成功するスタートアップは一夜にして成功する。ただし、

「その一夜というのは大抵の場合 1,000 日目から 3,500 日目の間のどこかに起こる」と続きます。これは Startup L. Jackson の言葉です。つまり、たった一夜で成功することはあるが、そこに至るまでには長い時間がかかるということです。

もちろん Instagram のようにローンチ一日目で 25,000、一週間で 100,000 登録を獲得するサービスもあります。Y Combinator のThe Process が示すように、ローンチ後に TechCrunch に取り上げられて一晩だけ注目を集めることに成功することもあるでしょう。

http://www.slideshare.net/takaumada/throw-away-your-marketing-rally-in-the-sales-and-customer-support

しかし多くの会社やサービスや発明は「悲しみの谷」に陥り、本当の成功に至るまで長い年月をかけ、多くの拒否を受けています。たとえば:

ほかにも、2016 年は VR が起業家界隈では盛り上がっていますが、そのトレンドのきっかけとなったのは 2011 年に 19 歳の学生が作った Oculus というおもちゃのような技術プロジェクトでした。きっとその頃は誰も VR の可能性を信じていなかったのではないでしょうか。今スタートアップ界隈でも話題になっていますが、全体としてみるとようやくその可能性が一部の人たちに信じてもらえている程度です。

また現在ドローンの市場で大きな存在感を持つ DJI が創業されたのは、創業者が大学時代に行った、おもちゃのようなヘリコプター飛行制御のプロジェクトがきっかけでした。そんなドローンは今やインフラ分野での活用が期待されています。そこに至るまで 10 年の歳月を要しています。

http://www.forbes.com/sites/niallmccarthy/2016/09/02/the-industries-where-drones-could-really-take-off-infographic/ (Niall McCarthy, “The Industries Where Drones Could Really Take Off [Infographic]”, chart by Statista)

その発明が本当に世界を変えたとしても、そのときは誰も気づかない

様々な発明も同じように、その真価に気付かれるまでに数年や数十年の年月を要しています。それについては以下の記事が詳しいです。

たとえば世界初の有人飛行を達成し、旅行や輸送の時間を大きく短縮するような世界的な発明をしたライト兄弟の成果は、その日のニュースに取り上げられることはありませんでした。その次の日も、その次の日も取り上げられることはなく、彼らの記事が出たのは初飛行から 3 年後だったようです。

初飛行の成功後、ライト兄弟は各地を回って有人飛行のデモンストレーションとトレーニングをしながら、本当に有人飛行ができるんだということを説得して回るという「スケールしないこと」をしていたと読んだことがあります。まるでセールスやエバンジェリストのようです。

https://en.wikipedia.org/wiki/Wright_Glider

世界を変えるような他の発明も最初ほとんど無視されていました。

  • 電話も最初は価値が無いと見なされていました。Alexander Graham Bell が Western Union に営業をかけたとき「こんな電気のおもちゃ何のために使うんだ?」と返答されたそうです。
  • ガソリンで走る馬のない馬車(自動車)はこき下ろされてます。たとえば 14 マイル/時ぐらいしか速度が出ないため、道を邪魔し、ガソリンのコストは高すぎるうえに馬の利用を減らし、それが農業を台無しにする、という当時の議会のメモが残っています
  • レーザーを発明したベル研究所は、その発明をあまりにも低く評価していたため、特許を取りませんでした
  • 同じくベル研究所において発明されたトランジスタは、その発表はラジオに関するニュース欄に追いやられ、わずか 4 パラグラフの記事でしか取り上げられませんでした
http://www.nytimes.com/2009/09/01/science/01first.html?_r=0
  • 1975 年に John Bogle が初めて設定したインデックスファンドは 20 年間ほとんど注目されませんでしたが、今や多くの資産がインデックスファンドで運用されています
http://www.collaborativefund.com/blog/when-you-change-the-world-and-no-one-notices/

