夢のない国?から発信するロールモデル — 未踏ジュニア2018年度を終えて

Yu Ukai
Yu Ukai
Nov 30, 2018 · 12 min read

未踏ジュニアは、一般社団法人未踏に所属する未踏事業OBOGがボランティアで運営している、17才以下の小中高生を対象としたミニ未踏です。今年度も、未踏ジュニアに関する全てのイベントが、様々な方々のお力添えによって無事に終了しました。(特に、ゴールドスポンサーとして様々な形でご支援頂いた江副記念財団/リクルートホールディングスの皆様、ブロンズスポンサーとしてお支え頂いたサイボウズさま、プロコミットさま、本当にありがとうございました)


なにをやったのか

今年度は、なんと105プロジェクトもの応募があり、そのなかから30プロジェクトに対してオンラインでのインタビューを行いました。その結果、最終的に12プロジェクト14人を採択し、各プロジェクトへ最大50万円の開発費援助をはじめとした、様々な支援を行いました。

今年採択したプロジェクトの一覧は、こちら。全てのプロジェクトについて、最終成果報告会での発表動画がホームページに掲載されていますし、以下メディアスポンサーであるEdTechZineさんとこどもとITさんの記事でも詳しく紹介して頂いていますので、御覧ください。

  • UTIPS — 家事の情報共有サービス
  • Let’sえいごパズル! — 変化するキューブで楽しく学ぶ英単語
  • スマイル会議室 — IoTで会議室の効率的な利用を
  • Vreath — 暗号通貨の入手障壁を下げるための、独自合意アルゴリズムの開発
  • Corkboard — 位置的に管理するメモサービス
  • TouchBuy — VRにおけるECの在り方の模索
  • 強化学習を用いたロボットサッカーシミュレーション
  • メモリーカプセル — カプセルを通して繋がるSNS
  • Sound in the forest — 複数のスマートフォンによる「動く音」の表現
  • Toubans! -LINEで設定・通知できる当番お知らせサービス
  • 写して翻訳
  • Life Watcher — 急変する持病を持つ人のための警報システム

ディープラーニングを駆使したものから、VRやIoT、ブロックチェーンまで様々なテーマのプロジェクトが採択されています。これだけ内容が多岐にわたる一つの理由は、(これ結構驚かれるんですけど)、以下の理由から採択者をPM全員の合議で決めていないからでしょうか。

  1. 全員が良いと思ったものは実は尖ってなくてそれほど面白くない
  2. PMとクリエータの相性もあるので「この人のためだったら時間使っていい」と思うクリエータを選んでほしい(PMもボランティアですしね)

未踏ジュニア採択者に対する様々な支援

また、本家未踏事業と同様に、採択通知後すぐにブースト合宿を、夏休みには中間合宿を行いました。今年は意図的にクリエータ間の交流を促時間を多めに取ったので、プロジェクトをまたいでみんなとても仲良くなったようです。同時に、未踏ジュニアの一部の卒業生にも合宿に参加してもらえたことも、世代を超えた交流があってとても良かったように思えます。

慶應義塾大学SFCの未来創造塾をお借りして行った、中間合宿の様子

また、プロジェクトによっては、いくつかのプロジェクトが集まっての合同合宿なども、別に行っていた模様です。(例: アプリ・サービス開発系プロジェクトが集まっての集中開発合宿など)

10月に行った最終成果報告会には、150名を超える方々に集まっていただけ、面白い発表に会場が盛り上がりました。

熱気あふれる最終成果報告会の様子

そして、最終的に特に素晴らしかった以下の6プロジェクトから6人のクリエータを、未踏ジュニアスーパークリエータとして認定しました。未踏ジュニアスーパークリエータ認定式の模様はこちらから。


なんでこんなことやってるの? -> 身近な年代のロールモデルを増やしたいから

さて、ではそろそろ本題に。よく、なんでこんな大変そうなことをボランティアでやってるの?って聞かれて、細かく説明するのも面倒なので普段は「楽しいからじゃね?」って返答してるんですけど、一つの大きな理由は「プログラミングでものを作れることってすごい、面白そう、僕も私もああなりたい」と思えるような、身近な年代のロールモデルを増やすことが急務だと思っているからです。

以下、読み終わってから何十回頷いたかわからない、中国深セン在住の渡邉さんの「中国深セン教育事情」でも述べられているように、「日本の多くの人はプログラミング教育に夢を持っていない」というのは、残念ながら真実であると感じています。

最近も、NTT研究所からいわゆるGAFA… 実態は研究内容考えてもGとAmが多いんでしょうが… に優秀な研究者が引き抜かれまくってることが話題になっていますが、やはり(一般的には)外資系に比べると日本のエンジニアの給料が圧倒的に低いことは周知の事実です。(私も新卒で外資系企業でPMをしていましたが、正直日本企業からのオファーと天と地ほどの差があって驚きました)

