読書録:グリッドロック経済――多すぎる所有権が市場をつぶす

最近忙しくてバタバタしていて、読書録を書きたくなるような本を読んだのはひさしぶりな気がする。足かけ3-4ヶ月ぐらい書けて読んだ。
ぶあついけど難しい本ではない。山形浩生さんの翻訳なので読みやすいし、解説を読めば大意は掴めてしまう。が、それでもまるごと読む価値のある本だった。

本書の主張は、「所有権が細かく分かれすぎていて円滑に利用されない状態」を”グリッドロック”と定義したことだ。共有地が使いすぎになるコモンズの悲劇に比べて、所有権が設定されているけどややこしすぎて利用が進まない、という状態を定義したことや、「ちょうど良いサイズの所有権」というものがあるので、それをきちんと考えようというのがこの本の気づき。

その「ちょうど良いサイズの所有権」は時と場合と文脈によって変わるので、簡単な解決策はないのだけれど、その視点を忘れずにいることはいろいろな場面で役立つだろう。

事例として挙げられている個々のディテールも面白い。
・序文から挙げられている、アメリカの電波管理が細かく分かれすぎていて無線ブロードバンドの導入がまったく進まず、日本よりだいぶ悪い(むしろ、日本の電波割り当ては当時としてはかなりうまくやった)
・逆に不動産管理では、アメリカの都市モデルを占領時に日本に移植して規制を増やしすぎ、日本の家が小さくなった。戦前では平均的な日本人はアメリカ人より広い場所に住んでいた
・人類みんなの役に立ちそうな遺伝子解析が、個々の知財の処理がうまくいかなくてリリースの危機に陥った。
などなど、読み飛ばすには難しい面白い実例が詰まっている。

なので、要約に意味があるような本じゃない。飛ばし飛ばしでもそれぞれの事例をつまみ食いするところから読み始めてみるといいのでは

所有権なんかどうでもいいぐらいひろいエチオピアの工場