はじめに
Edtechに関連するサービス・組織をマップにまとめました。僕はEdtechを非常に広義に捉えているため、非常に多くのEdtech主体が存在していると感じています。一方でそれらがどう関係しているかが不明瞭だったため、今回一覧としてみました。皆さんがEdtech市場を捉える一助となれば幸いです。
カオスマップを見る前に、まずは以下の図をご覧ください。これはEdtechを推進する意義と、そのために何が必要なのかを簡単に表しています。
Edtechを推進する意義としては教育の形を「個別最適化され、誰にでも開かれた教育」に更新することにあると思います。
現在の教育(特に公教育)の形といえば、壇上の教師が教室内にいる生徒に対し、一枚岩的な方法で同一の内容を教えます。生徒は多様であり、世帯収入や家庭内で伝達される文化の種類や深度、そしてどういった脳回路の持ち主かなどは考慮されず、「○年生の生徒」と言う形で一括りにされます。どの生徒がどれほどの理解をしているかなどは逐次確認せず、期末のテストの時点でそれらをようやく確認しています。
さらに教育の質は地域・世帯収入の差によって大きく変動しています。十分な教師の数を確保できない離島や限界集落、都会であっても私立・公立など教育に充てられる費用で受けられる教育の質は変動します。
長らく変わらなかったこれらの形を、技術の力を活用する事で変革しようという動きがEdtechなのです。
個々人に最も合致した方法で学習を進めつつ、常に学習の進捗をはかり修正を繰り返す。そうする事で学習を効率化していくことができます。
さらに情報通信技術を一層活用していくことにより、教育の質と都会からの距離・教育の質と世帯収入の相関性は薄まるでしょう。
そんな理想を実現するために、僕は大きく以下3つの課題があると考えています。
① 学習コンテンツを充実させること
② ①をより効率的に学べる、学習支援ツールを充実させること
③ ①②を促進するため、教育の産業自体を盛り上げていくこと
これら3つを解決に向かって常に前進させていくことで、先ほどの理想が現実のものになるのでは無いでしょうか。以下に、それらの課題を解決するサービス・組織をカオスマップとしてまとめております。
(EdTechについて概略を知りたい方はこちらからどうぞ)
※ロゴや社名を掲載されるにあたって不都合のある方はいつでもご連絡ください。即刻削除させていただきます。
※Edtechを分類して互いの関係を明確にする事に主眼を置いたため、マップは全てのサービスを網羅している訳ではありません。かつ、国内外企業が雑多に入り混じっています。
※マップ内に入れたいサービスなどの案がありましたらお気軽にご連絡ください。
※学習スタートアップをはじめるのですが、現在(2019/06/23)仲間探し中です。ご興味あれば以下からご確認ください。
〈学習コンテンツ〉
まずは学習するコンテンツ自体を提供しているサービスをまとめました。
一般科目
特に科目の特定されていない多様な学習コンテンツを提供しているサービスを挙げました。
【K-12(ケー・トウェルブ)】
K-12とは幼稚園年長(KindergartenのK)から始まり高等学校を卒業するまでの13年間の教育期の事で、主に米国で使用されています。Edtechのサービスをカテゴリ分けする際によく使用されるものなので、ここでも使用しました。
①幼年・小学校教育
・Springin’
・SoroTouch
・こどもモード
②中学・高校教育
・アオイゼミ
・スタディサプリ
・学研プライムゼミ
・学びエイド
・@Will
【大学、社会人、リカレント教育】
リカレント教育とは義務教育や基礎教育を終えて労働に従事する職業人になってからも、個人が必要とすれば教育機関に戻って学ぶことができる教育システムの事です。
①MOOCs(Massive Open Online Courses)
特徴は大量の受講者・基本無料の授業・授業を受けた結果に対する評価よりも学習過程を重視・基本的にいつでも開講・修了証に効果が(現時点では)少ない、などがあり、「②オンライン学習」の中の特徴だった一部と言えるでしょう。
②オンライン学習
MOOCs以外で、オンラインの配信動画によって学べるものはこちらに分類しました。MOOCsの定義があまり明確ではないため、ツッコミどころはあるかもしれません。
・Schoo
・Udemy
・グロービス学び放題
・資格スクエア
・Proper
特定科目
学べる科目が特定学習コンテンツを提供しているサービスを挙げました。
【語学関連】
主に英語ですが、情報通信技術を利用して新しい形態で語学が学べるサービスを挙げています。
①マッチング
