How to Squat: The Definitive Guide

tora
81 min readFeb 1, 2019

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はじめに

この文章はStronger by scienceの許可を得て、How to Squat: The Definitive Guideを日本語訳したものです。翻訳を快諾してくださったStronger by scienceに感謝します。訳に間違いや至らぬ点があれば指摘頂けると幸いです。

基礎的な物理学

はじめにいくつか理解すべき用語がある。それら用語で、良いフォームのスクワット動作のために、我々の筋肉がどのように骨と連動しているかを表現する。

一つ目は力である。力は質量と加速度の積で、一般にはニュートン(N)で計算される。1ニュートンは、1kgの質量を、1m/sec2に加速させる。我々の目的にとって重要なのは、力は直線的ということだ: 力は直線で押したり引いたりする運動を表現する。

例えば、300kgを背負っている場合を想定する。300kgのバーは、質量相応の力を発生させる。もしバーを支えていなければ、重力により9.8m/sec2の加速度が生じるので、バーは300kg x 9.8m/sec2 = 2940Nの力を下方に発生させる。力の方向は重力の方向なので、真下である。同様に、筋肉が収縮する時には、筋肉は一方の端からもう一方の端へ、まっすぐに力を発生させる。

モーメント

二つ目はモーメントである。モーメントは運動軸を考慮した力で、一般にはニュートンとメートルの積で計算される — 力と、回転軸から作用点までの距離の積である。力は直線的だが、モーメントは回転である。

例えば、20kgのバーベルカールを想定する。上腕は体の側面で真下に伸び、前腕(長さ30cm)は床に平行とする。
上の例と同様に、バーベルの発生させる力を計算する: 20kg x 9.8m/sec2 = 196N の力が、真下に発生している。次に、肘にかかるモーメントを計算するには、196Nをバーベルから肘までの距離(モーメントアーム)にかける: 196N x 0.3m = 58.8Nm である。モーメントは下方向にかかるので、肘を前腕方向へ伸ばそうとする。これを伸展モーメントという。もし、バーを上方に持ち上げようとするならば、二頭筋と上腕筋で、58.8Nmより大きな屈曲モーメントを発生させなければならない。
モーメントアームは回転軸から作用点までの距離である。よって、前腕は常に同じ長さだが、肘が水平方向から曲がったり伸びたりすると、モーメントアームは短くなり、モーメントも小さくなる。

筋肉や骨格にかかる負荷が発生させるモーメントを外部モーメント、筋肉が骨を引っぱって発生させるモーメントを内部モーメントという。外部モーメントと全く同様に内部モーメントも計算できる。力は筋肉の収縮力であり、モーメントアームは回転軸から筋肉の付着する場所までの距離である。例えば、膝蓋骨腱(大腿四頭筋の力を脛骨に伝達する)が膝関節の中心から5cmのところに付着していて、大腿四頭筋の収縮により脛骨に対して垂直に10,000Nの力が発生すると、伸展モーメントは10,000N x 0.05m = 500Nm である。

解剖学

脊椎

脊椎は頭の付け根から骨盤の上まで伸びていて、24本の椎骨で構成されている。 椎骨は3つの部位に分けられる:首の7つの頸椎、首の付け根から胸郭の下部の12の胸椎、胸郭の下部から骨盤までの5つの腰椎である。

一つ一つの椎骨間の接合部はさほど大きく動かないが、小さな動きの積み重ねにより、脊椎はかなり大きな範囲で屈曲、伸展、回転、水平方向の屈曲を行える。

脊椎は自然な状態では主に3つのカーブを持つ: 腰椎による前弯曲線(内側に丸みを帯びる)、胸椎による両性曲線(外側に丸みを帯びる)、頸椎による前弯曲線である。脊椎の屈曲や伸展について語る時、これらの曲線をベースラインとして、屈曲や伸展を語ることになる。これらベースラインの曲線に対し前方に曲がる時、脊椎は屈曲した状態になる。逆に、ベースラインの曲線に対し反る時、脊椎は伸展した状態になる。ベースラインを通り越して反った場合は過伸展である。そのため、例えば、胸椎がまっ平らな状態では過伸展であるが、逆の場合には屈曲である。腰椎がまっ平らな状態では屈曲であるが、反った状態では過伸展である。

椎骨の間には、クッションとしてはたらく椎間板がある。椎間板は、圧縮力(負荷と脊柱起立筋の収縮による押す力)に非常によく耐えるが、せん断力(負荷や前傾の度合い、脊椎の屈曲による、椎間板をスライドさせる力)には弱い。過去にケガを負ったことの無い限り、脊椎が曲がっていなければ、問題は発生しないだろう。

圧縮力とせん断力

正しいフォームのスクワットでは、脊椎の大きな屈曲も伸展も起きない。足や尻からバーに力を伝えるため、脊椎はがっちりと伸びた状態であるべきだ。

骨盤

両側に腸骨、坐骨、恥骨がある。 腸骨は股関節の一番上にあり、体の横側、 腹斜筋のすぐ下に触れられる。 坐骨は骨盤裏側の下部にある。恥骨は骨盤の下部、鼠径部の前面にある。

これら3つの骨が結合する場所は寛骨臼 —股関節である。

骨盤には他に2つの特徴がある。: 下前腸骨棘があり、大腿直筋(大腿四頭筋)の始点となっていること、坐骨結節があり、ハムストリングスと大内転筋の始点となっていることである。

大腿

大腿骨は太ももの骨で、腰から膝の間にある。

大腿骨には4つの主要な部位がある。骨頭、骨首、骨軸、関節丘である。

骨頭は寛骨臼(股関節)に収まる部位である。 骨首は骨頭から飛び出し、骨軸につながっている。骨首と骨軸の接合部付近には大小の結節があり、そこには多くの股関節外転筋と回旋筋が付着している。大腿直筋を除く大腿四頭筋3つが骨軸に付着し、 大殿筋は骨軸の裏面と側面に付着している。骨軸の長さは、膝と股関節にはたらくモーメントアームに大きく関係する。

関節丘は、大腿骨の下部にあり、膝関節と接している。 関節丘は半月板(膝関節の軟骨のパッド)によって緩衝され、膝の4つの主要な靭帯により脛骨に付着している : 前十字靭帯(ACL)、後十字靭帯(PCL)、内側側副靭帯(MCL)、側副側靭帯(LCL)である。腓腹筋(ふくらはぎの最大の筋肉)も、関節丘のすぐ上に付着している。

脛骨、 腓骨

脛骨、腓骨は足の骨で、膝と足首の間にある。

脛骨の関節丘は膝で大腿骨に接続している。

ハムストリングスの筋肉は脛骨関節丘のすぐ下と、腓骨の上部近くに付着している。ヒラメ筋(腓腹筋とあわせて、ふくらはぎの主要な筋肉)は脛骨と腓骨の上部裏側近くに付着している。

椎間関節

椎間関節は、椎骨間の関節である。 簡単に要約すると : 各椎間関節は脊椎椎間板により緩衝され、それぞれが少しずつ屈曲、伸展、回転、および横方向屈曲することにより、全体として大きな可動域を実現している。

股関節

股関節はボールとソケットでできた関節なので、以下のように、あらゆる方向に動くことができる。屈曲(膝を胸に近づける)。伸展(膝を床に近づける、体の後方に移動させる)。外転(膝を体の中心線から遠ざける)。内転(膝を体の中心線に近づける)。回転(内転は大腿骨を体の中心線に向けて回す、外転は大腿骨を体の中心線から遠ざけるように回す)。

骨盤、股関節のソケット、大腿骨の解剖学的なバリエーション(訳注:大きさの比率や、相互の位置関係のことを言っていると思われる)によって、主に可動域が決定する。

膝は基本的に蝶番型の関節である。つまり、原則的には屈曲(レッグカールのような)と伸展(レッグエクステンションのような)のみできる。若干の回転、外転、内転はできるが、数度以上の動作は半月板と主要な膝靭帯に過度の負担をかける。

膝蓋骨(膝の前部にあるこぶのような小さな骨)は、大腿筋のてこを強化し、腓骨を引っぱって膝を伸展させる。

足首

足首は回転したり左右に曲がったりする。だが、スクワットに関して言えば、足底の屈曲と背屈だけ考えればよい。屈曲はつま先を体の他の部分から遠ざける動きである。背屈はつま先を頭の方に向けようとする動きである。

たいていの人(股関節の可動域が極端に大きい人は例外)は、膝を前方に動かしスクワットでパラレルより深くしゃがむため、ある程度の背屈可動域が必要である。

脊柱起立筋

脊柱起立筋は複数の筋肉で構成されている。だが、これら筋肉は本質的に同様のはたらきをするので、個別に議論する必要はない。

脊柱起立筋は骨盤の上、肋骨、そして最も重要なことに脊椎に付着している。脊柱起立筋が収縮すると、脊椎が伸びる。 個々の筋肉はそれぞれ数本の椎骨にまたがるだけなので、脊椎の各区間の強さを個別に扱う必要がある。胸郭部分の起立筋(背中上部)が強く、腰椎部分の脊椎起立筋(背中下部)が弱いということもあれば、その逆もありうる。

体幹

「体幹」とは、首から腰の間の筋肉すべてを包括的に表した用語で、胴体に息をため固く引きしまった状態とするのに寄与する。「体幹」には、腹斜筋、腹横筋、腹直筋、腰筋、広背筋、および 腰方形筋が含まれる。

実際のところ、これらの筋肉はどれも個別に大きな役割を果たすことはないので、具体的に議論する必要はない。 脊柱起立筋が脊椎を安定させるのに十分なテンションを発生させるのが、「体幹」の役目である。腹斜筋、腹横筋、腹直筋においては、横隔膜と骨盤底の寄与のもと、腹腔内圧を生み出すことも役目である。

大臀筋

大臀筋は最も強い股関節伸展筋である。 大臀筋の起始は腸骨の後部表面にあり、 停止は大腿骨の後部と側面、 腸脛靭帯である。

「起始」は、身体の中央に最も近い筋肉の付着点を指す。「停止」は、身体の中央から最も遠い付着点を指す。 筋肉が収縮すると、筋肉は起始と停止を互いに引き寄せる。

ハムストリングス

ハムストリングスには、大腿二頭筋、半腱筋、半膜様筋という3つの筋肉がある。だが、ここでの議論においては、3つの筋肉は同じ役割を持ち、単一の筋肉として扱える。大腿二頭筋の短頭に至っては議論の必要もない。起始は坐骨結節にあり、停止は膝の下、脛骨および腓骨の上部先端にある。ハムストリングスは股関節と膝関節をまたぐので、ハムストリングスは股関節伸展(スクワットの立ち上がりで必要な動き)と膝関節屈曲(スクワットの立ち上がりで不要な動き)の両方に関与する。関節からハムストリングスの停止までの距離では、股関節の方が膝関節よりも遠い(モーメントアームが長い)ので、ハムストリングス収縮時のモーメントでは、膝関節屈曲よりも股関節伸展の方が大きい。

大内転筋

スクワットで内転筋の役割は小さいが、最も重要なのは大内転筋である。大内転筋はしばしば「第四のハムストリング」と呼ばれる。ハムストリングと同じ坐骨結節に起始があり(やや恥骨上にも伸びている)、強力な股関節伸展筋だからである。ハムストリングスとは異なり、大腿骨の裏側に停止があるので、膝関節をまたがることはなく、膝関節屈曲モーメントを発生させない。

筆者は、大内転筋が十分な評価を得ていないと考えている。股関節伸展が議論される場合、臀筋とハムストリングスはまっ先に議論されるが、大内転筋は忘れられがちである。しかし、細部を気にする必要はないが、大内転筋は大きな筋肉であり、大きな股関節伸展モーメントを発揮するのに有利な位置に付着している。大内転筋はこれまでに直接十分には研究されてなく(最近発表された研究によれば、スクワットのボトムで、大内転筋は臀筋とハムストリングスよりも大きな股関節伸展モーメントを発生させるという)、しばしば見落とされがちだと筆者は考えている。

