「反領域的なスタートアップ」という考え方と、狂ったアイデアの気付き方

「19世紀の最大の発明は、発明法の発明であった」というのは数学者であり哲学者の Alfred Whitehead の言葉です。経営学を作ったと言われる Peter Drucker も同様のことを『イノベーションと企業家精神』の中で書いています。

かつてはただ一人の天才の神秘的なひらめきだった発明という概念が、19 世紀には計画や予測ができる発明が可能だ、という共通理解として行き渡りました。実際に今日も多くの企業では研究開発の部門が、”計画的かつ体系的に” 発明を繰り返しています。考えてみれば、それは凄いことかもしれませんが、しかし並行して企業の多くは自社内でイノベーションがなかなか起こらないことにフラストレーションを感じています。

イノベーションの困難さ

イノベーションという言葉を作ったシュンペーターが、初期においてイノベーションのことを新結合 (new combination) と呼んでいたように、多くの新しいイノベーションは組み合わせで生まれると言われています。

そしてその組み合わせの元となるテクノロジやツールは現在急速に進歩、増加しています。

漸進的な進歩であればまだまだ計画的な発明の中で何とかできるかもしれません。しかし組み合わせとなると、要素の数が増えるにつれてその難易度は飛躍的に上がります。

そうしたことを考えると、今、こうしたテクノロジの急速な進歩によって、新しいイノベーションを生むための組み合わせの数は爆発していると言ってもいいのではないでしょうか。そしてそれが新たなイノベーションの困難さにつながっているのかもしれません。

さらに今後も様々な職業の専門化がさらに進むと予想され、Ridley の論に従えば専門化が進むことによってさらにツールがさらに増えることは十分に予測できます。そのツールはさらなるツールやテクノロジの発展を生んでいくことになり、隣接可能領域を広げていき、さらなる組み合わせ爆発を呼ぶことは容易に想像できます。

技術の急速な進歩に対する大企業の対応

大企業はそうした加速度的に増える組み合わせや、組み合わせをベースにしたイノベーションに対応しようと様々な試みを行っているように見えます。たとえば、知の深化と知の探索の両利き (ambidexterity) の経営をするために、20% ルールなどを採用し社員による自由な探索を許したり、Google X などの Moonshot など、先進的な取り組みを行ったりしています。

日本企業もオープンイノベーションや社内ベンチャープログラムなどに取り組みはじめていますが、多くの企業はそこまで本気で資源をつぎ込んで取り組んでいるとは思えません。それは、株主を始めとした周りから漸進的な成長が求められる中で、計画できないことに資源を寄せるのは上場企業にはとても不向きだから、という合理的な理由があるのでしょうし、いわゆるコンピテンシートラップと呼ばれる現象の現れかもしれません。

逆に言えば既製の枠に囚われる必要のないスタートアップは、そうした「組み合わせ」を実験する領域が狙いやすい領域だといえるかもしれません。

反領域における組み合わせ型スタートアップのチャンス

実際に、かつてのイノベーションを振り返ってみれば、以下の様な「組み合わせ」が、これまでなかった領域を切り開いてきたように思います。

  • ワイン造りに使うぶどう圧搾機に目をつけたグーテンベルクは、それを活版印刷に応用しました
  • 蒸気は最初、炭鉱から水を汲み出す手段として使われ、その後蒸気機関車の推進力という天職を得ました
  • 船と陸との通信手段として発明されたラジオは、その後ラジオ番組などの娯楽に利用され市場を広げました
  • インターネットは学術研究の成果を共有する手段として考案され、その後様々な情報をやり取りするインフラとなりました

最近だと、もしかするとグロースハッカーという言葉が出てくる以前の段階の、エンジニアとデザイナーとマーケターのスキルをすべて合わせて、サービスをグロースさせていくという行為は反領域的であったと言えるのかもしれません(既にグロースハックという言葉が発明されて、その領域は名状されてしまいましたが)。


こうした過去のイノベーションを考える上で一つ補助線になるのが MIT Media Lab の理念の一つである「反領域 (Anti-disciplinary)」ではないかと思います。

Media Lab 所長の Joi Ito はこの Anti-disciplinary を「インター・ディシプリナリーな研究とは、さまざまな分野の人々が共同で研究を行うことを指します。しかし、アンチ・ディシプリナリーはそれとは大きく異なるものです。その目的は、既存のどの学問領域にも単純には当てはまらない場所で研究を行うこと――独自の言語や枠組み、手法を持つ独自の研究分野です」と説明しています (原文の翻訳はこちら)。

