クラウドゲームプラットフォーム Google Project Streamテストプレイやってみた & トラフィック考察

Googleが新たに展開するプロジェクトとして ”Project Stream”というCloud Gaming Platformを意識したプロジェクトが2018年10月1日に発表されました。

Project Stream と Ubisoft最新作Assassin’s Creed Odeyssey のテストプレイが、アメリカ在住の17歳以上のユーザを対象に上記Webサイトで公募されています。

私自身がゲーム好きなことに加えて、Cluod Gaming ビジネスやインフラ作りにも興味があったので、Testerに応募したところ、ありがたいことにテストユーザとして選んでいただき、数時間遊ばせてもらいました。

せっかく最新作を無料で遊ばせてもらったので、プレイの雰囲気や感想をこちらでシェアさせていただこうと思います。

まだ日本の方でプレイされた方はほとんどいらっしゃらないと思うので、今後の Cloud Gamingに興味がある方は参考にしていただけると幸いです。

私自身がネットワークエンジニアとしてお仕事しており「Cloud Gaming が今後のインターネットトラフィック増大の要因になりえるかも」と睨んでいることもあって、ゲームプレイ時のネットワーク利用状況や考察も掲載してます。そのあたりについても関係者の方は必要に応じて参考にしてもらえればと思います。

Cloud Gaming とは?

Cloud Gaming(クラウドゲーム)とは、PlayStaion4やNintendo Switchなど従来のゲーム機本体とソフト(パッケージ版/ダウンロード版)を購入してプレイする形とは異なり、コントローラ処理以外のほとんどの計算処理をクラウド上のインフラで実施し、描画結果をインターネットを経由してユーザ端末側にストリーミング配信することによってゲームプレイを実現する技術のことを言います。

参考: これがゲームの、エンターテインメントの未来だ!クラウドゲーム機「G-cluster」とは

ユーザから見るとほとんど従来と変わらない状態でゲームプレイを楽しむことができますが、高価なゲーム機本体は不要で、一般的なPCや小型ゲーム機、スマートフォンなどで今のハイスペックなゲームをプレイできることがメリットとして挙げられる上、ゲームソフト購入時のデータダウンロード時間を待つ必要もありません。(あまりゲームされない方のために言っておくと、最新のPS4ゲームだとデータサイズが50GB-100GBほどあり、ソフト購入時のダウンロードだけで数時間かかるということも珍しくなくなってきました。)

クラウドゲーム自体は今回新しく登場した技術ではなく、2011–2015年頃に一度たくさんの企業が登場し、そのときはビジネスがうまく行かず倒産する会社もありました。

現存するサービスだと、PlayStation Now (2012年にSonyがGaikaiを買収することでスタートしたサービス)が最も有名です。

2018年のこのタイミングでCloud Gamingに新たに参入する企業が出てきたのは、GCPやAWS, Azureなどのクラウドインフラサービスの機能が多様化かつ安価になり、Cloud Gamingを実現するためのインフラ投資コストが下がってきたことが考えられています。もしかしたら5G導入のタイミングも狙いに入っているのかもしれません。

Project Stream: Requirements

Project Streamを利用するために、特別なアプリケーションをインストールする必要はありません。Google Chrome ブラウザからポチポチ押していくだけで、ブラウザ上でゲームがすぐさまプレイできる仕組みになっています。

ほとんどの計算処理がクラウド側(GCP上?)で行われており、従来のゲームのように50GB~100GBの大容量のソフトウェアデータを数時間かけてダウンロードする必要もありません。

以下の紹介動画を見ていると、最大1080p, 60fpsの性能が出るとのことです。

Project Stream の利用要件は以下のようになっています。

参考: What do I need to play Project Stream?