大腿四頭筋

新しい研究によれば、太もも前面にはこれまで見落とされていた5番目の筋肉があるという。よって、本来ならばquinticeps(訳注:quintiはラテン語で5番目の意味)と呼ぶべきなのかもしれない。だが、それでは聞こえが良くないので、従来通りquads(大腿四頭筋)と呼ぶことにする。

大腿四頭筋の内の3つ-外側広筋、中間広筋、内側広筋-は、全て同様に扱える。これら筋肉の起始は大腿骨にあり、停止は膝蓋骨を介し脛骨結節(脛の上部近く、膝の直下)にある。役割は膝関節の伸展である。

4番目の筋肉の役割は少し異なる。 大腿直筋は本質的にはハムストリングスの真逆である。停止は膝蓋骨を介して脛骨結節に付着しているが、起始は腸骨の前部下腸骨棘(股関節のすぐ上)にあり、股関節を屈曲させて膝を伸ばす役割を持つ。 しかし、ハムストリングスが膝関節よりも股関節の内部モーメントアームが長く、膝屈曲よりも股関節伸展で効果的に機能するのと同様に、大腿直筋は股関節よりも膝関節の内部モーメントアームが長く、股関節屈曲よりも、膝伸展で効果的に機能する。

ふくらはぎ

最後に扱う筋肉群はふくらはぎである。主に2つの筋肉があり、どちらも足底を屈曲させる筋肉である。

ヒラメ筋の起始は脛骨と腓骨の裏側にあり、腓腹筋の起始は大腿骨にある。 どちら筋肉もアキレス腱を介して踵で停止する。

ヒラメ筋は1つの関節だけをまたがるので、足底屈曲の作用のみ持つ。 一方で、腓腹筋は膝と足首の両方をまたがるので、足底屈曲と膝屈曲の両方の作用を持つ。

バイオメカニクス

断面

本章の理解のためには、運動の面を理解する必要がある。3つの基本的な面がある:矢状面、前頭面、横断面である。矢状面は、物体を上から下へ左右に切断する面で、屈曲と伸展が発生する。前頭面は、物体を上から下へ前後に切断する面で、外転と内転が発生する。 横断面は、物体を前から後ろへ上下に切断する面で、回転が発生する。

重要な点がある:外転、内転、回転は、胴体に対する前頭面および横断面により定義される。 一方、屈曲と伸展は、それらの発生する骨と関節に対して定義される。

スクワットにおいて重要なことは、股関節と膝の屈曲と伸展は、大腿骨に対する矢状面により定義されるということである。大腿骨を上から下へ左右に分割する平面を想像してもらいたい。膝が正面を向いている場合、大腿骨に対する矢状面は胴体に対する矢状面と平行になるので、リフトを真横から見て、膝と股関節の屈曲伸展を評価すればきわめて正確なものになる。しかし、股関節が外転していると、大腿骨の矢状面は胴体の矢状面と交錯するので、真横からリフトを評価すると、膝や股関節の伸展を誤って見積もることになる。膝や股関節伸展を2次元でなく、3次元で評価する必要がある。Escamillaはスクワットを2次元で評価すると、大きな誤差が発生するという研究を示した

これについて考える簡易な方法がある:カールの方法はおそらく1000通りあるだろう。バーベルカール、コンセントレーションカール、プリーチャーカル、などなど。カールが純粋な肘の屈曲伸展と考える者はいないだろう。だが、肩が内転している(コンセントレーションカール)場合、前腕は胴体の前頭面の中で動いている。コンセントレーションカールが肘の外転内転であると考える者はいないだろう。肘の屈曲伸展は上腕骨に対して定義されるもので、カールは上腕骨の矢状面の中で行われるものだ。まったく同じ原理がスクワットにも当てはまる。

スクワットの基本要件

スクワットで考慮すべき要件が4つある:脊椎屈曲モーメント、股関節屈曲モーメント、膝屈曲モーメント、足首背屈モーメントである。

(1)脊椎屈曲モーメントは2つの要素に依存する:

  1. 胴体矢状面における、バーと椎間関節の間の、水平距離(重力に対し垂直)。
  2. バーの重量。

よって、3つの要素が脊椎屈曲モーメントを増加させる:

  1. バーを背面の高い位置に移動する、もしくはバーを体の前面に移動する。
  2. バーに加重する。
  3. 胴体を前方に倒す。

(2)足首背屈モーメントは2つの要素に依存する:

  1. 脛骨矢状面における、足裏中央の圧力のかかる場所と足首関節の中央の間の、水平距離。
  2. バーと体重の合計重量。

よって、2つの要素が足首背屈モーメントを増加させる:

  1. バーに加重する。
  2. 足裏の圧力のかかる場所が前方に移動する。

(3)股関節屈曲モーメントは2つの要素に依存する:

  1. 大腿骨矢状面における、系全体の重心(バーと、股関節より上の体重)と股関節の間の、水平距離。
  2. 股関節より上の合計体重(バーと体重)。

よって、3つの要素が股関節屈曲モーメントを増加させる:

  1. 系全体の重心が前方に移動する、もしくは股関節が後方に移動する。
  2. バーに加重する。
  3. 深さ。パラレルに近づくほど、矢状面における大腿骨は前後方向に長くなるので股関節、膝関節屈曲モーメントアームも長くなる。

(4)膝屈曲モーメントは2つの要素に依存する:

  1. 大腿骨矢状面における、系全体の重心(バーと、膝より上の体重)と膝の間の、水平距離。
  2. 膝より上の合計重量(バーと体重)。

よって、3つの要素が膝屈曲モーメントを増加させる:

  1. 系全体の重心が後方に移動する、もしくは膝が前方に移動する。
  2. バーに加重する。
  3. 深さ。パラレルに近づくほど、矢状面における大腿骨は前後方向に長くなるので股関節、膝関節屈曲モーメントアームも長くなる。

足首と脊椎に関する条件は個別に議論できるが、膝と股関節に関する条件は相互に関連している。

膝屈曲モーメント = 負荷 x 水平距離(系全体の重心~膝)

股関節屈曲モーメント = 負荷 x 水平距離(系全体の重心~股関節)

よって、系全体の重心が前方に移動すると、膝屈曲モーメントは減少し、股関節屈曲モーメントは増加する。逆もまたしかり。

以上から、我々はものごとを非常に単純化する、もう一つのクールな事実を見いだせる。

重心と膝の水平距離 + 重心と股関節の水平距離 = 矢状面における大腿骨の前後方向の長さ

大腿骨と地面の角度の余弦(コサイン)を計算すると、矢状面における大腿骨の前後の長さを計算できる。

膝と股関節の屈曲モーメント = 負荷 x 大腿骨の長さ x cos(大腿骨の角度)

言い換えれば、スクワットでいかなる動作をしようとも、膝と股関節の伸展に要求される条件は変化しない。大腿骨が床と平行になると、伸展モーメントの合計はピークに達する。一定の負荷においては、バーの位置、スタンス幅、靴にかかわらず、モーメントは一定である。同様に、床に対する大腿骨の角度が一定である限り、スクワットのスタイルにかかわらず、膝と股関節にかかるトータルのモーメントは一定である。

この小さな事実は物事を劇的に単純化する。一定の負荷のもとでは、股関節から下部に要求される条件は一定なのだが、後ほど、あるテクニックによってスクワットの重量が伸びる理由を議論する。

大腿骨に対する矢状面

二関節筋

もう1つ注意を払うべきものがある。理解は容易だが、すぐに明白になるものではない:ハムストリングスと大腿直筋の役割である。

これらは二関節筋であり、望ましい動作(膝と股関節伸展)と、望ましくない動作(膝と股関節屈曲)の両方に寄与することだ。

ただし、その逆効果はさほど大きくない。なぜなら、ハムストリングスの停止から股関節までの距離は、膝までの距離よりも遠く、従って膝関節屈曲よりも強い股関節伸展を発生させるからだ。大腿直筋ではその逆なので、やはり逆効果は小さい。

しかし、これら筋肉は実にクールな特性を持っている:これら筋肉は、他の膝股関節伸展筋の生み出したモーメントを、別の関節に分配してくれる。

膝が伸びるとき、膝はハムストリングスの停止を引っ張る。膝の運動はハムストリングスに力として伝搬し、股関節を伸展させる。股関節が伸びると、運動は大腿直筋に力として伝搬し、膝を伸展させる。

これら運動は系全体に力を効率的に分配するのに寄与する。股関節伸展は膝伸展に若干寄与し、膝関節伸展は股関節伸展に若干寄与する。

スクワットでの筋活動を測定した研究(一例を後述、その他多数の研究を文末にリンク)によれば、異なるスクワットのスタイルでも、筋活動はだいたい同様だった。これは、膝主導や股関節主導見えるスクワットにも当てはまった。二関節筋により股関節伸展が膝関節伸展にも寄与している(逆もしかり)ことを知っていれば、筋活動の活性化の差異が些細なものになるのも納得がいく。

van Ingen Schenauの研究では、この概念がジャンプにも適用されていることを図解している。大腿筋は腓腹筋を介して足底の屈曲に寄与する。同じ概念がハムストリングスと大腿直筋を介し、膝と股関節にも適用される。

いよいよ本題のスクワットに進む時である。 基本的な動作について議論した後、この資料数点に再度触れ、弱点の分析と修正や、スクワットの基本的な疑問点や、どうやって動作を最適化するかといった点に回答する。

スクワット: セットアップ

スクワットには3つの鍵となる要素がある:セットアップ、下降局面(エキセントリック)、上昇局面(コンセントリック)である。

下降、上昇ではいくつかバリエーションがある;特定の人にとって効き目のある対処法でも、別の人にとって効き目のないことがある。しかし、たいていの人に当てはまる対処法もある。それぞれにやや異なるように見えるが、根本的な対処法や条件は全く同じである。

一方で、セットアップにはもっと多くのバリエーションがある。快適でより良いスクワットをするにあたり、バーの位置、スタンス幅、グリップ幅は人それぞれである。

このセクションのほとんどのトピックでは、白黒付けがたいルールや、善し悪しを明らかに付けられない選択肢がある。人によって効果の大きかったり小さかったりする、異なるアプローチがある。このセクションではそれら選択肢に触れ、テクニックの長所短所を論じる。万人に当てはまる解決策はないので、最終的には個々人が自身で最適化できるように、セットアップをトラブルシューティングできるようなツールを提供することを目的にする。

バーの位置

セットアップで最初に考慮するのはバーの位置である。スクワットでのバーの位置は3つある:ハイバー、ローバー、フロントである。ハイバーではバーを僧帽筋の上に置く;ローバーではバーを三角筋後部の上に置く;フロントではバーを三角筋前部か、三角筋前部と僧帽筋の間のくぼみの上に置く。

ハイバースクワットとローバースクワットの境界は漠然としたものである。肩甲骨上に線を引くことはできるが、肩甲骨上でバーを数インチ上下させただけで、挙上動作に抜本的な違いは生じない。ハイバーとローバーはしばしば異なるエクササイズとして扱われるので、このガイドでは別個に扱う。しかし、実際には、その違いはたいへん小さい;たいていの人では、バーの位置を2–3インチずらしたとしても、意識的に動作を変えない限り、胴体や関節の角度が5–10度変わるだけである(ローバーと比較し、ハイバーでは、前掲が少なく、膝の屈曲が大きく、股関節の屈曲が小さくなる)。

ハイバースクワットでは、バーを僧帽筋の上に置く。どのくらい鍛えているかによるが、僧帽筋は肩の上のある程度の範囲をカバーしている。バーの収まりの良い場所を探すこと。僧帽筋の高い場所が良い人もいれば、低い場所が良い人もいる。また、僧帽筋を緊張させた状態とリラックスさせた状態の違いも探ること。個人的には筆者は、バーが僧帽筋の中に沈みこむように、僧帽筋を若干リラックスさせた状態にするのを好む。