そして実際、最もよく引用される論文の多くが、反領域的なスペースで行われた、普通ではない組み合わせの研究であるという Science の研究もあります。そうした領域は、スタートアップでいえば「今はまだ名状されがたいアイデア」といえるかもしれません。

Photo by Joi Ito, http://joi.ito.com/weblog/2014/10/02/antidisciplinar.html

グーテンベルクがまさにそうでしたが、他の領域で発達してきたツールを別の領域に無理やり応用する、あるいはこれまでなかった分野を作り上げるのは脱領域的な試みであり、反領域的なことでした。

そして反領域的な分野はいまはまだはっきりとした領域ではないため、市場規模は測定できず、計画性を重視する大企業は参入しづらいものです。実際にグーテンベルクの発明した活版印刷機は写生よりも多少早く印刷程度だったと言われており、恐らく当初の他の会社や組合は、それをおもちゃのようなものだと言っていたのではないかと思います。

新しい価値を作って、それを独占しろ」「小さな市場から始めろ」という Peter Thiel の言葉に沿うのであれば、既にある領域で何か新しい価値を生むのではなく、スタートアップは積極的に反領域的ともいえる組み合わせによる、新しい価値提供によるイノベーションをスタートアップは狙っていくべきなのかもしれません。

狂ったアイデアへの気付き方、反領域へのはみ出し方

ではそうした領域にとらわれないスタートアップを始めるためには、あるいは狂ったスタートアップのアイデアに気づくためにはどのようにすれば良いのでしょうか。

恐らくそれに正確な答えはなく、ツールをテーブルの上に広げて、心理的安全の確保された環境で実験や模索を繰り返して失敗を積み重ねていくしかないのだと思います。しかしそれではあまりにも無方針すぎるので、個人的には以下の 2 つの方針を提案したいと思っています。

  1. チープなツールの組み合わせに注目する
  2. 反領域に逸脱する

1.チープなツールの組み合わせ

まずその組織の成り立ち的に、スタートアップとは小資本で取り組めるものが中心となります。なので注目すべきは、安価な(チープな)ツール、もしくは今後急激にチープになっていくことが予想されるツールになるのはほぼ必然です。

チープなツールはスタートアップが入手できるだけではなく、以下の様なメリットが得られます。

1.失敗できる

チープであればあるほど、より安価に失敗できるようになります。つまり挑戦の数を増やせるということです。

それは心理的な面でも大きく、チープなツールであれば無茶な使い方ができるようになるということでもあります。壊れれば買い直せば良い、という安心感が挑戦につながります。特に普段想定されていない用途で使うときなどは、チープであり買い直せることのメリットは大きくなります。

たとえば Kinect が出てきたときには数万円で深度センサが使えるということで、ロボットに載せたり、海上で使ったりと過酷な環境で無茶な使い方をする人が続出しました。数百万円する深度センサでも元から可能ではありましたが、チープになることで心理的に以前ではできなかった実験が可能になりました。

グーテンベルクがぶどう圧搾機の応用可能性に気付けたのは、ワイン醸造をしているところがそこらかしこにあり、その中で圧搾機が使われているのを見たからと言われています。そうした広がりを見せたのは、圧搾機がチープになったことが一つの要因であるとも言えそうです。さらにそれは改造のために壊しても、代わりのものがすぐに手に入るという環境であったとも言えるのではないかと思います。

圧搾機 Gun Powder Ma (https://en.wikipedia.org/wiki/File:Holzspindelkelter_von_1702.jpg)

2.利益が出やすい構造にできる

いかなるビジネスにおいても利益率の確保が重要ですが、スタートアップ、特にハードテックのスタートアップの場合、そのテクノロジの応用先の模索や、その応用先の要求仕様に伴う追加の研究開発も含めて自社内で行う必要が出てくるケースも多々あるため、最初から大幅な利益の出る構造を取っていいたほうが安全です。

チープなツールの組み合わせで高い商品価値を生むことが可能であれば、より多くの費用を研究活動に当てることもでき、自社の競争優位性を高めることができます。

ここ数年で最もチープになったのは計算資源ではないでしょうか。なのでコンピュータの能力やソフトウェアを何処か別の場所に応用する、というのが多くの場合、利益確保においても価値提供においても基本となると思います。その結果、AI やロボットなどが現在注目されているのは当然の流れなのかもしれません。