  • Google アカウントが必要
  • Ubisoft アカウントが必要 
    (これは Assassin Creed Odesseyゲーム内で利用するためのもので、Project Streamとは関係しません)
  • 利用するPCにGoogle Chromeブラウザ 最新版がインストールされていること(version 69 and higher)
  • インターネット回線帯域 25 Mbps 推奨
  • (オプション)USBコントローラや外部マイスが利用可能。
    (私はPS4コントローラを使ってました。)
  • 対応OS: Windows, macOS X, Chrome OS, Linux

インターネット回線の帯域として25Mbps推奨とのことですが、私のプレイ環境(MacBook Pro 2017 13-inch)で実際に計測した利用帯域は平均 16 Mbps程度でした。

Project Streamが利用するネットワーク帯域としてはNetflix 4K/UHD画質 と同程度です。
参考: Netflix: 推奨されるインターネット接続速度

Netflix動画配信と違い、Cloud Gamingはリアルタイムで計算処理 & データ転送 & 描画処理を実行しており、少しでも通信が遅れてしまうと画面が乱れてしまいプレイできない状況に陥ってしまうので、体感としてはもう少しシビアであるように感じられました。

既にCloud Gaming Platformとしてサービス提供されている PlayStation Nowでは最低限動作する目安として5Mbpsが推奨値として定められていることと比べても、Project Streamはより大きなネットワーク帯域を利用するようです。1080p, 60fpsという高解像度/高フレームレートのデータ送信がそうさせているものと推測されます。

ネットワーク遅延(Latency)の要件については公式ページに特に記載がありませんでした。私の環境では8.8.8.8まで25msec程度の環境でプレイしていましたが、ほとんどゲームプレイに支障が無い状況( = インターネットを経由していることにほとんど気づかないレベル)でした。

Mobile Version: Not yet

Project Streamですが、現時点ではモバイル版Chromeではプレイできないようになってました。

Cloud Gamingの恩恵として最近のスマートフォン程度のスペックがあれば移植可能な点が挙げられていますし、ビジネス面でもスマホアプリゲームユーザ層を是が非でも獲得したい想いがあるはずなので、今後の展開次第ではモバイル版の展開もあるかもしれません。

ただしCloud Gamingのシビアなネットワーク要件を考慮すると、モバイル版の実現はネットワーク次世代規格である5GやWifiのIEEE802.11ax が展開されるタイミング(2020年頃?)になるのではと予想しています。

Booting : super quick!

Project Streamを試してみた第一印象ですが、とにかく起動がめちゃくちゃ早いです。

Chromeブラウザからゲームスタートのアイコンをクリックして、Ubisoftのロゴが表示されるまでに10秒程度でした。

Project Streamを起動したところを動画に撮ってみました。

まだ正式にサービスがローンチされてない状態で単純比較するのはunfairではありますが、既存サービスのPlayStation Nowではゲームを選択して起動するまでにおよそ60秒前後かかっていることを考えると、ユーザ体感として大幅な差が生まれています。

起動まで10秒というと、だいたいPlayStation4をスタンバイモードから起動するまでが10数秒、ダウンロード済のPS4ソフト(= 非Cloud Gaming)を立ち上げるだけで10数秒であることを考えると、Project Streamはユーザにストレスなくゲームを立ち上げさせることに成功していると言えます。モバイルアプリの起動時間に近い速度かもしれません。

このあたりはGoogleの技術力の高さが伺えます。

(私の想像だとVM起動とコンテナ起動の速度の差なのかなと推測していますが、それ以外にも技術的な工夫がありそうです)

Stress-free playing a game via the internet!