ハイバースクワットで最も避けるべきなのは、バーがC7頚椎(首のつけ根の小さな突起)に当たることである。この間違いをしていると、スクワットで痛みを訴え、パッドを使うことになる。バーを僧帽筋の高い位置で担ぎたい場合、バーが突起の上方に収まるように僧帽筋を固く緊張させるか、バーの位置を下げてみよ。

ローバースクワットでは、バーを三角筋後部の上に置く。ハイバースクワットでC7椎骨が圧迫されて痛みが出るのと同様に、ローバースクワットで肩甲骨に痛みを感じる人もいる。一般にこれはバーが肩甲棘に直接当たっているからである。バーを上方(ハイバースクワットでバーを最大限下げた状態になるが、大して違いはない)か下方に少し動かすこと。ハイバーでもローバーでも、肩甲骨を意識的に寄せる必要がある。

最後に、フロントスクワットでは、バーを三角筋前部と僧帽筋前部の間に置く。肩鎖関節(肩の頂部)や鎖骨上関節(鎖骨と胸骨が接続する)に痛みがある場合、解決策はない。三角筋前部が厚くなると若干改善するが、バーの接触する皮膚の下の神経がマヒしない限り、フロントスクワットは痛みを伴う。特に最初にフロントスクワットにトライする場合、たいていの場合は鎖骨に沿った場所どこかに傷を負うものだ。

最初にフロントスクワットをする時、多くのリフターがバーの収まる場所を見つけるのに苦労する。バーが肩から滑り落ちそうになり、手首に過度の負担がかかる。最大の原因は肩甲骨の位置である。熟練したパワーリフターは、肩甲骨を寄せた状態で動作することに慣れている(肩甲骨の間に鉛筆を挟むように、引き寄せる)。しかし、肩甲骨を寄せると、つられて鎖骨も後方に引っ張られる。肩甲骨を引き離し(胸筋の間に鉛筆を挟むように)、鎖骨を前方に移動させる。すると、三角筋前部が首前方に移動し、バーを置く場所ができる。快適とは言えないが、バーが安定して収まり、バーが肩からずり落ちづらくなる。

手の位置

次のトピックは手の位置である:バーの握り幅をどれくらい広く/狭くするか?

一般に、ハイバー、ローバースクワットでは、握り幅を狭くした方が、上背部をタイトにでき安定させられる。握り幅を狭くすると、自然と肩甲骨は寄り(僧帽筋中部下部が菱形筋とともにタイトになる)、肩は内転せざるをえなくなる(広背筋に若干力が入る)。握り幅を広くしても、意識的に上背部の筋肉を緊張させることはできるが、狭い方が自然かつ容易に上背部を緊張させられる。

一般に、違和感のない範囲で、手の間隔を狭くすべきである。手首、肩、肘の痛みがなく、極端に窮屈に感じない限り、手の幅を狭くする方がよい。

フロントスクワットでは、手の位置に3通りのパターンがある。

一つ目はフロントラックである。ウェイトリフターがよく採用するフォームである。手幅は肩幅より若干広く、できる限り多くの指でバーを支える。指2,3本でもOKである:負荷の大部分を支えるのは肩であり、手や手首ではない。

二つ目は腕を交差させたフォームである。ボディビルダーと一部パワーリフターがよく採用するフォームである。肩の前面にバーを置いた後、腕を交差させ、手を肩のやや内側に置きバーを保持する。たいていの人はフロントラックの方がバーが安定していると感じる。肩前面が極端に発達していたり、肩の可動域に制約のある人は、こちらのフォームの方が良く感じる場合もある。

最後はストラップを使うフォームである。肩の可動性に乏しいが、フロントラックポジションに近づけたい人にとって、妥協案となるフォームである。バーにストラップをまきつけ、できる限りバーに近い位置でストラップを握る。バーがずり落ちないように、ストラップをしっかりと引っ張る。

手首の位置

僧帽筋や三角筋後部でバーが安定して収まる場所を作れている場合、バックスクワットでは手首の位置を重視する必要はない。僧帽筋や三角筋後部がバーの重量全てを支えている場合、手首がまっすぐでも反っていてもかまわない。

多くの人はバーが安定して収まる場所を作れないので、バーが手首を押し下げる。手首が反っていると手首が窮屈に感じる。そのような場合、手首をニュートラルな位置に戻すと、窮屈さを軽減できる。

手首に負担のかかっている場合、手首をニュートラルな位置に戻すのに、できることが3つある。

  1. 単純に手首をまっすぐにすることに集中する。十分な可動性があり、単にその意識がない場合には、これが単純な解決策となる。
  2. バーの握り幅を広くする。ただし、手首、肘、肩に痛みのない範囲で、手幅を狭めること。一般に肩の可動性が不足していると、手首が反りがちである。肩の外転が不十分で、バーの後方に手を回せないので、補うために手首を反らせる「ごまかし」をする。手幅を広げることで、肩を外転させやすくなり、手首をまっすぐにしたままバーの後方に手を回せるようになる。
  3. 親指をバーの上にまわす(場合によっては小指をバーの下にまわす)。特にローバースクワットで有効である。親指をバーの下にまわす場合、親指と人差し指の接合部がバーの下になる。親指をバーの上にまわす場合、手をあまり下げなくてよくなるので、肩の外転が少なくてすむ。こうすると、手でバーを握る代わりに、バーは手のひらに収まり、すべり落ちるのを防ぐために手でバーを前方に押すことになる。バーの上に親指を回すだけでは問題が解消しない場合、さらにバーの下に小指をまわすことで、手首をニュートラルな位置に戻せる場合がある。

ハイバースクワットよりもローバースクワットで、手首の痛みは顕著である。ローバースクワットでは肩の外転がより必要になるからである。

フロントスクワットのフロントラックポジションでは、手首は常に反った状態になる。手首が極端に固い場合を除いては、これは一般に手首の痛みを引き起こさない。バーが安定して収まる場所をつくれず、バーがずり落ちると、手や手首に負荷がかかり、痛みを引き起こす場合がある。肩甲骨を開き、肘を高くするとよい。

これらの対処を試してもフロントスクワットで手首の痛みが出る場合、ウェイトリフティングでないならば、腕を交差させたフォームやストラップを使うフォームを試すのがよい。ウェイトリフティングの場合には、安定したフロントラックポジションを作る必要がある。

肘の位置

バックスクワットでは、個々人のやりやすさにより肘の位置が決まってくる。

一般に、肘の位置は低く、体側面に沿うのがよい。筆者は「肘で胸郭を引っかくように」というキューが好みである。これは広背筋を緊張させ、胴体や上背部を固く引き締めるのに役立つ。

しかし、特にローバースクワットでは、肘をバー後方に持ってくると良い人もいる。理由は簡単である:ローバースクワットではバーが三角筋後部に乗るが、三角筋後部が小さい場合に、バーがずり落ちないような安定した場所を作るのが困難なのだ。

肘をバーの後方に持ってくると、胸が前方に湾曲する場合がある。これは特に肩の可動性が乏しい人に顕著で、肘を高くするのに胸椎を屈曲させる必要があるのだ。逆に、胸が前方に湾曲していると感じる人は、肘を意識的に下げて前方に移動させると、上背を引き締められ、胸が湾曲するのを防げる。

フロントスクワットでは、肘をできる限り高くするとよい。肘を高くすると、胸椎の屈曲を防げ、三角筋前部の収縮によりバーが収まる場所を作れる。

後退

この時点で、痛みなく安定して(フロントスクワットでは、痛みはあるかもしれないが)肩の上にバーを担げているはずなので、バーを保持して後退する準備ができている。

最初に考慮すべきは、バーを置くフックの高さである。アンラックするためだけにハーフスクワットしたり、爪先立ちになったりすることなく、フックからバーを持ち上げられるべきである。これは至極当然のことである。だが、フックの位置が高すぎて、アンラックするのに爪先立ちになっている人を、筆者はしばしば見かける。これは愚かでかつ危険な行為である。高すぎるのと比較し、フックの位置が低すぎるのはそれほど問題ではないが、スクワット本番の前にアンラックでエネルギーを無駄遣いすることになる。

二つ目のポイントは、バーの下に足を置くことだ。これは主にやりやすさの観点である。パワーリフターは股関節や肩の真下に足を揃えたスクエアスタンスにすることが多い。一方で、ウェイトリフターはわずかに前後にずらしたスタンスにすることが多い。

実際のところ、アンラックする時の足の位置はあまり重要ではない。高重量を扱う時や、前後にずらしたスタンスでは不安定に感じる場合、スクエアスタンスにするのがよい。そうでなければ、もっともやりやすいアプローチを採ればよい。

肩を勢いよくバーに押しつけるようにして、バーをアンラックする。多くの人で、慎重にアンラックするよりも、勢いよくアンラックした方が、重量を軽く感じられる。尻をバーのやや後方に置き、腹に息を深くすいこみ、背中を緊張させ、床をふみこむようにしてバーをフックから持ち上げる。

スクワットに入る前のエネルギー消費を最小限にできるよう、バーを担いで、なるべく効率的に後退するのがよい。つまりできる限り少ない歩数とする。しゃがむ時にバーがフックに当たらないよう、十分に下がる必要があるが、不必要にエネルギーを使ったり、バランスを崩すほど後退したりするのは避けねばならない。

一つ目のやり方は2歩で決めることだ。バーをアンラックしたら、片足で小さく1歩後退し、もう一方の足で同様に小さく1歩後退し、必要に応じて爪先の方向を若干調整する。前後にずらしたスタンスでアンラックする場合、前側の足で最初の1歩を踏みだす。これはスタンスの狭い人で一般的なやり方である。

二つ目のやり方は、3歩で決めることだ。これはスタンスの広い人で一般的なやり方である。バーをアンラックしたら、最初の2歩は同様で、3歩目でスタンスを広げる。スタンスを広げた状態で始め、その状態で2歩下がるよりも容易である。

足幅

次の論点は足幅の決定である。

考慮すべき点は主に2つである:やりやすさとキャリーオーバーである。

やりやすさ

これについて面倒な議論は不要だろう。色々な足幅を試し、自身にとって最もしっくりくるものを見つけること。スクワットが初めてならば荷重せずにやるのもよいし、経験があるならばチャレンジングでない適当な重量(1RMの70–80%)でやるのもよい。肩幅と同じ足幅から始め、感触を確かめる。次に1,2インチ狭い足幅で試す。次に1,2インチ広い足幅で試す。膝を外側に開く場合と正面に向ける場合を比較し、最も強くしっくりスクワットのできる足幅を探る。それぞれの足幅で、背中を丸めずに、どれだけ深くしゃがめるかを調べる。深さとやりやすさの両面で最も良い足幅を採用する。

キャリーオーバー

これは、スクワット以外の目的があって、スクワットに取り組む人にのみ当てはまる論点である。例えばウェイトリフターはスナッチに必要な足の筋力強化のためにバックスクワット、クリーンに必要な足と胴体の筋力強化のために、スクワットに取り組む。垂直ジャンプの高さを伸ばすためにスクワットに取り組む人にも当てはまる。

一般に、効果を得たい動作と同じ足幅でスクワットすると、最適なキャリーオーバーを得られる。従って、スナッチでキャッチする時と同じ足幅でバックスクワットし、クリーンでキャッチする時と同じ足幅でフロントスクワットし、ジャンプする時と同じ足幅で(たいていは股関節の真下かやや広め)スクワットするのがよい。

他の運動の足幅をどれくらい模倣しているかによらず、スクワットで強化した下半身全般の筋力は、他の競技にキャリーオーバーを及ぼすので、これはあまり大きな論点ではない。