ただもちろん、チープで利益の出る構造のビジネス領域は競合他社がひしめく傾向にあります。そのため、コアな技術は真似をされないようなものにしておいて、周囲を極力チープなもので組み合わせる、などの考えが必要かもしれません。

3.多くの人に提供できる

チープに提供できるのであれば、次第に売値を安くしていくことも可能になります。

スタートアップは急成長する組織であると言われます。そのために必要な条件として Paul Graham が挙げた (翻訳) のは、

(a) 多くの人が欲しがるものを作る
(b) 欲しがっているすべての人にリーチして提供できる

という 2 点です。そしてソフトウェアは (b) が非常に得意ですが、他のビジネスの場合は全ての人に提供できる程度にコストは抑えなければなりません。

Tesla Motors は売値を次第に安くしていくことがうまいスタートアップのように思えます。最初は一部の人しか手に入らない、超高級なモデルを出すことで利益率を確保しながら、徐々にそのプライスラインを下げ、2016 年に発表された Tesla Model 3 では約 350 万円という一般の人でも手に入るラインに徐々に入りつつあります。これは彼らのコアであるバッテリー技術を急速にチープにできたことにより可能になったモデルです。


2.反領域に逸脱する

しかし単にチープなツールで新しい組み合わせによるイノベーションを発見できたとしても、大企業が資本を活かして同じことをスタートアップにはひとたまりもありません。だからこそ、どの領域でツールの組み合わせを使ったビジネスを行うかは慎重に選ぶ必要があります。

そのために反領域、つまり未だ名状されがたい領域や今はまだ小さな領域に逸脱していくことで、合理的な大企業が入り込めない領域でビジネスをする、というのがスタートアップにとって合理的な手段になるのではないかと思います。

しかしもちろんそうした領域を見つけるのは難しいことです。ここではそうした領域を見つけるための方策について、現段階の仮説として、以下の 3 つを提案したいと思います。

  1. 他領域の人との小さなコミュニティでの交流
  2. 大学の活用
  3. 難しめのコンテストに出る

1.他領域の人との小さなコミュニティでの交流

多様な人達と会える環境に物理的に身を置く、というのが、迂遠ではありますが今のところ最も効果的な方法ではないかと思います。様々な研究 (Perry-Smith, 2006 など) で、弱いつながりを持つほうが創造性を高められることが確認されており、現在は世界各地でそうしたつながりを作ることを支援するような環境が作られつつあります。

実際、MIT は RISD と共同授業などを行っている他、Stanford の d.school はビジネスとメカニカルエンジニアリングを融合して作られました。国をあげて取り組んでいるフィンランドの Aalt University は工科大、経済大、美術大の 3 分野の大学が統合されて 2010 年に創立され、そうした多様な人が入り交じる環境を強制的に作ろうとしています。

そうした大学ではプロジェクトベースで、数人で密なコミュニケーションを取る授業が盛んだと聞きます。大人数がいたところで密なコミュニケーションができるわけではなく、情報交換も表層的になりがちなので、少人数で固まって、深い話題ができる環境を作るのが大事なのかもしれません。つまり、うまく多様で小さなコミュニティを作る必要があります。

小さなコミュニティの力は過去の様々な発明や発展を見ていても感じるところです。たとえばパーソナルコンピュータ初期の Homebrew Computer Club、フロイトにとってのベルクガッセ19番地の心理学水曜会(アドラーなどが参加)、そして現在においてはオープンソースコミュニティなど、まさに小さなコミュニティが創造性を高める機能を持っているのではないかと思います。

また人類学者の Margaret Mead は小さなコミュニティの力について以下のように述べています。

思慮深くて献身的な、少数の市民からなるグループが世界を変えられることを、私は確信している。実際のところ、それを実現してきたのはそうしたグループだけだ。

そうした小さなコミュニティがいずれスタートアップとなって世界を変えていくのかもしれません。Homebrew Computer Club に関わっていた Bill Gates や Steve Jobs, Steve Wozniak のように、です。

Homebrew Computer Club の Steve Jobs と Steve Wozniak (http://www.mid-day.com/articles/how-the-homebrew-computer-club-revolutionised-computing/16036154)