プレイした印象ですが、インターネットを経由していることをほとんど感じずに快適にプレイすることができました。

ネットワーク遅延に関してもほとんどストレスを感じませんでした。

私は普段ストリートファイターVをこよなく愛する格闘ゲーマーなので通信ラグについてはシビアな方ですが、Nativeでのゲームプレイとの差を厳密に比べると「1テンポ(3fps前後)遅いかも?」くらいの印象でしたが、Assassin’s Creedの操作感が全体的にゆったりとした大振りモーションが多かったせいか、ストレスには感じずにプレイを楽しめました。(かなり意識しないと遅延に気づかないレベルでした)

遅延にシビアな格闘ゲームやFPSの対人戦やってみると、もう少し違和感を感じるのかもしれません。

プレイした際のネットワーク遅延の感覚は PlayStation Nowでのプレイと大差が無いように感じました。

これは余談ですがPlayStation Now(旧Gaikai)も世界レベルでのネットワーク作りにかなり力を入れているので、Googleに近いネットワーク品質を実現している、ということなのだと理解しています。

ただし私が住んでいるアメリカ西海岸は、日本と同様にインターネット環境として世界でも非常に恵まれた地域なのですが、ISPが多く集まっていない国や地域(たとえば日本/香港/シンガポール以外のアジア地域や中東、南米、アフリカなど)では、ネットワークの遅延や品質に差が出てくる(=Googleが優位な地域が多い)ものと予想しています。

参考: Sony Interactive Entertainment: PeeringDB
参考: Google: PeeringDB

Network Monitoring

ここから先は完全に私の趣味の世界なので、ご興味があればお付き合いください。

Project Streamプレイ時に計測したトラフィックデータを取得してみたので、参考までに掲載しておきます。

利用帯域は平均16 Mbps, 2,566 ppsでした。トラフィックの中身はほとんどがUDP通信でした。

Googleは2016年頃からWeb配信に通信プロコトルとしてQUICK(UDP)を利用しているということで、Project Streamについても同様にQUICKが利用されているものと推測します。

参考: GoogleのQUICプロトコル:TCPからUDPへWebを移行する

Internet traffic will be coming?

ISPでネットワーク運用をされている方々の目線で、はたして今後Cloud Gaming関連のインターネットトラフィックが増える可能性があるのか、一人で妄想してみました。

ユーザ一人あたりのトラフィックが16Mbpsというとインターネットコンテンツとしては非常に大きい部類です。ただしトラフィックを予想するには、今後どれくらいのユーザ数が獲得できる次第ではあるので、正直予想が立てにくいところです。

ここでは、以下のデータを使って無理矢理算出してみます。

参考: 2017年の世界ゲームコンテンツ市場は前年比約2割増、デジタル配信が9割を占める 『ファミ通ゲーム白書2018』が6月25日に

上記データによると2017年の日本国内の家庭用ゲームユーザが2,379万人とのことなので、ざっくり計算でそのうちの10%の238万人が Project StreamのようなCloud Gamingサービスに加入したとします。そのうちの1/3が同時間帯にCloud Gamingにログインしてプレイしたとすると同時アクセス数は約80万人です。この想定だとPeakトラフィックは、80万人 * 16Mbps = 12,800,000Mbps = 12.8Tbps が日本の各ブロードバンド系ISPに流れる計算になります。仮にシェア10%を獲得しているISPだと、1.28Tbpsのトラフィックが流れてくる計算です。

さらにそれだけで終わらず、今後のCloud Gaming Platformの「モバイル版」が現在のモバイルアプリユーザを一気に獲得することも予想されます。前述のデータによると、ゲーム機本体を持っておらずスマホアプリしかプレイしたことないユーザが日本国内に1,855万人おり、そのスマホアプリユーザ層がモバイル版Cloud Gamingに手を出し始めたタイミングでトラフィックが増え、Wifiや4G/5G回線を消費するようになると考えられます。

モバイルアプリユーザが1,855万人いて、その10%の185万人がモバイル版Cloud Gamingに手を出し、そのうちの1/3が同時間帯にログインしたとすると約62人万人。モバイル版Cloud Gamingの利用帯域が仮に5.3Mbps(PCブラウザの1/3)だったとすると、Peakトラフィック は 62万人 * 5.3Mbps = 3,286,000 Mbps = 3.286Tbps となります。