パワーリフターにはもう一つ考慮すべき点がある:競技での目的はできる限り重い重量を挙上することで、一般には動作域が狭いほど重い重量を挙上できる。採点で白旗を得るにはパラレルより深くしゃがむ必要があるが、過剰に深くしゃがむ必要はない。アイススケートと異なり、スタイルによるボーナス点はないのだ。

一般にフルボトムで切り返すよりも、ボトムアウト(訳注: 臀筋やハムストリングスが伸びきった状態を指すと思われるが、良い訳が見つからない)の方が、重い重量を挙上できる。なぜなら、ボトムアウトでは伸長反射を利用でき、モーメントを発生させる活力となるからだ。

これを頭に入れ、ボトムポジションがパラレルより深い(ATGスクワットに近い)パワーリフターは、パラレルを切りつつどれだけ足幅を広げられるか確かめてみるとよい。足幅を広げると自然に深さは制限され、ボトムアウトの恩恵を得つつ、伸長反射も利用できるようになる。この手法が有効な人もいれば、股関節の制限でできない人もいる。いずれにせよ、プラットフォーム上でより重い重量を挙上するため、試す価値はある。

動作域を制限する以外に、足幅を広くするのには2つの利点がある:

  1. 足幅を広くすると、大内転筋の活動が高まる。ワイドスタンスで臀筋やハムストリングスの活動が下がるという根拠はなく(正確には、2つの研究 — 研究研究 — ではワイドスタンスで臀筋の活動が増加した)、大内転筋の活動は増加する可能性がある。足幅にかかわらず膝と股関節伸展モーメントの必要量は一定だが、ワイドスタンスではより大きな股関節伸展モーメントを発生させられる。これは全ての人に当てはまるわけではないが、多くの人に当てはまる。
  2. ワイドスタンスにすると、背中の負担が軽減する。膝や股関節伸展と異なり、脊椎伸展は2次元で考慮すればよい。足幅を広げ、股関節を外転させると、大腿骨は前後方向に擬似的に短かくなる。そのため、足裏中心に重心をのせるために胴体を前掲させる度合いが減り、脊椎伸展モーメントの必要量が減少する。
ナロー、ミディアム、ワイドスタンスの例。トレーニングの目的や、個人の骨格により、最適な足幅は異なる。

足の角度

足をどれくらい外側に向けるかについては考慮すべき点が2つある:膝の健康とバランスだ。

膝の健康

一般に股関節と膝関節の構造に従い、足の角度を決めるとよい。

足幅ごとに、股関節をどれくらいアグレッシブに外転させられるか(膝を外に広げる vs 膝を前方に動かす)試した後に、爪先と膝が同じ方向を向くように足の角度を調整するとよい。足幅を広げて股関節外転が大きくなるど爪先は外側を向き、足幅を狭めて外転が小さくなるほど爪先はまっすぐ前方を向くようになる。解剖学的に正規分布の中央付近にいる人の「普通の」スクワットでは、爪先は外側に15–20度開くだろう — 前方まっすぐではないが、それほど外向きでもない。一方で、筆者のようにワイドスタンスで股関節の外転が大きい場合、爪先が外側に30–45度開いてもおかしくはない。

膝が爪先親指か人差し指とだいたい同じ方向を向くのが良い。あらかじめ決めた角度を絶対に守ろうとするのではなく、股関節や膝関節が最も痛みなく力を発揮できるように、足の向きを決めるとよい。膝に痛みのない限り、膝が爪先の内側や外側を向いても世界の終わりというわけではない。

バランス

上記が一般的なルールだが、例外は股関節の外転の大きい、ワイドスタンスのスクワットである。

多くの場合で、足の角度が45度以上になると、バランスを失いがちになる。これは、横から見た場合に足が前後方向に擬似的に短くなるからである。挙上を失敗した場合に前後にバランスを崩すこともありうる。

もしこの問題が起きた場合、爪先をもう少し前方に向けるとよい。膝は足の親指や人差し指の外側を向くことになるだろうが、膝に痛みのない限り問題ない。もしくはスタンスをやや狭め股関節の外転を少なくするとよい。

ブレーシング

高重量のスクワットではブレーシングも鍵である。足や尻がどんなに強くても、頑強な胴体なしには、その力をバーに伝達できない。(レッグプレスの重量が800ポンドでも、スクワットの重量がたった225ポンドの人もいる。)

胴体を頑強に保つには、2つのポイントがある:脊椎伸展の強さと、腹腔内圧である。

一つ目の要素 — 脊椎伸展の強さ — はわかりやすい。背中が重量に耐えて脊椎をまっすぐに保てるか、前に湾曲してしまうか、である。経験を積んだリフターでは、これは主に筋力の問題であり、スクワットのスタイルごとのパフォーマンス差異の議論に収斂する。一方経験の浅いリフターでは、コントロールや技術の問題が大きい。なぜならば、初心者は脊柱起立筋を緊張させ、肩に加重したバーをのせてその緊張を保つことに慣れていないからだ。先天的な運動間隔を持つ人は、背中を脊柱起立筋を収縮させ、背中を引き締める感覚をきわめて短時間で習得するだろう。肩に加重したバーを担ぐことは良い練習となる。

二つ目の要素 — 腹腔内圧 — はわかりづらい。筆者の知る限り、ブレーシングと腹腔内圧に関する研究は多くない。我々の知見は以下の通り:

  1. ベルトなしよりありの方が腹腔内圧が高まる。これがベルトを装着するとスクワットの重量が伸びる第一の理由である。
  2. 「胸、肩に息を吸い込む」よりも、腹式呼吸のほうが、腹腔内圧が高まる。息を吸うと、胸や肩の上がり度合いよりも、腹の前と横にふくらむ度合いが大きいはずだ(Chad Smithはこれを「360度拡張」、Chris Duffinは「腹斜筋をふくらませよ」と言っている)。下記のビデオが「胸、肩に息を吸い込む」のと腹式呼吸の違いを示している。
  3. 吸い込んだ息を止め、バルサルバ呼吸法を使うと、腹腔内圧が高まる。(口を閉じて空気が出ないようにした状態で、無理やり息を吐き出そうとするような方法)

腹腔内圧に大きく関係するのが以上3つである。

胸郭を引き下げ(背中を丸めずに)、骨盤をニュートラルに保つ(多くの人は骨盤を前掲させた状態でスクワットを開始する — 尻を後方に突き出そうとした状態)ことで、腹腔内圧を高められる人もいる。腹腔上下にある横隔膜と骨盤底が向かいあった状態では、腹式呼吸でより腹腔内圧を高められる。反対に、よくあるテクニックで背中を強く反らせようとすると、胸郭が上がり、骨盤が前掲するので、横隔膜と骨盤底は向かいあわなくなる。

筆者の知る限り、上記の疑問に対する研究はない。これは直感的には胸郭を下げ骨盤をニュートラルにしてスクワットすることの支持材料となるが、現実世界で有意な差となるか筆者には確証がない。意図的に骨盤をニュートラルにすることの利点は、しゃがみが少し深くなることだ。骨盤を前掲した状態では、あらかじめ股関節が屈曲した状態で動作をはじめるので、股関節の可動域の限度が、しゃがみの深さを左右する。よって背中を反らせることに集中すると、スクワットのボトムポジションがやや高くなる。一方で、背中を反らせることに集中することの利点は、脊椎を伸展した状態に効率よく保てることだ(結局の所、これがブレーシングの要点である)。大勢の優れたリフターが両方のテクニックを使っているので、自分自身で試してみて、どのやり方が体をタイトにするのに役立つか確かめるのがよい。

ブレーシングに関する最後のポイントは:「腹筋を緊張させる」のではないということだ。腹筋の強さはスクワットに大きく影響しない。

はじめに、単純な力学的解説である:腹筋は脊椎屈曲筋である。スクワットをする時、バーの発生させる屈曲モーメントに対抗し、脊椎を伸展させる。腹腔内圧を発生させるのにある程度の腹筋収縮は必要である。ただし、これはパンチを受け止めるためにブレーシングをするのに近く(ベルトなしの場合)、クランチとは性質が異なる。ベルトありの場合、ベルトに逆らい胴体をふくらませる動作であり、腹筋を収縮させるのではない。

腹筋(脊椎屈曲筋)が強く収縮するほど、脊椎屈曲を防ぐため脊柱起立筋も強く収縮する。

さらに、複数の研究で、スクワット動作を通じた腹筋の活動が低いことがわかっている — シットアップやプランクのような伝統的な「体幹」エクササイズに期待するレベルに及ばない。腹筋に限界近くの負荷はかかっていないので、腹筋の強度はスクワットのパフォーマンスを制限しない、ということがわかる。この文献は引用文献とともに、この理論の詳細を説明している。

最後に、熟達したパワーリフターを対象にした研究で、スクワットのパフォーマンスと筋量の相関を調べたものがある。腹筋の筋量とスクワットのパフォーマンスの間に、強い相関は見られなかった。

以上の点から、スクワットを通じ胴体を固めておくには、脊柱起立筋の強さ、腹腔内圧を生み出すためのブレーシングの技術が重要である。腹筋、腹斜筋、腹横筋の強さが限界を決めるのではない。

全身の緊張を作る

この時点で、肩にバーをかつぎ、手と肘の位置を調整し、バーをかついで後退し、足の幅や位置を決め、腹式呼吸で腹腔内圧を高めることができた。残すは一つだけ:さらにタイトにすることだ。

バーを最大限にコントロールできるよう、全身をできる限り緊張させるのがよい。

まずは床との接地面から見ていく。地面と3点 — 親指、小指、かかと —で しっかりと接触し、重量が3点に等しく分散しているのがよい。これにより、バランスを取り、ミッドフット上に重心をのせられる。

次に尻については、以下2つのキューのどちらかを試してほしい:

  1. 「足を床にねじこむ。」足をしっかりとつき、股関節を外転させ、かかとどうしが向きあい、爪先どうしが遠ざかるようにする。足の外側が、靴の内側に強く押しつけられるのを感じるかもしれない。このキューはナロー、ミディアムスタンスの者(足の開き角度が約20度まで)に有効である。
  2. 「床を引きさく。」両足の間の床に裂け目があり、足でそれを引きさくのを想像してほしい。このキューはワイドスタンスの者に有効である。

最後に、上背部も緊張させる必要がある。バーの置き方、肘の位置、握り幅により、これは部分的には達成される(ローバーでは、肘をバーの下方に下げ、握り幅を狭くすると、上背部をタイトにできる)。さらに緊張させるには、バーを肩の上で半分に折り曲げるように力を加えるとよい。フロントスクワットでは、肘をできるだけ高くする。

セットアップのチェックリスト

  1. 個人の好みやトレーニングの目的にあわせ、バーをかつぐ位置を決める。
  2. 窮屈にならない範囲で、バーの握り幅を狭くする。手首、肘、肩に窮屈さを感じるようならば、握り幅を広げるか、別の握り方を試す(バックスクワットではサムレスグリップにする、フロントスクワットでは腕を交差させたフォームやストラップを使う)。
  3. ハイバー、ローバースクワットでは、三角筋後部にバーが安定して収まる場所ができるよう、肘をバーの下方に下げる。三角筋後部をさらに張り出させるには、肘をバーの後方に移動させる。フロントスクワットでは、肘をできるだけ高くする。
  4. バーをアンラックし後退する。できるだけエネルギー消費をおさえる。
  5. .好みの足幅をとり、爪先を適切な角度に広げる(足幅、股関節の外転、膝の軌道による)。
  6. 腹式呼吸で深く息を吸う(腹をふくらませるが、肩をあげない)。ベルトなしならばパンチに耐えるように、ベルトありならばベルトに腹やわき腹を押しつけるように、息を吸い込む。
  7. 全身の緊張を作る。地面に接地している足の3点を意識し、足を床にねじこむか、床を引きさくのをイメージする。バックスクワットでは背中の上でバーを折り曲げるように意識する。

スクワットのやり方: 下降局面

セットアップが完了したので、いよいよしゃがむ時だ!

