答えが問いを待っている(技術が課題を待っている)

通常、先に問いや課題があって、それに対する答えや解決策を探します。つまり「問いが答えを待っている」のが普通です。その答えを求めて、解決策や技術を探します。

しかし一方で、技術系スタートアップや工学部の学生の皆さんと会っていると、先に答え(技術)があって、それに最適な問い(課題)を探しているパターンに出会います。つまり、使いたい技術が先にあってアプリケーションを探す、というパターンです。ときにこういうパターンは目的と手段の転倒などと言われますが、しかし個人的にはそうしたやり方を中長期的には守りたいと思っています。

本記事のタイトルの「答えが問いを待っている」はタレブの『ブラックスワン』からの引用です。

彼はその著作の中で、エンジニアの人たちがしばしば持ちがちな、おもちゃや機械を作ることへの愛と情熱から思いがけない発見につながることがあると指摘し、それがまさに「答えが問いを待っている」ことだとしています。そして例としてレーザーの例をこの種のイノベーションの例として取り上げています。

御存知の通り、レーザーは今や CD、視力の矯正、顕微鏡手術等で使われている技術です。しかしレーザーの発明者のチャールズ・タウンズは、発明の半世紀後に Economist 誌に取材されたとき、そうした応用のことを考えながらレーザーを発明したわけではないと明言していたそうです。単に光線を分割したいと思って色々試していたときにレーザーを発明した、とだけ彼は言ったそうなのですが、しかしその後、レーザーという発明をいろいろな形でいじくる(ティンカリング)することで、レーザーは戦術の CD のような新たな発明とイノベーションを生みました。

コンピュータは(ENIAC をコンピュータの最初期とすれば)弾道計算のために発明されましたが、今やこうしてブログを書いたり、あるいは Snapchat でエフェクト付きの写真を送るために使われています。果たしてスマートフォンという小型のコンピュータが、Uber のような乗り合いタクシーを可能にして、交通問題を解消することを事前に予想できた人がどれだけいたでしょうか?

何か特定の目的があって開発されたものが、それ以外のところで実は使えるのだということはあります。そしてその予想されていなかった効果が、予想以上の大きな発見になって大きな変化が起こることもあります。

だから技術や道具という発明(インベンション)を一つの解決策に留まらせないことが重要で、そのためには技術を色々と適用してみること、いじくってみること、そして新たなアプリケーションを探すことで新たなイノベーションが生まれるのではないかと思っています。

科学の基礎研究や技術を愛することが大事だと思うのは、世界の法則を少し解き明かしておくことで、いつかその法則という答えを用いて、それにたまたま合致する課題が見つかるかもしれないからです。それも一つのイノベーションなのだろうと思います。プラットフォームビジネスをする場合に関しても、まさにこの「答えが問いを待っている」状態に近いのかもしれません。

ただ短期的にこうした取り組みが実を結ぶのかといえば、必ずしもそうは言えないことも重々承知しています。だから常にこのアプローチが有効かといえばそんなことはないと言えます。

だからこそもし短期的に狙うなら個人的には「なぜ今?」の問いが重要だと思っており、かつ予想を超えた範囲外での応用をしてみることが大事で、特に最新の技術や劇的に変わる技術を用いたり組み合わせたりしてティンカリングしていくことが重要なのかなと思っています。

技術への愛がある人に出会ったとき、その技術というすでにある「答え」があります。その技術が時代にあっていると感じたときに、自分が協力できるのは「良い課題探し」、つまり「問い」を探すことなのかなと思いつつ、自分がいくらか貢献できることを探して悩みながら進んでいるなと感じている次第です。