モバイル版と合わせて合計 16 Tbpsのトラフィックがブロードバンド回線, Wifi, 4G/5Gを通って日本のISPに流れてくる計算になります。

とまぁこんな形で、非常にざっくり数字で乱暴に計算してしまいました。

実際のところは現在のゲームユーザの10%を獲得することは難しいかもしれませんし、Cloud Gaming トラフィックは必ずしも Google Project Stream 1社だけでなく PlayStation Nowなども含めて複数のプラットフォームから分散してやってくると推測されます。

またCloud Gamingサービスの大半が有料サービスであることを踏まえると、ユーザ獲得/トラフィック増加の遷移もゆったりと増えていく傾向になると思います。

いずれにせよ、Cloud Gamingが本格的に流行ってくると、日本のみならず世界各国のISPに少なからずインパクトが出てきそうです。

Business Model of Cloud Gaming

Cloud Gaming は、ISP運用者目線でみるとインパクトがありそうだ、という話をしましたが、ゲーム配信会社側(今回でいうとUbisoft)から考えてもインパクトがあります。

Cloud Gaming用のクラウドインフラを実現するにあたり、クラウド利用量はもちろん必要なのですが、上記のようなインターネットトラフィックをクラウド上のサーバからユーザへ配信する際に、データ転送量に応じた通信コストの負担を強いられます。これがインフラ投資コストの非常に大きな要因となります。

例えばGCPの場合、2018年11月時点では日本国内からの配信の場合、インターネット上り(ユーザ -> クラウド)は無料、インターネット下り(クラウド -> ユーザ)に関しては$0.12~0.14/GB が定められています。

Video-Streaming方式のCloud Gamingサービスでは、クラウド -> ユーザへの映像配信の通信トラフィックが非常に大きく、ゲーム配信会社の配信コストが大きく膨らんでしまう構造になっています。

Cloud Gamingの映像配信のほとんどがリアルタイム配信(プレイヤーの操作情報に応じて描画結果を生成し、リアルタイムに配信する動的コンテンツ)であるため、CDNによる分散配信も現状難しいのではないか、と個人的には考えています。
(このあたり、詳しい方のお話を一度聞いてみたいです。)

このような背景を踏まえて、各社がCloud Gamingサービスを提供するにあたってどういったビジネスモデルで収益を確保していくのか、個人的に非常に興味深く感じているところです。

参考までに記載しておくと、PlayStation Nowは、複数タイトル遊び放題サービスを月額2,500円で提供しています

任天堂は、ユビタス社とパートナーシップを結び、Switch用ソフト単体のクラウドバージョンをプレイ日数を限定した買い切りモデルで提供開始しています。

そして2018年10月に入って Googleを始めとした巨大企業が次々と Cloud Gaming Platformの参入するニュースがありました。

10月1日にGoogle がProject Streamを発表。

10月10日にMicrosoftが Project xCloudを発表。

10月29日に Electronic ArtsがProject Atlasを発表。

いずれも時期や価格モデルについてはまだ公表されていません。

今後のCloud Gaming Platformの競争は非常に面白くなりそうです。

Summary

今回はGoogle Project Streamを遊んだ感想と、ネットワークエンジニア視点で将来のトラフィックの伸び方について考察してみました。

もし参考にしていただけたのであればとても嬉しいです。

ゲーム好きとしても、ネットワークエンジニアとしても、面白い動きが立て続けに起こっていて大変ワクワクしている次第です。

私自身はCloud Gaming の流れはとてもWelcomeです。毎回ソフトを購入するたびに数時間待たされるのはうんざりしていましたし、今後ゲーム機を買わずとも最新ゲームをプレイできるようになると思うととてもワクワクします。PCやスマホでゼルダの伝説が遊べるようになる世界が待ち遠しいです(そんな日が本当に来るのかは不明ですがw)

面白いネタがあれば今後も引き続きウォッチしていきたいです。

ではまた。