下記、同じく渡邉さんのポストより引用です。

多くの深セン人には夢や希望があります。そもそも移民(中国国内からの)の都市である深センには、一攫千金を夢見て来たような人が多いわけですから、夢の塊のような都市なのです(もちろん影もあります)。 漠然と夢と言っていますが、具体的なロールモデルやサクセスストーリーが深センにはそこら中に転がっています。Tencentの馬化騰、DJIの汪滔、Makeblockの王建軍と深セン代表する人物の例を挙げるのに事欠きません。特に馬化騰は深センの名門高校である深セン中学(高校)から深セン大学へ進学し、深センで巨大IT企業となるTencentを立ち上げた功績は大きいです。 上記の企業もそうであるように、深センで成功している企業(世界でも)とITが切っても切り離せないことは周知の事実で、「プログラミング教育=成功」という方程式はいたって簡単に成立しうるのです(中国での成功の定義の1つとしてお金持ちになるということがあります)。

ジョブズやザッカーバーグは異国の人ですが、中国には馬雲(ジャック・マー)のような英雄が自国に存在していることも非常に大きなファクターで、日本もかつて松下幸之助や本田宗一郎という英雄が日本人のロールモデルとして存在していたのです。

もちろん、給料が高いことだけが大事じゃないことは重々理解していますが、親や教員の皆さん、そして何より子どもたちのモチベーションの一つとして、「プログラミングができる=いい暮らしができる、楽しい仕事ができる」「プログラミングができる=世の中をよくることができる」というのは非常にわかりやすいですよね。

以下、GoogleとGallupが2015年に公開した、アメリカにおける生徒及び先生、保護者のコンピュータサイエンスの認識を調べたレポート「Images of Computer Science: Perceptions Among Students, Parents and Educators in the U.S.」より引用ですが、生徒も保護者も90%以上の回答者が「コンピュータサイエンスのフィールドで働くひとは面白く、エキサイティングなプロジェクトに携わるチャンスがある」「コンピュータサイエンスのフィールドで働くひとは、人々の生活をよくしている」と回答しています。正直、日本で同じ質問をしたら、どれだけの人がAGREE!と胸を張って答えてくれるか、甚だ疑問です。

全文はこちら

そんなわけで、なかなか日本の社会の中に子どもたちが「こうなりたい」と思えるような、大人(保護者や先生)が「こうなってほしい」と夢をもてるようなロールモデルがいない今、それに替わる一つの方法として、身近な年代で楽しくプログラミングでものづくりをして、いろいろなチャレンジをしている近い年代のこどもたちを見てもらうことが大事だと思っています。

未踏ジュニアに応募してくれて、採択された小中高・高専生に共通しているのは、「誰に無理やりやらされているわけでもなく、純粋に何かを作りたいという強い思いを持っている」ことです。冷静に考えると、学校だ部活だ塾だと忙しい中学生・高校生が、さらにエクストラで大人もびっくりするようなものすごいものを開発しているわけで、ちょっと頭おかしいですよね(いい意味で)。

その結果、今年のクリエータがすでに未踏ジュニアの成果をひっさげて異能vationに採択されていたり(浪川さん)LINE BOOT AWARDグランプリを獲得したり(西村さん)と、大人と同じ土俵で戦って目に見える成果を残してくれていることは、本当に頼もしい限りです。もちろん、未踏ジュニアも含めてすべては手段であって目的ではないので、これを踏み台にさらなる活躍を期待していますが!


本当に夢がない国なのか?

いやいや。未踏ジュニアへの応募は毎年ものすごい勢いで応募が増えています。(正直読む方は大変です。)でも、とても多くのワクワクする面白い提案があり、「日本の若者はチャレンジしない」とかよく言われますが、こうやって応募をしてきてくれてPM・運営一同とても嬉しいのです。こういう子どもたちが、楽しくプログラミングを学んでいける環境や、コミュニティを作っていくことが、今すぐ我々にできることだと思います。

一緒にPMをやっている安川さんのスライドから引用

一方で、同時に応募者が増えるということは不採択のプロジェクトが増えることも意味しており、これでめげてしまう、というのは本望ではありません。なので、今年度は継続的にプログラミングをやってほしいという意図を込めて、すべての不採択プロジェクトへのフィードバックおよび、機材・教材スポンサーであるProgateさまおよびAidemyさまよりご提供頂いた、期間限定ではありますがプログラミング学び放題な特別アカウントの送付をさせていただきました。ダッシュボードでのデータを見ても、想像以上に多くの不採択だった小中高生が、プログラミングを学んでくれていたようです。両社関係者の皆様、ありがとうございました。

また、慶應義塾大学SFC(湘南藤沢キャンパス)のAO入試C方式対象コンテストになったことも、プログラミングで大学入試をスキップするということができるということを、世に示すことができたという意味で、非常に意義深かったと思っています。もちろん、これは(特に保護者の)モチベーションをあげる一つの方法に過ぎないですし、受験がゴールじゃないのはわかっているんですが。


2019年度未踏ジュニアについて

来年度もやります!詳細は後日公開しますが、すでに様々な準備をはじめています。ぜひ、未踏ジュニアのFacebookアカウントTwitterアカウントをフォローして、最新の情報をゲットしてください。


未踏ジュニアアドベントカレンダー

これは、未踏ジュニアアドベントカレンダーの初日の記事です。見切り発車ではじめたので(そして中高生が試験期間にかぶっているので)空きが目立ちますが、ゆるく未踏ジュニアについて発信する機会になればと思っています。

Yu Ukai

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Yu Ukai

MicrosoftでPMしてOffice LensとかMinecraft Educationとか開発してました/未踏スーパークリエータ/未踏ジュニア統括 製品開発や教育について書きますが、所属組織の意見ではありません。