情報処理 Vol.60 No.2『情報学者が競馬予想に踏み出すときに知っておくべきこと』を読んだ
情報処理学会誌「情報処理」Vol.60 No.2 の記事『情報学者が競馬予想に踏み出すときに知っておくべきこと』を読んだ。有料記事であるため、内容をぼかしながら感想を残しておく。
一言でまとめると、競馬で儲けるために何を考えるべきなのかを端的にまとめた記事であった。記事の冒頭で著者が断っていたことであるが、どうすれば儲かるのかといった具体的な手法の紹介はない。
競馬に限らないが、何を解くのか?というゴールの設定は、機械学習において、何を使って解くのかや、それをどうやって解くのかよりも重要である。これは PyCon JP 2018 の貫井さんの発表でも説明があった(以下の録画はその部分)。
著者が主張する解くべき問題は、我々が考えるそれと同じだった。
また、オッズは競馬ファンの集合知であり、驚くほど正確であることを過去のデータから示していた。オッズが馬券購入者のアンサンブルであることは、我々も解説した。
個人的に、この記事のもっとも気に入ったところは、記事の本旨とはずれた最後に
(省略)ここで1つ重要なことがある。それは、仮に儲かる手法が構築できたとしても、それを決して公開してはいけないということである。
と注意を残しているところ。情報 “学者” 向けの記事で、これは何とも皮肉なものだ☺️
もちろん、公開してはならない理由は
と同様である。
5ページの短い記事なので、さくっと買って読んでしまっても良いと思うし、各々の方向性に確固たる自信がある人は、言われてみれば当然のことが書いてあるだけなので、特に読まなくても良いかと思う。情報処理学会の会員の人は無料だし、読んでおけば良いんじゃないかな。
最後に、日本の競馬を対象にした日本語の論文で、必読のものを2つ紹介する。
この2つは、偶然にも私の出身大学である神戸大学の芦谷先生のものだが、競馬の結果に関係無く、必ず利益がでる馬券の買い方が存在しうることを示した(他にも主張はあるのだが)。競馬で儲けたい人は、なぜこのような現象が起きるのかという仕組みを理解しておく必要があると思う。