下降局面でのキュー

下降局面のキューには2つある:「下にしゃがむ」と「後ろにしゃがむ」だ。

「下にしゃがむ」の場合、膝と股関節を同時にたたみ、胴体をなるべく直立に保ちながら、かかとの間に尻をおろしていく。

「後ろにしゃがむ」の場合、股関節を最初にたたみ尻を後方に突きだす。後方のいすに腰かけるようにし、胴体を意識的に前掲させる。

両方のテクニックには、それぞれ利点と欠点がある。

一般に「下にしゃがむ」では深くしゃがめる。一般に股関節屈曲の限界がスクワットの深さを決める。「後ろにしゃがむ」では股関節の屈曲が強調されるので、ボトムポジションの高くなる傾向がある。多くの場合、動作域が大きいほどトレーニング効果が向上するので、日常のトレーニング目的では、しゃがみが深くなることは「下にしゃがむ」の利点である。

しかし、足首の可動域の限られた者にとって「下にしゃがむ」は難しいことがある。動作の最初で膝と股関節をたたむので、膝が前方に出がちになる。足首が固くて膝を十分に前に出せないと、「後ろにしゃがむ」スタイルに近づく。そのため足首の可動域の限られた人は、「後ろにしゃがむ」スタイルの合うことが多い。

一方で、「後ろにしゃがむ」で動作域の制限されることは、利点にもなりうる。特にワイドスタンスでスクワットするパワーリフターで顕著である。プラットフォーム上では、尻が足首につくほど深くしゃがむ必要はない;パラレルより深ければ良いのだ。「後ろにしゃがむ」でパラレルよりやや下にボトムポジションが来ることで、競技で有利になるスキルを練習していることになる。

「後ろにしゃがむ」の欠点は膝の屈曲が少ないので、大腿四頭筋の発達には不向きということだ。競技のための短期の面では問題ないが、長期的には成長を制限することがありうる。デッドリフトが強いがスクワットの弱いリフターを目にする場合がある。彼らはしばしばチキンレッグなのだが、大腿四頭筋に集中したトレーニングを取り入れたり、スクワットのスタイルを「下にしゃがむ」に変えて大きな動作域でトレーニングしたりすると、スクワットが劇的に改善することがある。

結局の所、2つのテクニックの間に大きな違いはない。研究によれば、この2つのスタイルを比較した場合、動作やパフォーマンスの指標(力、出力、筋活動など)はほぼ同等である。それぞれの利点や欠点は小さいので、両方のスタイルを試し、力を発揮できしっくりくるスタイルを選べばよい。

下降の速度

次のポイントは下降の速度である。

一般に、バーを完全にコントロールできる範囲で、最速でしゃがむのがよい。

速くしゃがむほど、ボトムポジションでの伸長反射(筋肉が素早く伸びると、動作を逆転させたタイミングで、収縮力が強まる)により「はね返り」を得られる。ただし、しゃがみきった段階でコントロールを失い、はずんでしまうのはよくない。

深さ

最後のポイントは…どこまでしゃがむかである。

筆者の答えはボトムである。体の許す限り低くである。ただし、人によりしゃがめる深さは異なる。筆者と妻Lyndseyのポジションを比べてみてほしい。

左:筆者、右:筆者の妻Lyndsey

深いスクワットは膝や腰に悪いと考え、胴体が前掲しだすポイントでしゃがむのを止める人もいる。しかし、科学文献の徹底的なレビューによれば、深いスクワットをしても膝や脊柱にリスクはないとわかった。高重量の深いスクワットでは、確かに膝や脊柱に大きな負荷がかかるが、人体は脆弱ではない。腱、靭帯、そして椎間板は主にコラーゲンで作られていて、たいへん強く頑丈な組織である。深いスクワットをしても、それら組織にかかる負荷は、それら組織の許容上限よりもずっと低い(膝や脊椎に既存の問題が無いと想定して)。さらに、それら組織は筋肉と同様にトレーニングに適応し、(ペースは遅いが)再構成、成長、強化する。

浅いスクワットと比較し、深いスクワットは筋力と筋量の両方を伸ばし、たいていのアスリートの目標にとっても有益である(垂直ジャンプでも、動作に近いのはハーフスクワットだが、深いスクワットのほうが効果が高い)。

深いスクワットをする場合、ボトムアウトするまでしゃがむのが良い。動作域が大きくなるという利点だけでなく、ほとんどの人が重い重量を扱える。

多くの人でスクワットのスティッキングポイント(バーの挙上がゆっくりになり、重量を支えきれずにスクワット失敗となる点)は、パラレルのやや上にある。パラレルまでしゃがんでいる場合、ボトムはリフトで最も困難な点ではない。そのため、さらに数インチ深くしゃがんだとしてもリフトの難度は変化しない。

臀筋が限界まで動く、またはハムストリングスがふくらはぎにつくまでしゃがみこむと、前述の通りはね返りを得られる。これは負荷を切り返し、スティッキングポイントを越えるモーメントを得るのに役立つ。たいていの人はパラレルより2インチ(訳注:約5cm)下で切り返すと、パラレルで切り返すよりもリフトを完遂しやすくなる。

ボトムポジションより上、スティッキングポイントより下で切り返す場合、伸長反射を利用せずに、純粋な筋力で負荷を支える必要がある。一般には、はね返りなしに負荷を持ち上げるための余分な労力が、可動域を減らす利点を上回る。

ボトムポジションが高いことは他にも利点がある:はね返りとスティッキングポイントが接近することだ。しゃがみの深さにかかわらず、スティッキングポイントは同じ高さ(パラレルのやや上)にある。よって、パラレルのやや下ではね返りを得られれば、スティッキングポイントに達した時にはね返りによるモーメントを利用でき、スティッキングポイントを越えやすくなる。

パワーリフターにおいては、ボトムポジションを自然に高くし(パラレルよりも深いが、競技で不必要なほど深くない)、はね返りを利用する方法がある。

  1. 前述のように、下にしゃがむスタイルならば、代わりに後方にしゃがむスタイルを試す。より高い位置で股関節が最大限に屈曲し、動作域を自然に制限できる。
  2. 足幅を少し広げる。足幅を広げるほど、ボトムポジションが高くなる。パラレルより深くしゃがめるが、過剰に深くならない程度のスタンスを探る。
  3. 下背部を意識的に反らせる。こうすると骨盤が前掲し、股関節があらかじめ屈曲した状態で動作を開始できる。
  4. 普段ハイバースクワットをしている場合、ローバースクワットを試してみる。バーが背中の低い位置にくるので、重心をミッドフット上に保つため、前傾が強まる。他のティップスと同様に、より高い位置で股関節が最大屈曲するようになる。

これらティップスを試し効果がなかったとしても、全く問題はない!そもそもボトムアウトの位置を高くすることの利点は小さいものだ — たいへん深くかつ高重量でスクワットしているウェイトリフターを見てみるとよい。ただし、これらティップスを試してみる価値はある。

スクワットのやり方: 上昇局面

さて背中にたいへんな重量を担いでしゃがんだ所で、困難なタイミングを迎える:重量を背負って立ち上がる時だ!

上昇局面では、リフトを通じて最も重要な点がある:スティッキングポイントである。

たいていの人でスティッキングポイントはパラレルの上1–6インチ(訳注:2.5cm-15cm)にある。関節の角度は人によって異なるが、たいていの場合、スティッキングポイントはリフトの中間にある。ボトムから全く立ち上がれない人や、スティッキングポイントを越えた後でつぶれる人はまれである(バランスを崩した場合を除けば)。

立ち上がりでの目標はスティッキングポイントまで良いフォームを維持することであり、スティッキングポイントでの目標はできる限り効率的にそれを越えることである。

始動

ボトムからの立ち上がりでは、僧帽筋をバーに意識的に押し付け、足を床に踏み込むようにし、上昇しはじめる。最もよくないのは、前方に傾きグッドモーニングエクササイズの状態でスティッキングポイントに達することだ。バーは体を前方に倒そうとするので(脊椎屈曲、股関節屈曲モーメントを発生させる)、僧帽筋をバーに押し付けることでこれに抗える。

たいていの人は、スティッキングポイントまで、ボトムでの体の前傾角度を維持するのがよい。前傾が強まり尻が後方に出ると、足の関与が弱まり、股関節伸展筋と背筋だけでスティッキングポイントを乗り越えなくてはならなくなる。

極端に深くしゃがむ人や、極端に直立したポジションをとる人では例外がある。このような場合、ボトムからの立ち上がりでは胴体が若干前傾するだろう。

上:筆者。下:筆者の妻、Lyndsey。筆者の場合、背中の角度は一定である。Lyndseyの場合、ボトムでは胴体が起きているが、立ち上がりで前傾している。

スティッキングポイント

スティッキングポイントに達したら、それをできるだけ効率的に乗り越えるのが目標である。

最大の過ちは、パニックになり、焦ってしまうことだ。そうなると、バーはあまり上がらずに、尻だけ持ち上がることになる。スティッキングポイントまでのフォームが良かったとしても、力学的に不利なフォームで、グッドモーニングエクササイズのように挙上するはめになってしまう。

より良いやり方は、引き続き僧帽筋をバーに意識的に押し付け、同時に腰をバーの下に押し出すことだ。膝も前方に動く。

スティッキングポイントを効率的に乗り越えるには、僧帽筋をバーに押し付け、腰をバーの下に押し出すようにする。

これはデッドリフトのロックアウトによく似ている。デッドリフトでバーが膝を越えると、「肩を引け」「腰を突き出せ」というキューを使うが、これにより尻が高く上がりすぎるのを防ぎ、スムーズかつ効率的にロックアウトできる。スクワットではスティッキングポイントを越えるのに、同じキューを使える。

このキューを理解するために、スクワットで必要な条件を調べてみる。

Bryantonは2つの研究(研究研究)でスクワットにおける膝と股関節伸展の条件を調査した。2つの研究とも筋肉の活動の割合を調査していて、膝と股関節に対し、スクワットによりかかるモーメントと筋肉の生み出しうるモーメントの比率を研究したものである。数値が大きいほど筋力の限界に近く、数値が小さいほど限界から遠いことを示している。下図はこの2つの研究と、McLaughlinのデータ(ワールドクラスのパワーリフターが限界重量を挙上した時のバーの速度)を重ねあわせたものである。

左縦軸:筋活動の割合。右縦軸:バーの挙上速度。横軸:膝の屈曲角度。オレンジ線:股関節伸展筋の活動割合。青線:膝関節伸展筋の活動割合。紫線:バーの挙上速度。

人により差はあるが、膝の屈曲角度が約70度となる辺りにスティッキングポイントがある。バーが最初に加速した後、ここで減速している。動作全体を通じて、膝関節伸展筋よりも股関節伸展筋の活動割合が高い。スクワットに失敗した場合、股関節伸展筋が弱くスティッキングポイントを越えられなかった(大腿四頭筋が弱いためではなく)可能性が高い、と言える。

腰をバーの下に押し出すことで、能力の限界に近い股関節伸展筋から、能力に余裕のある膝関節伸展筋に負荷を移すことができる。これにより、膝と股関節に負荷を均等に分散させ、効率的なリフトを実現できる。

わかりにくいが、以下のビデオがこのテクニックをうまく示している:

最後のポイントは:爆発的にということだ。適切なフォームを維持しつつ、できるだけ速く挙上する。スクワットはつらいので、多くのリフターはできる限り少ない労力で挙上しようとする。しかし、最初から最後のレップまで、できるだけ爆発的に挙上することで、さらに早くスクワットを強化できる