語学学習の中でも、学びたい人と教えたい人をマッチングさせるサービスです。オンラインで完結するものと、オンラインでマッチングの後オフラインで実際に会うものがあります。
a. オンラインマッチング
・レアジョブ
・DMM英会話
・VIPKID
b. オフラインマッチング
・Framingo
②英語学習アプリ
英語学習のために開発されたアプリです。基本的に相手はおらず、自分でそれらのアプリを用いて勉強します。
・えいぽんたん
・mikan(Yenom)
・Speaking Pal
・Night Zoo Keeper
【プログラミング】
オンラインでのプログラミング学習が可能なサービスです。
・progate
・Scratch
・Life Is Tech
・ドットインストール
・CodeCamp
・CodeMonkey
・EXELskills
【企業内スキル】
特定の企業や組織の中で必要とされるスキルを学ぶため、または企業研修などを効率的に行うためののサービスです。
・Find!アクティブラーナー
・TANREN
・TeachmeBiz
・iTutor
・Coursebase
【その他】
以上のカテゴリに当てはまりはしませんが、新しい形で特定の学習内容を教えるサービスに以下のようなものがあります。
①食育
・ハクシノレシピ
②社会問題
・リディラバ
③性教育
・Tenga HealthCare
④美術教育
・ArtLessons
〈学習支援ツール〉
ここまで挙げた学習コンテンツを補完・支援してくれるサービスをまとめました。
提供者側
主に教師などの、学習を提供する側の人間が使えるサービスです。
【授業支援】
教師などが、授業を行う際にそれを支援・補完するサービスです。
これらのサービスは使用するのが提供者側であれば授業支援になり、使用するのが学習者であれば学習支援になりますので、両者にまたがっています。
①授業効率化
個々の生徒がどれだけの学習進捗状況なのか把握したり、従来紙で行っていた作業をデジタルに置き換える事で効率性を増すようなサービスです。非常に多様性に富んだサービスがあります。
・ロイロノート
・Quipper
・School Tact
・Classi
・BANSHOT
・StudyLinkZ
・FLENZ
・デジタルナレッジ
・Goocus
②次世代ツール
現在は教育用ツールとしての文脈は弱いですが、普及と共に強力な教育用ツールになり得るサービスです。どれもとっても面白いサービスで、これらが教育現場に浸透したらと考えるとワクワクするものばかりです。
b. 360度カメラ
・Swipe Video
e. その他
・MEEBO
・KOCRI
・Scratch+MABEEE
・Nemonic
・Unicko
③SNS
全国の教師が悩みや実績などを共有するSNSです。教師と生徒が共同で使うものもあります。
a.教育者用SNS
・センセイノート
・Benesse先生SNS
b.学習者、教育者両用SNS
・Ednity
・Edmodo
・Classting
・Annote
【学校経営支援・校務管理】
学校や塾などの運営を効率化するためのシステムを以下に挙げています。「授業支援」よりも一歩大きい視点で校務全体をカバーしているものです。
・みちざね
・スクールマスターZeus
・スズキ教育ソフト
・Abl School
受ける側
主に生徒などの、学習を提供される側の人間が使えるサービスです。
【学習支援】
生徒が、学習を行う際にそれを支援・補完するサービスです。
①学習効率化(提供者側>授業支援>「①授業効率化」と同一)
②次世代ツール(提供者側>授業支援>「次世代ツール」と同一)
③SNS
学習者が他の学習者に成果物や、学習進捗状況、達成や抱負などを共有するSNSがあります。生徒と親が使えるものや、技術者用のものもあります。
a.学習者用SNS
・StudyPlus
・Clear
・THINKERS
・StoryPark
b.技術者用SNS
・GITHUB
・GIT
・Skillsmatter
c. 学習者、教育者両用SNS( 提供者側>授業支援>SNS>「b.学習者、教育者両用SNSと同一」)
【キャリア支援】
学習者が進学や就職を考える・実行に移す際に、それらを手助けするサービスです。
①オンライン主体学校
積極的に情報通信技術をカリキュラムに取り入れ、オンラインで授業を行う学校です。
②進学支援
様々な方法で生徒の進学を支援するサービスです。
a.コース選択
・Quottly
b.マッチング
・ConnecPath
③学歴管理(ブロックチェーン)
・DISCIPLINA
・Educhain →実証実験@University of Dubai
【学習プラットフォーム】
