株式会社ドワンゴを退職しました

Tsukasa OMOTO
9 min readJul 1, 2019

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社内で使っていたアイコン

2015年に新卒で入社し、4年3ヶ月勤めた株式会社ドワンゴを2019年6月30日をもって退職しました。確かにドワンゴの社員でしたが、感覚的には、ずっと居た Dwango Media Villeage という組織を卒業した気分です。

もともと2019年末には退職するつもりだったのですが、抱えているタスクがちょうどタイミング良く片付き、環境も色々と変化してしまったため、予定を早めこのタイミングでの退職となりました。

退職後も秘密保持契約は有効なので詳細は書けませんが、公開できる範囲でやってきたことを振り返ってみます。退職エントリって何のためにあるんだろうと思ってましたが、書き終えてみると、自分がやってきたことに区切りをつけるという意味で良いものだとわかりました。

まず、在職期間を通して、時間があるときは何かニコニコサービス内で利用するレコメンダーやその運用システムを開発してました。これについては PyCon JP 2018 にて紹介しました。この発表で出てくる事例は、私一人ではなく、チーム(セクション)の取り組みの紹介であることに注意してください。

PyCon JP 2018 発表資料
PyCon JP 2018 発表配信の録画

このような分野に興味がある人は、是非、採用ページから応募して、話しだけでも聞きに行ってみてください。辞める直前に上司に確認したところ、対応できると回答があったので、対応できるのだと思います。

発表という流れでは、NeurIPS2018読み会 にて CatBoost の論文を紹介しました。

NeurIPS2018読み会 発表資料

昨今、検証データの分割方法やターゲット漏洩の話題が定期的に問題となっている中、このタイミングでこの論文を紹介できたのは今となってのは良かったと感じています。論文の内容はそれがメインの話しではないですが。

レコメンダー開発以外には、2017年に国政選挙の予測プロジェクトに携わりました。

この選挙プロジェクトは突然の衆議院解散で、急にスケジュールが厳しくなり、また、当時の自分はまだ(今と比べて)能力が低かったので、改めて考えてみても断トツで大変なプロジェクトとして記憶に残ってますが、今となっては、ここでの経験が一番自分を飛躍させたように思います。

「日本初」や「世界初」といった形容を安易にするべきでないと思っていますが、この時は偉い人の判断を覆すことができませんでした。ただ、世に出しても恥ずかしくない結果を残せて良かったです。

また当時、LightGBM を中心に利用してたこともあり、一番コミットしてたような気がします。 業務で使っているというのを口実に好き勝手やってましたが、OSSへの貢献もしっかり評価されて嬉しかったです。

この後、競馬予測プロジェクトに移りました。

第1シーズンでは、ゲートこそ大きく出遅れましたが、終わってみれば見事、ハナ差で差し切って勝利を収めました。最終回の感動は今でもよく覚えています。

生放送アンケートの一例

上のスクショは最終回の1つ前の生放送ですが、番組アンケートも驚異的なアンケート結果を連発して、(少なくとも私の中では)この企画は伝説になりました。

第2シーズンの結果は、勝つことが当たり前みたいな結果になっており、これを運用すれば業績もV字回復だと期待してましたが、なかなか物事はうまく進みませんでした。

競馬AI界には、「勝ち馬」はわかるけど「儲ける事ができない」という問題があり、そこに「金脈」があるのは皆知ってるけど「掘り当て方がわからない」という状況にありました。Mamba は競馬AI界の積年の課題を解いたと自負しています。

ところで、ちょうど第2シーズンが始まる前辺りで、多忙過ぎて心療内科にお世話になるという、在職中(というより30年生きてて)、もっとも悔やまれる出来事の1つがあり、睡眠導入剤と睡眠薬、抗不安薬を処方してもらっていました。

体調を壊すのは一瞬ですが、治すには3倍以上の時間がかかると聞いていましたが、自分も例外ではありませんでした。現在は、周りのサポートもあり、状態は随分と良くなり、すでに薬は服用していません。健康は大事にしていきたいと心に誓いました。

予測プロジェクトの他に、教育事業にも携わっていました。

1年ぐらいかけて『機械学習 入門』講座のテキストを執筆しました。ありがたいことに、多くの人が受講してくださっているようで、これを書いた者としては、これが受講者の人生を変えるきっかけになってくれることを切に願います。

表向きには教材執筆ということでしたが、本心では、周りの人(部署内に限らない)が深層学習のトレンドを追いかけるのに疲弊しているのを見ていて、同じ道に進むのは自分にとって良くないと思ったので、今のうちにじっくり腰を据えて(いわゆる)古典的な機械学習を勉強し直そうと考え、これを始めました。結果的に、受講者は今も増え続け、自分の目的も達成でき良かったです。

ちなみに、冒頭でタイミングが良くなったと言ったのはこの教材執筆のことで、2019年3月に終わりました。

長くなったので、超会議2016の話しなどは割愛しますが、本当に幅広く色々なことに挑戦する機会をいただきました。また、その全てにおいて、多くの人の支えがあったことは忘れません。ありがとうございました。

ドワンゴを辞めた後ですが、人工知能募金を始める前からずっと取り組んでいた競馬関連の副業を法人化したばかりなので、株式会社AlphaImpact の取締役として、しばらくはそれを中心に置いて生きていこうと思います。こっちはこっちで信じて付いてきてくれた人達がいるので、彼らと一緒に人生あがれるように、あと5年ぐらいでもう一回当てるつもりで頑張ります。

また、LightGBMのコミッターということで何件か技術アドバイザー的なものもすでに請け負っています。時間的に息抜き程度にしか貢献する余力はないですが、それでも良ければご相談ください。

LightGBMには開発者Slackがあるのですが、ちょうど先月、guolinke氏が「また本腰入れるわ(意訳)」と発言をしたのを機に、色々議論が進んでいるので、たまにはコミッターらしい活動もしていきたいと思います。まずは出しっぱなしのPRを片付けるところから・・・。

開発者Slackより

何の役にたつのかどうかわからないツルハシを作るのが自分は好きなので、今後もこれに限らず興味あるプロジェクトに細々と参加していこうと思います。

最後になりまますが、ドワンゴという会社に入ってからの約4年間は周りの人にも恵まれ、非常に充実したものになりました。入社したての頃は、正直やりたいことも特になく、というより、自分が何が好きなのかよくわかっていませんでしたが、様々な経験を積み、30歳を万全の体制でスタートできそうです。本当にお世話になり、心より感謝しています。

何だかんだ銀座方面にはちょいちょい用事があるので、また飯にでも行きましょう。今後ともよろしくお願い申し上げます。

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