弱点の診断

スクワットの基本的な条件がわかったので、弱点を理解するのは難しくないはずだ。

1) 大腿四頭筋

大腿四頭筋にかかる負荷は、スクワットのボトムで最大になる。

もし膝関節伸展の必要量が大腿四頭筋の能力を越える場合、「安全弁」がある — 股関節である。膝と股関節が後方に動(膝関節伸展のモーメントアームが短縮し、膝関節伸展の必要モーメントが減少する)き、胴体が前傾する。

ボトムからスティッキングポイントまで背中の角度を保つ代わりに、体は前傾し、「グッドモーニングスクワット」になる。大腿四頭筋が重量を支えきれずに、負荷を腰に逃がすからだ。

グッドモーニングスクワットでは、膝と腰が後方に動き、大腿四頭筋の負荷が減り、股関節伸展の負荷が増す。

グッドモーニングスクワットを修正するには、たいていの人で大腿四頭筋に特化したトレーニングが必要である。筆者の経験によれば、スクワットを重ねてもこの問題は滅多に修正されない。腰に負荷を逃がせないので、フロントスクワットは役立つ場合がある。胴体が前傾すると、バーは肩から転げ落ちてしまうので、フロントスクワットでは大腿四頭筋が主導筋とならざるをえない。レッグプレスやマシンハックスクワットもよい選択肢である。最後に、スプリットスクワット、リバースランジ、ステップアップといったユニラテラルトレーニング(訳注:片側ずつ動作するタイプ)も同様に役立つ。

2) 体幹

体幹について議論する場合、2つの観点がある:1)背中の強さ(特にフロント、ハイバースクワットでは、胸椎の脊柱起立筋)、2)腹腔内圧を発生させ脊椎を支えるためのブレーシングの技術

スクワットとデッドリフトの挙上重量に大きな差があると、体幹の弱さでスクワットの重量が頭打ちになっているサインと見なせる。もしデッドリフトの挙上重量がスクワットの挙上重量の15–20%以上ならば、体幹に問題のある可能性が高い。

多くの人はスクワットとデッドリフトの挙上重量に大きな差があるのを当然ととらえている。だが、動作を分析すると、スクワットとデッドリフトは本来同じくらいの重量を扱えると気づくはずだ。

デッドリフトでは有利な点が2つある:動作域が小さいこと、スクワットよりもフォームの乱れが若干許容されるということだ(デッドリフトでは脊柱が屈曲しても挙上を完遂できるが、スクワットではつぶれる)。

しかし、スクワットにも有利な点がある:

  1. デッドリフトではスティッキングポイントが始動位置の上にある。動作全体を通じて力不足だから、挙上に失敗するわけではない。スティッキングポイントを越えられないために、挙上に失敗するのだ。グッドモーニングスクワットの状態でさえ、バーが膝下数インチにある時のデッドリフトと同じフォームである。シンプルに膝、股関節、脊椎伸展の必要仕事量を考慮すると、そのフォームからデッドリフトを完遂できるならば、同じ重量でスクワットも完遂できるはずだ。
  2. スクワットでは膝が自由に動ける。膝が前方に移動すると、負荷を大腿四頭筋と股関節伸展筋に均等に分散させられる。デッドリフトではその恩恵を受けられない。もし、デッドリフトで膝が前方に動けば、バーを前方に押し出すので、バランスを崩してリフトは失敗してしまうだろう。
  3. スクワットでスティッキングポイントに達する時、バーは既に上に運動していて、勢いのついた状態である。一方、デッドリフトでは、床で静止した状態からバーを引き上げる。デッドリフトではバーを動かし始めるのが最もきついタイミングだが、スクワットではある程度勢いのついた状態でスティッキングポイントに入るのだ。
  4. 最後に、スクワットではスティッキングポイントを越えると、実質リフトを完了したと言える。バランスを失うといった突発的なアクシデントを除き、スティッキングポイントを越えた後でスクワットを失敗することはない。一方デッドリフトでは、膝の高さやロックアウトで失敗することが多々ある。

たいていの人でスクワットよりデッドリフトの挙上重量が大きくなる最大の要因は、デッドリフトの方が自然に効率的なブレーシングを行えるからだ。人間は生涯を通じて地面に落ちたものを拾う動作を繰り返しているので、幼い頃からその運動能力を速く効率的に習得してきている。幼い頃からしゃがむ動作はしているかもしれないが、肩の上に高重量をかついでしゃがむ経験はないだろう。そのため、バーをかついでスクワットを始めた時、その状態でのブレーシングは全く未知のものなのだ。

言いかえると、スクワットとデッドリフトの挙上重量はほぼ同じとなるべきなのだ。もし異なっている場合、最も納得いく説明は、ブレーシングのやり方が最適でないというものだ。

もしブレーシングが問題と思える場合、筆者はこの文献で詳細を論じている。文献の中では、ブレーシングを改善するためのスクワットのエクササイズにも触れている。

3) 腰

もし大腿四頭筋や体幹が弱点でない場合、消去法により、注目すべき点は一つだけだ:股関節伸展筋である。

これは朗報である。ブレーシングが正しく、大腿四頭筋が十分に強力ならば、股関節伸展筋が限界を決める要素となるべきだ。

股関節伸展筋を強化する最善のエクササイズとは:スクワットをやりこむことだ。

もし他のエクササイズも加えるならば、グッドモーニング、スティッフレッグデッドリフト、ヒップスラスト、グルートハムレイズ、ハイパーエクステンション、バンド加重ひざつきスクワットなどが良い選択肢である。

スクワットのよくある疑問や問題点

スクワットは安全か?

どんなエクササイズでもケガのおそれはある。しかし、正しいフォームでスクワットしている限り、そのリスクは最低レベルである。

“正しいフォームで”と言う理由は、脊椎が屈曲したり、膝が内側に入ったりすると、スクワットはずっと危険になるからである。

関節にケガを抱えておらず、上述の脊椎や膝の問題の無い限り、スクワットでのケガのリスクはたいへん低くなる。脊椎や膝の関節組織は、スクワットで扱うよりも重い重量に耐えられる。スクワットを通じてそれら組織はさらに強化され、スクワットや他のスポーツでのケガのリスクを下げる。

バットウィンクが起きる。

多くの人にとってバットウィンクは忌むものである。スクワットのボトムで、腰椎が屈曲し、骨盤が後継すると、バットウィンクが発生する。前述のように、バットウィンクは脊椎に過剰な負荷をかけるので、できる限り避けるべきものである。

左: 骨盤、腰椎がニュートラルな状態 右: バットウィンクの発生した状態

バットウィンクなのか、単に脊椎がニュートラルに戻ったのか、という点を最初に把握すべきである。背中を反らしてスクワットを開始した場合、下降局面では脊椎が過伸展し、骨盤は前掲している。ボトムポジションでバットウィンクに見えても、単に脊椎や骨盤がニュートラルに戻っただけかもしれない。過伸展からニュートラルになったのか、伸展から屈曲になったのか、スクワットの様子を横からビデオ撮影し確認せよ。

もしバットウィンクの場合、最初にすべきは、バットウィンクなしに深くしゃがめるかテストすることである。股関節の骨格のため、深くスクワットできない人もいる。次のアセスメントが役立つ:

ビデオ中のアセスメントについて、1点付け加えたい点: 水平スクワットにより近づけるため、胸を床にもう少し近づけると良い。

もしテストをクリアでき、バットウィンクなしに必要なレベルまで股関節を動かせる場合、可動性の問題ではなく、コントロールの問題である。

この問題に対処する方法が2つある。

方法1

スクワットとデッドリフトの違いを考えてほしい: たいていの人は体の前側に重りを持っていた方が、自然に呼吸できる。

ゴブレットスクワットから開始する。バットウィンクなしにゴブレットスクワットできることを確かめる。ダンベルやケトルベルを保持するのが難しくなるまで、ゴブレットスクワットで加重する。次にフロントスクワットに移行する。体の前方で重りを保持するのは同じだが、フロントスクワットはゴブレットスクワットより高度である。ゴブレットスクワットに習熟した後であれば、バットウィンクなしにフロントスクワットできるはずである。フロントスクワットを4–6週間練習した後に、ハイバースクワットに移行する。うまくできれば、さらにローバースクワットに移行する。

方法2

動作域を段階的に増やす。バットウィンクせずにスクワットできる深さを調べる。セーフティバーをその高さにセットし、それまでよりもやや軽い重量でスクワットする。セーフティバーまでバーを降ろし、一瞬セーフティバー上で静止し(バーをバウンドさせない)、バーを挙上する。1週間か2週間ごとに、セーフティバーを一段下げる。深くしゃがめるまで、繰り返す。

上記2つの方法を組み合わせ、スクワットのセットの前にプランク、サイドプランクを行う。プランクを行う理由はここに説明がある。

このトピックに関する追加の情報

可動域の制限で深くしゃがめない。

スクワットの可動性のアセスメント、改善について、筆者が最善と思う記事である。

人によりスクワットのフォームが大きく異なるのはなぜか?

多くの人は、特定の目的のために特定のスタイルのスクワットをしている。例えば、パワーリフターは競技に必要な最小限の動作範囲で、最大の重量を挙上することを優先している。一方でウェイトリフターはクリーン、スナッチの強化のため、深く、上体を直立させてスクワットすることを重視している。

最も現実的な理由は、解剖学上のものである。股関節の骨格は人により大きな差異があり、股関節のソケットの深さ、大腿骨の先端の角度、大腿骨の回転角度、骨盤でのソケットの位置など、人それぞれである。大腿骨の流さ、足首の可動性、股関節への筋肉の付着場所、主導筋の強度など、スクワットのフォームに影響する要素が多数ある。

これら文献も参照のこと。文献 文献 文献 文献 文献

誰でもATGスクワットをできるか?

否。複数の解剖学的要因で、しゃがめる深さが決まる。練習の度合いに関係なく、ATGスクワットできる人もいれば、できない人もいる。

しかし、可動性不足でスクワットの深さが制限されていると感じるならば、この記事が大いに役立つ。

バーは垂直に上下すべきか?

バーが垂直に上下するのは非効率なスクワットだと、多くの人が考えている。そういった人は、バーの垂直な上下を、良いスクワットの不変な法則ととらえている。

しかし、この考え方は正しくない。高重量(自体重の2倍以上)では、バーは垂直に近い軌道で動くべきだが、それ未満では垂直にこだわる必要はない。

なぜか。簡潔に言えば、自身の下半身にも重量があるからだ。

もう少し丁寧な解説:

バーに重心があると仮定すると、確かにバーはミッドフット(足の中心)上を垂直に上下すべきである。

しかし、バーに重心はない。自身の体重を無視してはならない。胴体のほぼ全てはミッドフット後方、大腿骨はミッドフット後方、腕はミッドフット上、下肢の大部分はミッドフット上かやや前方に位置している。これらを考慮すると、挙上の大部分の局面で、体の重心はミッドフットの後方にある。

バーの重量と、体重の比率がバーの軌道を決める。もし体重が200ポンド、バーも200ポンドで、重心をミッドフットに保とうとする場合、体の重心が後方に移動する分だけ、バーは前方に移動しなければならない。もし体重が200ポンド、バーが600ポンドの場合、体の重心の移動距離に比べ、バーの移動距離は1/3になる。この場合、バーの軌道は垂直に近づく。

以上のように、体とバーを含めた、系全体の重心をミッドフット上に保つことが重要である。

高重量を扱うのでない限り、バーがミッドフット上を垂直に上下することにこだわるべきでない。

左: 95ポンドの軌道。右: 315ポンドの軌道。どちらの写真でも、重心(緑の線)はミッドフット上になる。しかし、軽い重量では、自体重のために、バーの軌道(赤の線)は前方に動く。

このサイトがこの点をよく説明している。サイトの記載内容は正確なバイオメカニカルモデルに基づいている。(筆者自身がプログラムの実装に協力した。Winter著のBiomechanics and Motor Control of Human Movementに記述の、バイオメカニクスと、人体の運動制御に基づいている。同書はおそらくバイオメカニクスで最良の書籍である。)

ワイドスタンススクワットはより容易か?