学習者からすると幅広い知識やスキルを、プロではなく一般の人から学ぶことができる。教える方からすると自身の知識やスキルを教えることで収入を得ることができる。そんなCtoCプラットフォームを提供しているサービスです。
〈産業の盛り上げ〉
学習コンテンツとそれを支援する学習支援ツールのサービスを見てきました。それらの出現をより一層加速させるため、また、それらを公教育の現場への実装を進めていくために、教育産業自体を盛り上げていく必要があります。
そのための活動をしている組織やサービスをまとめました。
産
民間にて、教育業界を盛り上げようとしている団体や、技術人材を輩出しているような組織を挙げています。
【プログラミング教室】
オンラインではなく、主にリアルの場でプログラミングを教えている教室です。EdtechはEducation Technologyの短縮語ですが、その名の通り技術を教育業界に応用するものです。技術身につけた人材が企業に入る、起業する、研究するなどのキャリアを取ってその技術を活用することで、教育に適応できる技術水準が向上していくでしょう。
・Geek Salon
・Tech Camp
・G's Academy
・サムライエンジニアリング
【Edtech企業支援組織】
「教育は儲からない」という通念がある中でなかなか投資が実施されにくい状況がありました。そんな中でEdtech企業に対して積極的に投資するVCやアクセラレーターを載せています。
②アクセラレーター
・学研アクセラレーター
【カンファレンス】
Edtechスタートアップにとってはビジネスを露出し、顧客と出会える機会がカンファレンスにあります。また、教育業界の有識者がスピーチやパネルディスカッションをすることで、参加者である教育業界の人々が教化されるという効果もあります。
・Edvation×Summit
・IES
・SXSW EDU
・GET China
・Edtech Asia
【Edtechメディア】
Edtechに関するニュースや知見をまとめたメディアです。Edtechスタートアップが露出を高めるだけではなく、興味のある読者を教化する役割も担います。
・EdTech Media
・Edtech×inno
・EdTechZin
・edSurge
・JMDedu
学
教育の世界から、教育業界を盛り上げようとしている団体や、技術人材を輩出しているような組織を挙げています。
【技術人材排出学校】
学位を取ることのできる学校の中で、特に技術や起業家精神を持った人材を育てる事に重点を置いた学校です。技術身につけた人材が企業に入る、起業する、研究するなどのキャリアを取ってその技術を活用することで、教育に適応できる技術水準が向上していくでしょう。
・キリロム工科大学
・デジタルハリウッド大学
・Make School
【大学発VC】
大学の研究室では多くの素晴らしい技術が生まれています。それらの技術を研究で終わらせるのではなく、ビジネスとして世の中に出す事で、世の技術革新の速度は高まります。しかし米国などと比較して、日本ではそういった技術を世に出す下地が整っているとは言えません。こういったVCは当該大学の研究から生まれた技術を使う大学初スタートアップに投資をする事で、彼らがビジネスの世界に足を踏み入れる支援をしています。
・東大エッジキャピタル
・京都大学イノベーションキャピタル
・大阪大学ベンチャーキャピタル
・QB Capital
官
公の立場から、教育業界を盛り上げようとしている団体を挙げています。
【省庁】
Edtechの流れを加速させるために、政府として教育改革、Edtech推進や規制の撤廃などを行っていく必要があります。以下は教育に関わる主な省庁です。
【NPO・独立行政法人】
省庁以外にも、教育改革や教育支援のために動いている組織が以下のようにあります。
・Teach for Japan
・カタリバ
・KID'S DOOR
・日本学生支援機構
(産学官横断)
【産学連携】
研究者集団であるリバネスが、学校と産業を繋げる活動をしています。各大学の研究室にある技術と協同し、ビジネスとしていく取り組みなどをおこなっています。
【産学官連携】
文部科学省が主体となり、名だたる日本の企業から寄付を募り、世界へ挑戦したい学生を主に金銭面からサポートするプロジェ
おわりに
このようにEdtech企業、そして広く教育産業を推進する組織は多数存在します。彼らが競い合いながらも、ある種一丸となって教育改革を推進していけば、長年変わらないと言われてきた教育の風景も、大きく変革するのではないでしょうか。それも意外と近いうちに!
マップや個別の説明に関して質問・意見などのある方はいつでもお気軽に僕までご連絡ください。
Tomo