成長戦略第三の矢は的を射ているか?~
・第三の矢は未だ道半ば
第二次安部政権が発足してから16カ月が経過した。政権発足当初と比べると、成長戦略第三の矢という謳い文句もやや新鮮味が失われつつある。これは人々が絶えず新しいバズワードを求めているからではなく、その実効性に疑問を感じていることが、一つの大きな理由でないだろうか。
実際には、成長戦略の一翼を担うベンチャー支援策は、政権にとって重要な目玉政策であり、新陳代謝を促す開業率倍増などを求めて、二の矢、三の矢、四の矢と夥しい施策が飛んでくる(これが最も相応しい言葉)。果たして、これらの矢が見事に的を射てているのか?率直な疑問を感じているのは筆者だけではないはずだ。
・資金よりも人材
一つの事例を紹介したい。アメリカ、特にシリコンバレーと比して、日本では起業家も成功事例も圧倒的に少ない。この環境を変える一環として、従来は、起業家を直接育てる施策(具体的には、開発助成資金提供、起業資金援助など)がメインであった。ところが、政府が昨年から打ち出している新たな施策で、起業家を育てる支援者に焦点を当てた支援策が数多登場して来た。
日米比較において、ベンチャー投資資金量は1対20だが、支援者(主にキャピタリスト)は1対100と彼我の差は埋めがたい。これでは、シリコンバレー同等なエコシステムを構築するなど夢のまた夢であろう。ベンチャーの隆盛を図る要諦は、資金に非ず、人にあると信じている。その意味で、昨今、霞が関が打ち出しいる支援者に焦点を当てた施策は、的を射てていることは間違いない。問題は、同様な(あるいは、焼き写しとしか思えない)プログラムが、各機関から五月雨式に出てくることにある。各担当部署が横の連携を取りながら、少しずつ内容を変えて、タイミングをずらして発表しているのではないかと下衆の勘繰りもしたくなる。折角の施策も効果が半減すると言われても仕方がない。
・バラマキ政策とモラルハザード
当然各プログラムには、予算が5億円、10億円と付いているわけで、バラバラなバラマキ政策の誹りは免れない。実は、より深刻な問題は、これらのプログラムに応募する民間側がいつも同じ顔触れになっていることである。もちろん、再チャレンジは否定しない。しかし、本来は民間の持つ多様性と自発性からこそイノベーションが生まれる可能性が最も高いはずで、官の支援を受けることは限定的に扱われるべきであろう。モラルハザードを起こしてしまっては元も子もない。古今東西、新産業創出が政府の政策で成功した試しはない。政府の役割は、民間のイノベーションを推進する活力を削がずに、そっと背中を押すことではないだろうか。
・民間の多様性の尊重
ベンチャー活性化のための規制・制度改革の必要性は論を俟たない。失われた3年間は、確かに大胆な金融緩和で取り戻したかも知れない。しかし、失われた20年間は、成長戦略第三の矢が的に向かって適格に放たれなければ成就は覚束ない。そのためには、単年度予算主義、新たな制度作り偏重主義などは改める必要がある。ベンチャー支援者施策にしても、小出しにするのではなく、一つの骨太な政策として打ち出した方がインパクトも大きく、実効性が高まることは間違いない。
民間の多様性の尊重とリスクを取る気概を損なわない政策が望まれる。
ベンチャーへの期待が高まっている今こそ、産・官の其々の役割を再認識して、意義ある施策が実効性を伴って結果が出ることを強く願う。VC業界としても、前面に立って施策の立案から実行まで腰を据えて取組んでいきたい。