未踏ジュニアの卒業生が100人を超えて、合宿を効率化し続けている話

Yu Ukai
Dec 2, 2023

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未踏ジュニアアドベントカレンダーなるものを作ってくれたので、これは書かねばと5年ぶりにMediumを更新しています(まだ生きていたんだ…) 。未踏ジュニアは今も昔も完全にボランティアでですが、本業の方は当時はまだ文部科学省にいて、その後 Google Researchの Computer Science 教育チームに入り、そこから Product Manager 業に戻ったことを考えると、だいぶ昔のことに感じます。

卒業生が100名突破

未踏ジュニアは、2016年に始まって今年で8年目になりました。(ぶっちゃけ未踏卒業生で飲んでいて軽いノリで始まったので、こんなに続くことになるとは思っていなかった。多分、完全ボランティアベースの組織ではそれなりに長く、安定した運営ができていると思う)

メンターの安川さんが作ってくれている統計ページによると、なんと卒業生が100名を超えたようです。めでたい。来年度には、採択したプロジェクト数も100件に到達しそう。毎年提案書のクオリティが上がり続けていて、嬉しい悲鳴です。

https://jr.mitou.org/stats より

卒業生が未踏に採択されたり、大学に進学して情報系の研究を始めたり、スタートアップやりだしたり、社会に出て活動しだしていて嬉しいですね。とはいえ、全ての卒業生と繋がれているわけではないので、今後は卒業生のコミュニティをどう作っていくかもちゃんと考えたいと思っています。

合宿や成果報告会の効率化

さて、そんなこんなで8年間やってきたわけなんですが、実質的に未踏ジュニアのイベント設計は自分が一人でやっています。(実際の手配とかにはさまざまな方にお世話になっています)

もともと未踏ジュニアは従来の未踏のやり方を完全に踏襲していたのですが、プログラムの設計をほぼ一人で意思決定できることをいいことに(皆さんから意見はいただいていますが!)、最近は合宿や成果報告会のやり方の効率化にハマっています。

従来の未踏や未踏ジュニアの合宿のやりかた

https://jr.mitou.org/guideline より

未踏では、ブースト合宿、中間合宿と呼んでいる2回の合宿があり、その中でそれぞれのプロジェクトがプレゼンテーションと質疑応答(合計で各プロジェクト30–45分くらい)をします。未踏ジュニアも、当初はこの形式で行なっていました。

そんな折、2020年に急にイベントを全てオンライン化しなければならくなりました。2020年は上の形式をそのままオンラインでやったのですが、結果としてプレゼンテーションを聴き続けるために土日2日間完全に画面の前に張り付くことになり、めちゃめちゃ疲れて、なんとか改善できないかと思いました。あと、そもそもすべてがオンラインになってYouTube動画を倍速で見まくっていた2020年に、プレゼンを等倍速で聞くというのがつらすぎました。(いや、内容は面白いんですけど!)

当時のツイート

未踏ジュニアでの新しいやり方(2021年から)

そんなときに、Working Backwards: Insights, Stories, and Secrets from Inside Amazon という本を読んだら、(詳しくは本を読んでほしいのですが)Amazonでは時間当たりの議論の濃度を上げるために、ドキュメントに要点と意思決定したいポイントを書いてまとめ、ミーティングの冒頭に全員で黙読してから議論を始めるということが書いてありました。あまり意識したことはなかったんですけど、当時の上司も元Amazonでたしかにそういう仕事の仕方を推奨していたこともあってとても腹落ちして、未踏ジュニアの合宿の時間を最大限有効に使うにはどうしたらいいのか(メンターも、卒業生を含めたその他の参加者もボランティアで週末に時間使っているわけですしね!)を考えて、以下のようなメッセージを送ることにしたら好評そうだったので、一旦2021年はこれを試してみることにしました。

当時のログ

まとめると

  • プレゼンテーションは、事前に録画しておく。全参加者は、全ての動画を事前に視聴する。(倍速でもOK)
  • 当日までに、クリエータにしたい質問はScrapboxに事前に書いておく。クリエータは、質問に事前に回答しておく。(当時は Scrapbox弱だったのでFormsとか言ってるし、このあとOneNoteも提案して「闇」というスタンプを付けられてます)
  • 合宿の時間はプレゼンテーションはやらず、クリエータとメンターが事前の質問から選んだものの議論+追加の質問だけに集中する。

という非同期主体の方式になり、結果として全体の時間を短くできただけでなく、卒業生のLTや交流に時間もまわせたことで全体の体験としてとても良かったのです。

しかも、やってからわかったことですが、動画は何度も見返せるし、わからなかったところがあったら調べてから質問が書けることで、深い質問と回答ががされるようになったという副次効果もありました。実はこれは未踏や未踏ジュニアのような、みんながモバイルアプリからロボット、OSまでいろいろなものを作っているプロジェクトではとても大事(なぜなら、全員が全ての分野に完全に詳しいわけではないので)ということも気づきました。

2022年からオフラインでの合宿が一部復活してからも、基本的にはこの非同期コミュニケーション主体の方式を続けています。2023年は、この形式をさらに一歩進めて、質疑応答を複数のブースに分かれて並列でやる方式も試してみました。(これは、他の場所でどんな議論が行われていそうかがなんとなくわかるオフラインの強みを生かしているので、Zoomなどではやりづらいと思います)

福武ラーニングスタジオでの様子

2023年度は成果報告会も、今年はプレゼンテーション内の質疑応答の時間を全て削って、その代わりに展示ブースを作って展示やデモをしながら参加者から直接質問が受けられる形に変更をしました。(これ、思っていたより実現するのにロジ周りが大変で、最終的にはメンターの石井さんとりずむさんが全て巻き取ってなんとかしてくれた。。。圧倒的感謝)

今後やりたいこと

自分はやりたいことはやりたいって言っていると何かの拍子に背中を押されて or やりたい人が集まってきて実現できると思っているので今後未踏ジュニアでやりたいことを書いておきます。

  1. 卒業生コミュニティを強く大きくしていきたい: 海外に連れて行ったり、なんかもっと大きくジャンプするきっかけを作れるコミュニティにできないか?
  2. 男女比率と、地方からの採択者の比率を改善したい: メンターや運営の仕方をインクルーシブにして、少しでも機会がさまざまな方にいきわたるようにしたい。
  3. なんとかもうちょっと広く支援する仕組みを考えたい: 正直ここ数年は採択できなかったけど採択したかった、みたいな提案が多数あるので、そういう方々も何らかの形で広く支援できる仕組みを作りたい。

最後に

このあと未踏ジュニアアドベントカレンダーも楽しみなのですが、こんな素敵なコミュニティができたのも未踏ジュニアをご支援いただいているスポンサーの皆様のおかげです。いつも、本当にありがとうございます。2024年度についても皆様からご支援がいただけそうなので、未踏ジュニアを継続できそうです。応募したい方は、今から応募の手引きを見て準備を進めておくと良いと思います。ワクワクする提案を待っています!

あ、未踏事業のほうはすでに応募受付を始めているので、ぜひこっちにもチャレンジしてみるといいと思います。ハードルは高いですが、数年に一度中高生の採択者もいますしね。では!(次のブログも5年後かな、どこでなにやってるかな)

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Yu Ukai

MicrosoftでPMしてOffice LensとかMinecraft Educationとか開発してました/未踏スーパークリエータ/未踏ジュニア統括 製品開発や教育について書きますが、所属組織の意見ではありません。