東京デザインウィーク火災のその後

東京デザインウィーク(TOKYO DESIGN WEEK 2016)で発生した火災で、5歳の子どもが焼け死んだ事件を覚えているだろうか?あれから2か月以上経過して、その後どうなったのかを調べようとしたら、なんかもういたたまれない気持ちになった。

東京デザインウィークのトップページに掲載されてたはずの「お詫び」のメッセージは、いつの間にかなんだかよく分からない「弊社社員が配信したメール」のお詫びに差し替わってた。事故後に掲載されていた本来のお詫び文(前略で始まる奇妙な文章がお詫びなのかは分からないが)は、なぜか「お知らせ」に移動されてる。子どもが、親が観てる前で焼け死んだのを「お知らせ」で片づけてしまうのって……。なんか、気分が悪い。

事の経緯は、年末に東京デザインウィークの社員とボランティアのひとたちが、忘年会を開こうとしてたんだってさ。悪いけど、個人的にはそんなことどうだって良い(本来どうでも良いことではないが)。それが炎上したので、トップページにあったそもそもの火災についてのお詫び文を「お知らせ」に突っ込んで、不謹慎なメールについてのお詫びに差し替えたらしい。なんなんだろね。

あの死亡事故に関わった人たちは、今なにをしてるんだろうか?本当に、責任を感じている人はいるんだろうか?みんな建前だけで謝るフリをして、あとは時間が解決してくれるとでも思ってるのかな。そもそも、「巻き添えをくらったオレらも被害者」って思ってる人さえいるのかも。東京デザインウィークのサイトから、理事の情報もまるっと消えたしね。

この作品をつくった学生たちが通う大学の人たちが「全部大学側の責任です」って謝罪したらしいけど、それも本当にそう思ってるのかな?大学側による謝罪文がホームページに掲載されたのを見た記憶があるのだけど、今見に行ったら跡形もない。「What’s new」を過去にさかのぼったら、「本学学生の不祥事に関するお詫びについて」っていうタイトルで、全く違う事件で学生が落書きで逮捕されたことは載ってたけど、火災と死亡事故についての情報はどこにも見つからなかった。もう、無かったことにしているのか?あのお詫びはどこに行ったんだ?(追記: トップページからお詫びページには行けるようです。検索には引っかからなかったけど、存在してますね)

みんな、ニュースの風化を待っているように思える。息をひそめて、みんなが忘れてくれるのを待っている。

テレビのニュースとか、新聞なんかを見てると、その事件が発生した時はみんな注目するけど、その後あっという間に画面や紙面からは泡のように消えて無くなる。事件の調査は続くし、被害者の遺族の心の痛みは残るのに、消費されたニュースは過去に押し流されてしまう。ニュースは事実を伝えるって言うけど、それは誰かによって取捨選択されたニュースなんだよね。何をニュースとしてピックアップするかはどっかの誰かが決めていて、その時点で人間の意思や意図が介入している。事実ではあるけど、現実とはギャップがある。

火災があった翌日、僕は事故現場の絵画館前の会場付近を訪れた。イベント会場は閉鎖されて中に入れず、撤去作業が始まっていた。入口近くに献花台があり、その周りにカメラを担いだ報道陣がたむろしていた。と、そこにランドセルを担いだ小学生と、その母親らしき人が花を持って現れた。すると、その場にいた報道人全員がダッシュでその二人を囲み、カメラとマイクを向けて押し合いながらコメントを求めた。僕はその光景を見てなぜかむなしくなり、その場を離れた。

会場の外側をぐるっとまわり、反対側の搬入口にたどり着いた。消防のお偉いさんらしい人とすれ違った。そのあとに続いて「新宿区」っていうロゴが入ったつなぎを着た、行政の人らしい集団が会場から出てくるのも見た。会場の撤去作業をする人たちが忙しそうに出入りしている。そこには、メディア関係者は見当たらない。親子連れを取り囲むなら、こういう人たちにしっかりインタビューして報道すれば良いのにと思ったが、きっとニュースとして見栄えがするのは献花台の親子なのだろう。

事件直後に、「全責任を負う」と謝罪した大学側が「現在、警察・消防署に全面的に協力しておりますが、事実関係が明らかになった時点であらためてご報告申し上げます」って学長の名前入りでサイトに掲載してたのを覚えてる。僕はその報告を待っている。