実は二度目のM&A経験。25歳の経営者が月間2億PVの「Peing-質問箱-」を買収する時に考えていた5つの狙い

Teruaki Aso
8 min readJan 4, 2018

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最近お会いした方に昨年末の「Peing-質問箱-」買収について聞かれることが多いので、2018年の年始、記憶が鮮やかなうちに文章でまとめておこうと思います。僕個人としては実は以前に破談になったM&Aがあり、二度目のM&A経験でした(成立したのは今回が初)。

今回の買収に狙いは5つありました。

① 純粋にグローバルでポテンシャルのあるサービスを手掛けたかった

② スタートアップながらM&A(買収)がオプションにあることを意思表示したかった

③ いざという時のためにM&Aの経験を積んでおきたかった

④ 中古市場以外の領域にも展開する「ジラフ」を再定義したかった

⑤ ポケラボ創業者であり、シリアルアントレプレナーの佐々木を事業責任者としてアサインし、会社の起爆剤としたかった

一つずつ解説していきます。

① 純粋にグローバルでポテンシャルのあるサービスを手掛けたかった

「世界を変える」という言葉はあまりに使い古されてしまった表現ではありますが、「新たなスタンダードを生み出し、世界の発展に貢献する」という企業理念を掲げている弊社ジラフでも「世界」の定義を広く捉えるならば、アメリカ、インド、中国、韓国、イスラエルなど多くの国で使われるネットサービスを作りたい、運営したいという気持ちがあります。

ただし、それは現実的には難しいテーマです。1から国内で事業を立ち上げ、それから世界に展開するとなると事業モデルや、国内でそもそもうまくいくのかといった問題に直面します。なかなか簡単なビジネスプランではありません。これまでに多くの起業家が失敗してきた挑戦です。

翻って、Peing-質問箱-の先行プレイヤーであるSarahahはサウジアラビア発のネットサービスでした。そんな遠くの国のサービスが日本に届いてくるという状況、海外のAppStoreでランキングでトップを獲得している状況を見て、この匿名コミュニケーション領域は珍しくC向け且つグローバルという軸で見た中では、攻めやすい領域であることを認識していました。

ただし、0から作れば後発でどのようにSarahahや質問箱に勝てるのだろうか、という問いに対しての回答が無ければ、自らも社内外の説得も難しかったと思います(今回はそもそも自社立ち上げをそこまで検討していたわけではなく、M&Aありきの話でもありましたが)。M&Aによってその実現性はかなり高まった状態でスタートを切ることができました。

② スタートアップながらM&A(買収)がオプションにあることを意思表示したかった

いわゆるM&Aと言えば、基本的には上場企業が主体となって買収することが多く、未上場のスタートアップが他のスタートアップ、事業を買収するというケースはそれほど多くないように思います。「選択と集中」という基本原則に則れば、リソースが分散してしまいかねない多角化は嫌われますし、資金を必要とする買収のようなコーポレートアクションは投資家からも嫌われる傾向にあるでしょう。

ただ、僕個人として将来的にソフトバンクのような投資事業会社へとジラフを成長させる構想も持っております。他方でワンプロダクトに集中させ、非効率且つ不要に資金投下をするというよりは、弊社ジラフにおいていくつかの仮説検証をサービス横断的に同時多発的に進め、資金投下できる場所を社内決勝戦方式で探すという経営に挑戦しています。

また、選択肢が多いことで、常にゼロベースで自社立ち上げも買収も並行してオプションとして整理し、成果を出す最短ルートを模索するような思考が身に着くとも考えています。現状で前向きに検討を進めたわけではありませんが、今回の買収リリース後に持ち込みのご連絡をいただいた方もおり、少なくとも「この会社は買うのではないか?」という認知も副次的に得られたようです。今後、良いチャンスに乗りやすくなったという見方もできるはずです。