もちろん小さなコミュニティを作るためには、最初大きめのコミュニティが必要で、その中で偶然の出会いが発生して小さなコミュニティになっていくものと思われます。

コミュニティが徐々に別れていく図

そうした偶然を引き起こすためには、物理的な空間が重要になってきます。そこで活用したいのが大学です。

2.大学の活用

大学には研究者や学生をはじめとした多様な人材が集まり、更に卒業と入学が強制的に起こるため、新陳代謝も起こります。そして卒業生も含めればその人材の多さには事欠きません。

それだけではなく、様々なツールが使えるというのも大学のメリットです。前述の Steven Johnson はその著書の中で以下のように述べています。

グッドアイデアを生むのはどんな環境だろう。いちばん単純な答え方をすれば、イノベーション度の高い環境のほうが、そこに住み着くものが隣接可能性を探りやすいということになる。そのほうが広い範囲の多様なありあわせの部品――機械的なものでも頭の中のものでも――があらわになって、その部品の組み合わせを変える新たな方法を促すからだ。そうした新しい組み合わせを邪魔したり限定したりする――実験的な試みを罰したり、可能性の枝分かれの一部を隠したり、満足して誰もわざわざ限界を探ろうとしないようにする――環境では、イノベーションが生まれたり流通したりする数は、平均的に言って、探究を促す環境である場合よりも少ないものだ。
グッドアイデアを得るこつは、孤高の高みにおさまって、大きなことを考えようとすることではない。こつはテーブルに並べる部品を増やすところにあるのだ。(※太字は記事投稿者によるもの)

つまりツールや部品が多い場所に身をおくことが一つ重要ではないかということです。

大学周りはには最新鋭の機器から古い道具まで様々なものがあり、更にそれを使える多様な領域の人がいて交流することができます。一方、多くの企業ではどうしても専門領域のツールに慣れ親しむことになりますし、研究所は地理的に遠方に飛ばされることも多く、様々な交流を生む機会が限られてしまいます。

そして大学には「まだ評価されていない」ツールも多数あります。

レーザーを発明したベル研究所は、その発明をあまりにも低く評価していたため、特許を取らなかったと言われています。また同じくベル研究所において発明されたトランジスタは、その発表はラジオのニュース欄に追いやられ、わずか 4 パラグラフの記事でしか取り上げられませんでした。

そうした「今はまだ評価されていない」ツールに目を向けてみることも有効かもしれません。実際、「新しい技術は、個別具体的な問題を解決する手段として、かなり原始的な状態で誕生することが多い」(How Google Works)と言われます。実はまだそのポテンシャルが発見されていないツール、あるいは当時は日の目を見なかったツールが今の時代になった。特に研究をベースにして生まれた技術は、その本来目的とされた領域以外にその応用先が見つかるかもしれません。

多くのイノベーションやスタートアップが大学周辺から生まれていることも、大学という場所が有効である一つの証左ではないかと思います。

また大学は様々な国の人が来る場所です。自国では当然で安く手に入るものでも、新興国に持っていけばとても素晴らしい価値を生むこともままあるため、そうした視点を得る場として大学は使えるのではないかと思います。実際に、トップのビジネススクールは、そうした多様性を意識したアドミッションポリシーを掲げいるところも多いです。

3.難しめのコンテストに出る

様々なツールを手に入れたところで、その組み合わせは膨大であり、すべてを試すことは出来ません。例えば私が知る限り、スタートアップ向けのサービスだけでも 5,000 を超えています(これはいずれリストなり何なりの形で提供する予定です)。たとえばバイオのツールデザインリソーススタートアップ向けのツール一覧については以前記事で紹介しました。

さらに API を合わせればもっと多くのツールが毎日のように新しく開発され、開放されており、今我々が使えるツールは爆発的に増えつつあります。それを見越したのか、老舗の VC である Accel Partners は APX Economy という標語を立てて、ビジネスの API 化を推進しようとしています。実際、バックグラウンドチェックの Checkr や前述の Postmates などのサービスと API を使えば C2C のサービスを立ち上げやすい環境に海外ではなりつつあります。

だからこそ何かの軸が必要です。

既にやりたいことという軸がある人にとっては、こうしたツールを組み合わせて、エジソンのように何度も試していけば良いのかもしれません。しかし情熱というものはなかなかすぐには生まれないものです。

だからもし、これといってやりたいことが明確ではない場合は、そこそこ大きなコンテストを狙うことをオススメしています。何かに取り組んでいる途中で情熱が生まれてくると Tina Seelig は指摘しています。特に狙うべきなのは、企業主催のコンテストではなく、政府やテクノフィランソロピストらが主催する社会課題やハードなテクノロジに取り組むようなコンテストです。たとえば X Prize などが有名でしょう。

