スタートアップ前にプロジェクトを始めるチャンスは広がっている: 賞金◯億円規模の技術コンテスト

DARPA の Grand ChallengeX Prize など、「難しい問題に対して、高度な技術を使って取り組んでイノベーションを起こしていこう」というコンテストや賞が近年多数出てきています。たとえば月に行く、海底を探査する、CO2 を削減する、などなど、その分野は以前よりも幅広くなってきています。

https://www.youtube.com/watch?v=cuXxBoSYmfc

そうしたコンテストでは、優勝者には数億円の賞金が出ることもままあるほか、中には参加者に選ばれた時点で数千万円の補助金がつくものもあります。

本当の”ベンチャー”キャピタルファンド

Bill & Melinda Gates 財団を通して、こうしたイノベーションを促進するコンテストを開催している Bill Gates は、このような Grand Challenge(コンテスト)のことを「ベンチャーキャピタルのファンドのようなもの」と呼んでいます。

Bill Gates いわく、こうしたコンテストを通すことで本当にクレイジーなアイデアを支援することができ、成功した少数のアイデアが本当に大きなインパクトを残すことができます。その意味では本当にベンチャーな(冒険的な)資金は今、こうしたコンテストから提供されていると言っても過言ではないのかもしれません。


今回の記事はそうしたコンテスト(Challenge, Prize, Award, Competition と様々な名称で呼ばれます)を紹介することで、これからプロジェクトを始めてもらう人にとって一つの目標、あるいは金銭的援助の一つとして役立ててもらいたいと思っています。

またこうした国際コンテストがあれば是非個別で紹介して欲しいので、情報募集中です!


社会的課題に技術でアプローチするコンテストが増えている

イノベーションを促すような、難度の高いコンテストの一部は研究者界隈でよく知られており、既に日本勢も何チームも参加しています。たとえば DARPA Robotics Grand Challenge に出場した東京大学の SCHAFT、Google Lunar X Prize に参加している東北大学の HAKUTO などは皆さんもご存知ではないでしょうか。

SCHAFT はその後 Google に買収され、Google Lunar X Prize に出場している HAKUTO は最近 au とコラボレーションしているなど、優秀な成績を残したチームはその後大きな躍進を遂げていることが特徴的です。(なお Google Lunar X Prize は Star Wars Episode 7 等の監督で有名な J. J. Abrams がドキュメンタリー化しています。内容は Lunar X Prize のページで見れます)

最近では人工知能をテーマにした AI X Prize (IBM Watson がスポンサー) や、海底資源の探査を行う Ocean X Prize (Shell がスポンサー) などが発表されています。

こうしたコンテストの特徴を簡単にまとめると、

  • 難しい課題であるがゆえに注目され、協力者が増える
  • 制限が厳しいため、突飛なアイデアが求められることが多い
  • 多額の賞金がもらえる

などです。

さらにうまくコンテストで目立てば SCHAFT のように世界的な注目を浴びて、スタートアップの海外戦略の一つとして使うことができます。

「難しい」コンテスト増加の潮流

ビジネスコンテストなどの、書類やプレゼンだけで何とかなってしまうコンテストではなく、こうした難しい問題に取り組むコンテストはここ数年急激に増えています。実際に McKinsey のレポートによれば、わずか 10 年程度で一気にその数を増やしました。

http://www.mckinsey.com/business-functions/strategy-and-corporate-finance/our-insights/using-prizes-to-spur-innovation

その背景には「テクノフィランソロピスト」と呼ばれる、技術で財を成し、その私財を使って技術でさらに世界を良くしていこうというフィランソロピスト(篤志家)の存在が大きいと言われています。たとえば Microsoft の Bill Gates、James Dyson、Eric Schdmit、Elon Musk などはそうした Prize にお金を拠出して支援しています。たとえば Eric Schdmit とWendy Schdmit 夫妻は、石油漏れの事故が起こった後、X Prize を通して海の石油の浄化に対する X Prize (Oil Cleanup X Prize) を開催しました。

そうした X Prize の成功を受けて、X Prize のようなコンテストの開催を支援する、HeroX というサイトも 2015 年に開設されました。今後もそうしたコンテストを使ったイノベーションの促進は続いていくのではないかと思っています。そしてそれは、スタートアップ以前の「プロジェクト」をうまく運用していく上で、非常に使えるマイルストーンの一つではないかと思っています。

コンテストの主催者

今やその数が広がり、様々な形で主催されています。

財団

先述のテクノフィランソロピストたちは多くの場合、財団を作って財団主催のコンテストを実施しています。

様々な企業とコラボレーションしながらトピックを設定している X Prize 財団が有名ですが、Bill & Melinda Gates 財団のチャレンジやグラントJames Dyson Award などのデザインとテクノロジの両輪を必要とするようなものも出てきつつあります。

政府

DARPA のように、今後の国の発展を支える技術を選定し、その技術の進むべき方向性を示して、より具体的な課題に対して様々な技術グループに競わせる形で技術の発展を促す、という政府の取り組みは米国を中心に行われています。このあたりは日本科学技術振興機構 (JST) による「米国イノベーション戦略 2015 年概要」が詳しいです。

http://www.jst.go.jp/crds/pdf/2015/FU/US20151105.pdf

またこうした動きは US だけではとどまりません。たとえば Mohamed Bin Zayed International Robotics Challenge (MBZIRC) はアラブ首長国連邦のハリファ大学が主催しており、合計約 6 億円の賞金をつけています。(しかも面白いのは、こうした技術系の国際コンテストの一部には、英語のほかに日本語や中国語に翻訳されているページもいくつかあることです。きっと日本や中国からの参加を求めているものだと思われます)