股関節の骨格、筋肉の付着箇所などが異なるので、万人にとって容易というわけではない。ワイドスタンスで、股関節にインピンジメントを伴う場合、関節にかかる外部モーメントは関係ない。ワイドスタンスでも、やはりスクワットは難しいだろう。
筋肉の付着場所によっては、腰の前屈で大きな股関節伸展トルクを発生させる方が適しているかもしれない。

膝関節、股関節の伸展モーメントは、胴体の矢状面でなく、大腿骨の矢状面に基づき計算される。よって、側面から見ると、大腿骨が擬似的に短かくなる、というのはモーメントに関係しない。 3次元で関節モーメントを正確に計算するとき、スタンス幅を変えても、膝関節と股関節の伸展筋に要求される合計モーメントは変化しない。

それでも、ワイドスタンスにはいくつか利点がある。

大腿骨が擬似的に短かくなっても、膝関節と股関節にトータルでかかるモーメントは変わらないが、挙上を通じて上体を直立に近く保て、脊柱起立筋の負担を軽減できる。

左: ワイドスタンス。右: 通常スタンス。背中の角度と、大腿骨の前後方向の長さに着目せよ。

二つめの利点は、ワイドスタンスでは内転筋の参加割合が高くなることである。新しい研究によれば、スクワットのボトムで、ハムストリングスと臀筋を合わせたよりも、内転筋は大きな股関節伸展モーメントを発生させるという。個人的には、筆者はワイドスタンスでスクワットをすると、切り返しで尻の反発力を感じる。また、しばらくナロースタンスでスクワットをした後、ワイドスタンスにすると、内転筋に筋肉痛が起きる。筆者はこれら2つの事項が相関していると考えている。

最後の利点は、前述の通り、パワーリフターの場合に、よりパラレルに近い位置で切り返せるということである。

再掲だが、このサイトがスクワットの足幅の及ぼす効果について、たいへん良い解説をしている。

視線をどこに定めるべきか?

病的なまでに頭の位置に執着する人がいる。彼らは上方を見ると、首や頚椎に負担がかかると考えている。逆に下方を見ると、前のめりになると考えている。上方を見ると脊柱起立筋や股関節伸展、下方を見ると大腿四頭筋の活動が高まる、というロシアでの研究を耳にしたこともある。研究を探し、複数の人にその文献の共有を依頼したが、今まで返事はなく、筆者はその研究は存在しないと考えるに至った。

筆者はスポーツに10年間かかわったが、スクワットによる首の傷害を見たことはない。また、視線を上方に向ける/下方に向ける/水平に向ける、様々なパターンのスクワット選手たちの成功を見てきた。

重要なこと: 10フィート先の床、壁の何か、壁や天井のつなぎ目、何でもよいので、集中する1点を見つけること。挙上を通じて、その1点に集中せよ。それにより、バランスを取り、周囲のものごとに惑わされなくて済む。

肘が痛い。

第一に、もし下記の簡易な対処が役立たなければ、外科セラピストを受診すること。

多くの場合、肘の痛みは胸椎伸展や肩外転の可動性が乏しいため、手を十分にバーの後方に回せず、肘の内側に過度のストレスがかかるためだ。背中のバーを安定させされる場所が小さく、背中で支える代わりに腕に過剰な負荷がかかると、さらに肘の痛みが強まる。

最初に握り幅を調整するとよい — 上述のように、やや握り幅を広げ、サムレスグリップとする。この文献のドリルは胸椎の可動性を増すのに役立つ。最後に、これらの対処の効果がなければ、ハイバースクワットに切り替える。筆者の経験では、肘に痛みの出るケースのほとんどがローバースクワットだった。ローバーで痛みなくスクワットできるようになるまで、可動性を改善しながらハイバースクワットに取り組むとよい。

大腿四頭筋を鍛えたい場合にスクワットをすべきか?

一般に、動作域が大きいほど、筋肥大に効果がある。ローバースクワットよりも、ハイバー、フロントスクワットでは膝が大きく屈曲する。これはローバースクワットでは胴体がより前傾し、股関節が最大限に屈曲し、しゃがみが浅くなるからだ。

ハイバースクワットとフロントスクワットの比較では、筋活動を調べた研究が3つ(研究研究研究)ある。内2つでは差がなく、1つではフロントスクワットでわずかに筋活動が大きかった。

どのタイプのスクワットでも大腿四頭筋は成長する。特にハイバー、フロントスクワットで、できるだけ深くしゃがみ、後方でなく下にしゃがむようにすると、大腿四頭筋の発達に最適だろう。

スクワットだけで足の成長を最大化できるか?

スクワットは下半身のトレーニングの中心となるべきだが、スクワットだけでは足の成長を最大化できないだろう。

特に、他の大腿直筋やハムストリングスの活性化には、別の下半身エクササイズが適している。様々な種別のエクササイズを行うことが、足の成長を最大化するには必要だといえる。これは驚きにはあたらない。コンパウンドエクササイズでは、神経系は多関節筋よりも単関節筋を優先して稼動するからだ。

大腿直筋の発達には、純粋な膝伸展(レッグエクステンション)、ハムストリングスの発達には純粋な股関節伸展(ルーマニアンデッドリフト、グッドモーニング、バックレイズ)や膝屈曲(レッグカール、グルートハムレイズ)が適している。

さらに、特定のエクササイズは筋肉の特定の部位を成長させるというエビデンスが多数出てきているので、スクワットの様々なバリエーションや他の下半身コンパウンドトレーニングを含めることで、大腿四頭筋の発達を最大化できるだろう。

この文献は、根拠とともに当論点の詳細を述べている。だが、この点は驚きにはあたらない。ボディビルダーは長きにわたり、足を最大限に発達させるため、様々なエクササイズに取り組んできたのだ。

膝や腰が痛い。

はじめに、テクニック上の大きな問題がないかを確かめる。例えば、膝が内側に入っていないか、かかとが地面から浮いていないか、背中が曲がっていないか。これらをクリアした上で、なおも痛みがあるならば、外科医にかかるべきである。これは外科の領分で、コーチの範疇ではない。

もし外科医にかかりたくないならば(筆者は外科医にかかることを強く勧める)、このガイドをチェックしてほしい。専門家に診断してもらうのが一番だが、このガイドは十分に記述、研究されたものである。

膝が内側に入るのは問題か? どうやって修正すればいいか?

膝の内側に入る(ニーイン)度合いによる。ボトムからの立ち上がりで膝が若干内側に入るのは珍しくない。ハイレベルなウェイトリフターも含め、そのようなフォームでスクワットをし、特に問題のない人も大勢いる。だが、やはり過度のニーインはよくない。

左図では膝が爪先と同じ方向を向いている。中央図では膝がやや内側に入っているが、一般には問題ない。右図ではニーインが大きく危険な領域である。

どうなったら過度といえるか。もし痛みがあるならば過度である。前方からビデオを撮って、膝を意図的に内側に入れるフォームの選手よりも明らかにニーインしていれば、おそらく過度である。

この問題を解消するための簡単な対処が3つある。

  1. 足幅を狭める。股関節の許容範囲よりも広い足幅でスクワットしようとすると、膝が内側に入りがちである。足幅を狭めれば、この問題は直ちに解消する。
  2. 膝の周りにバンドを回してスクワットをする。こうすると、股関節外転筋で膝を外側に押し出すことを意識できる。数週間この方法でスクワットを繰り返すと、動作のパターンを記憶し、バンドなしにも膝を外側に開きながらスクワットできるようになる。下の写真を参照のこと。
  3. 上記2点の効果がなければ、股関節外転筋を強化するため、それに特化したトレーニングをする。筆者の好みのエクササイズは、膝の周りにバンドを回してヒップスラストをすることだ。股関節伸展と外転を組み合わせることで、股関節外転のみの運動よりも、スクワットの動作に近い股関節の運動を練習できる。

バーが肩に当たって痛い。

ハイバースクワットならば、バーの位置を少し下げる。バーが椎骨C7の棘状突起を圧迫している可能性があるからだ。

ローバースクワットならば、バーの位置を上下に調整する。バーが肩甲骨や背骨を圧迫している可能性があるからだ。

フロントスクワットならば、止めるのが賢明である。鎖骨や肩鎖関節周りの神経を痛めることになる。

バーが前方に移動し、バランスを失う。

僧帽筋を意識的にバーに押し付けるとよい。こうすることで、股関節を伸展するのと同時に、バーを後方に押し出せる。もし効果がなければ、このトリックも役立つ。

足首が固い。

最初にすべきは、足首が本当に固いか確かめることだ。簡単なテストがある:

前足の爪先を壁につけ、後ろ足のかかとを床につけたまま、前足の膝を前方に動かす。もし膝が壁につけば、後ろ足を約半インチ(訳注:1.2cm)ほど下げ繰り返す。かかとを床から離さずに、できるだけ後ろ足を下げていく。

左図では、後ろ足のかかとを床につけたまま、前足の膝を壁につけられた。右図では、膝が壁につく前に、かかとが床から離れてしまった。

もしその時点で、後ろ足爪先が壁から約2インチ(訳注:5.1cm)以上離れていれば、足首の可動性は十分である。足首の可動性が不足していると思っている人でも、たいていはこのテストをクリアできる。(筆者はこのテストをQuinn Henochに教えてもらった。)

このテストをクリアしたが、なお足首の可動性が不足していると感じる場合、ふくらはぎの筋力不足かもしれない。先に挙げた大腿四頭筋や股関節伸展筋の活動度合いを調査した研究では、ふくらはぎの活動度合いも調査していて、かなり高い水準にあることがわかっている。

ふくらはぎの筋力が不足して、膝が十分に前方に移動できない、ということもありうる。なぜなら、膝が前方に移動すると、足底屈曲筋にかかる負荷が増加するからだ。(一般に膝が前方に移動すると、足底の重心の位置も前方に移動する。)

どうやって修正するか? もちろん、ふくらはぎのトレーニングだ。

だが、実のところもっと可能性があるのは、大腿四頭筋の筋力不足だ。膝が前方に移動すると、大腿四頭筋にかかる負荷も増加する。重量が増すほど、自然と股関節に負荷を移動させるようになり、膝はあまり前方に移動しない。これは足首の可動性不足のように「見える」。

もし筋力が問題だとすると、大腿四頭筋とふくらはぎ、どちらの問題か見きわめるのは難しい。なぜなら、最終的な結果が同じだからだ:足底屈曲筋が過負荷になるから膝が前方に動かないのか、膝関節屈曲筋が過負荷になるから膝が前方に動けないのか、見分けられないからだ。

もしチキンレッグならば、おそらく問題は大腿四頭筋だろう。もし3年間ふくらはぎを鍛えてなく、アスリート的動作(スプリント、ジャンプなど)を一切していないならば、おそらく問題はふくらはぎだろう。もし両方当てはまるならば、大腿四頭筋とふくらはぎのトレーニングを加えるといい。

もし本当に可動域の制限が原因ならば、かかとの上がったウェイトリフティングシューズを用意するといい。問題は解決するだろう。

バランスが左右片側に偏る。

最初の論点は、それを修正する必要があるか、ということだ。左右非対称は普通のことで、例外ではない。9割のケースは全く問題ない。

もし左右のバランスずれが問題と感じていて、「後悔するよりも安全第一」の考えだったり、スクワットの見た目を良くしたかったりする場合には、上記のリンク先をチェックするといい。この問題について詳細を説明し、修正のためのトレーニングアドバイスもある。

パラレルより深くしゃがまなければならないか?