3D プリンタも太陽光発電も同様に、発明から普及まで長い時間がかかっています。発明はイノベーションの第一歩であり、発明が実際に世界を変えるまでのイノベーションに至るまでは長い時間がかかります。

「世界を変えることと、あなたが世界を変えたと人々を説得することには大きなギャップがある」「イノベーティブなプロダクトは、それが本当に世界を変えるものであろうと、最初はほとんど誰にも理解されない」と前述の記事では書いています。その次代の本当にスマートな人たちによってすら理解されないこともあります。かつて 1998 年のクルーグマンが、インターネットの経済的インパクトを「FAX 以下」と見誤ったことがあるようにです。

次なる大きなものは最初おもちゃのように見える」と言われ、「新しい技術は、個別具体的な問題を解決する手段として、かなり原始的な状態で誕生することが多い」(How Google Works)と言われます。Pixar の Ed Catmull も「独創性はもろい。そしてでき始めのころは、見る影もない。私が初期の試作を「醜い赤ん坊」と読んでいるのはそのためだ。…時間をかけて辛抱強く育てなければ一人前になれない」(Creativity, Inc.) と述べています。

急激な成長は突然に(一夜に)感じる

こんなに世界に影響を与えたサービスや発明も、その真価を認められるまで長い時間がかかったのであれば、起業家や研究者の皆さんが作る多くのサービスや発明もそうのはずです。情報伝播のスピードが上がったからといって、人々を説得し、人々の考え方を変えるのは容易ではありません。だから本当に信じるものであれば、辛抱強く続けていく必要があります。

それでも「一夜にして成功する」神話が残るのは何故なのでしょうか。

それはそうした耳障りの良い伝説が残りやすいという面と、そして実際に数千日の努力のあとに「一夜にして成功する」ようなイベントがあることと、そうしたイベントの人間の感じ方の問題のように思います。というのも、テクノロジビジネスには正のフィードバックがかかることが多く、その結果、指数関数的に急激な成長が起こります。指数関数はある一定値を超えると急激に伸びていきます。その急激さは人間の直観と反し、うまく理解することができません。だから指数関数的な成長は最初はゆっくりに感じ、そして一夜の成功にして成功したように見えます。

http://cdixon.org/2015/05/12/exponential-curves-feel-gradual-and-then-sudden/

でもその一夜での突然の成功は、それまでの数年に渡る創業者や初期メンバーたちの努力に依るものです。そして大抵の場合、初期のメンバーが苦労していたときの話はわずかな人しか知りません。だからローンチ後すぐに成功に至らなくても失敗とは限らないと言えます。あのライト兄弟ですら地道な活動を数年続けていたのですから。

粘り強さと運

多くのプロダクトや発明が長い時間をかけて成功に至っています。実際、トレンドに頑固なまでに逆らってぶれない会社は、上場企業になる可能性が最も高いそうです。

同様に Paul Graham はスタートアップにおいては「粘り強さが鍵だ」と述べました。だから本当に信じられるものであれば、面倒な仕事を無視せず、新規事業の成功に最も影響する要因と呼ばれるタイミングが来るまでスケールしないことを続けて、relentlessly resourceful であり続ける必要があるのではないかと思います。

もちろん成功は運や偶然かもしれません。しかし物理学者の Mlodinow やハミング符号で有名な Hamming が言うように、人は「運」をコントロールするために「挑戦回数」をコントロールできます。だからこそ様々な挑戦を続ける粘り強さが鍵なのだと思い、私も徐々にやっていきたいなと思います。

とりわけ私が学んだことは、前向きに歩きつづけることだ。なぜなら、幸いなことに、偶然がかならず役回りを演じるので、成功の一つの重要な要素、たとえば打席に立つ数、危険を冒す数、チャンスを捉える数が、われわれのコントロール下にあるからだ。失敗のほうに重みをつけてあるコイン投げでさえ、ときには成功が出る。あるいは、IBMのパイオニア、トーマス・ワトソンが言ったように、「もし成功したければ、失敗の割合を倍にしろ」ということだ。

参考