近年はオープンイノベーションやシビックテックという文脈と重なりつつ、こうしたコンテストを使ってより良いサービスを市民に提供しようと政府も着目しています。たとえば US の政府は 2010 年に Challenge.gov というサイトを立ち上げて社会的課題の解決を募っているほか、2015 年には「イノベーションを促すためのコンテスト」の意義について語っています

企業

Google Impact Challenge のほか、学生のみの参加となりますが Microsoft Imagine Cup などが有名です。

企業が開催しているものの一部は、自社のテクノロジの普及目的という面も多分にありますので、もしそうしたテクノロジを使っていればうまく乗っかることで、企業側もプロジェクト側もお互いにメリットがあることもあるのではと思います(多少注意するべきコンテストはありますが…)。

また Google は X (旧 Google X) という社内組織で同様の Moonshot (月に行くぐらい難しいこと)を行っていたり、Sidewalk Labs を作ったりと様々な企業内でも難しい課題に取り組もうと言う姿勢が芽生えつつあります。

イベント

Grand Challenge などとは異なりますが、US のスタートアップイベントにもこうしたコンテスト、特にピッチコンテストが併設されていることが多いです。社会的課題からは外れるかもしれませんが、コンテストをうまく使う、という意味では有用かもしれません。最近でも、TechCrunch には FOVEH2L など、技術的バックグラウンドを持つスタートアップがピッチコンテストである Battlefield に出場しています。

こうしたイベントのリストは以前まとめたたので、少し古いかもしれませんが、こちらを御覧ください。

社会的課題を解決するコンテストにプロジェクトとして取り組む意義

いずれスタートアップを始めたい人や、これからプロジェクトを始める人にとって、こうしたコンテスト、特に技術的に困難な課題に取り組むコンテストや International という冠がつくようなコンテストを活用しない手はないと思っています。理由は前述のとおり、

  • 難しい課題であるがゆえに注目され、協力者が増える
  • 制限が厳しいため、突飛なアイデアが求められることが多い
  • 多額の賞金がもらえる

といった利点のほか、特にプランだけで評価されるビジネスコンテストなどではないので、

  • ちゃんとモノを作る
  • 技術力を身につける
  • チームメンバーの相性を確かめる

といった場合にも活用できます。

またコンテストには様々なメリットがあります。

1.分かりやすい目的を作ることができる

コンテストには明確な課題と目的があります。

スタートアップにしてもプロジェクトにしても、始める前に「情熱が大事だ」と言いますが、「何がしたい」という明確な目的を持って始めるのはレアケースだと、成功した起業家などからもよく聞く話です。そしてよく言われるのは、情熱は取り組むことによって生まれてくるもの、だということです。なので情熱を見つける上でもこうしたコンテストを通して手を動かし、顧客と接しながら、自分の興味関心を狭めていくと良いのではないでしょうか。

2.制限がある

コンテストには資金や時間の制限があります。そして反直感的ではありますが、制限はより良いアイデアを生む触媒となりえます。

たとえば賞金が出るプライズの場合は、合理的に考えればその賞金までの金額しか使えません。それ以上使うと、優勝しても赤字になってしまうからです。なのでいかに安く作るかを考える必要があり、うまく難易度が設定できているコンテストであれば、多くの場合は解決のために新しい手法を必要とします。たとえば X Prize などは、お金を湯水のように使えばなんとでもなる課題である場合もありますが、多くの場合は賞金はそれ以下になので、新しいやり方を考えなければなりません(Ocean Prize などは一度ブレインストーミングに参加させていただきましたが、やはりそういう結論に鳴りました)。

また締め切りという時間的な制限も、プロジェクトを進める上では重要な制限となります。締め切りがあることで、プロジェクトは進まざるを得なくなります。スタートアップでプロダクトを作る場合などは、ついのびのびになってしまいがちですが、締め切りがある場合は判断を迫られます。

周りでも、たとえば Maker Faire に出る、というのを決めてから、一気にものづくりが進んだ事例などを聞いています。

3.失敗しやすい

こうしたコンテストにプロジェクトで挑むことは、会社を立てるよりも相当失敗しやすい目標として設定できます。試しに何かを始めて見るには、ちょうどよいサイズのコンテストを選べば、とても良い挑戦の場として作用することを期待できます。

もちろん失敗は精神的な痛みを伴うものですが、それは挑戦をしたから失敗しただけです。プロジェクトの失敗はスタートアップをして人の資金を使って失敗するよりも相当にリスクの低い失敗です。しかし一方で、プロジェクトの成功は実績になり、実績は次の挑戦を支援してくれます。

たとえば Axelspace は学生の小型宇宙衛星コンテストに参加したあとに起業しました。OpenPool はサイドプロジェクトで様々な人が関わり、SXSW Accelerator の Finalist に残った後、その一部メンバーは別のアイデアで起業しています。

どのコンテストに出場すればいいのか

面白いと思うものに参加するのが一番ですが、問題は

  • そもそもコンテストの存在を知らない
  • 今の自分達にあった合致したサイズのコンテストが分からない

というケースが多々あることです。

先輩たちが出したことのあるものを調べてみたり、ニュースで見たりするのが一般的だと思いますが、もう少し効率化をしたいので私の方でイベントも含めたコンテストリストをまとめています。そこから適切なものを recommend していける形にできればと考えています。

是非他にもこういうのがあるよ、というのをご存知の方がいらっしゃればご連絡下さい。下記は一例です。