どのプラットフォームを選ぶのか:情報発信・交流のプラットフォーム選びのリテラシー教育について

以下の文章は、ワタシが運用しているブログ(http://u-labo.org/wp/)の過去記事をそのまま転載したものです。


本記事で引用している,このツイートは2016年8月から9月にかけてネット上で大いに話題となった「ゴルスタ問題」に関連してのつぶやきだと思われます.

これからのソーシャルメディア利用は中高生であれ,大人世代であれ複数アカウントの採用を前提とした利用を推奨していくべきかもしれません.メディアリテラシー教育の観点から言えば,複数のアカウントは実名,匿名,顕名を取り混ぜて運用していくのがベターだと思います.もちろん匿名アカウントは実名との紐付けを完全に断ち切っておけるよう運用していかなくてはなりませんし,顕名アカウントの場合は,実名と紐付けるかどうか,運用する本人の裁量が大きくかかわってくるので,どちら(紐付ける/紐付けない)を選ぶのか慎重に考えられる力を習得することになります.

ではどのような教育手法でソーシャルメディア上の複数アカウント運用に対応したメディアリテラシーを習得していくのか,ひとつのアイデアとして情報ネットワーク法学会における一連の討議がネット上に公開されています.

ソーシャルメディアでの発言をきっかけに、過去の発言や友人のツイート、別のサイトに掲載された断片的な情報から本人特定が行われ、炎上してしまうケースが後を絶たない。そんな状況を回避するためのアイデアとして、駒沢大学の山口浩教授は、ソーシャルメディア上の人格を、リアルの人格と切り離す「分人」の法人化を提唱する。

情報源: さらば炎上の日々、ソーシャル「分人」の作り方 | 情報ネットワーク法学会

ソーシャルメディアの炎上対策が求められる中、駒沢大学の山口浩教授は、ソーシャルメディア上の人格をリアルな人格と切り離して、情報発信者を炎上から守る「分人」の法人化を提唱している。しかし、現実の運用を考えると、「分人」を炎上から守るには多くの課題がありそうだ。しかも、制度化を推進すればするほど、国家による監視社会の足音が忍び寄ってくる。「分人」を維持するためには、何が求められるのだろうか。

情報源: ソーシャル「分人」化の背後に潜む超監視社会 | 情報ネットワーク法学会

これらの討議で提唱されている「分人特区」(特区内のみ(つまり特定のオンライン空間のみ)で有効かつ外部(オン・オフ両方)のアカウントや実名と紐付け不可能なアカウントで運用していく)に対して,討議メンバーの西田亮介氏(立命館大学)は,自由度が低いパソコン通信のようなオンライン空間が誕生すると,危惧しているようです.私個人は逆に賛成で,かつてのパソコン通信のBBSやWeb1.0(ないしそれ以前)の時代にあった「オンライン人格(ネット人格)」を主体とするアカウント運用(この場合は顕名アカウントを用いるのが適切でしょうね)がもたらしたネット文化は非常にユニークで面白い(楽しい)ものがありましたから,「分人特区」においてそのような文化が再度盛り上がるならば,結構なことじゃないかと考える立場です.

一方で討議メンバーの別の一人である一戸信哉氏(敬和学園大学)が懸念するように,「分人」の制度化による各アカウントと実名とのトレーサビリティ向上による,社会での監視強化,つまり「ビッグ・ブラザー」の誕生というストーリーは現実味を帯びた不安として理解できます.ただしこれは引用元の記事にあるように,運用次第で柔軟にやっていけるのではないかと.少々甘い期待でしょうか.

このソーシャルメディア「分人」化というアイデアを非制度化したもの(表現が少し変ですけど)として,社会学では「多元的な自己」概念があります.ソーシャルメディアにおいて複数アカウントを運用していくことは,多元的な自己という観点から言えば,自己が複数あるわけだからそれらを複数のアカウントに紐付けてしまえばよろしい,となります.

現在の,特に中高生といった若者世代のソーシャルメディア利用を対象とした社会調査の記録や報告レポートを読むにつけ,多元的な自己をもつ彼・彼女たちはメディアリテラシーの習得うんぬんといった以前に,もうすでに「分人」化していると言えるのかもしれません.ただしそこでの「分人」は引用した討議に見られるようなカッチリとした制度のもとに運用されている,のではなく結構アド・ホックに運用されている,したがって,たまには失敗してしまうこともあるのだろうと思います.最後に「分人」と「多元的な自己」について平野啓一郎氏の小説をもとに考えた記事へのリンクを貼って,この稿を終えます.

参照:「分人」と「多元的自己」とインターネット(2015年3月27日付)

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