコード進行なのですね。

明るいメジャーキーと暗いマイナーキーが行き交うのが特徴の進行です。

そのため、楽しさや幸せ感とツラさや切なさが交互にやってきます。

そういう曲が使われやすいシチュエーションってどこだか想像できますか?

「卒業式」や「結婚式」ですよね。

実際にこういったセレモニーではほぼカノン進行の曲が使われています。

クラシックのカノン自体が結婚式の曲としてよく使われていますね。

カノン進行を聞くと、なんだか切なくもあり、今後の人生に対して前向きな気持ちにもなれる、そんな力があるのがこのコード進行です。


そこでマキタスポーツさんが言っていた話に戻りますね。

私が冒頭に言った半分間違っているというのは、まず結論から言いますと、

「カノン進行を使うと一発屋になりやすい」

のではなく、

「カノン進行を使った曲が、そのミュージシャンの代表曲になりやすい」

というのが正しいのではないかということです。

他にもたくさんカノン進行が使われたヒット曲があるので紹介してみますね。

クリスマスイブ(山下達郎),終わりなき旅(Mr.Chirdren),Endless Rain / Tears(X JAPAN),HOWEVER / ずっと2人で(GLAY),愛を込めて花束を(Superfly),守ってあげたい(松任谷由実),上からマリコ / 恋するフォーチュンクッキー(AKB48),さくら(森山直太朗),明日への扉(I WiSH),負けないで(ZARD),突然 / DANDAN心魅かれてく(FIELD OF VIEW),真夏の果実(サザンオールスターズ),空も飛べるはず / チェリー(スピッツ),シングルベッド/シャ乱Q,桜坂/福山雅治,Love is…(河村隆一),さくらんぼ(大塚愛),出逢ったころのように(Every Little Thing),Buttefly(木村カエラ),壊れかけのRadio(徳永英明),言えないよ(郷ひろみ),ALONE(B’z),ハナミズキ(一青窈),DIVE TO BLUE(L’Arc~en~Ciel)・・・

とりあえず、私が思いつくものを挙げましたが、数え出したらキリがありません。
(カノン進行の変形などもありますので、必ずしもすべて同じコード進行というわけではありません)

見てもらえるとわかると思いますが、長く活躍されているアーティストも多いですよね。

カノン進行を使った曲を使うと、耳馴染みが良いためか、多くの人に受け入れてもらいやすいです。

そのため、代表曲となるケースが多いのだと思います。

マキタスポーツさんが挙げたカノン進行の曲、あえて一発屋と呼ばれているアーティストの曲を選んでいますので、ちょっと問題ある気がします。

一発屋と呼ばれているアーティストの代表曲がカノン進行であることは間違いないのですが、カノン進行を使うと一発屋になるとは一概には言えませんね。

番組では、カノン進行が「禁断の果実」、「デビュー曲で使ってはいけない」等の言及がありましたが、実はそんな甘いものでもありません。

作曲初心者の人が、それを知って試しにカノン進行で曲を作ってみると、たしかになんとなく良い曲にはなると思います。

しかし、どこにでもあるような曲にもなってしまいがちですので、コード進行に頼るだけでは良い曲を作るのは難しいのです。

実際、上に挙げたカノン進行の楽曲ですが、ストレートなカノン進行になっている曲は少ないです。

作曲者やアレンジャーが持つ作曲能力を駆使して、そのセクションごとに合ったアレンジをしているからこそ、インパクトや深みも出てくるわけですね。


しかし、私はコード進行のそういうテクニックがポップな形で広まるのは悪くないと思っています。

音楽をやっていても、実はコード進行とかよくわかっていない 人がいるのも事実です。

本当は作曲能力があるのに、高いハードルを感じて踏み切れていない人も多いのではないでしょうか。

とりあえず気軽にポピュラーなコード進行で、良い曲っぽい楽曲を作ってみるのは良いことだと思います。

それによって優秀な作曲家が生まれることもあるかもしれません。


ツッコミどころはあったにせよ、マキタスポーツさんのようなキャラにはとても価値があるのではと思いました。

作曲の経験がない方も、ぜひ一度カノン進行で作曲してみてください。

私はコード進行を聴いているだけで、幸せになるくらい好きなコード進行です。

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