なぜビジネスコンテストからビジネスが生まれないのか?

学生時代にビジネスコンテストで賞金稼ぎをしていた、ところてんです。
最近、いろいろあって、なんとなくビジネスコンテストの何がクソかが分かってきたので、ポエムを書いてみます。

最近、人事系のブログやら記事やら書籍では、Will,Can,Mustという概念がよく言及されています。私がこの概念を始めて知ったのは、サイボウズ社の社長の青野さんが書かれた「チームのことだけ、考えた」からです。せっかくなので、同書から引用しましょう。

「チームのことだけ、考えた」から引用

Willは「自分がやりたいこと」で、これはそのままです。
Canも言葉通りで「自分ができること」です。
Mustだけ少し難しくて、これは「会社や社会から求められていること」というようになります。

Will,Can,Mustが組み合わさった領域というのは、自発的にも高いパフォーマンスが発揮でき、かつ社会的にも高いパフォーマンス(売上、利益)が見込めます。
そのため、自分がやろうとしている事柄に対して、Will,Can,Mustがどの程度なのかというのは、非常に重要なことです。(と、語られた人事系の記事は多い)

往々にしてMustは外部から与えられるものであり、WillとCanというのは内発的なものです。そのためWillとCanは外部からの観測が非常に難しいという問題があります。

その結果、ビジネスコンテストでは評価しにくいWillやCanはおざなりになり、分かりやすいMustだけが評価されるということになります。
つまり、「出来もしない、やりたくもないが、オジサン受けするネタ(Must)を出すと、ビジコンで優勝できる」という現象が発生します。
これがビジネスコンテストがうまくいかない大きな理由です。
当人の意思やケイパビリティではなく、審査員が理解可能でやるべきだと考えられていることを出すと優勝してしまうのです。

そのため、優勝者はWillもCanも薄弱なことが多く、その結果優勝した企画がビジネスに結びつくことは稀になってしまいます。

ここまででビジコンが何故駄目かの話は終わりです。ここから先はもうちょっと細かく書いていきます。

WillとCanがあるやつはビジコンに出ない

なぜWillとCanがビジネスコンテストの過程で観測できないかというと、そもそもWillもCanもあるやつは、コンテストなんぞ出さないで、勝手に作っているからです。

モノを作る製造コストは昔に比べ各段に下がりました。プロトタイプを作るコストも下がり、ベンチャーキャピタルやクラウドファンディングによる資金調達ルートも出来ました。WillもCanもあるやつはそういうルートから攻めていきます。

そして、本物のイノベーターは、イノベーションは理解されない、Mustなんてのは後から時代がついてくる、というように考えます。

「未来を予測する最善の方法は、それを発明することだ」 アラン・ケイ

つまり、今日日のMaker社会においては、ビジコンなんぞは、WillもCanもない連中が出すもの、というようになってしまっています。

(もちろん、このアプローチは多大な屍を生みますが、イノベーションを狙うというのはそういうものです)

そして、本当にビジネス化したいと考えるやつほど、100万円程度の賞金では何もできないことが分かっているので、ビジネスコンテストではなく、別のルートを考えます。

WillとCanが理解できない審査員

ビジコンの審査員は開催する主体によりけりですが、多くは大企業のお偉いさんや、自治体の中小企業担当者等であったりします。
彼らは事業を起こしたこともなければ、製品をゼロから作ったことも稀です。大きな組織において外部からMustが与えられ、それを実行してきた経験しかない人が大半です。

そのため、彼らは参加者が持つWillやCanを理解できません。
大企業の理論で、○×表を作り、理論の穴が無ければOKを出しまてしまいます。つまり、イノベーションのジレンマがビジコンの評価指標で発生するのです。

イノベーションとは社会に表出していないMustを掘り起こすことです。オジサンの理解に基づくMustを掘っていては、ムーンショットを狙うことは難しくなります。
これが、ビジコンからビジネスが生まれない遠因になります。

(余談)学生時代の私の経験だけど、これまでの制作実績みたいなのを要求されたビジコンって見たことないんだよね……。
ちなみにIPAの未踏事業は、何を作るのか、なぜ作りたいのかという熱意のほかに、過去の制作実績を必ず要求するので、WillもCanもちゃんと要求していてとても正しいなぁと毎回思う次第。

ハックされるビジコン

そういうわけで、審査員は往々にしてWillとCanが評価できないので、Mustをロジカルシンキングでガチガチに理論武装してやるだけで、簡単に優勝することができます。
加えて、審査員のオジサンはリサーチが甘いので、タイムマシンビジネスを出してあげるだけで、コロッと落ちたりします。

そのため、学生向けのコンテストなどでは、この手のロジカルシンキングができるが、コードも書けなければ、事業に対するやる気がない連中が優勝を掻っ攫い、もらった賞金で遊んで終了ということになります。
そりゃそんなビジコンからはビジネスは生まれません。