そうしたコンテストに取り組むメリットは以下のようなものがあります。

  • 応用領域が絞られる
  • 社会の課題が多い
  • 時間的な制限がつく
  • お金の制限がつく

よく言われることですが、制限は新しいアイデアを生むための触媒となります。またコンテストは賞金が出るケースも多々あるため、それを元手にしたスタートアップも可能です。

実際に、DARPA のコンテストで優勝した SCHAFT は Google によって買収されました。CubeSat プロジェクトで世界初の超小型衛星の打ち上げに成功したメンバーたちはその後アクセルスペースという宇宙スタートアップを始めています。


注意:「顧客が欲しがるか」は別問題だが、技術によって解決できる課題は増える

もちろんそうして作った新しいイノベーションが、顧客に欲しがられるかどうかは分かりません。多くの人が勘違いしがちだと Tina Seelig が指摘するところですが、新しいイノベーションや発明とそれが顧客に広く受け入れられるかどうかは別問題と考えたほうが良いと思います。

作ったものが一部の人にとってとてつもなく欲しいものであり、口コミで広がるようなものであれば良い兆候と言えるかもしれません。それでもチープなプロジェクトなのですから、受け入れられなければ次のものを探せばいいでしょうし、あるいは起業家精神を発揮して粘ったり、広めたりする活動をすれば良いのではないかと思います。

しかし、技術の発展や発展した技術の組み合わせによって顧客の課題が解決できる可能性は高まります。Paul Graham の指摘するように、最新の技術を使うことで重要な問題に最初に気付けるかもしれません。それにもしかすると、「解決可能」なツールが見つかることによって顧客が課題だとは思っていなかった課題が見つかるかもしれません。たとえば Web の登場によってコミュニケーション欲求を満たした Facebook のようにです。だから、技術に目を向け続けることは間違ってはいないのだと思います。


最後に

技術中心が生き残る方策

現在において、技術に関わらない企業はほとんどありません。顧客体験を重視しているあの Disney ですら多くの技術を研究していることは有名です。だからこそ、すべての企業は技術の重要性に改めて目を向ける必要があるのだと感じています。

Google では 2009 年、プロダクトラインの再検討を実施したところ、「優れたプロダクトはいずれも事業上の戦術ではなく、技術的要因によって成功を収めていたのに対し、それほどの結果を挙げていないプロダクトはどれも技術的な個性を欠いていた」(How Google Works)というパターンを見つけたとのことです。最初はユーザーを獲得できても、失速してしまったプロダクトにはテクノロジのコアがないというのが彼らの発見です。逆に言えばテクノロジを中心としない会社は潰れると言えるのかもしれません。これは Paul Graham の「Yahoo は自社をメディア企業と規定したために失速した」という指摘に通じるところを感じます。

今後も技術は指数関数的に進歩していくと思います。技術に関わる人は、その進歩に必至に振り落とされまいとしながら日々頑張り、一方スタートアップは逆にそうした技術の進歩をうまく使って既存のビジネスに新しいやり方で入り込もうとしています。

もちろんその技術競争は中にいる人たちにとっては厳しいもののように映るかもしれません。ただ世界は未だ様々な問題を抱えており、もし技術のイノベーションに資本を投資するのであれば、技術の進歩によってそうした問題を急速に解決できる可能性があるということでもあると思います。

100 年前はほとんどの人が今でいう「絶対的貧困」に位置しており、時間の貧困に喘いでいたと言われます。一日の時間のほとんどを自分が生きていくための食料の生産に費やし、稼ぎの多くを生きるために使っていました。わずか 35 年の間に絶対的貧困の人類のパーセンテージは劇的に下がりました。また、1900 年の平均的なアメリカ人は、100 ドルのお金があればそのうち 76 ドルを衣食住にあてており、現在はわずか 37 ドル程度だと言います。

そうした進歩があったのも、イノベーションがあったからこそです。そして Y Combinator の President である Sam Altman が指摘するように、イノベーションを起こすにはスタートアップという手段が最も良い場合が多いと信じています。

そして今後、技術やツールの選択肢が増えるにつれて、スタートアップの重要性はさらに増していくのではないでしょうか。


※この記事は「反領域的なスタートアップはチープなツールの組み合わせから」の一部を独立させたものです(長いと言われたので)。

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