『ロゴス・エトス・パトス』~人を動かすフレームワーク~

福本 晃之 | Teruhisa Fukumoto
5 min readMay 26, 2019

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3つの説得手段によるフレームワークのイメージ(画像は『studiobinder』より引用)

みなさんこんにちは。
チャットボット開発のスタートアップで、エンジニア兼VPoEをやっている福本です。

最近哲学の本を読む機会が多く、メジャーですが重要な考え方を見つけたので備忘的に記事にしておきます。

西洋最大の哲学者であるアリストテレスが提唱した、弁論術『ロゴス・エトス・パトス』についてです。

三種の説得手段

近代社会ではあらゆる事象が複雑なものになっており、もはや一つの要因によって何かが上手く運ぶことはなくなりつつあります。

そんな中、複数の考え方や手段を組み合わせることで、要因を抽象化し物事を前に進めようという考え方が流行っています。

リクルートが生み出したとされる人事・自己分析のフレームワーク『Will Can Must』は、最も有名なもののひとつでしょう。

『ロゴス・エトス・パトス』も、そんな三種の説得手段によるフレームワークで、3つの要因をすべて併せ持つとき「最も人が動く」とされています。

論理:ロゴス ~logos~

logosは『ロジック(logic)』の語源にもなっているとおり、理屈や論理による説得のことです。要するに「正しいことを言っているかどうか」ということですね。

アリストテレは3つの説得手段の中で、このロゴスを軸として説得を行うことを心がけているそうです。要するに「まず正しさありき」ということですね。

現代においても「論理的に正しいかどうか」は重要な要素です。

一方、作家の山口周氏も提唱しているのですが、”正しさ”や”正論”の価値はコモディティなものになりつつあります。

昨今の社会情勢において、情報が足りない中で判断の正しさを担保すれば”速度”が、情報がある中で分析を多なって答えを出そうとすれば”差異”が失われてしまいます。

そのような背景から、今後は以下の2つが重視される世の中になっていくと予想されています。

倫理:エトス ~ethos~

ethosは「倫理(信頼)」を意味するもので、ethicsの語源です。

仮にlogosを満たす”正しい”ことを言っていても、うさんくさい人からの提案を受ける人はほとんどいないでしょう。「あなたが信頼に足る人物かどうか」は、非常に大切な要素なのです。

また、ethosは”倫理”により近い解釈で「(聞き手が)道徳的に正しいと感じるかどうか」という意味合いも持っています。

価値観の多様化や人生における選択肢が増え、”正しさ”の正体がより不明確なものになっている近代社会で、ethosをしっかりと満たすのは非常に難しいです。

同じ組織やチームの中で、どれだけ同じ共通認識(=倫理・道徳)をメンバーの間で持つことができるかが、ethosをクリアするカギになっているのではないでしょうか。

情熱:パトス~patos~

patosは「情熱」を意味するもので、passionの語源です。
(エヴァンゲリオンの主題歌のサビに出てくる、ほとばしるアレです)

話者が熱く語りかけることで、聞き手の”共感”を強く呼びます。

patosの良いところは、細かい説明責任(アカウンタビリティー)や分析をある程度無視し、速度を上げることができる点です。「わかった、そこまで言うなら君に任せるよ」というイメージです。

逆に気をつけなければならないのは、失敗時の責任追及が苦しくなるところです。「いやあ、なんとなく良いと思ったんですけど..」と口ごもるのが関の山です。

さいごに

以上、簡単でしたが『ロゴス・エトス・パトス』について説明していきました。

重要なのはWill Can Mustと同じで「可能な限り3つとも組み合わせて使うこと」です。一部を欠いた場合は短期的には説得できても、長期的に失敗する場面が増えてしまいます。

仕事で「人を一回しか説得しない」ということはないはずですから、この3つはしっかりと意識しながら相手との対話を進めていきたいですね。

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福本 晃之 | Teruhisa Fukumoto

Web Developer at Smartround.inc / Computer Science Student at Teikyo Univ / Kotlin(ktor), TypeScript(Vue), Ruby(Rails), Terraform, Python etc...