③ いざという時のためにM&Aの経験を積んでおきたかった

僕の経営する会社が本当に大きな規模の会社になった時、会社の生死を分けるようなM&Aに挑戦するという勝負時が今後あると思っています。その時に初めてのM&Aなのか、二度目なのか、三度目なのかで明らかに取り組み方が変わってくると思います。買収先のリサーチだけでなく、金額交渉、いわゆるデューデリジェンス等を通常業務と並行して、社内でどのように受け入れてもらい、進めていくのか等の整理を緊急で行う経験が出来ました。

また、いざというその時に失敗せず、成功する確率を高められると考えています。現に、過去別案件の事業買収をスタートアップからしようとした際は交渉決裂していまい、取引は実現されませんでした。ただし、その時に用意した譲渡契約書のひな型などがすでに存在していたことなどの後押しもあって、わずか60時間でM&Aの成立が達成できました。より早く買収の意思表示ができることは、より「ある意味での」フェアバリューで買いやすくなるということである、と買取アプリCASHから学んだことでもあります。

④ 中古市場以外の領域にも展開する「ジラフ」を再定義したかった

これまで買取価格比較サイトの「ヒカカク!」や修理店検索サイト「最安修理ドットコム」、フリマサイト「スマホのマーケット」などを立ち上げてきましたが、いずれも中古市場のサービスでした。「ヒカカク!」において買取業者への営業の中で、修理サービスも提供する会社に対しての媒体を立ち上げることになり、「最安修理ドットコム」を立ち上げ、スマホ修理領域で国内最大のネットサービスに成長しました。他方、「ヒカカク!」で流通の多かったスマホをバーティカルに取り出し、買い手と売り手を転換できる仕組みを作ることで「スマホのマーケット」は生まれました。このような事業の進め方に対して、上場ヘルスケアベンチャー「SMS」のようで「手堅い」、「ストーリーが綺麗」などという評価・感想をインタビューや採用面談の場で言われることが多かったのです。

他方で、「そんな風に予測可能な動き方をしていて良いのだろうか」と自問自答することもありました。自分の手掛ける領域の一つ隣の領域で成功確率が高く、そこで事業を広げるような形で参入を続けてきていましたが、起業家人生4年目、25歳である今、そのような「枠」の中に留まるべきなのか検討していました。

また、中古市場、リユースの領域でサービスを作ってきたものの、若年層向けのSNS領域、仮想通貨領域をはじめとして、あらゆる領域にアンテナ自体は張っていたいという思いが元々あります。そういった中で、自社サービスを手掛けるより、事業買収によって素早く中古市場の枠からはみ出ることで、領域の呪縛から逃れるという意味合いを持った打ち手でした。

⑤ ポケラボ創業者であり、シリアルアントレプレナーの佐々木を事業責任者としてアサインし、会社の起爆剤としたかった

シリーズAでジラフに投資しつつ、執行役員として参画した佐々木が挑戦する場としてジラフを選んでくれたのは非常に嬉しいことでした(シリーズBでも追加出資してくれています)。そんな佐々木が約10か月ほどは開発のディレクション、組織づくりを中心にジラフで尽力してくれていましたが、更に彼の中で新しい挑戦をしてほしい、それが他のメンバーへの刺激となり、ジラフとしての成長にも繋がるのではないか、という狙いで彼を事業責任者としてアサインし、会社が従業員の成長につながり、それがまた会社の成長に繋がるという経営の形を模索できるのではないかと考えました。

以上です。もちろん、買収してからが戦いであることを僕は自覚しています。これまでも、これからもジラフは面白いタイミングです。ぜひジラフという箱であなたも挑戦してみませんか。一緒に戦いましょう。

例によって、副社長候補やエンジニアの方、UIデザイナーの方、マーケターの方などを募集しています。

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最後に

あとTwitterやっている方は是非、質問箱を開設してみてください!(笑)

Peing -質問箱-

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Teruaki Aso

ジラフ代表取締役社長。ヒカカク!やスマホのマーケット、Peing -質問箱-を運営。累計7億円調達済。一橋大学商学部在学中に創業。