頭に銃を突きつけられ、パラレルより深くしゃがむように強制されているわけではない。ただ、パワーリフティングに参加したいならば、どうやってパラレルより深くしゃがむかやり方を見つける必要がある。さらに、もしパラレルより深くしゃがめるならば、トレーニング効果全般はより大きくなるだろう。

たいていの人は、少しの練習でパラレルまでしゃがめる。もしパラレルまでしゃがめず、可動域の制限が要因と感じるならば、可動性を向上するために役立つ素晴らしい文献がある。

しかし、どうしてもパラレルより深くしゃがめない人も確かに存在する。解剖学的な股関節の構造上、そういった人はパラレルより深く安全にしゃがめないのだ。

Stu McGill博士(脊椎のバイオメカニクスの専門家)は、Bret Contrerasとの対談でこの話題に触れている。博士は見事かつ率直にこの話題を説明しているので、まとめる代わりに、博士の話をそのまま引用する:

(訳注:話し言葉のため、全体的に訳しづらく、意訳多め。)

深いスクワットをするとき、動作範囲を決める要素がいくつかある。もちろん、筋肉の柔軟性もその一つだ。だが、スクワットに関しては、それが強調されすぎている。筋肉の柔軟性はあまり大きな要素ではない。関節、神経の緊張、椎間板、僧帽筋といった様々な要素がある。腰後部に感じる神経の緊張もそうだ。

最も重要なのは、股関節のソケットの深さだ。インターネットを調べても、股関節のソケットの深さとスクワットの能力の関係性に触れたものは見あたらない。それを調べるには、股関節の形成異常に関する文献を当たらなければならない。世界には股関節のソケットが非常に浅いグループがいて、彼らには高い確率で股関節の形成異常がある。形成異常の中心地はポーランドだ。彼らは股関節ソケットがたいへん浅く、かなり深いスクワットを行える。本来ならば骨のある場所に、骨が無いので、大腿骨が直立する。

その特徴はDalmatian Hipと呼ばれ、クロアチアのDalmatian海岸からブルガリア、ポーランド、西ロシア、ウクライナに分布している。これら国々から、毎年優れたオリンピックリフターが生み出されている。それらリフターにも高い確率で股関節形成異常が見られる。改めて、形状と機能がアスリートとしての能力を決めるのだ。アスリートになるか、その他大勢になるか決めるのだ。これはたいへん興味深い。私はたまたま司法解剖で脊椎の知識を得たり、殺人事件に立ち会ったことがあり、脊椎に関する専門家が必要になった。私の他にもう一人、法医学人類学の教授がいた。これら異なる股関節の構造を示し、世界中でどのようなバリエーションがあるか、私に初めて見せてくれたのが彼女だった。皮膚や髪など他組織が取り払われた体の方が、彼女が調べるのに都合がよかった。Dalmatian Hipは深いスクワットに理想的だった。次にたいへん深い股関節ソケットである、Celtic Hipについて述べる。これはフランス、アイルランド、スコットランドといったノルマンディー地域に分布している。

これら国々からは、どれくらいのオリンピックリフターが排出されているだろうか。あまり多くはない。股関節ソケットが深い場合、その股関節から生み出されるパワーを測定すると、ボトムからの立ち上がりであまり大きな力を発揮できないことがわかる。だが、スクワットの後半では逆にたいへんパワフルである。槍投げのような競技や、立位での筋力、浅いスクワットでの筋力につながる。スコットランド系人種が皆深いソケット、ポーランド系人種が皆浅いソケットを持っている、と言っているわけではない。一般論としてそういう傾向がある、と言っているのだ。いずれにせよ、ここから議論が始まるのだ。私は出身に興味があるのではなく、股関節のexamに興味がある。私はこれらテクニックを示したアセスメントDVDを出しており、アスリートを指導するために疑問点に回答できる。深くしゃがむべきか?バットウィンクについて心配すべきか?股関節にストレスがかかるので、バットウィンクを避けるべきか?バットウィンクは脊椎にストレスをかける。脊椎はずっと大きなトレーニングボリュームに耐えられる。深くスクワットするだけで、股関節や脊椎を保護できる。あなたがNFLのラインマンだと仮定しよう。なぜ、NFLのラインマンに深いスクワットが必要なのか?なぜ骨盤が離れ始める所までしゃがむのではだめなのか?なぜなら、そこで大腿骨が骨盤恥骨と接触するからだ。深いスクワットにより大きなストレスに耐えられるようになっているので、NFLでより攻撃的なタックルができる。より大きなトレーニングボリュームに耐えられるので、さらに強く上手くなれる。多くの人にとって、これが鍵なのだ。

膝が爪先よりも前方に出ても良いか?

大部分の人にとっては問題ない。

膝が前方に出るほど、膝への圧迫や剪断力が強まる。ただし、腱、靭帯、半月板がその力を緩和でき、それら部位はトレーニングにあわせて強化される。健全な膝ならば、膝が爪先より前方に出ても心配はいらない。

しかし、過去に膝の痛みの発生した経験のある場合、膝が前方に出すぎると問題を引き起こすことがある。膝を前方に出すと痛みがあり、後方にしゃがみ膝を前方に出さないと痛みがない場合、膝を前方に出さない方が良い。

スクワットで他のスポーツのパフォーマンスが向上するか?

既にスクワットがたいへん強い場合を除き、スクワットの強化により、他スポーツのパフォーマンスも向上しうる。

スクワットの体重比重量の向上により、スプリントのパフォーマンスやタイムの向上を期待できる。ジャンプの高さについても同様である。(文献 文献 文献 文献 文献 文献 文献)

速く走れたり、高くジャンプできたりすることは、多くのスポーツに良い効果をもたらす。

ランやジャンプが多くを占めるスポーツの選手にとっては、フルスクワットで自体重の2倍を挙上できることが程良いゴールとなる。

バーの位置

ハイバースクワット、ローバースクワット、フロントスクワットのどれをすべきか?

トレーニングギア
ベルト: 入手し使うべき。ベルトなしでスクワットすることに慣れてはならない。ベルトに関する追加情報。

ニーラップ: 装着により、膝の伸展モーメントを増し、スクワットを補助する。膝が曲がると、ニーラップは屈曲に抵抗し、膝が伸展するためのエネルギーを蓄える。膝関節伸展の活動を下げ、股関節伸展の活動を増やすという研究もある。ニーラップの効果を最大限に得るには2つのポイントがある: 練習と痛みに耐えることである。ニーラップの使用に習熟すると、挙上重量が10%増加することも珍しくない。

ニースリーブ: 筆者は着用したことがない。筆者自身はニースリーブがどの程度寄与するかわからないが、効果を実感している人もいる。もしニーラップの着用が禁止されている競技会に出場するならば、着用してみる価値はあるだろう。ニースリーブを使う場合、定期的に洗濯すること。でなければ、ジムで嫌われ者になるだろう。本人が思っているよりも、ひどく臭うものだ。

靴: ソールの固いことが必須である。やわらかいソールではバランスを失い、背中に重量を担ぐのには適さない。かかとが高くなっているかどうかは個人の好みである。
かかとが高いか、フラットなソールかによって、動作全体が根本的に変化することはないが、多くの人はどちらか片方のタイプを好む。Chuck Taylors(訳注:コンバースの一モデル)かレスリングシューズでフラットなソール、安価なウェイトリフティングシューズでかかとの高い靴を試してみると良い。どちらのタイプが好みかわかるまでは、高価な靴に手を出さないことを勧める。

特殊なバー、バンド、鎖など: 好みの問題である。肩に問題があったり、可動性不足でバーベルでのフロントスクワットができなかったりする場合には、セーフティスクワットバーが解になりうる。最近のメタアナリシスによれば、バンドや鎖はスクワットの強化にやや寄与するかもしれない。ただし、これらの道具は必須のものではない。バンドや鎖を使う場合、重量を1RMの20%未満にとどめることを勧める。超過すると、競技特異性が減少し、関節に負担がかかる(特にバンド)。

まとめ

PDF版チートシートをダウンロードしてほしい。

人によりけりな点:

1. バーの位置
2. 手の位置
3. 肘の位置 (バックスクワットの場合)
4. 頭の位置
5. 足幅
6. 足の角度
7. 下方にしゃがむか、後方にしゃがむか
8. 膝が前方に動く度合い
9. 靴 (ソールが固ければ良い)
10. ベルトの着用有無

必ず守る点:

1. 膝を内側に入れすぎない。
2. 脊椎を丸めない。

一般的な推奨事項:

1. 一般的なトレーニングやウェイトリフティング目的ならば、できるだけ深くしゃがむ。
2. パワーリフティングではワイドスタンス、後方へのしゃがみ、ローバーポジションを試す。
3. スティッキングポイントを越えるためには、腰を前方に動かす。
4. 腰の強化にはローバースクワットをする。
5. 太股の強化にはハイバースクワットをする。
6. 上背部の強化にはフロントスクワットをする。
7. 全てのレップで、できるだけ爆発的に挙上する。

筆者のクライアントのアセスメントで用いるチェックリスト:

セットアップ:

1. 効率的に後退できているか? 2–3歩が理想的だが、万全なことを確認するため4歩でも良い。
2. バーの中心が背中の中心に位置しているか?
3. バーが背中にしっかりと乗っているか?
4. 腹に息を深く吸い込んでいるか? 吸い込んだ時に肩が上がっていないか?
5. 手首が後方に反っていないか? まっすぐになっているか? 痛みがなければ反っていても良い。

挙上:

1. 足は安定しているか、動くか? (足を前方に向けてスクワットを開始し、最初の下降局面で足が外側に開くケースはよくある。靴底が滑りにくい場合、代わりにかかとが持ち上がるかもしれない。)
2. バーが過剰に前方や後方に移動していないか? かかとが地面から浮いていないか? やろうとすれば爪先を地面から浮かせられるか?
3. どの局面でも脊椎が収縮しているか? (スクワットのボトムで、実際に腰椎が屈曲しているのか、単に過進展していた脊椎がニュートラルに戻ろうとしているのか、という点にも注意する。)
4. トレーニングの目的に照らして、深さは十分か? 一般的には、脊柱をまっすぐに維持できる限り、深いほど良い。アスリートや一般のリフターにはパラレル前後で十分である。パワーリフターはパラレル未満、ウェイトリフターはATG近くまで下げるべきである。
5. 膝の動きは正常の範囲か? 痛みを伴わない限り、少しの外反や内反について心配しすぎる必要はない。ただし、過度の外反と内反は避けるべきである。
6. 膝関節伸展と股関節伸展で力を均等に分散しているか? これはキューに過剰反応(*)したか、現在の肉体の長所/短所を反映したものである。もし後者の場合、キューは技術やパフォーマンスにさほど影響を与えない。以下のように短所に対処するにつれ、テクニックは自然に変わっていく。
(1)グッドモーニングエクササイズのような動作になっている場合、膝関節伸展を強化する。
(2)スクワットとデッドリフトの重量で15–20%以上の差がある場合、体幹、ブレーシングを強化する。
(3)上記2つに当てはまらない場合、股関節伸展を強化する。
(*)膝関節伸展が強い場合に後方にしゃがむように指導される、逆に股関節伸展が強い場合に前掲を懸念する

一般的な問題:

  1. バーを担いだ時に、力が入り、安定して、バランスを取れていると感じるか?
  2. 急性や慢性の痛みがあるか? (手首、肘、膝、腰、背中など)
  3. バーを担がない状態で、足首、膝、腰に十分な可動性があるか? 担いだ状態で可動性に変化はあるか? もし可動域が減るならば、それは可動性の問題でなく、コントロールの問題である。
  4. バーが片側に傾いたり、回転したりするか? 人体は非対称なので、程度の問題である。
  5. 適切な靴をはいているか? 滑らず、ソールの固い靴が良い。かかとが上がっているかどうかは個人の好みである。ソールのやわらかい靴は避けるべきである。

改訂履歴

2019/2/1 初版公開

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