“口頭””直接話す””対面で”…なコミュニケーションが持つ欠陥5選
みなさんこんにちは。
チャットボット開発のスタートアップで、エンジニア兼VPoEをやっている福本です。
最近面談やイベントなど様々な場面で、中途・新卒問わずエンジニアの方の採用に関わっています。
採用を行う中で会社説明などをどう進めるべきか(スライドor口頭で完結orWebサイトを見せながらetc..)色々と試行錯誤しているのですが、調べれば調べるほど「口頭で対面で話す」ことの脆弱性が見えてきたので備忘として残します。
ここがダメだよ口頭コミュニケーション
非対称な関係(話し手優位)
文章であれば、受け手は読み返したり主述関係を整理して読み取ったりすることができます。また、文章を引用して内容を確認する返事も可能です。
しかし口頭での会話は、受け手が話し手が展開する話の順番に支配され、話し手の時系列に合わせて聞かなくてはなりません。これは初めて理解する内容が多いほど難しい作業です。
ネットで口頭コミュニケーションについて調べていて、一番確かにと思ったのが上記。エンジニアの方の個人ブログ記事からの引用です。(対面で話すのが好きな人は書くのが苦手、というのも納得感ありますね)
ログが残らない
これは口頭コミュニケーションの代表的なデメリットですが、口頭での会話は後からキャッチアップできません。
そのため、後からプロジェクトやチームに参画する場合のコミュニケーションコストが増加したり、当事者が話した内容を忘れてしまうなどと言ったことが発生します。
また、コミュニケーションのバージョンや変更管理もできないです。
これらを防ぐために議事録や音声データを残すことも可能ですが、そんなヒマがあるなら最初からチャットで話を進める方が良いでしょう。
処理が非同期でない
これも代表的なデメリットですが、会話はその性質上、処理が同期的なものになります。
エンジニアの方であれば非同期処理のパワーを常日頃から実感していることと思いますが、同期処理は何をどう頑張っても効率性という側面で非同期処理に勝てません。
中断される側は業務を再開させるときに集中力を取り戻さないといけないですし、中断する側も話すタイミングを見計らわなければなりません。
同期コミュニケーションのデメリットは、堀江さんが「多動力」などで詳しく説明されているので、気になる方はそちらをぜひ。
あなたは他人の時間を奪うことに敏感だろうか? 「時はカネなり」と言うように、人の時間を使うならば、きっちりと対価を払うべきだ。しかし、世の中には、何の悪気もなく平気で他人の時間を奪う人がいる。(中略)だが僕は、自分にとっておもしろい人としか会わない。つまらない人、ウザい人、そして電話をかけてくるタイプもそうだが、「自分の時間」を平気で奪うような相手とは意識して距離を取る。-堀江貴文
クローズドな処理になる
口頭では小さな組織やチームで無い限り、ステークホルダー全員が同時にコミュニケーションに参加することは難しくなります。
自分よりもいいアイデアや解決策を持っている第三者が、コミュニケーションに介入できないことは大きな損失です。アイデアの掛け算が起きないチームでイノベーションを興すことは難しいでしょう。
冪等性・再現性がない
「言ったor言わない」の話は、このデメリットに起因するのではないかと思っています。口頭コミュニケーションは再現しづらいのです。
プログラムと同じで、デバッグできない状況下でバグの防止/修正を行うことは困難です。
「ログが残らない」のデメリットのリカバリを掛けようと思っても、当初取りたかったコミュニケーションとは異なった内容になり、正しい情報の確認が取れないことが多いのではないでしょうか。
要するに:オーバーヘッドがムダに大きい
ありがとうございました。本編は以上です。
「口頭で話すほうが速い」という言葉をよく聞きますが、そうでもないんじゃないかと思ってます(速いと感じるのは目先の話であって、長期的にはロスの方が圧倒的に大きい)。
それ以外に「対面でないと感情が伝わりづらい」という話もよく聞きますが、絵文字とかスタンプで代替できると思ってるんですよね。
ただ、採用のフローで面談せずにスライドとテキスト送りつけるみたいなことやっても、絶対誰も来てくれないよな…。
なぜそう感じるのだろうか?
と思ったところで気づいたのですが、口頭コミュニケーションのメリットは「コミュニケーションの場に相手を強制的に引きずり出せる」というところなんじゃないかと結論づけました。
なるほど、世間の”口頭コミュニケーションへの嫌悪”は、この話し手への一方的すぎるメリットによって発生してるのかもしれないですね。
<コミュニケーションにおける3つの不確実性>
・他者理解:人は他人や事象を完全には理解できない
・伝達:コミュニケーションが到達するとは限らない
・成果:仮に理解されたとしても予想されたように行動するとは限らない
-ニクラス・ルーマン『社会システム理論』