ちょっと前にハッカソンマスターという話が流行りましたが、まあそんな感じです。(増田から消えてしまっているので魚拓で)
https://megalodon.jp/2016-0301-1058-35/anond.hatelabo.jp/20160229224553

ハックするビジコン主催者

そういうわけで、ここ20年ほどで、うまくいかないビジコンという事例はいっぱい溜まってきました。
すると次はどうなるかというと、すでにビジネス化されており、PoCが回り始めた事業に対して、ビジコンに出ないか?と主催者が声をかけ、その事業を優勝させるということが起こりつつあります。

なぜこのようなことをするかというと、ビジコンにも事業化がKPIとして求められるようになった他、大企業にとってはビジコンの賞金程度のはした金で優秀なベンチャー企業とのコネクションができるのは安いためです。

コネクションを築いたのちは、案件を流したり、投資したり、合弁会社を作ることで、回収しようとします。
つまり、事業投資のリード案件としてのビジコンになりつつあったりします。

(ちなみにCSRとしても、ビジコンは格安の部類だったりします)

DMMに見るビジコンのあるべき姿

昨年末にDMMの社内ビジコンを垣間見る機会があり、その際にビジコンとはこうあるべきだと感銘を受けたので、紹介させていただきます。

DMM社員の友人から「社内のビジコンに企画を出したいから、何か面白い企画をくれ」と頼まれました。その際にDMMのビジコンの詳細を聞き、非常に面白かったので、紹介させていただきます。
(以下の文章はDMMの友人から間接的に貰った内容なので、実際のコンテスト内容とは違う可能性があります。)

■ビジネスコンテスト 
【決まり毎】
・締め切り2016年12月29日(木)
・6分程度の企画、6ページ以内。
・1人1投稿。
それぞれの得意分野の情報の交換、協力し合うなどし
あらゆる手段(勿論、合法ならびに他社・他者様に迷惑がかからない範囲)で
コンテストに入賞する活動は認められる。
【推奨される内容】
・現実性の高さ。 (1ヶ月後には、具体的に開発開始できるレベルの企画)
・相談している会社様には、コンテストが通らないと、お金が出ない事を伝えた上で
力を借りる事はアリ。
・企画者本人ができなくても良い、社外メンバーの実効性の高さなど担保があればよい。
・基本1人1投稿、もし複数ある場合は、頼める範囲で代理を立てるなどは良い。らしい。
※コンテストに通った後、発注され開発費が出される。
※開発資金は会長がドンとだす。 ※推定5000万程度。

これはマジすごい。
WillとMustを書いて持ってこい。会長がWillを評価するし、その下のマネージャー陣はMustを評価する。Canはそれを開発できる外注会社を連れてこい。これで、Will,Can,Mustがそろった企画を事業化することができる。
ビジネスは人脈であるということを会社が理解しているため、外部の協力を仰ぐことをヨシとする。事業化には適切な予算が必要なのを理解している。

普通の会社でやっているような、社内ビジコンというの名のガス抜きや、優秀な社員へのボーナスとは話が違う。
賞金の100万程度のはした金じゃ、ビジネスが生まれないことをよく分かっている。

これは社内ビジコンではなく、社内ベンチャーキャピタルなんだと思う。
ビジコンをビジネスに繋げるということは、こういう条件を付けなくてはならないのか、というのに感動した。

ちなみに、友人には2つほど企画書を渡し、そのうちの一つを大改造して社内ビジコンに出したようですが、どうやら落選したみたいです。

DMM向けのビジコン企画書が欲しい方は、ご連絡ください。一つはエロ×IoTの楽しい話、もう一つは音楽業界の既得権益をぶっ潰す楽しい話です。

まとめ

そういうわけで、ビジコンの主催者をやるときはWill,Can,Mustが全部そろってるかどうかを評価基準にしようね、お金をちゃんと付けようね、というお話でした。

(余談)Will,Can,Mustが分離できない人

世の中いろいろとみていると、WillとCanとMustが分離できない人は非常に多く、勿体ないなぁと思うことがしばしばあります。

自分が今できる技術に対して、社会的意味を無理やり持たせようとして、どうしようもない技術を頑張って持ち上げようとして、明後日の方向に行ってしまっている人。
意識の高さから、Mustから考えていって、自分がやりたくもないし、できもしないことを嫌々やろうとして潰れていってしまう人。

ここら辺の問題をどうやって自覚させるか、Will,Can,Mustを分離できるようにするかというのは、毎回頭を悩ませる。

色々とアドバイスしたいが、下手にアドバイスして、Willを叩き潰す結果になったり、Canを否定してアイデンティティを喪失させたり、Mustを植え付けて自分の頭で考えるのを放棄させてしまったりするのは良くない。

ある程度の年齢であれば、この問題についてディスカッションを行い、その過程で理解してくれることを期待することはできる。
しかし、若い子が相手だと、どうしてもマウンティングになってしまい、押し付けでWill,Can,Mustをへし折る結果になってしまいそうで、そういう機会があるたびに毎回頭を悩ませている。

どうしたもんかなー。

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